あらすじ
保元の乱前夜、爛れた世の病巣は、意外に深かった。院政という摩訶不思議な機構の上に、閏閥の複雑、堂上家の摂関争いの熾烈、その他もろもろの情勢が絡みあって、一時にウミを噴き出す。――かくて保元の乱は勃発したが、「皇室と皇室が戦い、叔父と甥が戦い、文字どおり骨肉相食(あいは)むの惨を演じた悪夢の一戦」であった。その戦後処理も異常をきわめ、禍根は尾をひいた。
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保元の乱に始まり平治の乱に終わる、乱世極まる巻。第一巻にも言える事だが、盛者必衰の理が多分に表されていたと感じる。
例えば信西入道。保元の乱で天敵頼長が倒れ、窓際族から一躍出世を果たすも、信頼の謀反により倒れる。その信頼も、過激なやり方に反発を抱かれ、刎頸の交わりを結んだ者たちに裏切られた事で、今や朝敵である。鳥羽上皇や頼長に振り回され、最後は京を呪う悪霊と化した崇徳天皇などに至っては、憐れというほか無い。乱世の中にあって、世を治める事の難しさを感じた。
また、保元の乱とは違い、平治の乱は平氏と源氏の争いという側面が強く、これを持って公家社会から武家社会へと移行した様に感じた。とは言え、義平と重盛の一騎打ちの様に、「武士の誉れ」という貴族的側面は残っており、近代の戦争の様な大量殺戮的側面は見られていない事も、平安時代という時代背景からなのだろう。
面白かった。次巻に期待。
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平家物語ってこんなに面白かったんだ!
2巻は保元の乱直前まで。源氏擁護の頼長と清盛擁護の信西の対立、近衛天皇への入内を巡る藤原忠通と頼長の対立、崇徳上皇と内裏の対立に伴う平清盛と叔父忠正の対立、源義朝と父為義の対立・・・政争の裏にはそこやかしこに身内が別れてのそれぞれの想いがあって目が離せない。
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ひとこと。無茶苦茶面白い。元々、平安末期は戦国時代と並んで好きな時代である。小学校5年生頃にハマった時代。本書を読むことで、当時の記憶がありありと蘇ってきた。
本巻は保元の乱から平治の乱まで。この二つの戦いも相当面白い。軍事的な面白さではない。人間同士のせめぎ合い、機微が絶妙なのだ。改めて、現在の大河ドラマでのキャストは誰もがハマり役であると感じる。信西の高慢ちきなキャラは阿部サダヲがぴったりだし(おそらく、あのキャラのまま疎まれて平治の乱に突入していくだろう)、清盛の叔父:忠正は嫌味な演技抜群の豊原功補において他はない。
ここ最近は歴史小説と言えば司馬遼太郎作品ばかり読み漁っていたが、司馬氏の一世代上の吉川英治氏もまた素晴らしい。
しかし、本作品は全16巻ある中でまだ2巻である。1/8が終了しただけであり、まだあと14巻もある。こんなに早く、保元の乱が終わり、平治の乱が始まっても大丈夫なのだろうかと一読者の私が心配になってしまう。清盛誕生(1118年)から平治の乱勃発(1159年)までの41年を2巻で費やしてしまい、清盛逝去(1181年)まであと22年しかない。残り14巻をどうやって展開させていくのだろうか。おそらく、源義経が活躍する源平合戦にページを割くのだろうが…。
そんな杞憂を抱きながら、次巻も読み進めていこう。
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源氏と平氏の争い合いの火種になるエピソードも後半になってあった。後の歴史に残るような出来事や謀反も盛り込まれていた。まだまだ物語は序盤に過ぎないと思いました。
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保元の乱が勃発。朝廷と院、貴族と貴族の争い武家は源平混合して各々の陣営につく。清盛はおそらく35歳〜40歳と推定。
清盛の兄弟を中心に平家一門がそれぞれ世の中に出て行く。
そして保元の乱後、重用される平家、冷遇される源氏。これは次の乱の発端となる
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保元の乱から平治の乱にかけての話になり、いよいよ面白くなってきました!
天皇家の悲哀が特に切ない。文章に天皇家に対する敬意も感じられて、その時代の人間の感覚に近づける気がする。
崇徳上皇と麻鳥の関係に権力争いに翻弄される一番の被害者である天皇家の悲しさが表現されていたと感じました。
一方の公家は滑稽なまでにおろか。
もう公家の時代ではないというのがひしひしと伝わる。
武家の棟梁としての清盛と義朝の対比も面白い。
端整な重盛VS悪源太義平の嫡男対決もわくわくする。
ついに13歳の頼朝も登場するし、長期戦でのんびり読むつもりだったけど、早く続きが読みたいです。
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保元の乱から平治の乱までを描いています。
貴族と武士の力関係が逆転するきっかけとなった時代の節目だけに興味深い。それ以上に負けた側と勝った側の人間模様も考えてしまいますね。
敗者の崇徳天皇の讃岐での悲哀。奢り高ぶる信西と権力の中枢から滑り落ちる藤原頼道。その信西も源氏により殺されてしまう。それも文覚のこの一言に集約されていると思う。
「人間にとって何よりの毒は権力だよ。」
親兄弟でも、反目しあい、殺しあう時代。「今日の友は明日の敵」の世界。後に頼朝が人間不信になってしまうのも分かる気がします。しかし、大河ドラマの世界と言うのは一度、小説などを読んでから見ないと歴史認識が誤りますね。
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保元の乱が書かれてある。家族や親戚同士の戦いが泥くさかった。三国志も平安末期も、実質的な権力者と形式的な権力者の構図が似ている。すなわち、天皇か武人かということで、天皇とかお上の力を利用して、武人は戦いの大義名分を作って権力を牛耳っている。書かれた時代が戦争時期のため、天皇の表現が非常に丁寧だ。作者である吉川英治の、権力についての洞察がさらりと書かれてあった。曰く、「人を狂わせるものだ」と。
しかしまあ読んでいて、清盛始め、「~盛」がつく人物が多かったり、「~頼」とか似たような名前ばかりが出てきて、非常に頭に入りづらい。だから大河ドラマを見て、映像でイメージをつけてから読むことにする(^.^)
すると同時期の「義経」も興味が出てきた。それも観ようと思う。
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源氏と平氏の対立の始まりが描かれている。保元の乱、平治の乱といえば、今まで教科書で見た程度の知識だったが、読んで途端に色づいた。
一部の権力争いが、義理や野望によって血縁の絆を裂くほどの大きな乱になった。特に源家の分裂、為義の最期は、日本で永く生きていた武士の美徳とその代償を象徴しているようで、非常に印象的だった。
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白河・鳥羽と続いた朝廷と院という歪んだ二重政治も鳥羽の崩御と共に終焉どころか貴族政治の礎をも崩していく。
そして、後に源平を両天秤にかける稀代の政治家となる後白河天皇の即位。
そんな時代の変革がジリジリと近付いている保元の乱前夜が舞台の第二巻!
父、忠盛の死を受けて平家の棟梁として成長した清盛はどうこの時代の渦に身を投じていくのか!?
徐々に緊迫感が増していく作者の筆力に、時間を忘れて読みふけってしまいます。
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保元の乱と平治の乱の巻。
保元の乱は、血を分けたもの同士が敵味方に別れ戦うという、悲劇的な乱。
吉川英治も、その本文の中で「まことに、保元の乱を書くことは苦しい。」
と述べている。崇徳上皇がとても無念。
吉川英治の創作らしい、阿部麻鳥の存在で、やや救いを感じる。
叔父を自ら斬らなければならなかった清盛も悲劇だけど、
最後までどちらにつくか迷っていた父を斬らなくてはならなかった、
義朝は特に悲劇だった。
平治の乱では、熊野詣から引き返す際の家貞の用意周到さに心躍った。
源氏の人々がこれからどうなるのか、読み進めるのが楽しみ。
保元の乱、平治の乱をこの小説で、
武士の武力に寄り添って政変が起こる様子を読んで、
これまでの平安の歴史からがらりと変わったなという感じがした。