あらすじ
一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員……ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。
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おもしろい
こんなからくりがあったなんてなぁ。嵐と御園のお話は、嵐の御園に対する嫉妬の気持ちややり場のない怒りみたいなものは理解できるから読んでいてとってもしんどかった。御園が生きていた間は憎くて目障りで仕方なかっただろうし、いくら凍った水が死因ではなかったものの実際は御園に敵意も殺意も見透かされ、失ってから親友の存在をありありと感じ、そのうえ親友が主役を務めるはずだった劇もやり遂げた嵐はどんなに胸が張り裂けそうなほどつらかっただろう。
Posted by ブクログ
映画でチラッと見た程度のある作品だったので、しっかり原作を読もうと思い手に取りました。
死者と生者を合わせる窓口である使者は、現実的にはあり得ない設定だと思いました。しかし、作中で「都市と伝説的に語られているもの」と書かれており、私が生きる社会にもそういった類の話は聞くなーっと思った瞬間にはもう作品に引き込まれていました。
1人目のOLとアイドルの話で、自分が生きている中で何気なく人のために、出来る良いことは積極的に行おうという気持ちになり、
2人目の長男と母親の話では、素直に生きる事と、誰かに甘える大切さをしり、
3人目の親友2人の話では、腹を割って話せる間柄の関係がいかに貴重か。そして、やらない事で起きる後悔の大きさを学び、
4人目の婚約者の話で、一歩踏み出す勇気の大切さをしりました。
そして、物語の最終章では使者自身である歩美にフォーカスされます。母親と父親のどちらに会うかをずっと悩む本人でしたが、鏡の秘密と父母の関係を見つめ直した際に素晴らしい結論が出ました。
その結論を通して、おばあちゃんの気持ちにも整理がついたと思います。
読後に自分なら誰に会いたいかを想像しましたしたが、出てきませんでした。これは今の所、大切な人を失っていないからなのかなと思います。
この先の人生では悔いのないように、様々な事に前向きに挑戦していきたいです。
Posted by ブクログ
再読
そばにいる人と、それに関わる全ての物を大切にしたい。何気ない日常、すれ違いや喧嘩も全て宝物。そばに居るだけで幸せなことなんだと、特にキラリちゃんが失踪した話で感じた。
また嵐のように美園に会ったのに本当の気持ちを伝えられなくて終わってしまったという後悔が残る話も対照的でよかった。切ない。
自分だったら誰に会うか、誰に会いに来て欲しいと願うのか。
Posted by ブクログ
もしも、1人だけ死んだ人に会うことができるなら自分は誰に会うのだろうか、そう考えさせられる作品でした。身近な人や大切な人を亡くし、未練が残っている登場人物達。どうしても会いたいという一心から使者を探し出し、亡くなった人との再会を果たす…。再会することで前を向くことができる人もいれば、一生の後悔を引きずる人もいる。この作品を通して死者と会うことは必ずしも良いこととは限らないのだなと感じました。しかし、死者と繋がれたことで悩みや鬱屈した気分を変えるきっかけになったのではないだろうか。
とても感動するお話であり、過去に悔いがないように過ごしていきたいと自分を見つめ直す一冊でした。
Posted by ブクログ
「もしも人生で一度だけ、死んだ人に再会できるなら」 そんな誰もが抱く願いを叶える使者の、表と裏を描いた連作短編集。
淡々と仕事をこなしているように見える使者の少年の舞台裏を最終章で描写することで、一気に彼のキャラクターに血が通う。死者との再会がもたらすものは喜びや感動だけではなく、「よくあるいい話」にはまとまらないエピソードを通じて死ぬことの意味、死者を思うことの意味を考えさせられる。
そう、「死者は、残された生者のためにいるのだ」
Posted by ブクログ
感想書くため再読。
あれ?こんなやるせない話だったっけ?もっと前向きだったような気がするが、あれれ?
登場人物、みんな家が裕福なのに、それぞれ悩みを抱えてる。なんとかしようと死者と会おうとするために、それを叶えてくれる使者を頼るのが、なんかせつない。んで、それでハッピーになるかと思いきや、行動によっては悲しい結末に。
やっぱりきついのは「親友の心得」
特別に会えた亡くなった親友に対し、最後まで曝け出せなかった、信頼できなかった結果は、どこまでも残る深〜い後悔。キツすぎる。
でもこれは、この物語だけの話じゃなくて、普段の生活でもそうなんだよね。キチンとそうするべき時に言う、行動する。そうせずに「いつか」とか思ってると後悔するよね。教訓です。
死者も生者も会える人は1人だけ、という設定が厳しくも、その後を想像すると、逆に慈悲を感じる。ちゃんと踏ん切りをつけて、先に進む機会にしなさい、と言われてるような。
この辺がポジティブかな。
そのポジティブさのおかげか、使者の決まり事を知ったアユムくんが、使者を前向きに捉えることができてよかった。