吉川英治のレビュー一覧
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購入済み
時代を超えて
10代に初めて読んだ時はただただ物語の展開に心奪われ多いに胸躍らせた記憶がある。70歳に近づき改めて読むと、人間の性、業に目が向き、自分の人生に重ね合わせてしまい、深く考えさせられた。
尊氏、それを取り巻く人々か織りなす様は現在と本質的には何ら変わってはいない。自分の人生のなかで10年ごとに読んでみたかった本だ。 -
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あっという間に3巻を読み終えた。
武蔵は剣だけでなく、生活の中に潜む自身の弱さに負けることも許さない。自分自身を磨き高めようとする姿は、どこまでも愚直で一途でブレることはない。
「踏み敷く草も木も氷も、武蔵の足にかかるもの、敵でない物はない。勝つか負けるか!一歩一歩が勝敗への呼吸であった。神泉の中で氷化した五体の血が、今は熱泉のように毛穴から湯気を立てていた」
吉岡清十郎と1対1の真剣勝負では、誰も助太刀のいない場所で戦うことになる。武士として真剣に向かい合う臨場感が見事に描かれ、生死をかけて戦う緊張感がひしひしと伝わってくる。
また、書家であり陶芸家であり茶人でもある、本阿弥光悦との出会 -
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漫画の原作となった吉川英治渾身の一冊。宮本武蔵の青年期から巌流島の決闘までが詳細に丁寧に描かれている。又八、お杉婆、お通、沢庵和尚などとの交わりや別れ、槍の宝蔵院、吉岡一門、宍戸梅軒、祇園藤次などとの戦いも凄まじいの一言。長い小説の中では、武蔵の成長が随所に感じられるセリフが登場するが、5巻の以下のシーンは特に印象に残った。
『ああ富士山か』(中略)『人間の小ささ!』武蔵はうたれたのである。(中略)ばか、なぜ人間が小さい。人間に目に映って初めて自然は偉大なのである。人間の心を通じ得て、初めて神の存在はあるのだ。
伊勢神宮を訪れてありがたさに涙が出るのも人間の心のなせる技、心を磨くことが肝心 -
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劉備率いる蜀の陣容は、関羽、張飛、趙雲に加え馬超、魏延、黄忠、馬良など、いよいよ役者揃いの模様。
こうした武将たちが魏、呉を相手に立ち向かうシーンは読んでてわくわくした。そしてこの役者たちを最大に活かすのが、軍師諸葛孔明。最高の作戦は勝利に欠かせない。相手の戦力分析もまことに鋭く、的を射ている。
この時が最も蜀に勢いがあって、非常に面白い。
孔明に並ぶ参謀である龐統が若くして死んでしまうのは誠に悲しいが、これも過去世の宿業所以なのか。因果の法理の厳しさを痛感。
曹操、劉備も歳を重ね、考え方も固まり、保守的になりなんとなく老いてきているのが伺える。この2人がそれぞれ一国を築けたのも、周りの人物