吉川英治のレビュー一覧
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「聞説、曹丞相は、文を読んでは、孔孟の道も明らかにし得ず、武を以ては、孫呉の域にいたらず、要するに、文武のどちらも中途半端で、ただ取柄は、覇道強権を徹底的にやりきる信念だけであると」
自分の認識もこれに近い。
だから曹操はダメなのだ、ということではなく、だからこそ曹操は偉大なのだ、という意味で。
曹操の偉大さを讃えんがために文武の才を称揚するパターンが多いけど、ちがうと思うんだよね。
文武の才がとやかくじゃなく、何よりもその覇道を貫こうとする信念こそが何よりも彼の強みなんじゃないのかなあ。
いたずらに文武の才を褒めそやすのは大事なところを損なってる気がしてならない。 -
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三国志のいいとこはみんな負けるとこだね、やっぱ。
致命傷を負わなければ、場合によっては致命傷に思えるくらいの傷を負ったとしても、生きてさえいればなんとかできるっつーね。
失敗しない人間なんていない。いるとしたらそいつは何にもしてないだけ。だからこそ失敗しない英雄譚ではなく、失敗をする英雄譚が意味を持つ。英雄とて失敗する。しかし彼らは挫けない。失敗から学び、失敗を失敗のままにせず、逆に大きな成功の礎とする。
孔明無双というか、チートオリ主としての孔明に思えてくる。モノローグのない逆行物みたいなね。三国志の、演義の、更に小説だから二次創作的な誇張はまあしょうがないんだろうけど、曹操や周瑜がもは -
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「はじめは呂布と親しみ、のち曹操に拠って、近頃また、袁紹に拠って、みな裏切っています」
蔡瑁が玄徳のことをそのように評する下りがあるが、読んでいて、玄徳が呂布を評した場面を思い出す。
呂布を生かすか殺すか悩んでいる曹操に、こいつは本当裏切ってばっかいますから殺した方がいいっすよ、っつったら呂布に、お前にだけは言われたくないわお前が一番信用できん男やないかい、と言われたところ。
呂布が悪逆非道だったから負けたわけでも玄徳が聖人君子だったから勝ったわけでもなく、呂布は負けたから悪逆非道となり玄徳は勝ったから聖人君子になったんだろうなあとか思う。 -
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ちょっと間が空いて、三国志もようやく半分。
敗戦により散り散りになっても、主君の生存を信じ、再会を信じて、敵国に召抱えられていても義を守り通す関羽。ここまでの信頼関係を生涯に持てた人間って、他に望むものがあるんだろうか。金銀財宝なんかより、ものすごい財産だよなぁと思います。
どんなに叩きのめされても、財産は奪えても絆は奪うことはできない。やっぱり、どう考えても一番大事なものは人間関係の中にこそあるべきで、それを守る為に、弱い立場にいる人を守る為に立てる人は立つ。そういう思いはみんなに伝わるし、だからこそ応援してもらえる
力になってもらえるもんだと思います。
どんだけ偉い人に従っていようが、責 -
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続いてもう1巻。
孔明すごい!「最小の労力で最大の効果を」ってのが自分のここ最近のテーマなんだけど、まさにこれを地でいく孔明はすごい才能の持ち主だったんだろな、と思います。
ただ、頭がいいのはもちろん、相手に合わせて振る舞いを変化させることができる、適した形でアウトプットできることができて初めてあの明晰な頭脳は活きてくるんじゃないかな、とも思いました。文官には論破することで、武官には詳しい説明をせず主の威光と結果で。納得が得られなくても盲目的に説得ばっかりしないとこが、部分的な最善よりも大局的な最善を見ていて、なるほどなぁと思いました。
やっぱり、常に大局を意識した仕事ができる人ってなかな -
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いやー「沈まぬ太陽」以来の長編小説、長かったけど、おもしろかったです。
三国志。
三国志自体が登場人物が星の数程いて、それぞれにドラマがあって泥臭いところから煌びやかなところまで幅が広くておもしろいってのもそうなんだけど、俺は読み進めていく中で、このおもしろさは著者である吉川英治の文才によるところも大きいんだろなって思いました。
すごいなー、これだけの大作を書き上げることって、大仕事だ。
でも、この三国志を読んでる3ヶ月間で、いろいろ新しい価値観に触れることができたのがなによりの収穫でした。
個人と組織との考え方の違いを、自分の仕事に照らし合わせながら実感として得られたところ。まぁ答