あらすじ
平家追討の院宣ならびに朝日将軍の称号を賜わり、生涯最良の日々を味わう義仲。だが、彼の得意満面の笑みも次第に歪みはじめる。牛車の乗りかたひとつ知らない田舎そだちだから、殿上づきあいは苦手だ。相手は老獪な後白河法皇。義仲の凋落は水島合戦から始まった。反撃の平家、背後から襲いかかる鎌倉勢、加えて院方――と義仲は四面楚歌。さすがの一世の風雲児も、流星の如く消えてゆく。
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上洛を果たした義仲だが、遂に倒れる。乱世の英雄の彼も、平時に力を発揮する事ができず、院の掌で踊らされ、冬姫への執着から北陸へ避難する機を逸した。6万の兵も統率された軍隊ではなく、食い扶持を得る為に従っている自然軍だった為、木曾側の情勢が悪くなるにつれ離反を招いた。彼の不幸は、急激に力をつけすぎた事なのかも知れない。その分、着実に勢力をつける頼朝の賢慮さが透けて見える。
義仲を取り巻く女性事情も哀れさを増長される。巴・葵は争乱に身を投じ、山吹は羅生門から這い出て一緒に死なんとし、冬姫は運命に反抗し義仲に殉じた。彼女らの健気さが諸行無常の響きを感じさせ、義仲のカリスマ性を引き立てていると感じた。
後半は義経。頼朝配下の武将と義経直属の部下の間に生じる微妙な対立や、吉次始めとする奥州藤原家の誘いをいなしながら、兄頼朝に報いようとする様に、彼の近親者への並々ならぬ愛情を感じると共に、義経最期の結末を知っているからこそ哀れさを覚えた。
次巻は有名な一ノ谷の合戦に向かいそうで、期待である。
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朝日将軍木曽義仲と言うと、長野県歌の「信濃の国」にも登場しますが、平家物陰を読むまで、人物の詳細を知りませんでした。
義仲に、もし政治の才覚があったなら、公卿にひとりでも味方がいたら、白河上皇に翻弄されることもなかったかもしれないし、木曽政権が誕生していたかもしれない。そして、冬姫のあどけなさと最後が切ない。
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木曾義仲の人生で一番謳歌できた今日での暮らし。
驕れるものは久しからず、身の回りからほころび生じ始める、京に迫り来る同族の鎌倉軍。後白河法皇の二枚舌に翻弄されながらも、源範頼、義経軍を迎え撃つが元より負け戦。そして最期の時を迎える。大津市内の中心にほぼ近いところに義仲寺がある。偲んで訪れて見ようと思う。物語はいよいよ、一ノ谷前夜。義経の活躍が本格始動。
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木曾義仲の終焉がメインだが、終盤は一ノ谷へという内容。
義仲は所謂「バカ正直」な人物として描かれ、そこを後白河法皇や公卿に付け込まれ、最後は義経に滅ぼされる。時勢を読めというメッセージだろう。
一方、義経は義仲と比較して思慮のある人物として描かれているが、それでも思い立ったらきかない頑固な側面は幼少期から変わっていない。
終盤、後に頼朝との対立の一因となる一連の梶原景時とのことが始まっている。
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前巻に引き続き、主人公は木曾義仲。義仲はリーダーシップという面では実に反面教師である。決断が遅く、成り行き任せであり、人心掌握にも長けていない。後白河院対策は常に後手後手に回り翻弄されていた。そのくせ、女性関係はお盛んであり、巴、葵、山吹に加え、摂関家の藤原基房娘:冬姫をもその端に加えてしまう。都落ちの際には代わる代わるその女性達が義仲の前に登場し、それぞれ永劫の別れを告げる。いわば、悲劇のヒーローと言ったところか。
次代の悲劇のヒーローは義仲の従弟である義経。念願の都入りを果たし、次巻ではいよいよ一ノ谷を皮切りに源平合戦が始まる。義経は鎌倉出発の際に「難しさは、敵との合戦よりも、内にある」と予測している。義経麾下には義経子飼いの士と頼朝直属の臣という二種類がおり、前者と後者、義経自身と後者という微妙な人間関係を背負っての出陣であるからだ。また、名目上の総大将は凡庸な兄:範頼である。こうした不安要素をたっぷり含みながら義経の活躍が始まる。次巻以降も目が離せない。