吉川英治のレビュー一覧
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本巻の主人公は源義仲。木曽から挙兵し、平家一門との幾つかの戦いを経て、従兄である源頼朝とは嫡男を人質に出してまでも和睦し、いよいよ入洛。その後の洛中での振る舞いが非常に読んでいて面白い。礼儀作法を知らぬ田舎武者であるから何をするにつけしっくりこず、酒食に溺れて配下の統制も取れず、低い官位を授かりそうになって行家に止められ、後白河に朝日将軍の名を貰うも源頼朝と両天秤にかけられ、しまいには自分を頼って来た行家をも疑い出す始末…。悲運の将というのがぴったりである。その点、鎌倉を出ずに弟達を西上させた頼朝はクレバーであると言えるだろう。
さて、悲運の将には女性が付き物なのがこの種の小説のならいであるが -
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前巻に引き続き、主人公は木曾義仲。義仲はリーダーシップという面では実に反面教師である。決断が遅く、成り行き任せであり、人心掌握にも長けていない。後白河院対策は常に後手後手に回り翻弄されていた。そのくせ、女性関係はお盛んであり、巴、葵、山吹に加え、摂関家の藤原基房娘:冬姫をもその端に加えてしまう。都落ちの際には代わる代わるその女性達が義仲の前に登場し、それぞれ永劫の別れを告げる。いわば、悲劇のヒーローと言ったところか。
次代の悲劇のヒーローは義仲の従弟である義経。念願の都入りを果たし、次巻ではいよいよ一ノ谷を皮切りに源平合戦が始まる。義経は鎌倉出発の際に「難しさは、敵との合戦よりも、内にある」と -
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一ノ谷の戦いとその後をじっくりと描く。いや、戦いよりもその戦前と戦後の人間模様に重点を置いているといっても過言ではない。
前半では、平敦盛が主役。恋人逢いたさに陣抜けして京に戻ったところを義経一行に発見され、敵の公達にもかかわらず、丁重に送り届けられたくだりはほのぼのして良い。また、陣にカムバックした後の兄弟、親族とのやりとりは大家族だけに楽しい人間模様が味わえた。そして、熊谷直実との一騎打ちにより討たれる…。熊谷とのやりとりは平家物語の名場面であるが、敦盛も熊谷もそれ以前から登場しており、伏線の張り方は充分である。
後半の主役は同じく平家の公達である平重衡。東大寺や興福寺を焼失させた大悪人 -
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さて、本巻では、屋島の戦いから壇ノ浦の戦い直前までを描く。人物模様が好きな私としては、あまり戦記を読むのが得意でなく、幾分か読みにくさを感じた。それでも、那須与一の扇の的や義経の弓流しなど名場面も多く、楽しむことも出来た。
扇の的のくだりで登場する女性について、本作品では玉虫としているが、玉虫といえば、私が小学4年生の頃に見たNHKドラマ「武蔵坊弁慶」では弁慶の恋人役である。なるほど、あのドラマでの脚色だったのだ。もっとも、そのドラマでは扇の的で登場したのは、弁慶と玉虫の間にできた一人娘:小玉虫であったが。
また、その扇の的で玉虫と一緒に登場する老武者:十郎兵衛家員が、与一に射殺されるとい