辻村深月のレビュー一覧
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瀬戸内海の小さな島で育った高校生4人が、
将来への不安や悩みを抱えながら日々を過ごしている。
そこへ“よそ者”の青年が現れたことをきっかけに、
彼らは島に残るか外へ出るか、自分の生き方について考え始める。
友情と成長、そして居場所を描いた物語。
まず、この作品では瀬戸内海のとある小さな島「冴島」の過去の災害、島の人間関係、医者の不在など描写がとても細かい。
フィクションの島が、本当に存在しているようなディテールである。
そのような島の生活には、人の出入りもある。島の住民にとっては出会いと別れがつきもの。
朱里を含めた高校生4人に視点をあて、物語は進んでいくが、高校の卒業後には当然、みんな違っ -
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辻村小説を何冊か読んでますけど、辻村さんは学生や社会人としては微妙な年頃の若者を主人公にした小説が上手いと思いました。今回のこの短編5話も主人公が若者でした。
1話:仁志野町の泥棒
2話:石蕗南地区の放火
3話:美弥谷団地の逃亡者
4話:芹葉大学の夢と殺人
5話:君本家の誘拐
個人的には5話が一番面白かったです。育児によるストレスから、ふっと置き去りにしてしまうというトラブルの所は印象に残りました。自分も考えさせられる内容でした。他の1~4話も良かったです。2話の放火事件も良かったし、4話の女性が転落した事件も本質が分かって面白かったです。4話は特に「辻堂ゆめ」作の「今日未明」に出てきそうな -
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傲慢が悪で、善良が善とも限りません。善良に見えている人ほど無意識に傲慢で、傲慢に見えている人ほど人間に対して真っ直ぐに信じる心があったりする。
日々生活をしていく中で、わざわざ声に出して言わないまでも、他人のことを選別して、心の中でまぁこれくらいみんな思ったりするよね、で当たり前のように忘れている感情を、すべて丸裸にされる気分です。
みんな自分がかわいい、それは決して悪いことではなくて、一度きりのこの人生、自分自身が主人公で生きていかなければならない世界。自分の選択をすべて肯定して、これからもきっと上手くいく、そう思わなきゃ見えない未来に立ち向かえないから、自然と傲慢さは身についていく。
傲慢 -
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愛ゆえの「正義」が牙を剥く。その言葉は、誰のための救いか。
特殊な言葉を放つことで、人の未来を左右してしまう能力を持った少年。そんな彼を取り巻く人々、特に先生との交流を通じて、「人が人を想うこと」の純粋さと残酷さを描き出した物語です。辻村作品らしい圧倒的な読後感と、心地よい達成感に包まれる一冊でした。
一番心に残ったのは、少年が抱く「やられたらやり返したい」という、愛があるがゆえの復讐心です。
かつてタモリさんが「愛がある限り戦争はなくならない」と仰っていましたが、まさにその言葉の真意を突きつけられた気がします。
自分の掲げる正義が、他人から見れば決して正義ではないこと。良かれと思ってし -
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読んでいてはっとさせられることばかりで、漠然とした不安とかもやもやが言語化された感じました。
アプリをやってると凄く優しくて良い人でもピンとこないの連続なのかもしれない。謙虚で自己肯定感が低いが自己愛が強いって言うのはとても刺さった。でも自己愛が強いのは大切なことだと思うし、善良さも必要なことだと思う。そこの折り合いはどうやったらいいんだろうか。その人を知れば知るほど最初は違うなって思ってたところも、愛おしく感じたり、他の人にはない魅力が見えてくるものだけど、出逢いがありふれている現代ではそれが難しいのかも知れない。その分いろんな出会いがあって楽しいけれど、一つ一つの出会いを大切にしたい。
自 -
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ネタバレ「善良さ」が必ずしも優しさや正しさとして機能しない、という冷たい現実だった。
人を傷つけないように、波風を立てないように選び続けることは、一見すると誠実で思いやりがある。でもその裏には、自分が傷つきたくないという傲慢さが静かに隠れていることもあるのだと思わされた。
登場人物たちは皆、悪人ではない。むしろ社会的に見れば“ちゃんとした大人”で、善良な判断を積み重ねている。けれどその善良さは、相手と真正面から向き合う勇気を奪い、結果的に誰かの人生を置き去りにしてしまう。
本音を言わないこと、決断を先延ばしにすること、責任を曖昧にすること。それらはすべて優しさの仮面をかぶった傲慢なのかもしれない。