辻村深月のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
辻村深月は私が言語化できないモヤモヤした気持ちをいつも表現してくれるので、読んでいて気持ちが良いし、知らないストーリーを読んでいるはずなのに自分のことが分かったような気にさせてくれる。今回は子育てについて。
何かとラベルを貼られがちな女社会においても、「みんなそれぞれ頑張っていてそれぞれの正義や事情があるんだよ」ということを随所に感じた。辻村深月は多くの本で、こうした色んな立場の心情に触れることが多くとても優しさがいつも伝わってくるし、幼少期に結構苦労されてきた方なのかなと勝手に思っている(違ったらすみません)。
最後の秘密のない夫婦は、母と娘の微妙な関係についての言語化が素晴らしく唸った -
Posted by ブクログ
ネタバレもう10年も前のお中元に東京會舘のプティガトーを選んだことがあったと、思い出した。その時は東京會舘にこんな歴史があるとはつゆ知らず。
その歴史に関わった登場人物の多くは実在する。そして、年月を経た別の章にも登場する。ラストに向かって皆が集まってくる「愛と哀しみのボレロ」のような情景が良かった。
灯火管制の下で結婚式をした静子さんがひ孫さんの結婚式で美容室のスタッフと再会する。アメリカ軍の施設になっていた時にバーでコインをもらっていた男の子が社長になる。中学生だった小椋が世話になったウェイターが支配人になって、直木賞を穫った小椋を迎えてくれる。その支配人は若い頃、独りで金婚式を迎えに来た婦人を心 -
Posted by ブクログ
大正から昭和前半まで、空襲や震災、GHQの接収など、激動の時代を経験してきた東京會舘が紡ぐ物語。
全体的に東京會舘の荘厳でクラシカルな雰囲気を感じられて、スーッと背筋が伸びるような厳粛な気持ちになった。
登場人物の東京會舘への熱い想いがビンビンに伝わってきて、フィクションであることが信じられない。。
GHQに接収されてからも、バーテンダーとして米軍に真摯に接客を続けた人や、大戦中に結婚式を行う花嫁に、安心して式を挙げられるよう気遣い、職務を全うする人。
当時の東京會舘で働く人の気概と静かなる熱い思いが直球に胸に刺さって、何度も目頭が熱くなった。
短編集だけど登場人物が少しずつ繋がっていて -
Posted by ブクログ
鮮やか!
読み進むうち、凝った作りになってるな〜と感嘆する。手が止まらなかった。
何重にも「なぜ?」の箱があって、次から次に謎が出てくる。解ける時はそうだったのか!の連続だ。
絶望的に話が通じない人、伝わらない人、理解できない人をしっかり描いていて、この苦いものを噛み締めた感じ、辻村深月節といえるのでは。
毒親という言葉を使わずに、あらゆるどうしようもない親や大人の姿を見せてくれ、この切り込み方は辻村さんの真骨頂だよなぁと思う。
問題のある子どもなんていないんだよ。
問題があるのはすべて大人。子どもを生きづらくさせてる元凶は大人。
責任も取れないバカな大人は昔からいたけれど増えこそすれ減 -
Posted by ブクログ
辻村さんの小説を読むと、明日も生きていこうといつも思います。この本の帯には「明日、起きるのが楽しみ。」まさにその通りです。
希望とか夢とか、明日を彩る言葉はいろいろありますが、著者から感じるのは信頼かな。なんとなく明日を信じることができるようになります。
どのエッセーも最後の一文、いや、一段落かな、この最後を読んだとき、なぜか明日を信じられるようになっている自分がいます。
友だちとの別れが暗示されていたり、再会があったり、自分の憧れが書かれていたり、それが、全部心を打ちます。
信頼かと思ったのだけれど、もっと多く書かれているのは感謝かな。いろいろな形で感謝が書かれているように思います。感謝の根