あらすじ
一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員……ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。
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Posted by ブクログ
テレビ番組「あの本、読みました?」で特集されていた辻村深月さんの書籍マップに興味を持ち、読むことにしました。
辻村さんの作品は、『ツナグ』(実写映画化)、『かがみの孤城』(アニメ映画化)、『ドラえもん のび太の月面探査記』(脚本参加)を視聴済みで、今回が小説初挑戦となります。
物語の主人公は高校二年生の渋谷歩美。祖母が、死者との面談を希望する依頼人のための段取りをする’使者’の役割を担っています。その祖母が病で入院したことをきっかけに、歩美は’使者’の手伝いを始めることになります。
依頼者は、突然死した芸能人のファン、病死した母との面談を望む息子、事故死した女子高生の同級生、行方不明の婚約者を探す会社員など、多岐にわたります。
歩美は、依頼人と死者との面会を通して、'使者'としての役割を徐々に継承していきます。
生前、互いに伝えられなかった思いが交錯する場面に深く共感し、涙腺が緩みました。また、オチの部分も想像を超えており、読み応えのある良い作品だったと感じています。
おもしろい
こんなからくりがあったなんてなぁ。嵐と御園のお話は、嵐の御園に対する嫉妬の気持ちややり場のない怒りみたいなものは理解できるから読んでいてとってもしんどかった。御園が生きていた間は憎くて目障りで仕方なかっただろうし、いくら凍った水が死因ではなかったものの実際は御園に敵意も殺意も見透かされ、失ってから親友の存在をありありと感じ、そのうえ親友が主役を務めるはずだった劇もやり遂げた嵐はどんなに胸が張り裂けそうなほどつらかっただろう。
Posted by ブクログ
生と死を考えさせられた。
自分だったら、誰に会うか
生存者は死者のために生きる
個人的には親友の心得の、親友への羨ましさが憎しみに変わり、不幸を望んでしまう人間らしさを描く章が印象的だった。自分が親友を殺してしまったのではないかという罪悪感を晴らすために親友と会ったが、使者を通じて親友の発言に一気に心情の急変化があり、安堵、申し訳なさ、悔い、人としての弱さが止まらなかった。
死を新しいカタチで表現し、死を身近に感じさせつつ、生の儚さを感じた。
Posted by ブクログ
記憶力儚いこの私がいまだに公開当時観た映画の内容を覚えているので(貴重すぎ)
せっかくだから小説も読んでみようといきなり思い立って読んだ本。
どう考えても嵐美砂、性格悪いよな〜〜
映画では嵐が御園を常に見下してる・しもべかよ・なんでそもそも仲良いの?としか思えない関係になってるけど、
小説には2人がBL好きという共通点があった
&
嵐がやや疎ましい存在になってる(先輩から、御園が話すとみんな聞いちゃうから練習が止まっちゃうけど、嵐は勝手にしゃべってるキャラじゃんwみたいなあれ。)
というのが描かれていて腑に落ちた。
マウント取りがち女子とわかっていながらも、BLというコアな(?)共通の趣味があったから色々目を瞑っていたんだな、御園。
そんな優しい御園だけど、
コムデギャルソンのコートのくだりでプチっといった時は、そう!!!!最後くらいやり返さないとね!!!!!
と私はテンションがぶち上がりました。
親友ってね、上下関係があるものじゃないから。
御園は来世では対等な関係でいられる親友ができますように。
映画でも泣いた「待ち人の心得」はやっぱり良すぎた。
あの時の桐谷美玲が可愛すぎて最高
Posted by ブクログ
全部ハッピーエンドで終わるというありがちな展開ではなくて少し驚いた。
歩美の両親が仲良し夫婦でよかった。
自分が使者に頼むことができるとしても、誰に会うか悩んで決められなさそう。
Posted by ブクログ
初めて辻村深月さんの本を読んだのは中1のとき、2018年の本屋大賞がきっかけで手に取った、かがみの孤城。
まだ20歳だけど、今まで私の成長のそばにはいろんな本がいて、それだけで豊かな世界が自分の内側に形作られていることが、友達との思い出とは別ベクトルですごく幸せな経験だと思っている。読書は人生のいつ読むかで感じることが全く変わるところこそが醍醐味とよく言われるけれど、私も例に漏れず、小学生のころ、中学生のあの時、高校生のあのタイミングで、読めて良かったと思う本がいくつかある。20歳になった今もう一度読み返したいと思う本も、もう少し大人になってまた読みたいと思う本もまたあって、「かがみの孤城」は、そのうち全部に当てはまっている気がしている特別な本!
その時から辻村深月さんの本は大好き。
近年は専らガチガチのミステリーやイヤミスにハマっていたから少し遠ざかっていたけど、最近はなんだか、もっと爽やかな読後感の、でも心が暖かくなるような本が読みたい気分になって選んだのがこの本。やっぱり読んで良かった。素敵なお話。
亡くなった人間と生きている人間を1度だけ会わせることができるツナグ。一人の人間は、生きているうちと亡くなったあと、1度ずつしかその機会は使えない。ツナグに依頼して死者と会う4人とツナグの見習い少年の連作短編集。
私が1番心に残ったのはやっぱり親友の心得かなぁ。依頼者は高校生の女の子、会いたいのは最近事故で亡くなった親友。
親友なのだけど、友達として1番近い存在だからこそ自分との違いが目について、比較して、嫉妬とも羨望とも形容できない焦りのような虚栄心と、曖昧な、でも確かにある2人の間の小さな感情の歪み。でもこれが思春期の友情のリアルだろうなという、ある種の諦観のようで逆説的にポジティブな気持ちになった。それがリアルでも、思春期の友情は美しいしかけがえのない思い出であり続けるほどの眩しさがある。
劣等感と自己肯定感の低さと同時にある、プライドと承認欲求、自己顕示欲。ツナグの前だけでもそれらを捨てて素直でいられたら、自分の罪と罪悪感を吐き出すことができていたなら、少し楽になれたのかもしれないけど(それが身勝手な精算で死者への冒涜なのではというジレンマは置いておいて)、相手が同じ高校の知り合いでましてやその親友の好きな人なんて、正直に話せる訳もない。
必死に探して依頼できたと思ったツナグが、まさに亡くなった親友の想い人だったなんて、どんな巡り合わせだよと嵐に同情してしまう。
結果的に、嵐のささいな背伸びした気持ちが歩美を通じて御園に伝わって、意図しない形で傷つけて感情を逆撫ですることになった。
御園があの伝言を伝える選択をしたこと、どんな気持ちだったんだろう。嵐が正直に話して謝っていたら、伝えてなかった?腹を割って話したかったのかな。一見、あえて触れないことで楽しく親友として、その時間が綺麗なまま終わることを選んだようにも見えたけど、そうじゃなかった。私には、伝言を伝える選択に明確に嵐の心に影を落とそうという気持ちがある気がした。
本当に道が凍っていなかったのかどうかも分からない。実際に、間接的に嵐が事故の原因を作ったのかどうか。もし道が凍っていたなら嘘をつく必要があったのか、そこにどんな真意があるのか。
それは御園にしか分からないし、御園は嵐が蛇口を開けたままにしたことを知っていたのだから、どちらにせよ二人の間に大した違いはない気はするけれど。
伝言を聞いた嵐の悲痛な状況のままに、待ち人の心得に移った時は、なんて救いのない…と思ったけど、最後の章でその後のことが書いてあった。まだ嵐が前を向けたとは思えなかったけど、それでもどこか覚悟が決まったような、自分と向き合ったような、痛々しい様。文章なのにその顔が瞳が目に浮かぶようで、目を閉じたくなった。
本当にツナグがいて私たちに死者と会う機会があっても、綺麗な再会があるのと同じくらい、綺麗じゃない、夢物語なんかじゃない夜がきっとあるだろう。歩美の祖母が、会ったところで全員が成仏できるとは思えないと言っていたように。
死者が生者のためにいていいのか、生者がこれからを生きるために死者の存在や思いを都合良く解釈することは死者への冒涜ではないのか、という迷いと問いへのアンサーは、それでいいというもの。死者は生者のためにいていい。もし私が死んで、私の思いなどおかまいなしに残した人達が都合良く私を解釈していたら、と考えたけど、私もそれでいいなと思った。私の家族が友達が大事な人達が、それで少しでも前を向けるなら救われるならそうして欲しい。
そしていつか、生者としての地続きの私が、この小説に救われる日が来る気がしている。
Posted by ブクログ
初めの方の話は断片的だったが、それらが繋がっていったとき、良いなと思った。
個人的には嵐と御園の話、キラリの話が好きだった。
歩美の家庭に起こった過去の不幸は悲しかったが、その詳細を本人が知ることができて良かったなと思った。
Posted by ブクログ
自分だったらどうかと凄く考えた。
生死、これからの人生について考えさせられる。
作品中の、「親友の心得」ではゾワッとした…
怖かった…。
またいつか読み返したい。
【心に残った箇所】
p47
世の中が不公平なんて当たり前だよ。
みんなに平等に不公平。
フェアなんて誰にとっても存在しない。
p251
人間は、知らないことを知っているふりして語るのはたやすいくせに、知らないと認めることの方はなかなかできない。
Posted by ブクログ
辻村深月さんの『ツナグ』
本作の世界では、ある特殊な職業として、使者(ツナグ)が存在します。使者は、生きている人(依頼人)と亡くなった人(死者)との再会を、一生に一度だけ実現させることができます。死者の側にも、その面会を了承する必要があり、その機会を一度しか持てません。
物語は、複数の依頼人たちの物語を連作形式で描いていきます。
「アイドルの心得」
依頼人、平瀬愛美の視点で語られます。平瀬愛美は、かつて路上でアイドルのサヲリに救われた経験があり、心の支えとしていました。サヲリは突然死してしまい、愛美はその死後、心の拠り所を失っていました。依頼を受けた使者は、サヲリの了承を得て、愛美とサヲリの再会をセッティングします。サヲリが彼女に会う理由とは。
「長男の心得」
年老いた母親の余生を支えながら、息子・畠田靖彦は母にがん告知をしなかったために心の重荷を抱えていました。彼は母の死後、使者に母との対話を願い、母と面会します。靖彦が面会場所の部屋に入ると、母が迎えます。頬に触れられ、靖彦の目に涙がにじみます。頑固な中年男性の語る言葉とは。
「親友の心得」
嵐美砂と御園奈津は友人でした。同じ演劇部に所属し、美砂は1年生の頃から役をもらって演じてきた。美砂は素直な奈津を見下していました。3年生が抜けたときの劇にて、美砂の他に奈津も主役に立候補し、オーディションで奈津が選ばれました。次第に嫉妬心が高まっていく美砂は、奈津が怪我をすればいいと思うようになり、12月の帰り道、凍った路面で奈津がスリップすることを願って、坂道の水道をひねりました。翌朝、奈津は坂の途中で自転車ごと滑り落ち、下の道で車と衝突して亡くなりました。美砂が使者の奈津に伝えようとしたこととは。
「待ち人の心得」
9年前の春、功一は飲み会の帰り、強風にあおられた少女が看板にぶつかり、怪我したのに出くわし、助けます。日向キラリと名乗った少女の律儀さに功一は次第に好意を抱くようになり、やがて二人は同棲を始めます。出会って2年後、功一のプロポーズを受け入れたキラリは、バイトの友だちと旅行に行くと言って出かけたまま、帰ってきませんでした。その後もキラリの手がかりは全くつかめませんでした。キラリはいったいどこに行ったのか。
「使者の心得」
これまでの4章にて、依頼人と死者を繋いできた歩美自身の物語です。歩美の祖母は、入院したのを機に使者の仕事を歩美に継いでもらいたいと言い出し、歩美はそれを了承します。使者の役目と仕組み、そしてその苦しみとは。
とても読みやすい小説です。サクサク読めるので1日で読めてしまいます。
面白いのは「親友の心得」でしょうか。他の作品はみな心温まる話となっているのですが、この短編は主人公嵐の奈津に対する劣等感と、罪を隠そうとする浅ましさ、そして全てを見透かされる人間の惨めさなどが表現されています。ミステリ仕立てにもなっていて、辻村さんの本領発揮といったところなんじゃないでしょうか。