吉川英治のレビュー一覧
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上杉謙信というタイトルだが、上杉・武田両方の視点で川中島の戦いを描く。
互いが互いの腹を読みあい、裏をかこうとする。
吉川英治のごつごつした文章が、なぜかつるつると気持ちよく入ってくる。
歴史の結果は知っているけれども、謙信の視点に立てば捨て身の戦法が功を奏するのではないかと、信玄の立場になれば地の利と数で大勝するのではないかと、わくわくしながら読み進める。
そしてタイトルの上杉謙信。
戦国武将でありながら、あまりにもストイックで、理想主義。そして無私の人。
これがフィクションの創造物ならできすぎだ!と言うところだけど、古文書にも記されている事実なのよねえ。
同じ時代に同じ器量の武 -
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いまさらながらの平家物語。そして、いまさらながらの吉川英司。
文庫16冊という、この大作に手をつけるかどうか、迷うばかりであったが、いまこれに取りかかることに決めた。
悩むことはなかった。数ページを読んで、たちまちこの作品と出会ったことに感謝の気持ち。この読み手を一瞬に惹きつける力こそが吉川英司の凄みであるといえよう。
たんなる歴史小説なのではない。そこに書かれているのは、想い・苦しみ・悩み・愛憎・妬み・裏切り・確執などから逃れられない、生身の人間の姿。ひとりひとりの生きざまが歴史というものをつくりあげていく。
【このひと言】
〇愛情はすべてを越えた愛情であるときに、ほんとの美しさを持 -
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初めてこの作品を読んだのは、某無双ゲーム(灰色っぽいパッケージで、弩兵が最強なあれ)の影響で三国志に興味を持ったのがきっかけで、中学生の頃だった。
その後しばらく三国志からは離れていたのだけれど、つい最近、手持ちの本を整理していたら、半ば黄ばんだこの文庫本が出てきた。
懐かしいなぁ〜という思いから、第一巻の冒頭を眺め始めたが最後、半月くらいで全部読んでしまった。
三国志を初めて通しで味わった時の印象は、中盤までが劇的で面白いということだった。
貧しい劉備が決意とともに立って、呂布や董卓が討たれ、袁紹を平らげて着実に力をつけていった曹操が、孔明の登場によって赤壁で苦渋を舐め、孔明の意図通りに、 -
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日本史において貴族の時代が終わり、武士の時代が開幕するきっかけとなった事件が平将門の乱だ。関東地方の一豪族、平将門はをあっという間に周囲を征服、中央から派遣されていた役人たちを追い出し、その勢いで自身はもう一人の天皇と称して、京へ攻め上ろうとする。結局、京の指示を受けた武士たちが将門軍を打ち負かし、将門の乱自体は短期間で終わるが、それ以後、武士階級が注目されるようになる。
こうした歴史を知っていると、平将門とは粗暴で親分肌、革命家というイメージだが、吉川英治の描く将門は全く異なる。
将門は若いころ、京へ留学したことで、都や貴族社会にあこがれを持ち、貴族には頭が上がらない。他人の意見に流され -
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上杉謙信で連想するのは、川中島の戦い、毘沙門天、敵に塩を送るハナシ、等々。信長や秀吉と違って戦国時代日本のトップに立つことには興味がなく、自分の力の誇示に満足するアスリートのような印象がある。吉川英治が描く上杉謙信もストイックな戦いのプロ。戦の感覚を味わうために戦国武将をやっているってカンジだ。かといって、殺人大好きな残虐非道な性格ではなく、民にも臣にも愛情を注ぎ、バランスのとれた人間だった。
そんな他の武将とは違う価値観を持った上杉謙信が、ライバル武田信玄と川中島の戦いに挑む。信玄はキツツキ作戦で謙信をおびき寄せようとするが、謙信はその裏をかき、単身で信玄の本陣を急襲する。そして、謙信の太 -
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待っていましたの第四巻。
三巻と同様、本阿弥光悦に誘われ、
美しい世界でしばしの休暇を味わった後、
宿敵吉岡一門との死闘に臨む武蔵。
いよいよ宮本武蔵と言えば!のアレが登場する!
そしてついに読者も待ち望んでいたであろう、
すれ違いを続けてきたお通との再開。
強さを追い求めてきた武蔵だったが、
彼女もまた別の道で強さを追っていた。
一方、彼らと比べると光と影のような又八と朱美。
又八は自業自得だが、朱美は気の毒である。
お通と比べて彼女には何が足りなかったのだろう。
運が悪かったのか。それとも弱かったからなのか。
もしも舞台、もしくは執筆時期が現代だったならば、
武蔵と又八、お通と朱美の