あらすじ
将門は著者の最も食指を動かした人物の一人である。反逆者としての歴史の刻印を除きたい気持ちもあったが、純粋で虚飾のない原始人の血を将門にみたからだ。都にあっては貴族に愚弄され、故郷では大叔父国香に父の遺領を掠められ、将門はやり場のない怒りを周囲に爆発させる。それは天慶の乱に発展し、都人を震撼させる。富士はまだ火を噴き、武蔵野は原野そのままの時代だった。
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日本史において貴族の時代が終わり、武士の時代が開幕するきっかけとなった事件が平将門の乱だ。関東地方の一豪族、平将門はをあっという間に周囲を征服、中央から派遣されていた役人たちを追い出し、その勢いで自身はもう一人の天皇と称して、京へ攻め上ろうとする。結局、京の指示を受けた武士たちが将門軍を打ち負かし、将門の乱自体は短期間で終わるが、それ以後、武士階級が注目されるようになる。
こうした歴史を知っていると、平将門とは粗暴で親分肌、革命家というイメージだが、吉川英治の描く将門は全く異なる。
将門は若いころ、京へ留学したことで、都や貴族社会にあこがれを持ち、貴族には頭が上がらない。他人の意見に流されやすく、騙されやすく、激情家で女に弱い。なんとも女々しく、素朴な田舎者だ。この人が乱を起こせるのかと心配になる。
そんな将門のケツを叩くのが、不死人という架空の人物。将門の乱とほぼ同時に瀬戸内海で乱を起こした藤原純友の命を受けて、将門をたきつける。世間知らずの田舎者である将門が、影の主人公ともいえる不死人に乗せられて、過激化していくというのがこの小説の面白さ。
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吉川英治による平将門の一代記。
吉川英治のこと、将門記など古来からの文献を詳細にあたった上で執筆されたであろう事は想像に難くないが、これまで抱いていた平将門像とはずいぶんとかけ離れ、実にいい人且つすべからく物事に乗り気しないまま流されている印象を受ける。藤原純友と盟友となり、東西に分かれて乱を起こした大罪人で、その怨霊というか生き霊というか、その怨念の強さが故に守り神として祀られている人とは思えない。
しかしながら、それらが理由もなく描かれているわけではなく、将門記などに記されている故事を元に組み立てられているところが説得力を持たせる。
いずれにしても、乱を起こしたくて起こしたわけではなく、幼き頃より虐げられていた親類を敵に回して、将門からすれば正義を行っただけであるのに、大罪人として追われ、ついにはあっけなくしんでしまう将門の生き様は、時代に翻弄されたという側面もあると思うが、やはり切なく、やりきれない思いがする。むしろ、やりたい放題をして思い残すことなく討たれる方が、読者としてはスッキリするのだろうが。
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陰陽師 瀧夜叉姫を読んで将門について読みたくなった。
こうして読んでみると、将門についてあまり知らなかったと改めて思う。
平将門といえば将門の乱と首と怨霊伝説。
怨霊になるのも理解できる叔父からの仕打ちではあるけど、それはあくまでも身内的なことで、そこから何故そこまで広がっていったか。人柄ゆえ利用されただけのような印象でもある。
後の関東武者の礎というには少し弱い気もする。
気の毒な人ではあっただろう。
小説としてはわかりやすく読みやすかった。
せっかくなので、純友の話を読んでみようと思う。
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正直こんな歴史小説、初めて読んだ感あり。
主人公に志は感じられず、当方のような凡民みたく、儘ならぬ人生に苦闘する。
作家も遠回しに的に書いてましたが、任侠ものそのもの。何かを見出す史上の人物ではないかも。
でもだからこそ今でも庶民の中に名が知れているのかもなぁ。純友なんか無名に近いことも鑑みると尚更思えます。
Posted by ブクログ
この本を読んで
「将門って本当はいい人なのよ」
と友人が言っていた理由がやっと分かりました。
大それた野心の無い、純朴で熱い田舎青年。それが平将門です。納得!
この時代のことをあまり知らなくて、藤原純友との共謀はフィクションなのかが謎です。フィクションだと思うけど、そうじゃなかったらすごいことだなって思って。
それが気になるのでこの時代の本をもうちょっと読んでみたいです。
普通に忠平の目線での話なんかないかしら。
将門記(しょうもんき)を参考にしているだろうから、そんなのないのかな・・・
ところで、吉川 英治の作品をちゃんと読んだのは初めてです。
この人句読点が多いのね。
私のリズムとは合わなくてたまにつっかえます
面白かったのに、残念。(←こんな感じ)