あらすじ
鹿ヶ谷事件は“驕(おご)る平家”への警鐘であったが、清盛にはどれ程の自覚があったろうか。高倉天皇の中宮(ちゅうぐう)徳子は、玉のような御子を産み、一門をあげて余慶にひたっていた。――だが、反平家の動きは、いまや野火の如く六波羅の屋形を包んでいた。その総帥はもちろん、清盛の圧力に屈せぬ後白河法皇、関白基房などの院方。そして意外と思われる人に、76歳の源三位頼政がいた。
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私は六巻が一番好きである。平家物語の番外編とも云える南海の孤島・鬼界ヶ島に流された俊寛らの現地暮らしがはじまる。俊寛の物語は能や人形浄瑠璃でも題材になっており、よく知られている。人の幸福とは何かを考えさせられる不思議な物語だ。
そして義経。平泉から叔父・新宮十郎行家を頼り、那智に渡る。そこでひとりの老婆・さめと出会う。静かな暮らしは続かず、平家方の探索の手を逃れるため、都を目指す。さめが連れていってほしいと泣きつき、義経がそれを許すところが印象に残る。本当に優しい青年だよ、義経は。応援したくなるでしょ、これは。旅の中途で江ノ三郎を供に加え、都の仁王小路の一軒家で義経、鎌田正近、さめ、三郎の四人暮らしが始まる。さめと江ノ三郎がいいコンビで、何ともほのぼのとさせてくれる。やがて行家と堅田で再会するが、そこから義経の危機が訪れる。それにしても時忠は大物だなぁ。平家にとって良かったのかどうかは分からないけどね。そして本巻で一番の見せ場は無論五条大橋での義経と弁慶の出会いである。そこからの下りは涙なくしては語れない。
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本巻は、本作品が歴史書ではなく、物語であるということを強く意識した巻であった。吉川英治の遊び心、読者を楽しませようというエンターテイナーの気質がよくあらわれていた。
その特徴の一つが、伏線を張った人物との再会や再登場。
奥州にいるとばっかり思っていた義経が、急に熊野に現れたと思ったら、月尊が鎌田正近だったり、奴婢の媼が弁慶の母親だったり、弁慶の姉が麻鳥の妻である蓬だったり(後々、弟の弁慶や母親と再会させて読者をくすぐるのだろう)、奥州行きに出会った男が伊勢三郎だったり、法勝寺の蓮花騒ぎの曲者で捕らえてみたら源有綱との運命の再会だったり…。こと、義経を取り囲む登場人物に多い。生まれ持った人的魅力により人が自然に集まってくるという義経を描くのにはこうした方法が最適なのだろう。
面白いのが、弁慶との出会い。作品によって弁慶の登場の仕方は多々あれど、本作品では、義経が平時忠邸に出頭し、その帰り道に時忠の命により弁慶に襲わせるという方法で出逢わせている。平家の公達からの刀狩りというアングルは一切登場しない。そして逃げた義経はわざと弁慶に追わせ、母親と20数年ぶりの再会をさせる、といいう話を展開する。弁慶は、義経の強さに惚れたのではなく、母親への再会の橋渡しをしてくれた気持ちに感謝して主従の関係を持つことになる。まあ、弁慶は史実では存在の可否さえも疑われる人物であるため、作者のやり方次第でどうにでも料理できるのだろう。
清盛は相変わらずほとんど登場しない。かわりに、義弟である時忠の方が頻繁に出てくる。時忠は「平家にあらずんば人にあらず」で有名な人物であるが、本作品では第1巻の少年時代から登場し、なかなか味のあるキャラクターとして描かれている。大河ドラマでは森田剛が演ずるが、どう好演してくれるか、楽しみである。
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平清盛62歳ぐらいかな?
重盛死す。42歳…熊野参拝で自身の命を縮める祈祷。
徳子、後の建礼門院が出産。後の安徳天皇。これで清盛は天皇家の外戚となる。一方、皇室、以仁王と源頼政が平氏を撃つべく院宣を発布画策開始。頼政といえば、平治の乱で、清盛と一緒に戦った源氏!彼の人生を賭けた大勝負が始まろうとしている。不穏な空気の都の治安維持を任されている、平時忠は京に上がってきた義経を謀殺を試みるため、荒法師弁慶にその使命を…そして、かの有名な五条大橋のエピソードに繋がる。この時忠の屋敷で義経は未来の奥さんである夕花と白拍子、静御前と出会う。
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義経は熊野にて新宮十郎に出会い、草の実党以外にも源氏再興を企てる者達の存在を知る。ひょんな事からさめと出会い、彼女の境遇に母親を重ね、それが後に身を助ける事になった。弁慶とも邂逅し、朝廷とも繋がる等着実に源氏再興の下地が出来つつある。
一方平氏は、嫡男の重盛を失い、清盛の後継者がいよいよ居なくなる。苦しい黎明期を知る同士は時忠含め数える程であり、後は飛ぶ鳥を落とす勢いの平氏しか知らない若輩者のみ。彼らは自らの栄華を永遠のものと信じて止まず、「平氏にあらずんば人に在らず」と横柄な態度を取るばかり。未だに清盛が出張る所を見ても、人材不足が甚だしいと感じた。
そろそろ頼朝に動きがあるのか。次巻に期待。
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義経の堅田での出来事、以仁王の挙兵への企てなどが話の中心だが、終盤は世に言う「治承三年の政変」。
この間の主要人物は源義経、平時忠、武蔵坊弁慶だろう。
有名な「五条大橋」は、ちょっと違ったかたちで書かれている。
歴史小説はしばしばいろいろなことを教えてくれるし、気づかされる。例えば、義経と西住法師とのやりとり。ここを読んで、自分も所詮は「内容の貧しい人間」に過ぎないのでないかと思い知らされた。
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清盛の嫡男の重盛の死や後白川上皇との対立が露わになり、栄える平家にも暗雲の兆しが現れ始めます。
個人的には弁慶と義経の対決は待ってましたという思いで読み進めました。
参謀術に優れた時忠の客観的ではなく主観的な人間性を見て、彼に心を寄せて続編も読み進めてしまいそうです。
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2009年8月21日。
いよいよ平家の没落の兆しが見えてきました。
このお話だと、平家って結構いい人が多かった?
敵に対しては、当事にしては寛容だし、人間味もある人が多い。
それに比べると源氏側って洗練されてないよね。
この巻も義経を中心にお話が進んでます。