あらすじ
一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員……ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。
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Posted by ブクログ
亡くなった大切な人に一度だけ会える
依頼した人たちの目線と使者(つなぐ)の目線で描かれてて
涙なしで読めやんかった、、、
うちにはまだたった1回を使おうと思える人はおらんけど
今会えるうちに後悔しないように大切にしていきたいって思えた
Posted by ブクログ
死と生、というより、自分の人生を深く考えさせられる。
もし自分の大切な人のうちの1人が亡くなったら、会いに行くのか。自分にとって「一番」大切な人って誰なのか。自分が死んだ後、会いに来てくれる人がいるような生き方をしているのか。
誰しもが持つであろう後悔や懺悔、不安、感謝。明日何があるか分からないのだから、伝えたいことは伝えて、会いたい人には会って、やりたいことはやっておかないと、と言うが、実際そんなつもりで毎日を過ごせる人は少ないだろう。どうせまだしばらくは生きるだろうし、と大部分では思っている。それでも、後悔のないように生きたいと改めて思わせてくれる。
ファンタジー要素のある物語が苦手で避けていた、辻村深月の人気作。この人の小説が好きだなと気づいた。
Posted by ブクログ
死者との面会をさせてくれる使者(ツナグ)の話が5話収録された。連作短編集。
最後がツナグ視点の話で、そこまでの4話を受けての見事な構成。圧巻でした。
一人称小説のお手本のように、主人公ごとに言葉遣いやものの見方がガラッと変わる。
デビュー作から順に読んできて、久しぶりにわりと最近のを読んだら、文章が明らかに洗練されていた。
読みやすく、没頭しやすい。以前の作品に感じられた僅かな違和感や引っかかりがほとんどなくなっている。
このレベルの作家でも、書くほどさらに進化していくんだな。
・アイドルの心得
引っ込み思案の平野愛美が、若くして亡くなったアイドルに会いたいと、使者に出会う。
終盤、さすがの辻村深月さんでした。
・長男の心得
地主家系の頑固な長男と柔和な次男。その息子のパッとしない太一と、優秀な次男の子供たち。癌で亡くなった母。
これは泣ける。二重に泣かされた。一人称が頑固ジジイ感があるからこその感動。
・親友の心得
最後の悔恨が複雑で、頭で考えているうちに感情移入できなくなってしまった。
・待ち人の心得
キラリの言葉ももちろんだけど、それ以上に使者の言葉にかなり心揺さぶられた。
連作短編集ならではの盛り上げ方ですね。
・使者の心得
ツナグ視点。亡くなった両親やおばあちゃんとのことを、依頼者たちとの関わりを通して考えていく。
見事なまとめ方でした。
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亡くなった人に会うことで、生きる希望を見いだせた人、一生大きな十字架を背負いつつづけることになった人、恋人が亡くなったことを受け入れなければいけなくなった人。
会いたかった人に会っても幸せになれるとは限らない
私はこの先の人生で誰に会いたいと思うのだろう。
私が死んだあとは会いに来てくれる人がいるのだろうか、
Posted by ブクログ
テレビ番組「あの本、読みました?」で特集されていた辻村深月さんの書籍マップに興味を持ち、読むことにしました。
辻村さんの作品は、『ツナグ』(実写映画化)、『かがみの孤城』(アニメ映画化)、『ドラえもん のび太の月面探査記』(脚本参加)を視聴済みで、今回が小説初挑戦となります。
物語の主人公は高校二年生の渋谷歩美。祖母が、死者との面談を希望する依頼人のための段取りをする’使者’の役割を担っています。その祖母が病で入院したことをきっかけに、歩美は’使者’の手伝いを始めることになります。
依頼者は、突然死した芸能人のファン、病死した母との面談を望む息子、事故死した女子高生の同級生、行方不明の婚約者を探す会社員など、多岐にわたります。
歩美は、依頼人と死者との面会を通して、'使者'としての役割を徐々に継承していきます。
生前、互いに伝えられなかった思いが交錯する場面に深く共感し、涙腺が緩みました。また、オチの部分も想像を超えており、読み応えのある良い作品だったと感じています。
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死者は生きている人の心の中にある。それがネガティブなものであれ、ポジティブなものであれ死者を抱えながら人は生きている。
著者はやはり人の心理を生々しく描く天才。
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映画は2回くらいみたことがあって、原作は初めて読んだ。
とっっても良かった。
汚い部分も含めて、生きていくしかない。
そっと背中を押してくれるようなほっこり系の小説とは違って、甘ったれんな!どかーーーん!と背中を吹っ飛ばしてくれるくらいの力強い小説だった。
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ツナグ
2025.10.09
本当に身近な人の死しか感じることはできない
みんな平等に不公平
この言葉が特に印象的だった。
死者に会ったことで必ずしも良いとは限らないという言葉があったけれど、会うか会わないかの決断を自らした時点で少なくとも後悔はしないと思う。
最近感じるのは、ある本を読み始めると次に目にするのはそれに関連したテーマの本や映画で連続しているということだ。
ツナグは死者との再会というテーマだが、最近見ている『葬送のフリーレン』と似ているところがあるなあと。似たテーマの方が内容が比較できたり、別の見方で捉えられたりして深く考えることができるので楽しい。
辻村さんの作品は伏線回収をしっかりしつつ、最終的にはほっとするような物語なので、とても好き。
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死者に会うことが正解だとは限らないし、究極のわがままかもしれない。それでも覚悟を持って死者と対面した人達の物語。最後に相手に対して一生消えない後悔を植え付けることも出来れば、前へ進む原動力を与えることも出来る。それが一夜で決まるのが私はとても怖かったが、登場人物それぞれの葛藤から自分だったら今後会いたいと思う人が出てくるのかなと考えた。
おもしろい
こんなからくりがあったなんてなぁ。嵐と御園のお話は、嵐の御園に対する嫉妬の気持ちややり場のない怒りみたいなものは理解できるから読んでいてとってもしんどかった。御園が生きていた間は憎くて目障りで仕方なかっただろうし、いくら凍った水が死因ではなかったものの実際は御園に敵意も殺意も見透かされ、失ってから親友の存在をありありと感じ、そのうえ親友が主役を務めるはずだった劇もやり遂げた嵐はどんなに胸が張り裂けそうなほどつらかっただろう。
つなぐ使者
亡くなった人に会ってその声を聞きたい悩める依頼人と死んだ人間と生きた人間を会わせる窓口の使者、そのツナグ物語には引き込まれるものを感じる。
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生と死を考えさせられた。
自分だったら、誰に会うか
生存者は死者のために生きる
個人的には親友の心得の、親友への羨ましさが憎しみに変わり、不幸を望んでしまう人間らしさを描く章が印象的だった。自分が親友を殺してしまったのではないかという罪悪感を晴らすために親友と会ったが、使者を通じて親友の発言に一気に心情の急変化があり、安堵、申し訳なさ、悔い、人としての弱さが止まらなかった。
死を新しいカタチで表現し、死を身近に感じさせつつ、生の儚さを感じた。
Posted by ブクログ
記憶力儚いこの私がいまだに公開当時観た映画の内容を覚えているので(貴重すぎ)
せっかくだから小説も読んでみようといきなり思い立って読んだ本。
どう考えても嵐美砂、性格悪いよな〜〜
映画では嵐が御園を常に見下してる・しもべかよ・なんでそもそも仲良いの?としか思えない関係になってるけど、
小説には2人がBL好きという共通点があった
&
嵐がやや疎ましい存在になってる(先輩から、御園が話すとみんな聞いちゃうから練習が止まっちゃうけど、嵐は勝手にしゃべってるキャラじゃんwみたいなあれ。)
というのが描かれていて腑に落ちた。
マウント取りがち女子とわかっていながらも、BLというコアな(?)共通の趣味があったから色々目を瞑っていたんだな、御園。
そんな優しい御園だけど、
コムデギャルソンのコートのくだりでプチっといった時は、そう!!!!最後くらいやり返さないとね!!!!!
と私はテンションがぶち上がりました。
親友ってね、上下関係があるものじゃないから。
御園は来世では対等な関係でいられる親友ができますように。
映画でも泣いた「待ち人の心得」はやっぱり良すぎた。
あの時の桐谷美玲が可愛すぎて最高
Posted by ブクログ
辻村さんの作品を読むのは初めてでした。ひと作品ずつ読めて読みやすかったです。どうゆう終わりになるかなど想像していませんでしたが、こう終わるとは、、。先の先?奥の奥?へと想像される方なんだと思い、他の作品も読みたいです。
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かなり前からこの本を読もうと持ってはいて、ただ、途中まで読んで、また期間が空いて読み直して、、、を繰り返してやっと最後で読み切れた!
「ツナグ」を介していろんな登場人物の人生が描かれており、それぞれ個人のストーリーがありつつも、最後のツナグ視点での章で、点と点を結ぶような伏線回収があり、人情味溢れるような暖かさを感じつつも、ミステリーで感じるような驚き?というのだろうか、そことそこが繋がるのね、と読めば読むほど世界観に呑まれるような作品だった。
Posted by ブクログ
生者と死者を一夜限りだけつなぐ物語。
初めは使者(ツナグ)がただの高校生?なぜホテルで?など、ファンタジーだとしたらそれっぽくない現実的な設定に入り込めなかったけど、最後の章まで読んで腑に落ちた。
もしかして、現実でもあったりするのかなとも思ったり、自分だったらどうするか、を考えてみたりする。
まだ自分にとってとても身近で、心から大切な人を亡くした経験がない私は、現実的に誰と会いたいというのはなくて、それは幸せなことだと思った。
ただその分、これからの人生では必ず大切な人を喪失する経験をするんだと思うと怖いなと。その前に自分の人生が終わるかもわからないけれど、そしたら誰が一番私に会いたいと願うのだろう。
人生のいつ読むかでまた印象が変わる物語だと思った。
Posted by ブクログ
読んでいるとき、頭に浮かんだのが20年ほど前に読んだ伊坂幸太郎さんの『死神の精度』。両者とも「死」をテーマとした短編のファンタジーものということで、共通点を感じました。
ファンタジーものはあまり好みではないのですが、本作の「長男の心得」という話は、読んだ後に思わず涙してしまいました。自身が長男というのもあり、感情移入できたのだと思います。
どの話もよくできていて、作品の中に没入できました。著者のお話作りの能力には並外れたものがあると思いました。
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全部ハッピーエンドで終わるというありがちな展開ではなくて少し驚いた。
歩美の両親が仲良し夫婦でよかった。
自分が使者に頼むことができるとしても、誰に会うか悩んで決められなさそう。
Posted by ブクログ
生者として死者に会えるのは1人だけ。
死者として生者に会えるのは1人だけ。ただし死者側は依頼を待つことしかできない。
その仲介を担うのが使者(ツナグ)。
憧れ、彼女を観ることが生き甲斐になっていたが突然死んでしまったバラエティタレント、
最期まで癌を患っていることを知らずに死んだ自分の母親、
自分が間接的に殺したかもしれない喧嘩別れした親友、
突然姿を消した元婚約者
にそれぞれ再会する。
生きている間に勇気が出ず聞けなかったことを聞く時間にしたり、再会してもたわいもない話ばかりで結局聞けずに後悔したり、突然の別れになってしまった謎を聞いたり。
いずれにせよ生者の今後の人生を大きく左右する出来事となった模様。
死者側は突然のことで自分が死んだことすら理解をしていなかったとか、死者は今現実にある様々なものの集合で再度出現する的な感じで表していたのが良かったな。
やっぱり、自分だったら...を考えるよね。
死者側になった時に一生に一度のチャンスを使って私に会おうとしてくれる生者はいるのだろうか。
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「ツナグ」は私が初めて読んだ辻村さんの著書です。一生に一度だけ許される死者との面会で救われる人、後悔が決定的になってしまう人。一気に読みました。心に残る作品でした。
Posted by ブクログ
初めて辻村深月さんの本を読んだのは中1のとき、2018年の本屋大賞がきっかけで手に取った、かがみの孤城。
まだ20歳だけど、今まで私の成長のそばにはいろんな本がいて、それだけで豊かな世界が自分の内側に形作られていることが、友達との思い出とは別ベクトルですごく幸せな経験だと思っている。読書は人生のいつ読むかで感じることが全く変わるところこそが醍醐味とよく言われるけれど、私も例に漏れず、小学生のころ、中学生のあの時、高校生のあのタイミングで、読めて良かったと思う本がいくつかある。20歳になった今もう一度読み返したいと思う本も、もう少し大人になってまた読みたいと思う本もまたあって、「かがみの孤城」は、そのうち全部に当てはまっている気がしている特別な本!
その時から辻村深月さんの本は大好き。
近年は専らガチガチのミステリーやイヤミスにハマっていたから少し遠ざかっていたけど、最近はなんだか、もっと爽やかな読後感の、でも心が暖かくなるような本が読みたい気分になって選んだのがこの本。やっぱり読んで良かった。素敵なお話。
亡くなった人間と生きている人間を1度だけ会わせることができるツナグ。一人の人間は、生きているうちと亡くなったあと、1度ずつしかその機会は使えない。ツナグに依頼して死者と会う4人とツナグの見習い少年の連作短編集。
私が1番心に残ったのはやっぱり親友の心得かなぁ。依頼者は高校生の女の子、会いたいのは最近事故で亡くなった親友。
親友なのだけど、友達として1番近い存在だからこそ自分との違いが目について、比較して、嫉妬とも羨望とも形容できない焦りのような虚栄心と、曖昧な、でも確かにある2人の間の小さな感情の歪み。でもこれが思春期の友情のリアルだろうなという、ある種の諦観のようで逆説的にポジティブな気持ちになった。それがリアルでも、思春期の友情は美しいしかけがえのない思い出であり続けるほどの眩しさがある。
劣等感と自己肯定感の低さと同時にある、プライドと承認欲求、自己顕示欲。ツナグの前だけでもそれらを捨てて素直でいられたら、自分の罪と罪悪感を吐き出すことができていたなら、少し楽になれたのかもしれないけど(それが身勝手な精算で死者への冒涜なのではというジレンマは置いておいて)、相手が同じ高校の知り合いでましてやその親友の好きな人なんて、正直に話せる訳もない。
必死に探して依頼できたと思ったツナグが、まさに亡くなった親友の想い人だったなんて、どんな巡り合わせだよと嵐に同情してしまう。
結果的に、嵐のささいな背伸びした気持ちが歩美を通じて御園に伝わって、意図しない形で傷つけて感情を逆撫ですることになった。
御園があの伝言を伝える選択をしたこと、どんな気持ちだったんだろう。嵐が正直に話して謝っていたら、伝えてなかった?腹を割って話したかったのかな。一見、あえて触れないことで楽しく親友として、その時間が綺麗なまま終わることを選んだようにも見えたけど、そうじゃなかった。私には、伝言を伝える選択に明確に嵐の心に影を落とそうという気持ちがある気がした。
本当に道が凍っていなかったのかどうかも分からない。実際に、間接的に嵐が事故の原因を作ったのかどうか。もし道が凍っていたなら嘘をつく必要があったのか、そこにどんな真意があるのか。
それは御園にしか分からないし、御園は嵐が蛇口を開けたままにしたことを知っていたのだから、どちらにせよ二人の間に大した違いはない気はするけれど。
伝言を聞いた嵐の悲痛な状況のままに、待ち人の心得に移った時は、なんて救いのない…と思ったけど、最後の章でその後のことが書いてあった。まだ嵐が前を向けたとは思えなかったけど、それでもどこか覚悟が決まったような、自分と向き合ったような、痛々しい様。文章なのにその顔が瞳が目に浮かぶようで、目を閉じたくなった。
本当にツナグがいて私たちに死者と会う機会があっても、綺麗な再会があるのと同じくらい、綺麗じゃない、夢物語なんかじゃない夜がきっとあるだろう。歩美の祖母が、会ったところで全員が成仏できるとは思えないと言っていたように。
死者が生者のためにいていいのか、生者がこれからを生きるために死者の存在や思いを都合良く解釈することは死者への冒涜ではないのか、という迷いと問いへのアンサーは、それでいいというもの。死者は生者のためにいていい。もし私が死んで、私の思いなどおかまいなしに残した人達が都合良く私を解釈していたら、と考えたけど、私もそれでいいなと思った。私の家族が友達が大事な人達が、それで少しでも前を向けるなら救われるならそうして欲しい。
そしていつか、生者としての地続きの私が、この小説に救われる日が来る気がしている。
Posted by ブクログ
「死」について考えさせられた。
自分だったら誰に会おう、、いつもそばにいる大切な人たちをより一層大事にしないとなぁと感じた。
また自分も悔いのないように毎日生きていかないとと感じた。
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「使者(ツナグ)」に依頼すれば、一生に一度だけ死者に会えるお話。4つのケース、いろんな死者との再会が描かれていたけれど、四者四様でした。
ファンの平瀬愛美に会わないと、彼女は死ぬつもりだと見抜いたアイドルの水城サヲリ、長男はただ寂しくて再会を望んでいるとお見通しな母。気持ちがすれ違ったまま別れることになった親友と、7年前に失踪した婚約相手。
一番印象に残ったのは交通事故で亡くなった御園奈津とその親友嵐美砂のケースです。最後に御園の一言でひっくり返されました…!嵐は御園を自分の引き立て役と思っている時点で、御園の親友とは言えないなと思ったけど、御園が嵐に一生の悔いを背負わせたのが痛快でした。
土谷功一と日向キラリのケースは土谷にビシッと叱る歩美がよかった。
歩美の両親の死の真相がわかって、歩美も最後救われたのがよかった。
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すごく歩美の洞察力には驚かされた。
何度かウルっとくるシーンがあった。
自分が死んだ後に自分に会いたがってくれる人は果たしているのか、自分はもし会えるなら誰に会いたいかをすごく考えさせられた。
いつ誰がどこで亡くなるかわからないから今を大事に生きたいと感じた。
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使者と書いてツナグと呼ばれる窓口に依頼すれば、生きている間に1度だけ、もう死んでしまった1人の人間に会うことが出来るという話。1人しか選べない中で誰を選ぶのか、会って何を話し何を得るのか。設定は面白く、どんな心の動きが描かれているのか期待して読み進めた。色んなパターンの依頼者が登場するが、依頼者たちの気持ちにあまり共感ができず、個人的には物足りなさを感じた。
自分なら誰を選ぶだろうと考えながら読んでしまう。
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死者と一度だけ会える。その機会をツナグ話。
7年ごしにわかったキラリの真実とか、歩美の両親の死がどうであったかのところは泣けた。
細かい設定に納得できないのか、なんとなく入り込めない部分はあった。
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辻村深月さんの『ツナグ』
本作の世界では、ある特殊な職業として、使者(ツナグ)が存在します。使者は、生きている人(依頼人)と亡くなった人(死者)との再会を、一生に一度だけ実現させることができます。死者の側にも、その面会を了承する必要があり、その機会を一度しか持てません。
物語は、複数の依頼人たちの物語を連作形式で描いていきます。
「アイドルの心得」
依頼人、平瀬愛美の視点で語られます。平瀬愛美は、かつて路上でアイドルのサヲリに救われた経験があり、心の支えとしていました。サヲリは突然死してしまい、愛美はその死後、心の拠り所を失っていました。依頼を受けた使者は、サヲリの了承を得て、愛美とサヲリの再会をセッティングします。サヲリが彼女に会う理由とは。
「長男の心得」
年老いた母親の余生を支えながら、息子・畠田靖彦は母にがん告知をしなかったために心の重荷を抱えていました。彼は母の死後、使者に母との対話を願い、母と面会します。靖彦が面会場所の部屋に入ると、母が迎えます。頬に触れられ、靖彦の目に涙がにじみます。頑固な中年男性の語る言葉とは。
「親友の心得」
嵐美砂と御園奈津は友人でした。同じ演劇部に所属し、美砂は1年生の頃から役をもらって演じてきた。美砂は素直な奈津を見下していました。3年生が抜けたときの劇にて、美砂の他に奈津も主役に立候補し、オーディションで奈津が選ばれました。次第に嫉妬心が高まっていく美砂は、奈津が怪我をすればいいと思うようになり、12月の帰り道、凍った路面で奈津がスリップすることを願って、坂道の水道をひねりました。翌朝、奈津は坂の途中で自転車ごと滑り落ち、下の道で車と衝突して亡くなりました。美砂が使者の奈津に伝えようとしたこととは。
「待ち人の心得」
9年前の春、功一は飲み会の帰り、強風にあおられた少女が看板にぶつかり、怪我したのに出くわし、助けます。日向キラリと名乗った少女の律儀さに功一は次第に好意を抱くようになり、やがて二人は同棲を始めます。出会って2年後、功一のプロポーズを受け入れたキラリは、バイトの友だちと旅行に行くと言って出かけたまま、帰ってきませんでした。その後もキラリの手がかりは全くつかめませんでした。キラリはいったいどこに行ったのか。
「使者の心得」
これまでの4章にて、依頼人と死者を繋いできた歩美自身の物語です。歩美の祖母は、入院したのを機に使者の仕事を歩美に継いでもらいたいと言い出し、歩美はそれを了承します。使者の役目と仕組み、そしてその苦しみとは。
とても読みやすい小説です。サクサク読めるので1日で読めてしまいます。
面白いのは「親友の心得」でしょうか。他の作品はみな心温まる話となっているのですが、この短編は主人公嵐の奈津に対する劣等感と、罪を隠そうとする浅ましさ、そして全てを見透かされる人間の惨めさなどが表現されています。ミステリ仕立てにもなっていて、辻村さんの本領発揮といったところなんじゃないでしょうか。
Posted by ブクログ
歩美くんの存在が急に身近に感じられ、でも消化不良な終わり方をした親友の心得が一番心に残った。
それから使者の心得。
両親の間に起きたことは、なるほど、そういうこと。
私がツナグに依頼するとしたら誰に会いたいかな〜
夫だろうな〜
Posted by ブクログ
死者に一度だけ会うことができる、そしてそれを媒介する使者(ツナグ)。大変読みやすく、一つひとつの話はまとまっていた。依頼者の死者への想いは、それぞれその関係から様々であり複雑でもあり、一つ一つのストーリーは感情移入するに十分ではある。ただ、突き抜けた運命的な必然性や、死者に会いたいと願う純粋にして強烈な情念までは感じない、十分の域を超えない死者と依頼者の関係が何パターンか続けらた感じがした。
また、伏線がいくつかあり、物語が最後につながっていくものの、読みながら展開が予想できたため、大きな驚きや胸踊る最後とはならなかった。また、作者の死についての語りが長くなる最後は、少し冷めてしまう感覚になった。