吉川英治のレビュー一覧

  • 新・平家物語(七)

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    本巻からはようやく主人公の清盛が再登場。後白河法皇幽閉や源頼政父子反乱鎮圧に対して活躍する。

    頼政父子の反乱は、前巻の鹿ケ谷山荘事件、後白河法皇幽閉事件に次ぐ大きな平家へのクーデターであるが、これが義仲京占拠を経て頼朝・義経挙兵へとつながっていく。策に溺れた策士、源行家はドラマや小説ではよく描かれることは少ないが、数々の失敗を経て頼朝の天下取りに繋がったのであるから、その功績は推して知るべしだろう。もちろん、平家に面従腹背していた源頼政もしかり。頼朝はこうした源氏庶流の犠牲なしに鎌倉幕府は開けなかったのだ。歴史には、結果と名を残した人物と、過程において活躍した人物がいる。行家や頼政は後者であ

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    2012年09月21日
  • 新・平家物語(六)

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    本巻は、本作品が歴史書ではなく、物語であるということを強く意識した巻であった。吉川英治の遊び心、読者を楽しませようというエンターテイナーの気質がよくあらわれていた。
    その特徴の一つが、伏線を張った人物との再会や再登場。
    奥州にいるとばっかり思っていた義経が、急に熊野に現れたと思ったら、月尊が鎌田正近だったり、奴婢の媼が弁慶の母親だったり、弁慶の姉が麻鳥の妻である蓬だったり(後々、弟の弁慶や母親と再会させて読者をくすぐるのだろう)、奥州行きに出会った男が伊勢三郎だったり、法勝寺の蓮花騒ぎの曲者で捕らえてみたら源有綱との運命の再会だったり…。こと、義経を取り囲む登場人物に多い。生まれ持った人的魅力

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    2012年09月21日
  • 新・平家物語(一)

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    先週日曜から大河ドラマ「平清盛」が始まったので並行して読み始めてみた。細部は異なるものの、大河は本書を根本としており、平安末期の良い勉強になるはずだということで。私にとって、吉川英治作品は昨年読破した「三国志」に続き2作品目。氏の作品は文章が非常に格式高い。また、昭和の第二次世界大戦前後に描かれたという時代背景もあり、皇室を表現する際の言葉が非常に丁寧であるという特徴もある。
    さて、本巻では主人公:清盛の10代後半の苦悩(出自や武士という身分など)からスタートする。僧兵に一人で立ち向かって行ったりする大胆不敵な態度は躍動感を生み、家族や家来を大切に思うような人間味は温かさを感じられる。いわば

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    2012年09月21日
  • 新・平家物語(二)

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    ひとこと。無茶苦茶面白い。元々、平安末期は戦国時代と並んで好きな時代である。小学校5年生頃にハマった時代。本書を読むことで、当時の記憶がありありと蘇ってきた。
    本巻は保元の乱から平治の乱まで。この二つの戦いも相当面白い。軍事的な面白さではない。人間同士のせめぎ合い、機微が絶妙なのだ。改めて、現在の大河ドラマでのキャストは誰もがハマり役であると感じる。信西の高慢ちきなキャラは阿部サダヲがぴったりだし(おそらく、あのキャラのまま疎まれて平治の乱に突入していくだろう)、清盛の叔父:忠正は嫌味な演技抜群の豊原功補において他はない。
    ここ最近は歴史小説と言えば司馬遼太郎作品ばかり読み漁っていたが、司

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    2012年09月21日
  • 新・平家物語(三)

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    完全に平清盛にハマっている今日この頃の私。
    本巻では、平治の乱後の戦後処理、清盛と常盤御前とのやり取り、日宋貿易への着眼など、清盛が一大政治家として飛躍していく様が描かれている。本作品の清盛は非常に包容力が大きく魅力的に描かれている。今まで私が書やドラマなどで読んできた作品の清盛像と言えば、一般的に悪役として描かれることが多い。しかし吉川氏いはく、これは平家滅亡後に源頼朝の治下において鎌倉期の筆者が歪めて書かれたものに起因するという。なるほど、歴史関係の書を読む際は、こうした事情も踏まえなければならないのだ。そうしないと、作られたイメージのみで人物を判断してしまうことになる。

    以下に、清

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    2012年09月21日
  • 宮本武蔵(5)

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    『「……自分のしたことを、共々欣んでくれる者があるのは大きな張り合いというものじゃないか。――それのある者には、陳腐な道義の受け売りをしているように聞えるだろうが、こういう漂白の空にある身でも、アアいい景色だなあと感じた時のような場合、側にもどこにもそれを語る者がいないということはその一瞬、実にさびしい心地の身になるものだぞ」』p51

    『人中の賑やかな中にいると、彼のたましいはなぜか独り淋しくなる。淋しい暗夜を独り行く時は、その反対に、彼の心は、いつも賑わしい。
    なぜならば、そこでは、人中では心の表に現れないさまざまな実相が泛んでくるからであった。世俗のあらゆるものが冷静に考えられると共に、

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    2012年02月05日
  • 新・平家物語(十六)

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    ネタバレ

    吉川英治の新平家物語を全16巻の完結編です。

    源平の乱に始まる平家の繁栄から屋島、壇ノ浦にわたる源氏の進出や平家の滅亡と目まぐるしく変わる世相の中で遂に義経もこの世を去ります。
    麻鳥や蓬も年を取り、苦労ばかりの人生だったけど決して悪い人生ではなかったと振り返る姿に救いを感じました。

    人は権力を握るとそれに固執するあまり孤独になり易いものだと感じました。後白河法皇に翻弄されてきた清盛しかり、父義朝を味方に殺された頼朝しかり。ほどほどに、奢る事が大切なのかな。

    大作を読んだ充実感を感じます。

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    2012年03月29日
  • 宮本武蔵(4)

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    吉野太夫が武蔵に話した琵琶の話(p176-77)がよかった。琵琶の中にある一本の横木、骨でもあり、臓でもあり、心でもある横木は、ただ剛直なのではなく、実はわざと抑揚の波が刻みつけられていたり、弛みがあったりする。人間もこれと同じで、美しい音色を奏でようと思えば、ただ張り詰めているのではダメで、少しの遊びが必要ということ。ううむ。

    さらに、武蔵の(著者の?)宗教観にも深いものを感じた(p359)。
    さむらいのいただく神とは、神を恃(たの)むことではなく、また人間を誇ることでもない。神はないともいえないが、恃(たの)むべきものではなく、さりとて自己という人間も、いとも弱い小さいあわれなもの――と

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    2012年01月23日
  • 宮本武蔵(2)

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    京都で偶然武蔵の噂を聞いた又八は、より自堕落になっていく。
    泥沼にはまっていくその気持ち、なんとなくわかる気がする。
    なろうと思って武蔵になれるものじゃない。

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    2012年01月04日
  • 宮本武蔵(3)

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    武蔵のストイックさが尋常じゃない。
    吉岡流の長男にもあっさり勝ってしまう。
    それに全く満足しない、鼻にかけたりしないのがまた武蔵だなあ。

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    2012年01月04日
  • 宮本武蔵(1)

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    現代(当時)の若者へのメッセージを込めたと本書のはじめで著者が述べている。
    ”怒らないことを美徳だと考えられているが、怒りから発せられるエネルギーを重んじなければならない”、だとか、”恥の文化によって自治が守られていた”だとか、そういう部分がメッセージなのだろうか。

    後者の言葉は特に印象的だった。
    武蔵は関ヶ原の戦に破れ、友人と別れても義務感に駆られて故郷に帰る。友人を巻き添えにしてしまった責任感がある。物語には、武蔵の他にも名誉のために苦しむ人々が登場する。「恥を知れ」という言葉があるけれど、日本人の中には名誉や恥を重んじる血が流れている。

    ところで、武蔵の姉が幽閉されてから一度も登場し

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    2011年12月28日
  • 三国志(八)

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    長かった。疲れた。全8巻。
    曹操の活躍に始まり、劉備、関羽、張飛の活躍。
    魏呉蜀が入り混じる赤壁の戦い。戦国時代の様相。
    曹操も死んで、劉備、関羽、張飛も死んで、次の時代、魏の司馬懿仲達と蜀の諸葛孔明の戦い。孔明の死まで。

    諸葛孔明はすごい人でした。
    晩年の蜀は有能な武将がいなくなる中で、戦略によって、魏とわたりあう。苦しいのを状況のせいにせず、状況の中で最善を尽くす姿勢がすごいと思いました。

    体力のある人は是非。

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    2011年12月25日
  • 親鸞(三)

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    ついに最後まで読んでしまった。
    この内容の作品をこんなスピードで読んだのは本当に久しぶり。
    読んでみて本当に良かった。
    ありがとうございました。
    出会いに感謝です。

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    2011年11月11日
  • 親鸞(一)

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    歴史小説を読むときは、歴史の勉強になるなーと思うことが多いのですが、今回は少し違います。
    思うところは2つ。
    1つ目は言葉。吉川さんの使う言葉にはは、最近の本にはない古い言葉や、使われなくなりつつある言い回しが豊富にあります。それがかなり面白い。意味を拾いながらになるので時間はかかりますが、楽しくて仕方ありません。
    2つ目は親鸞上人の生き方。本を読んで、その生き方に触れていると、自分の心の波立っている部分が落ち着いてきます。この本に、いま、だいぶ助けられています。
    まだまだ先がありますが、ゆっくり時間をかけて読んでいこうと思います。

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    2011年11月06日
  • 宮本武蔵(1)

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    ・武蔵の剣豪・求道者としての成長物語
    ・武蔵とお通の会えそうで会えないすれ違いもどかしい恋愛物語
    など、王道のエンターテインメント小説。

    それに加え、なんと言っても私が感情移入してしまうのは、ダメ人間 の代名詞とも言うべき、武蔵の親友 又八である。彼の持つ「弱さ・ずるさ」、それもまた人間の本質だということを忘れてはいけない。

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    2011年11月03日
  • 宮本武蔵(8)

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    宮本武蔵という人物を中心に据えた人間形成,鍛錬の物語です.
    幼馴染みの又八が心の弱さを,佐々木小次郎が強さと傲慢を,武蔵が高潔を,それぞれ担当しているように見えます.
    その他にも,色々な登場人物が人間の色々な性質を担当していて,作品世界が一つの人間の心の中で起こる鬩ぎ合いと重なって見えました.
    一気に読むよりも,毎日少しずつ読むことで,毎日読者自身を叱咤激励できる作品であると感じました.

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    2011年10月13日
  • 三国志(七)

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    この巻は前半は面白くて面白くてあっという間に読み終わった。やっぱり関羽、張飛、玄徳の話が好きなんだよなー。みんな亡くなってしまった後は一気に読書ペースが落ちた。。

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    2011年08月07日
  • 三国志(七)

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    ネタバレ

    図南の巻、出師の巻。荊州の守りについていた関羽の死から、相次ぎこれまでの主要登場人物(張飛、曹操、玄徳等)が死んでいく。残された孔明は南蛮を治めるため戦い、ついに曹操亡きあとの魏へ乗り込んでいく。

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    2011年07月24日
  • 三国志(六)

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    ネタバレ

    望蜀の巻から図南の巻。
    孔明と並ぶ名声をもつ龐統が玄徳の元へ来るが甲斐なく終わる。蜀を攻めていた玄徳の元に参じるため、荊州を関羽に任す。玄徳の妻の呉の孫権の妹は、偽りの理由で呉に帰す。蜀と荊州は玄徳の支配下へ。一方魏の曹操は王位に昇り贅を貪る。漢中を玄徳にとられ、曹操、孫権と腹の探りあいは続く。
    馬超、黄忠、魏延など。

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    2011年07月10日
  • 三国志(五)

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    荊州を巡って曹操と玄徳、孫権が絡み合う。赤壁の巻後半と望蜀の巻。孔明の策がことごとく的中。周瑜と魯粛。

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    2011年06月20日