吉川英治のレビュー一覧
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4巻は、さらに武蔵の心と技が磨かれていく。
これまで愚直に、強くなることだけを考えて修行を重ねた武蔵だが本阿弥光悦や吉野太夫との出会いの中で、本当の強さとは、心を張り詰めて自身に厳しくあるだけではなく、適度に緩みを持たせるしなやかさを持つことだと悟る。
「生きている間の花は咲かせても、死してから後まで、この牡丹の薪ぐらいな真価を持っている人間がどれほどありましょうか。」(吉野太夫)
物語は吉岡一門との決闘に向かって、徐々に緊迫感を増していく。武蔵は死を受け入れて戦う決意を固めるが、その中に「生きたい」と願う心を知る。
生命を愛するということは、命の終わり方に意義をもたせることだと戦う覚悟を決 -
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2巻では、武蔵の挫折と心身の成長、沢山の出会いと別れが描かれる。
城太郎という弟子との出会い、吉岡門下との戦い、何より石舟斎に出会わずして挫折する場面は印象的。また、青年らしく、お通に心惹かれる自分を戒める姿に人間らしさを感じる。
功名心に燃える武蔵が、剣宗石舟斎の門の前で詩を読んだ時、
「届かない!自分などには届かない人物だ」と感じる場面がある。
それは武蔵にとって挫折であり転換点でもある。剣の技ではなく、剣の真理を求める厳しい修行の始まりだったのだと思う。
武蔵は自身の未熟さを克服するため、「今から小理屈は早い、剣は理屈じゃない、人生も論議じゃない、やることだ、実践だ」と山沢に駆けて -
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ちげぐさの巻
清盛(平太)の20歳頃から30歳くらいまでが描かれる。貧乏武士の長男である平太の父(平忠盛)、母(祇園女御)、学友の遠藤盛遠(のちの文覚)、佐藤義清(のちの西行)らの関係の中で成長し、頭角をあらわし始めるまでの序章である。
それまでの貴族の時代に武士が台頭した理由は、院政による宮廷勢力の不安定に対して僧兵たちの力が抑えきれない状態になり、宮廷が護衛のために召し抱えた武士の地位を重んじるようになったというものである。
忠盛は平太の本当の父ではない。真の父は白河院か八坂の悪僧であることを盛遠から聞かされ、自分は誰であるのか葛藤し、不貞な母を嫌悪する。しかしその後の平太は、良くも悪くも -
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曹操に始まり、孔明に終わる。孔明以後は描きたい人物が見当たらなかったという作者の気持ちもよく分かる。これまでの登場人物に比べたらインパクトの薄さは否定できない。
やはり曹操が魅力的である。残忍な気性とは裏腹に詩を愛するという叙情的な一面をもち、唯我独尊だと思いきや部下の意見を積極的に採用する柔軟性ももつ。そしてたとえ他国であろうとも、勇猛な武将に対して自然と抱いてしまう憧れと支配欲。上昇志向に溢れた男のほとばしる激情を感じさせてくれる。
孔明も劉備の意志を継いで健闘してたけど、終盤の人材難が、、、関羽や張飛が健在の頃にもっと勢力を伸ばせたら良かったんだろうけど、その頃は他国にも逸材が揃ってるし