辻村深月のレビュー一覧
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スクールカースト、序列、女王様など学生の時の立ち位置や自分の居場所、関係性などを形容する言葉はあるが、アマテラスの神話を織り交ぜこの関係を表したのは、なるほどうまいなと思いました。
太陽は信仰の対象でもあり、畏怖の対象、天上にあって強烈な光を放つ唯一の存在。スクールカーストの頂点に立つ者を表現するのに、これほどピタっとハマるのはないのではないかと思うぐらい自分の中でストンときました。
女王だった同級生を語るクラスメートは太陽神アマテラスの伝説や寓話を語る市井の人々のようで面白かった。
このまま太陽の元で蠢く人々の話で終わるのかな、と思いましたが、その太陽が…という展開はさすがでした。
最後 -
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辻村ワールドすごろく5マス目の下巻。
浅葱とiの殺人ゲームはクライマックスを迎える。
上巻で感じたやるせなさは、下巻で更に大きくなる。人間の痛ましさ、愚かさ、精神的脆さが詰まった物語だった。
他者からの愛を渇望するあまり、刹那的な感情に駆られ歪んだ行動に出てしまうけど、取り返しのつかない行為に悔やむ心の叫び、この時の描写が何とも気持ちを抉られた。
っていうか、iの正体…そうきたか。。
相変わらずお上手な伏線の回収で、ラストは綺麗に着地した感じ。やるせなさは消えないけど(汗)
読後は切なすぎて、ふーっとため息が出た。
辻村先生の作品は、これまでどちらかといえば白い方の作品を読んできたからか -
Posted by ブクログ
とにかく口コミいいので読んでみた。
意味深な冒頭2ページ…わかる…その気持ち。
自分の力じゃどうにもならないから、奇跡が起きないかって願っちゃうんだよね。
主人公は中学1年生の「安西こころ」
5月の時点ですでに不登校…
原因はクラスのリーダー格からの嫌がらせ…
中学ってさ、学生時代で1番多感で情緒不安定なんだよねぇ…わたしも嫌なことたくさんあったなぁ…
家の方が嫌だったから、それでも学校にいったけど…
こころはずっと家に引きこもってた。
お母さんが手引きしてくれた「心の教室」にも行けなかった。
ある日、こころの部屋の鏡が光だしお城に繋がっていた。
そこには複数人の中学生男女と狼の仮面を -
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ふだんあまり小説は多くは読まないが、東畑開人『聞く技術 聞いてもらう技術』の「孤独」と「孤立」について書いている章でこんな風に紹介されていたので読んでみたくなった。
「こういう微細な傷つきを書かせると天才的なのが、小説家の辻村深月さんです。2018年の本屋大賞に選ばれた『かがみの孤城』をはじめ、さまざまな作品で、ストレスを抱えた大人が無自覚に子どもを傷つけるプロセスが描かれています。」
『聞く技術 聞いてもらう技術』では、「孤独には安心感が、孤立には不安感がある」と書かれている。「孤独」と「孤立」は違う。「孤独」を愛する人はいるが、「孤立」を愛する人は、おそらく、いない。
『かがみの孤城 -
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ネタバレ不妊のため特別養子縁組を利用して子どもを迎え入れる「育ての親」と、中学生で妊娠し、特別養子縁組に子どもを託す「生みの親」。
作品は、全く違う立場にいる二人の“母”の人生が交差していく物語でした。
ひかりも、佐都子も、それぞれが抱えた苦しみは想像を超えるものだったと思います。
けれど、朝斗を初めて見た瞬間や、引き取った日の出来事は、深い暗闇に差し込む光のように、二人に“朝”をもたらしたのだと感じました。
あの小さな命の存在そのものが、希望を与えてくれたのだと思います。
立場は違っても、どちらも心に大きな葛藤を抱えながら、必死に光を探し続ける。
その姿勢に気づけば涙が滲んでいました。