吉川英治のレビュー一覧
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面白かった!!義朝の敗北も紙一重なんだけど、長い目で見れば必然に思えてきて、頼朝を生かすことが平家の滅亡の因になっているという点も、非常に「妙」と思った。
作中著者が民衆のことを、「生命」と表現していた。「人間」でもなく「人」でもなく「生命」と。その表記を読めただけでも僕は「三巻を読んでよかった~」と思えた。だって善いも悪いもそれをやるのは「人」なんだけど、誰もが両面を持っていると思うから。時や環境でどっちの面が強くなるかだから、やっぱり「全部含めて生命なんだろな」って思えた。
清盛が義朝に勝っても義朝をリスペクトしている。それも作者の「生命観」があるからかなって。だからこういう視点で書いてく -
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『三国志』や『宮本武蔵』などの国民的大衆小説でお馴染の吉川英治氏の自叙伝。
学生時代に『三国志』と『新平家物語』を半年がかりで読んだ。思えば自分が本好きになったのはこの頃からで、その後、『私本太平記』を読み、『平将門』『源頼朝』『上杉謙信』と読んだ。意識していなくても、おそらく自分は吉川英治氏の史観の影響を受けている。そんなこともあり、手にとってみた。
この本を読むまでは、とても厳格で、間違ったことが大嫌いな人格者、ちょっと堅物、というイメージが自分のなかにあったが、実際はそんなことはなく、間違いもすれば、悩み、落ち込みもする、いたって普通の人だった。
子供のころは父の事業が好調で、 -
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ようやく壇ノ浦の戦いが終了し、源平合戦にピリオドが打たれた。と同時に、平家物語という題名にも関わらず、主役は平家一族から源義経にシフト。しかし、それは連戦連勝の大勝利を得た偉大な総大将というよりは、常に鎌倉の兄:頼朝の目を気にして萎縮する悲哀に満ちた男の姿である。最も気の毒に感じたセンテンスが、
「愚かな弟を平家追討の道具に用いられ、既に平家も亡んだ故、道具は無用というお考えか」
と言う義経の頼朝に対する声無き声。義経の悲哀が本巻を含む残り3巻のメインストーリーラインとなるのだろう。
そう言えば気付いたことがある。本作品の第1巻から本巻まで通して登場する唯一の人物の存在に。清盛の妻の弟、平時忠 -
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本巻はまさに義経の逃避行を描いた書。宇治川、一の谷、屋島、壇ノ浦と連戦連勝してきた源氏の大将が、今や肉親の頼朝に追われる身。不運に不運が重なり、従者も弁慶や伊勢三郎など数人。愛妾の静とも今生の別れを果たす…。これでもかというくらい、悲哀を描いている。私個人的には戦記よりも人間模様の方が好みなので読みやすかったが。
本巻では、久しぶりに西行が登場。彼も平時忠と同じく、第一巻から登場しているキャラクター。鎌倉の御家人、安達新三郎が義経と静の子供を沈めるよう命じられたものの、そのフリだけをして静ともども逃がしたというアングルにおいて、それを見た僧ということで登場していた。おそらく、これが最後の登場と