吉川英治のレビュー一覧

  • 三国志(四)

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    乱世の時代に、頑固と思えるほどに信義を貫く玄徳に歯痒さを感じる。しかし、その人柄を慕って集まる優秀な人材は玄徳に尽くし、離れることはない。移りゆく時勢に流されず、長い目でみることの大切さを感じる。

    「勝敗は兵家の常。長い人生に処するには、得意な時にも得意に奢らず、絶望の淵にのぞんでも滅失に陥らず、そこに動ぜず溺れず、出所進退、悠々たること」

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    2022年07月03日
  • 三国志(三)

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    曹操が恋したほどの関羽。敵国にあっても主君を忘れず、どんな恩賞にも惑わされない姿が印象的。
    敵の武将であっても、武将の真価を見定めてどこまでも愛する器のある曹操も、やはりすごい。

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    2022年07月03日
  • 新・平家物語(十)

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    木曾義仲の人生で一番謳歌できた今日での暮らし。
    驕れるものは久しからず、身の回りからほころび生じ始める、京に迫り来る同族の鎌倉軍。後白河法皇の二枚舌に翻弄されながらも、源範頼、義経軍を迎え撃つが元より負け戦。そして最期の時を迎える。大津市内の中心にほぼ近いところに義仲寺がある。偲んで訪れて見ようと思う。物語はいよいよ、一ノ谷前夜。義経の活躍が本格始動。

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    2022年06月28日
  • 三国志(二)

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    登場人物が多く混乱しやすいが、物語の大筋はなんとか掴めた。敵味方もわからないような乱世で、人を信じることを貫く劉備玄徳のまっすぐさが際立っていた。

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    2022年05月29日
  • 三国志(八)

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    やっと再読完了。夕飯時のみタラタラ読んでたので2年半かかってしまったけどその分感無量といったとこかな。諸葛亮の不利とは分かっていても蜀のために尽くす姿に感動した。それにしても蜀滅亡の後、魏で生きることになった暗愚劉禅の蜀の頃より今の方が幸せと言っているのは驚きを通り越して呆れてしまった。やはり国を牽引するものが愚かだと衰退の一途を辿ってしまうものなのだな。

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    2022年05月08日
  • 新・平家物語(九)

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    木曾義仲いよいよ表舞台へ。我が息子を頼朝の人質として預け、北陸で平家との直接対決。かの有名な火牛の計を用いて、倶利伽羅峠で平家を後退させ、いよいよ入京を果たす。一方、平家は先の戦いより都落を決行!義仲と新宮行家との対立を孕みつつ、源氏が京を治めるに至る。懐疑的な御白河法皇の狡猾さがここでも現れる。
    義仲に平家追討の命を出しいよいよ。義経登場まであと少し。

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    2022年05月08日
  • 新・平家物語(一)

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    大河ドラマとアニメ平家物語を観ながらそういえば平家物語って授業で習った祇園精舎の鐘の…以外よく知らないなぁと思って読み始めました。
    吉川英治の本を読むのは三国志ぶり?水滸伝ぶりか。
    やっぱり面白い!

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    2022年05月03日
  • 新・平家物語(十五)

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    義経を斬れ。義兄頼朝から冷酷な沙汰が発され、平家討伐の功労者義経は途端に追われる身となる。家臣を愛し、静御前を愛し、何とかして兄の誤解を解こうと奮闘する義経の想いは届かなかった。弁慶など少数の仲間と逃亡生活を送る彼は、今何を思うのだろうか。

    後半は静御前。義経の子を身籠っていると判明した彼女だが、義経誘き寄せの囮にされ、白拍子として舞を踊らされ、子が男児であると判明した途端、子を由比ヶ浜の海中に沈められた。義経と頼朝の対立が無ければ、こんな悲しい運命を歩まなくても良かったのにと、悲しい気持ちになった。

    また、話の中で、麻鳥や西行といった武門から外れた人物の視点も入り、権力の移り変わり・終わ

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    2022年05月01日
  • 新・平家物語(十三)

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    屋島の戦いから、壇ノ浦の戦いに入るまでが描かれた巻。義経の戦略により屋島の戦いでも勝利を収めたが、忠臣である佐藤継信を失うなど、源氏方にもダメージが残る結果となった。

    後半は平家方に焦点が当てられ、厳島参拝・彦島での出来事が描かれたが、総統である宗盛の暗愚さに辟易とした。物語上、彼を無能に描くしかない事は分かるが、他の兄弟を差し置いて何故彼が平家のトップを務めているのか疑問である。彼の猜疑心が時忠・原田を無力化させる結果となり、平家の足を引っ張っているのが現状で、過去のお人好し設定が鳴りを潜めている。トップが無能だと、こうも組織の瓦解を招くのかと感じた。

    次巻は壇ノ浦の戦い。悲劇的な末路を

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    2022年04月29日
  • 新・平家物語(十一)

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    前半は一ノ谷の合戦、後半は中将重衡の鎌倉下りが描かれている。一ノ谷の合戦では、院宣に欺かれた平氏が、義経率いる源氏に大敗を喫する。死者は源氏の方が多い位だと記載があったが、忠度や経正といった平家重臣達が悉く首になったことから、平家に大ダメージを与えた戦と言って過言は無い。和平を望む平家が、立身出世の為功を立てんと躍起になる源氏に「世を乱す朝敵」として討伐される様は、何とも皮肉である。戦後の処置含め、虚しさが残る場面であった。

    後半は重衡。自ら平家の業を背負い、それでも源氏との和睦を果たさんとする姿勢に忠義を感じた一方、源氏繁栄の憂いとして義仲の子義高を躊躇なく首にした頼朝の冷酷さに、今後源氏

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    2022年04月24日
  • 新・平家物語(九)

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    前巻と変わらず、木曾義仲と平家に焦点が当てられている。平家は遂に都から去り、再起を誓い西国へ去った。後白河上皇にしてやられた宗盛は、その余りにお人好しな性格からかえって求心力がある側面もあるが、池頼盛の扱いや上皇との駆け引きを誤るなど、重要な政治局面を任せられない面が見られる。清盛亡き後、平家自体の結束は強まったが、力不足感は否めない。

    一方で木曾義仲は遂に上洛し、官位も賜るまで勢力を伸ばした。しかし、葵と山吹の対立・新宮十郎行家との微妙な関係・頼朝への敵意など、源氏内における火種が山積みである。更に智略を得意としていない義仲は、後白河上皇の掌の上で転がされており、義仲の時代はそう長く続かな

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    2022年04月21日
  • 新・平家物語(八)

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    富士川の戦いは終盤。斎藤実盛の具申も届かず、平家は敗走する。終戦後、頼朝と義経が初めて黄瀬川で出会うことになるが、兄弟とはいえ、なんかよそよそしい。純粋すぎる義経と狡猾な頼朝の図式。一方で、都を福原を諦め京に移す清盛。平家に対して不穏な空気が流れる中、検非違使、平時忠の努力も虚しく、治安悪化。そしていよいよ、大黒柱であった清盛が死去。うわーーマジか…このシーンでかなりページさかれていた。後継者は宗盛?維盛?資盛?今まで、結束していた一門に綻びが…。こんな時、重盛ご生きていたら…
    一方、綸旨を受け取り挙兵する木曾義仲、源氏も決して一枚岩ではなく源氏同士の牽制のための戦が各地で勃発。そして、頼朝と

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    2022年04月20日
  • 三国志(一)

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    ずっと気になっていた三国志をようやく読み始めてみた。吉川さんの込めた熱量、迫力がすごい。
    また、登場人物のもつ個性や心情の描き方に魅力される。漢字が多く、読み慣れていないものの、夢中になって読んでいた。

    「ー君は乱世の奸雄だと、かつて予言者がおれにいった。おれは満足して起った。よろしい、天よ、百難をわれに与えよ、奸雄たらずとも、必ず天下の一雄になってみせる」

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    2022年04月11日
  • 新・平家物語(八)

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    平家の大黒柱、浄海入道清盛が遂に逝去した。眼前には源氏の台頭、平家後継の不足、後白河上皇との微妙な関係など課題が山積みであり、今後の平家の暗い未来を想起させる。一方で、清盛の死去後、力不足の息子や孫たちが一丸となり、新宮十郎行家の軍勢を退ける等、自立の芽も垣間見えた。

    一方の源氏は、木曾義仲を中心として話が展開される。信濃で力強く育った彼は、戦で次々と勝ちを収め、北陸へ進出を果たす。そんな彼を将来の禍根と見る頼朝は、平家打倒の前に義仲打倒を企てる。父である義朝が味方に裏切られて呆気ない最期を遂げた事で、頼朝には身内すら信じられない猜疑心が植え付けられたと想起されるが、為朝時代からの源氏同士の

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    2022年04月10日
  • 新・平家物語(七)

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    以仁王の令旨が源行家により全国の源氏に渡されることになる。発起したのは、源頼政、平治の乱以降、平家の家臣として齢70歳を超えての旗揚げ。だが、会えなく、宇治川で、以仁王とともに戦死。
    一方、清盛はこのタイミングで、平家への怨嗟に満ちたこの状態を緩和すべく、福原遷都を実行!令旨を受けて源頼朝挙兵、だが、石橋山で敗退。ここで、平家側の御家人梶原景時登場。敵の頼朝を助けるエピソードは有名。その後、富士川の戦いの前哨戦へ。平重盛の嫡男維盛23歳にして初陣。斎藤実盛を軍監として富士川へ着陣。ここからいよいよ源平合戦のスタート!

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    2022年04月06日
  • 新・平家物語(六)

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    平清盛62歳ぐらいかな?
    重盛死す。42歳…熊野参拝で自身の命を縮める祈祷。
    徳子、後の建礼門院が出産。後の安徳天皇。これで清盛は天皇家の外戚となる。一方、皇室、以仁王と源頼政が平氏を撃つべく院宣を発布画策開始。頼政といえば、平治の乱で、清盛と一緒に戦った源氏!彼の人生を賭けた大勝負が始まろうとしている。不穏な空気の都の治安維持を任されている、平時忠は京に上がってきた義経を謀殺を試みるため、荒法師弁慶にその使命を…そして、かの有名な五条大橋のエピソードに繋がる。この時忠の屋敷で義経は未来の奥さんである夕花と白拍子、静御前と出会う。

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    2022年03月26日
  • 新・平家物語(六)

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    義経は熊野にて新宮十郎に出会い、草の実党以外にも源氏再興を企てる者達の存在を知る。ひょんな事からさめと出会い、彼女の境遇に母親を重ね、それが後に身を助ける事になった。弁慶とも邂逅し、朝廷とも繋がる等着実に源氏再興の下地が出来つつある。

    一方平氏は、嫡男の重盛を失い、清盛の後継者がいよいよ居なくなる。苦しい黎明期を知る同士は時忠含め数える程であり、後は飛ぶ鳥を落とす勢いの平氏しか知らない若輩者のみ。彼らは自らの栄華を永遠のものと信じて止まず、「平氏にあらずんば人に在らず」と横柄な態度を取るばかり。未だに清盛が出張る所を見ても、人材不足が甚だしいと感じた。

    そろそろ頼朝に動きがあるのか。次巻に

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    2022年03月23日
  • 新・平家物語(五)

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    予想通り、本巻も義経・頼朝といった源氏に焦点が当てられている。義経は陸奥に渡り、頼朝は伊豆にて平穏な日々を過ごす。一方で北条氏や弁慶といった、源氏再興の原動力たる人物も登場し始め、今後の展開に期待を持たせる。

    都では、後白河上皇と平家の対立が深くなり、鹿ケ谷の謀反未遂が発生する。未遂に終わった本件だが、清盛も齢60になり、平家隆盛の世がそう長くない事が想起される。

    頼朝がいつ起つのか、義経と弁慶はいつ出会うのか。次巻に期待。

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    2022年03月21日
  • 新・平家物語(五)

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    平家の専横に対し、都で鹿ヶ谷事件が勃発する。本巻の構成は、その時、奥州平泉での藤原清衡、基衡、秀衡、とようやく到着した義経。鎌倉での頼朝と北条政子、そして、叡山の僧、武蔵坊弁慶の投獄。と四つの話が同時に進む絵巻物で描くなら異時同図法となるのだろうか…。
    鹿ヶ谷事件の関係者へ減刑に心を砕く、平重盛がカッコいい!この人の命の灯火はついえるのだが、平家の滅亡はこの人が延命していたらなかったのでは?と思わずにはいられない、賢者ぶり。

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    2022年03月20日
  • 新・平家物語(四)

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    平家の世が益々繁栄し、かの有名な「平家にあらずんば人に在らず」という文言が産まれた。清盛は出家し、大輪田ノ泊に港を作る一大事業に注力する。数多の苦労の末、遂に宋船を迎え入れるまでになり、内向きの藤原貴族社会の変容が想起される。一方で貴族と平家の微妙な緊張関係は変わらず、跡継ぎ問題や牛若の脱走など、今後一波乱ありそうな伏線が張られている。

    後半は牛若のクソガキっぷりがありありと描かれている。母常磐を想う心と武士である義朝の血を引く心に逡巡する様もあったが、基本的に奔放で危なっかしい。吉次の苦労が伝わってきた。

    次巻から源氏にも焦点が当たりそうであり、期待。

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    2022年03月13日