吉川英治のレビュー一覧
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ついに幕府への反旗をひるがえした足利高氏。怒涛の勢いで六波羅に迫り、これを蹂躙した。また同時期に東方では新田義貞が決起し、鎌倉を急襲する。果敢に抵抗する鎌倉武者もいたがその勢いには逆らえ得ず、百五十年に及んだ鎌倉幕府は遂にその幕を閉じる。
争乱の世が終わり、平和な時代がやってくると思われたのも束の間。戦後の褒賞・利権をめぐり公卿と武士、また武家同士での対立が起こり、世の風に再び火種が孕まれることとなる―。
ついに鎌倉幕府滅亡となりました。
滅んでいくものへの哀れみはやはり日本人独特の感性でしょうか、敗者の散っていく様は涙を誘うものがあります。
ほとんどの武士は勤皇精神ではなく、飼い殺しにされ -
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隠岐島へ流され幽閉の身となった後醍醐天皇だが、その持つ政治的影響力は全く衰えずむしろ日に日に強くなっていく。
一度は下火となった宮方だったが後醍醐天皇奪還の成功により、千早城で頑強な抵抗を続けていた楠木正成を始めとする一味の、倒幕の気運はいよいよ高まっていく。
高氏率いる足利家にも、ついに派兵の命が下る。長年胸に秘めてきた野望を成就させる機会が、ついに訪れた。不退転の覚悟で、高氏は西上を開始する―。
後醍醐天皇の奪還作戦と、楠木正成の頑強な籠城戦が主に描かれています。
中でも楠木正成の人となりが、神格化されず等身大として描かれています。見た目は平凡だのに、接してみるとその人格に心を打たれる。 -
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後醍醐天皇からの勅使を受け、楠木正成はようやく挙兵を決意する。正成の参戦と笠置山での勝利で宮方は勢いに乗るが、幕府の奇襲によりあえなく敗北。後醍醐天皇は隠岐島へ流され、他の公卿たちも流罪や断罪に処された。しかし水面下では楠木正成の工作が進んでいた―。
後醍醐天皇の流罪の様子が主に描かれています。
またそれに伴い佐々木道誉が生き生きと暗躍しています。
これで大方は鎌倉の勝利に終わったかのように見えますが、後醍醐天皇が撒いていった争乱の種、また自らを死んだように思わせた楠木正成の動向が今後どのような実を結んでいくのか、次が楽しみです。
平家物語にもある諸行の無常さがここでもよく感じられます。ま -
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北条政権末期、政治は乱れ幕府の求心力は失われつつあった。再び乱世の観を呈しつつあるこの時代に、後に室町幕府の開祖となる足利高氏が登場する―。
この時代、鎌倉末期・南北朝時代・室町時代についてはよくイメージを持っていなかったのですが、それが全く関係なく、とても面白く読めます。
足利尊氏、新田義貞、後醍醐天皇、佐々木道誉といった鍵を握る人物達が登場し、生き生きと描かれています。
高氏の秘めた野望がどう帰結していくのか、続きが楽しみです。
吉川作品を読むのはこれで二作目ですが、しかし面白い。おそらく絡めて書くのが上手いのでしょう。素晴らしいエンターテインメントです。 -
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お通・城太郎の旅路
朱美の受難
小次郎の登場と又八との出会い
清十郎と武蔵の立ち合い、そして伝七郎の登場
が描かれています。
武蔵の剣も精神も更なる研鑽を見せています。
光悦との出会いにより、今後どうなっていくのか楽しみです。
武蔵を追うお通と朱美の運命が悲惨すぎます・・・。
朱美は清十郎に犯され、後に小次郎の狂った愛を受けることになるし(ここでは小次郎はかなりの危険人物として描かれています)、お通はお杉婆に苦しめられることになります。
彼女らの旅もどうなっていくのでしょう。
この巻では人間模様が多分に描かれていると感じました。武蔵を中心に動いていく奇妙な人間の縁、どうなっていく -
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一巻~八巻全部の感想
コミック「バガボンド」を二十巻ぐらい読んでから、この本を手にとりました。コミックで、ある程度人物をイメージできてたので、長いなが~い長編でしたがサクサク読めました。
武蔵、お通、又八、城太郎、吉岡、お杉婆、朱美、佐々木小次郎もろもろ、それぞれの視点からのストーリーも描かれおりよかったですね。
お通の武蔵を想う恋、武蔵に異常な執念を燃やすお杉婆、武蔵と親友であった又八の裏切り、嫉妬・・・
コミックと違い(原作だからそれはそうか(笑))、佐々木小次郎は高慢で憎らしいキャラクターでいかにも悪者という感じでした。さすが、最後のラストボス(笑)武蔵と最後の闘いは -
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曹操も悪人ってわけじゃないんだなぁ。
前もそう思っていたけれど、今回も思った。
あれだけ優秀な武将を集めて離さずに上手に用いるのはすごい。
さすがに、三国時代を勝ち抜くだけあるんだなぁ。
呉は孫策が死んで、孫権に代わった。
孫権って曹操や劉備より20歳近く年下なのか。若!
劉備は負けまくってボロボロになっていた。
関羽の話す泥魚の話がいい感じだった。
泥魚っていう魚は川が干上がると体を泥にくるんでじっと横たわる。鳥に食われることもない。でも、水が戻ってくると、泥をはいで、自由に動き回る。「――人間も幾たびか泥魚の隠忍にならうべき時期があると思うのでございまする」
劉備はこの巻の後半で孔明