吉川英治のレビュー一覧
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ネタバレ曹操は劉備と手を組み、呂布に仕えているが劉備を慕っている陳登・陳珪親子の協力を得て猛将呂布と偽皇帝袁術を滅ぼす。
都に凱旋した曹操はますます力を持ち、劉備と親しくする一方で帝をないがしろにする振る舞いをするようになる。これを憂えた帝は忠臣の董承将軍に曹操を討てという密書を渡す。董承は仲間を募り、打倒曹操の連判状に署名した。その中には劉備の名もあった。
しかしこの密書は曹操の知るところとなり、曹操の暗殺は失敗して董承らは処刑され、劉備も曹操に敗れて河北の袁紹を頼って逃走する。関羽は劉備の家族を守っていたが、城を攻め落とされやむなく曹操に降伏する。「劉備の行方が分かれば即座に劉備の元へ帰る」と -
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ネタバレ永遠の№2と呼ばれる黒田如水が主人公の物語。登場人物一人一人の心情が細かく描かれており、楽しく読めた。秀吉の如水への信頼感や、人間味あふれる信長の行動と後悔がとっても楽しかった。ただ、如水が秀吉と出逢う所から荒木村重に幽閉され、解放されるまでしか描かれていないのがとっても残念だった。もっと吉川先生の文章で読みたかった。本能寺の変や中国大返しなど面白そうな話題がいっぱいあるのに。
「三人寄れば文殊の智というが、それは少なくとも一と一とが寄った場合のことで、零と零との会合は百人集まっても零に過ぎない。時代の行くての見えない眼ばかりがたとえ千人寄ってみたところで次の時代を見とおすことは出来ない -
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ネタバレ帝の重臣王允は、逆賊董卓とその配下の猛将呂布を美女貂蟬を用いて仲違いさせ、ついに呂布に董卓を討たせることに成功する。しかし、董卓亡き後も残党が悪事の限りを尽くし、都の情勢は悪化する一方だった。曹操はこの機に力を蓄え、残党を殲滅して帝を救う功績を挙げる。
一方、南では孫策が21歳にして孫家の後継ぎとなり、周囲の勢力を破って善政を敷いていた。
この巻は曹操の決断力や頭の良さ、人材コレクターぶりが見えて読んでて楽しい。吉川英治さんも曹操が好きみたいで、彼の長所だけでなく、こっぴどく敗戦したり美女にうつつをぬかしてしまう弱い姿をも生き生きと描いて彼という人間に深みを与えてるのがすごく印象的でした。 -
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ネタバレ吉川英治による上杉謙信と武田信玄の川中島の4度目の合戦を中心に展開する物語。
書籍のタイトルは上杉謙信だが、終生のライバルである武田信玄についても描かれており、その対比が面白い。この第4次川中島合戦だけでこのボリュームであるので、生まれてから死ぬまでを描いたとするとかなり長大な作品になったに違いない。
川中島後のいわゆる「敵に塩を送る」故事も描かれているなど、川中島それだけにはとどまらず、上杉謙信という人となりを立体的に描こうとしている。ただやはり生まれや幼少の頃の景虎、第4次川中島までの謙信が描かれていれば、もっと魅力的な人物として読者に訴えかけるものがあったのではないかと悔やまれる。 -
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ネタバレ吉川英治による平将門の一代記。
吉川英治のこと、将門記など古来からの文献を詳細にあたった上で執筆されたであろう事は想像に難くないが、これまで抱いていた平将門像とはずいぶんとかけ離れ、実にいい人且つすべからく物事に乗り気しないまま流されている印象を受ける。藤原純友と盟友となり、東西に分かれて乱を起こした大罪人で、その怨霊というか生き霊というか、その怨念の強さが故に守り神として祀られている人とは思えない。
しかしながら、それらが理由もなく描かれているわけではなく、将門記などに記されている故事を元に組み立てられているところが説得力を持たせる。
いずれにしても、乱を起こしたくて起こしたわけではなく、幼 -
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「『武蔵様も凡質とは思われませんが』
『いや決して、天稟の才質ではありますまい。その才分を自ら恃んでいる風がない。あの人は、自分の凡質を知っているから、絶えまなく、研こうとしている。人に見えない苦しみをしている。それが、何かの時、しょう然と光って出ると、人はすぐ天稟の才能だという。――勉めない人が自ららん惰をなぐさめてそういうのですよ』」
一人の人間のすさまじいまでの人間としての成長、道を求める苦難。それを続け抜いた生き方に感動します。三国志同様、一気に読んでしまいました。
しかも、話としても非常に面白く、最後に向かいすべての人間が収束していきます。見事でした。本って面白いなぁと改 -
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「『将軍家の御指南役って、偉いんだろうね』
『うむ』
『おらも大きくなったら、柳生様のようになろう』
『そんな小さい望みを持つんじゃない』
『え。…なぜ?』
『富士山をごらん』
『富士山にゃなれないよ』
『あれになろう、これに成ろうと焦心るより、富士のように、黙って、自分を動かないものに作りあげろ。世間へ媚びずに、世間から仰がれるようになれば、自然と自分の値うちは世の人がきめてくれる』」
「『人と人とが円満に住んでゆければ地上は極楽だが、人間は生れながら神の性と、悪魔の性と、誰でも二つもっている。それが、ひとつ間違うと、この世を地獄にもする。』」 -
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「志賀寺の上人でさえ、同じ血をもっていた。法然の弟子親鸞も、同じ煩みを持っていた。古来、事を成す人間ほど、生きる力の強い人間ほど、同時に、この生まれながら負って来る苦しみも強く大きい。」
「『ああ、富士山か』
武蔵は少年のように驚異の声を放った。絵に見ていた富士、胸に描いていた富士を、眼のあたりに見たのは、今が生れて初めてなのだった。
しかも寝起きの唐突に、それを自分と同じ高さに見出して、対い合ったのであるから、彼はしばらくわれを忘れ、ただ、
『――ああ』
というため息を胸の中に曳いて、瞬ぎもせず眺め入っていた。
何を感じたのであろうか、そのうちに武蔵の面には涙の玉が転びはしっ -
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「そこで吉野が説明していうには、この扇屋の囲いの中にある牡丹畑は、扇屋の建つよりもずっと以前からあるもので、百年以上も経った牡丹の古株がたくさんある。その古株から新しい花を咲かせるには、毎年、冬にかかるころ、虫のついた古株をきって、新芽の育つように剪定してやる。――薪はその時に出来るのであるが、もちろん、雑木のように沢山は出来ない。
これを短く切って炉にくべてみると、炎はやわらかいし眼には美しいし、また、瞼にしみる煙もなく、薫々とよい香りさえする。さすがに花の王者といわれるだけあって、枯れ木となって薪にされても、ただの雑木とは、この通り違うところを見ると、質の真価というものは、植物でも人間 -
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「よく強がった侍が、念仏のようにいう、必死とか、覚悟などという言葉も、武蔵の考えからすると、取るに足らないたわ言のように思える。
およそ人なみの侍が、こういう場合に立ち至った時、必死になることなどは、当然な動物性である。覚悟のほうは、やや高等な心がまえであるが、それとても、死ぬ覚悟ならば、そう難しいことではない。どうしても死なねばならぬ事態に迎えられてする死ぬ覚悟だとすれば、なおさら、誰でもすることである。
彼がなやむのは、必死の覚悟がもてないことではなく、勝つことなのだ。絶対に勝つ信条をつかむことである。」
「人生の道はいつも、一歩が機微である。また、なにかの場合に、ふだんの常識さえ -
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これも高校時代に挫折した本です。いろいろ挫折してます;
1巻目はまだ物語的な感じが強いです。
「人間の差は、年にはよらないものである。質でありまた質の研きによる。平常の修養鍛錬がものをいうことになると、王者と貧者とでも、この違いはどうにもならない。」
「『たとえば、おぬしの勇気もそうだ、今日までの振舞は、無智から来ている生命知らずの蛮勇だ、人間の勇気ではない、武士の強さとはそんなものじゃないのだ。怖いものの怖さをよく知っているのが人間の勇気であり、生命は、惜しみいたわって珠とも抱き、そして、真の死所を得ることが、真の人間というものじゃ。…惜しいと、わしがいうたのはそのことだ。おぬし -
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面白い!!!
「関羽は杯を下において、
『むかし漢の高祖は、項羽と天下を争って、戦うごとに負けていましたが、九里山の一戦に勝って、遂に四百年の基礎をすえました。不肖、われわれも皇叔と兄弟の義をむすび、君臣の契をかため、すでに二十年、浮沈興亡、極まりのない難路を越えてきましたが、決してまだ大志は挫折しておりません。他日、天下に理想を展べる日もあらんことを想えば、百難何かあらんです。お気弱いことを仰せられますな』と切に励ました。
『勝敗は兵家のつね。人の成敗みな時ありです。…時来れば自ら開き、時を得なければいかにもがいてもだめです。長い人生に処するには、得意な時にも得意に驕らず、絶望の淵に