吉川英治のレビュー一覧
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以仁王の令旨を持って、遂に頼朝が立つ。序盤は100騎にも満たない軍勢であり、大庭や伊東に大いに苦しめられ、一時は絶体絶命の危機に瀕した。しかし、船上で三浦一族と合流・千葉氏を味方につけるなど、人に大いに恵まれ、関東圏に一大勢力を敷くまでになった。
清盛も頼朝も当てはまる事だが、天下人には「天・地・人」が必ず備わっていると感じる。福原への遷都・以仁王の乱・後白河法皇の幽閉といった出来事が重なり、世に平家憎しの風潮が広がった天命。関東と京の都の距離が遠く、タイムリーに情報が伝わらない地の利。三浦・千葉といった、地方に根ざした豪族を早くから味方に付けられた人の利。全てが僥倖であり、少しでも歯車が狂 -
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平治の乱が治まり、いよいよ平家の世の中になった。本巻のテーマは「恋愛」「野望」である。
清盛と常磐殿の恋、二条天皇と多子の恋、蓬子と明日香・麻鳥の恋が描かれた。多くは語らないが、時代が変わっても恋愛のいざこざは不変なのだと実感した。また、常磐殿や明日香など、自分の意中の人では無い旦那に嫁ぐ運命を見ると、現代の自由恋愛は恵まれているとも感じた。
野望について言えば、日宋貿易を夢見る清盛であり、一商人からの成り上がりを狙う赤鼻であり、上皇として権力を振るおうとする後白河上皇が挙げられる。清盛の厳島神社訪問の際に語った夢は、今や現実のものとなり世界遺産に認定されていると思うと、胸が熱くなった。一 -
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保元の乱に始まり平治の乱に終わる、乱世極まる巻。第一巻にも言える事だが、盛者必衰の理が多分に表されていたと感じる。
例えば信西入道。保元の乱で天敵頼長が倒れ、窓際族から一躍出世を果たすも、信頼の謀反により倒れる。その信頼も、過激なやり方に反発を抱かれ、刎頸の交わりを結んだ者たちに裏切られた事で、今や朝敵である。鳥羽上皇や頼長に振り回され、最後は京を呪う悪霊と化した崇徳天皇などに至っては、憐れというほか無い。乱世の中にあって、世を治める事の難しさを感じた。
また、保元の乱とは違い、平治の乱は平氏と源氏の争いという側面が強く、これを持って公家社会から武家社会へと移行した様に感じた。とは言え、義 -
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かの有名な「祇園精舎の鐘の声」から始まる、平清盛を中心とした平家の盛衰を著した本。元々は琵琶法師が弾き語りながら物語る、現代で言う連続ドラマのような立ち位置だっただけあり、令和の時代に読んでも面白い。
第一巻のテーマは「親子」である。遠藤盛遠から自らの出自を聞かされた清盛。白河法皇・鳥羽上皇の権力闘争に巻き込まれ、実の父親から蔑ろにされた崇徳天皇。新院と新帝の争いに巻き込まれ、実の父と刃を交える事となった義朝。今以上に家柄が重視された世にあって、血縁者と言うものは切っても切れないかけがえの無い物であり、これを巡って苦悩に巻き込まれた彼らの心情たるや、想像もつかない。出来る事なら、清盛の如く一 -
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【読書レビュー 579】
原作・吉川英治、画・石森プロ、シナリオ・竹川弘太郎『マンガ三国志Ⅱー赤壁の戦いと三国の攻防』飛鳥新社、2020年
上下巻、合計約1000頁のマンガで『三国志』をまとめたものの下巻。
『正史』か『三国志演義』か随時、注記で出典が示されているので「これは史実かも」「これはフィクションぽい」と確認しながら読み進める事ができます。
横山光輝60巻は無理な方にはお勧めです。
以下は巻末の渡邊義浩氏(早稲田大学文学学術院教授)の解説の抜粋です。
本書は劉備と諸葛亮が物語の中心として描かれている。
劉備像は『三国志演義』以降に語られてきた劉備像とは大分違っているが、史実に近い -
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上下巻、合計約1000頁のマンガで『三国志』をまとめたものの上巻。
各できごとについて『正史』か『三国志演義』か随時、注記で出典を示しながら簡潔に解説してくれているので「ここまでは史実の可能性が高い」「これは完全にフィクション」と確認しながら読み進める事ができます。
横山光輝60巻は無理という人にとってはコスパよいです。
横山光輝も読みたくなってしまいますが。
以下は巻末の渡邊義浩氏(早稲田大学文学学術院教授)の解説の抜粋です。
約400年続いた大帝国の漢がつぶれた大変革期には大きく三つの方向性があった。
①漢帝国を続けたい。(蜀)
そこに劉備や諸葛亮が関わっている。
蜀は地域名で正しく -
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宮本武蔵(1~8)
著:吉川英治
物語は天下分け目の大合戦「関ケ原の戦い」から始まる。
悪鬼である新免武蔵とその幼馴染本位伝又八はその負け戦から必死に這い上がろうとする。
天下無双を目指し、共に歩を歩む二人、そして違えてそしてまた交差して、武蔵を中心とした大きなうねりが記されている。
本格的に初めて読んだ時代小説。読みにくさは感じず、血沸き肉躍る感覚がストレート伝わる表現力の高さに冒頭は圧倒された。戦いの描写のみならず、心の内面と成長を描く英雄者という括りには収まらず、当時の日本国の暮らしぶりや文化や息遣いまで触れることが出来る。
多くの著名人が愛読書として挙げる本書。ある人曰く「5 -
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宮本武蔵(1~8)
著:吉川英治
物語は天下分け目の大合戦「関ケ原の戦い」から始まる。
悪鬼である新免武蔵とその幼馴染本位伝又八はその負け戦から必死に這い上がろうとする。
天下無双を目指し、共に歩を歩む二人、そして違えてそしてまた交差して、武蔵を中心とした大きなうねりが記されている。
本格的に初めて読んだ時代小説。読みにくさは感じず、血沸き肉躍る感覚がストレート伝わる表現力の高さに冒頭は圧倒された。戦いの描写のみならず、心の内面と成長を描く英雄者という括りには収まらず、当時の日本国の暮らしぶりや文化や息遣いまで触れることが出来る。
多くの著名人が愛読書として挙げる本書。ある人曰く「5 -
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ネタバレいよいよ、世代交代の波が訪れる巻だった。
ここまで読んできて長く連れ添ったような気持ちになっていて、切なくてなかなかページを進められなかった。
中でも関羽の死は無念だった。張飛も失い、残された玄徳の苦しみはどれほどだっただろう。それがあの敗戦へと繋がったのだろうから悲しさも一層増す。
どんな者にも平等に、死によって分かたれる時が来て、そうして時代は移り変わっていくのだと思いながらも、そう簡単には気持ちが切り替えられなかった。
南洋諸国での孔明の手腕は流石としか言いようがなく、面白く読んだのだが、夥しい死者を前にどう折り合いをつければいいのかまだはっきりとした答えは見出せていない。 -
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最終巻は、小次郎の「力と技の剣」と武蔵の「精神の剣」の闘いである巌流島の決闘が描かれる。決闘が近づくと街は騒がしくなるが、それでも武蔵の周囲に保たれている静謐さが印象的。ブレない姿とはこんな姿なんだなと思う。
虚しさや苦悩を原動力として凄まじく成長する宮本武蔵、意志が弱く堕落していく又八、この2人は1−8巻を通して対照的な人間として描かれているが、2人で1人の人間のように思える。人は様々な性質を持っており、常にせめぎ合っているものだと思う。それでも、自身の弱さを制して内面的な完成を目指そうとする大切さを、吉川英治の「宮本武蔵」から学んだ。また時間をあけて読み返したい本だ。