吉川英治のレビュー一覧
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一ノ谷の戦いとその後をじっくりと描く。いや、戦いよりもその戦前と戦後の人間模様に重点を置いているといっても過言ではない。
前半では、平敦盛が主役。恋人逢いたさに陣抜けして京に戻ったところを義経一行に発見され、敵の公達にもかかわらず、丁重に送り届けられたくだりはほのぼのして良い。また、陣にカムバックした後の兄弟、親族とのやりとりは大家族だけに楽しい人間模様が味わえた。そして、熊谷直実との一騎打ちにより討たれる…。熊谷とのやりとりは平家物語の名場面であるが、敦盛も熊谷もそれ以前から登場しており、伏線の張り方は充分である。
後半の主役は同じく平家の公達である平重衡。東大寺や興福寺を焼失させた大悪人 -
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さて、本巻では、屋島の戦いから壇ノ浦の戦い直前までを描く。人物模様が好きな私としては、あまり戦記を読むのが得意でなく、幾分か読みにくさを感じた。それでも、那須与一の扇の的や義経の弓流しなど名場面も多く、楽しむことも出来た。
扇の的のくだりで登場する女性について、本作品では玉虫としているが、玉虫といえば、私が小学4年生の頃に見たNHKドラマ「武蔵坊弁慶」では弁慶の恋人役である。なるほど、あのドラマでの脚色だったのだ。もっとも、そのドラマでは扇の的で登場したのは、弁慶と玉虫の間にできた一人娘:小玉虫であったが。
また、その扇の的で玉虫と一緒に登場する老武者:十郎兵衛家員が、与一に射殺されるとい -
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吉川三国志の第5巻。
劉備軍の民衆を引き連れ魏軍から逃走するところから、周瑜の死のあたりまで。
遂に三国志のターニングポイントともいうべき赤壁の戦いが描かれることになるが、ここのくだりはやっぱり面白い。
ただ、漁夫の利を得る玄徳&孔明は結構感じが悪い。孔明にとって最大の見どころの一つだが、この巻での印象は「天下の大才にしてしたたかな国泥棒」。
孔明の暗殺を度々計る周瑜を悪者と見る読者も多いと思うが、私は辛酸を舐め続ける彼の方に好感をもてた。
また、狡猾な諸葛亮に対して呉の重臣魯粛の真っ直ぐないい人ぶりは凄まじい。いい人というか人がいい。三国志演義の「king of お人よし」だ。孫 -
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吉川三国志の第2巻。
貂蝉による美女連環の計から宛城の戦いでの典韋の最後あたりまで。
私は呂布という人物が大好きだ。武人としてはもとより人間としても大変魅力を感じている。一般的には2度の義父殺しをはじめとする裏切り行為から「悪人」としてのイメージが先行する男だが、董卓のように残虐でも、曹操のように冷酷でも、張飛のように粗暴すぎもしない。彼は誰よりも純粋すぎただけだ。その証拠に彼は人の言をよく聞く。そして、乗せられ騙され利用され続けた。特に愛した女性貂蝉に弄ばれるくだりは悲壮過ぎて同情の気持ちすら覚える。
三国志中、最も強く、最も人間的な切なさを感じさせる武将呂布。そんな彼が中心に描かれる第