吉川英治のレビュー一覧

  • 新・平家物語(七)

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    以仁王の令旨を持って、遂に頼朝が立つ。序盤は100騎にも満たない軍勢であり、大庭や伊東に大いに苦しめられ、一時は絶体絶命の危機に瀕した。しかし、船上で三浦一族と合流・千葉氏を味方につけるなど、人に大いに恵まれ、関東圏に一大勢力を敷くまでになった。

    清盛も頼朝も当てはまる事だが、天下人には「天・地・人」が必ず備わっていると感じる。福原への遷都・以仁王の乱・後白河法皇の幽閉といった出来事が重なり、世に平家憎しの風潮が広がった天命。関東と京の都の距離が遠く、タイムリーに情報が伝わらない地の利。三浦・千葉といった、地方に根ざした豪族を早くから味方に付けられた人の利。全てが僥倖であり、少しでも歯車が狂

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    2022年04月09日
  • 宮本武蔵(8)

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    魅力的なキャラクターが多く構成も含めて引き込まれる内容。新聞小説らしく、都合の良い展開や最後に急激にハッピーストーリーに向かう点などは気になるが、それも含めて楽しめた。

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    2022年03月13日
  • 新・平家物語(三)

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    平治の乱が治まり、いよいよ平家の世の中になった。本巻のテーマは「恋愛」「野望」である。

    清盛と常磐殿の恋、二条天皇と多子の恋、蓬子と明日香・麻鳥の恋が描かれた。多くは語らないが、時代が変わっても恋愛のいざこざは不変なのだと実感した。また、常磐殿や明日香など、自分の意中の人では無い旦那に嫁ぐ運命を見ると、現代の自由恋愛は恵まれているとも感じた。

    野望について言えば、日宋貿易を夢見る清盛であり、一商人からの成り上がりを狙う赤鼻であり、上皇として権力を振るおうとする後白河上皇が挙げられる。清盛の厳島神社訪問の際に語った夢は、今や現実のものとなり世界遺産に認定されていると思うと、胸が熱くなった。一

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    2022年02月23日
  • 新・平家物語(二)

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    保元の乱に始まり平治の乱に終わる、乱世極まる巻。第一巻にも言える事だが、盛者必衰の理が多分に表されていたと感じる。

    例えば信西入道。保元の乱で天敵頼長が倒れ、窓際族から一躍出世を果たすも、信頼の謀反により倒れる。その信頼も、過激なやり方に反発を抱かれ、刎頸の交わりを結んだ者たちに裏切られた事で、今や朝敵である。鳥羽上皇や頼長に振り回され、最後は京を呪う悪霊と化した崇徳天皇などに至っては、憐れというほか無い。乱世の中にあって、世を治める事の難しさを感じた。

    また、保元の乱とは違い、平治の乱は平氏と源氏の争いという側面が強く、これを持って公家社会から武家社会へと移行した様に感じた。とは言え、義

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    2022年02月19日
  • 新・平家物語(一)

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    かの有名な「祇園精舎の鐘の声」から始まる、平清盛を中心とした平家の盛衰を著した本。元々は琵琶法師が弾き語りながら物語る、現代で言う連続ドラマのような立ち位置だっただけあり、令和の時代に読んでも面白い。

    第一巻のテーマは「親子」である。遠藤盛遠から自らの出自を聞かされた清盛。白河法皇・鳥羽上皇の権力闘争に巻き込まれ、実の父親から蔑ろにされた崇徳天皇。新院と新帝の争いに巻き込まれ、実の父と刃を交える事となった義朝。今以上に家柄が重視された世にあって、血縁者と言うものは切っても切れないかけがえの無い物であり、これを巡って苦悩に巻き込まれた彼らの心情たるや、想像もつかない。出来る事なら、清盛の如く一

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    2022年02月07日
  • 三国志(五)

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    ホントは去年の課題図書だったけど、やっと5巻。
    5巻は赤壁の巻と望蜀の巻。有名な赤壁の戦いを挟み、玄徳、曹操、孫権のせめぎ合い、そして、孔明、周瑜の騙し合い。知っているっていうエピソードが盛りだくさん。
    残り3巻、本年度中には読破したいですね。

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    2022年01月29日
  • マンガ 三国志Ⅱ  赤壁の戦いと三国の攻防

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    【読書レビュー 579】
    原作・吉川英治、画・石森プロ、シナリオ・竹川弘太郎『マンガ三国志Ⅱー赤壁の戦いと三国の攻防』飛鳥新社、2020年

    上下巻、合計約1000頁のマンガで『三国志』をまとめたものの下巻。
    『正史』か『三国志演義』か随時、注記で出典が示されているので「これは史実かも」「これはフィクションぽい」と確認しながら読み進める事ができます。
    横山光輝60巻は無理な方にはお勧めです。

    以下は巻末の渡邊義浩氏(早稲田大学文学学術院教授)の解説の抜粋です。

    本書は劉備と諸葛亮が物語の中心として描かれている。
    劉備像は『三国志演義』以降に語られてきた劉備像とは大分違っているが、史実に近い

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    2021年12月01日
  • 三国志(八)

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    ネタバレ

    長かった三国志もついに終幕。ついに読み終えたと感慨深い。
    燃えるように生きた武将たちの、その灯火の消えるのを見るのは辛い。趙雲の生き方も凄かった。
    何よりも孔明の働き。この上ない正しい政治。そして激務をこなし亡き主君に忠義を尽くしたその心は痛ましいほど胸に届く。人材に恵まれなかった孔明や蜀の運命を見ると、人こそが大事なのだと思った。今ここに関羽がいたら、と思いを馳せる孔明が切なかった。代わりはいないのだ。

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    2021年11月28日
  • 三国志(一)

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    とても面白い、すいすい読める!
    虎牢関の戦いとか、吉川先生の筆が走りまくってる!
    好きで好きで書いてる感が文章から迸り出る作品。

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    2021年11月26日
  • マンガ 三国志Ⅰ 劉備と諸葛孔明

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    上下巻、合計約1000頁のマンガで『三国志』をまとめたものの上巻。
    各できごとについて『正史』か『三国志演義』か随時、注記で出典を示しながら簡潔に解説してくれているので「ここまでは史実の可能性が高い」「これは完全にフィクション」と確認しながら読み進める事ができます。
    横山光輝60巻は無理という人にとってはコスパよいです。
    横山光輝も読みたくなってしまいますが。

    以下は巻末の渡邊義浩氏(早稲田大学文学学術院教授)の解説の抜粋です。

    約400年続いた大帝国の漢がつぶれた大変革期には大きく三つの方向性があった。

    ①漢帝国を続けたい。(蜀)
    そこに劉備や諸葛亮が関わっている。
    蜀は地域名で正しく

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    2021年11月24日
  • 宮本武蔵(7)

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    宮本武蔵(1~8)
    著:吉川英治

    物語は天下分け目の大合戦「関ケ原の戦い」から始まる。
    悪鬼である新免武蔵とその幼馴染本位伝又八はその負け戦から必死に這い上がろうとする。

    天下無双を目指し、共に歩を歩む二人、そして違えてそしてまた交差して、武蔵を中心とした大きなうねりが記されている。

    本格的に初めて読んだ時代小説。読みにくさは感じず、血沸き肉躍る感覚がストレート伝わる表現力の高さに冒頭は圧倒された。戦いの描写のみならず、心の内面と成長を描く英雄者という括りには収まらず、当時の日本国の暮らしぶりや文化や息遣いまで触れることが出来る。

    多くの著名人が愛読書として挙げる本書。ある人曰く「5

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    2021年11月21日
  • 宮本武蔵(1)

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    宮本武蔵(1~8)
    著:吉川英治

    物語は天下分け目の大合戦「関ケ原の戦い」から始まる。
    悪鬼である新免武蔵とその幼馴染本位伝又八はその負け戦から必死に這い上がろうとする。

    天下無双を目指し、共に歩を歩む二人、そして違えてそしてまた交差して、武蔵を中心とした大きなうねりが記されている。

    本格的に初めて読んだ時代小説。読みにくさは感じず、血沸き肉躍る感覚がストレート伝わる表現力の高さに冒頭は圧倒された。戦いの描写のみならず、心の内面と成長を描く英雄者という括りには収まらず、当時の日本国の暮らしぶりや文化や息遣いまで触れることが出来る。

    多くの著名人が愛読書として挙げる本書。ある人曰く「5

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    2021年11月21日
  • 三国志(七)

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    ネタバレ

    いよいよ、世代交代の波が訪れる巻だった。
    ここまで読んできて長く連れ添ったような気持ちになっていて、切なくてなかなかページを進められなかった。
    中でも関羽の死は無念だった。張飛も失い、残された玄徳の苦しみはどれほどだっただろう。それがあの敗戦へと繋がったのだろうから悲しさも一層増す。
    どんな者にも平等に、死によって分かたれる時が来て、そうして時代は移り変わっていくのだと思いながらも、そう簡単には気持ちが切り替えられなかった。
    南洋諸国での孔明の手腕は流石としか言いようがなく、面白く読んだのだが、夥しい死者を前にどう折り合いをつければいいのかまだはっきりとした答えは見出せていない。

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    2021年10月22日
  • マンガ 三国志Ⅱ  赤壁の戦いと三国の攻防

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    まったく三国志を知らずに読んだので、単純に次の展開が気になり手が止まらなかった。ところどころで「あれ?この人は誰だっけ?」とわからなくなることもあったが、数ページ戻りながら読むことで追いつくことができた。予想していた結末とは違くて(本当に中国の歴史を知らなかったので)、とても面白かったです。

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    2021年09月23日
  • 三国志(六)

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    ネタバレ

    土地や気候を活かし状況をよみ智恵や計略を巡らせる、そして人を動かし勝つということの難しさ。
    もうここまでくると武将の好き嫌いが自分の中で決まってきて、この巻では胸のすく思いをするシーンが多くあった。
    劉備玄徳の軍の活躍を待ち望んでいる自分がいる。
    曹操の智より孔明のほうが一枚上手だったこと。趙雲の見捨てない心意気。そして張飛の戦い方に特別グッときた。成長が見られたので…

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    2021年09月21日
  • 宮本武蔵(8)

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    最終巻は、小次郎の「力と技の剣」と武蔵の「精神の剣」の闘いである巌流島の決闘が描かれる。決闘が近づくと街は騒がしくなるが、それでも武蔵の周囲に保たれている静謐さが印象的。ブレない姿とはこんな姿なんだなと思う。

    虚しさや苦悩を原動力として凄まじく成長する宮本武蔵、意志が弱く堕落していく又八、この2人は1−8巻を通して対照的な人間として描かれているが、2人で1人の人間のように思える。人は様々な性質を持っており、常にせめぎ合っているものだと思う。それでも、自身の弱さを制して内面的な完成を目指そうとする大切さを、吉川英治の「宮本武蔵」から学んだ。また時間をあけて読み返したい本だ。

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    2021年08月21日
  • 三国志(三)

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    今年の課題図書。もう8月だというのに、まだ3巻。他にも積読溜まってきたしどうしよう。
    呂布の退場に、袁紹と孫策。曹操たっぷりで、董承によってやられるかなと思ったけど、さすがに3巻ではそれはなかったですね。後半は玄徳と関羽、張飛の一時の別れ。嫉妬心も出そうな関羽の持てっぷり。
    赤兎馬は呂布の馬じゃないのと思っていたけど、洛陽の関帝廟に行った時に、関羽が赤兎馬乗った像があったのはそういうことだったのね。
    というわけで、早く次を読み進めます。

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    2021年08月20日
  • 新・水滸伝全四冊合本版

    購入済み

    名作です

    古今東西どんなに文明が発展しようと、人の性、権力者の腐敗、民衆の苦悩等々、現代にも相通じる内容だと思います。大陸ならではの事象も面白い、現在の中国で水滸伝さながら人傑はいるのかな?との思いも抱いたりする。

    #タメになる

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    2021年08月20日
  • 三国志(五)

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    ネタバレ

    赤壁の戦いは非常に読み応えがあった。兵法を駆使し、人の心をも読み欺き合う駆け引きの面白さ。
    一方、この戦いで膨大な死者が出たことは恐ろしく、兵の一人一人を単純な数として見ることはしたくないと思う。規模が大きくて想像もできないほどだ。
    趙雲の武人としての誇りや生き方、胸に響くものがあった。

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    2021年08月19日
  • 三国志(四)

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    ネタバレ

    諸葛亮孔明の登場。いくつかの名シーンに鳥肌が立った。世を動かす人にとって素晴らしい人材に出会うことは不可欠ということがよく分かる。
    徐庶の心の強い賢い母に感服するばかりだった。たとえ命に替えても我が子を曹操に仕えさせまいとする母の心。この一連のやり取りには息を呑んだ。曹操は一言で言い表せない要素があり、掴みきれない人物だ。本心では何を考えているのか分からない怖さを感じる。
    私利私欲にまみれた権力者にはうんざりだ。民や末端の兵の目線ではどんな世の中だったのか、どんな感覚を持っていたのか興味がある。

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    2021年07月28日