三浦しをんのレビュー一覧
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上巻に引き続いて読む。
こちらはどちらかというと本村がクローズアップされているような気がする。
彼女のシロイヌナズナの4倍体を作るという実験を軸に話が進んでいく。
物語の序盤で、藤丸に実験を見せているときの本村からは、おとなしいながらもてきぱきとした才女という雰囲気を感じていたが、だんだん違った面が見えてくる。
どちらかというと不器用だったり、博論執筆までに実験がうまくいくのかという不安にさいなまれたりする姿が描かれる。
ただ、そこは「三浦節」で、何か笑えてしまう隙がぐいぐい抉られていく。
それにしても、遺伝子AHOとAHHOというのは…?
これは実在するものなのか?
あるとすれば…よく -
Posted by ブクログ
文楽、林業、辞書制作などなど。
三浦さんの作品ではディープな世界を、登場人物の肩越しにのぞき込むことができて楽しい。
今作では植物学。
T大学ご近所で、古くからある洋食屋「円服亭」の見習い料理人藤丸陽太青年を案内人として、密林のようにディープな世界に入っていくことになる。
この青年が、底抜けに明るく、人が好く、本当に嫌みがないおかげで楽しく読み続けられる。
彼の眼には、大学の建物も、実験の手続きも、全てが新鮮で、神秘的で、魅力的に見えるのだ。
このお人よしの藤丸が、出前を届けに行ったT大理学部松田研究室で、運命の出会いを経験する。
大学院生の本村紗英。
植物を愛し、シロイヌナズナの研究に打 -
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贅沢な列車に、贅沢な名前の並ぶ小説
それぞれの物語がとてもあたたかい気持ちになる
そこに乗車するそれぞれが
何らかの思いを一緒に乗せて旅に出る
誰かを大切に思って
大切な人を誘って
願い叶わなかった列車の旅になっても
「その人を思い出すこと」が供養にもなる
1話目の
さよなら、波瑠/井上荒野
一見、芯もあって強くて…こういう人の気持ちが
苦しくて苦しくてね
思わず感情移入、涙が出た
糸井重里さんの
「帰るところがあるから、旅人になれる」
当たり前なんだけど
そんなふうに考えたことなかったからね
さすがだな、
糸井さんの言葉だな、って思った
静かな気持ちで読めるキレイな本でした -
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ネタバレ「匂う」小説として有名な作品だったので手に取りました。
「匂う」とかではなく、直接的な表現を避けた文学的なそちら側の小説という印象を受けました。
まず二人の設定で察しました。
今までそちら側の漫画・小説をいくつか読んできましたが、目を奪われる出会い、お互いへの罪の意識、付かず離れずの関係、これらは確実にそちら側の作品に多用される関係性だと思いますし、確実に我々を誘っています(笑)。
他にも、昔ながらの日本家屋、みすず達理解ある幼馴染、成人男性二人には狭いであろう軽トラ、美しい少年に心奪われる教師、などなど、好きなものが詰め込まれていましたよ、ええ。
あえて言えば、直接的な表現を避けたせい -
Posted by ブクログ
他者と自意識かぁ、、
どちらも、あったら厄介だけど、若さの象徴のイメージだな。自分らしさを確立するための養分になることも大いにある。
生きやすさという視点とはまた別で。
好きじゃないことはしなくていい!と言い切るのは難しいけど、必要以上に他者を気にするのも不毛。いい塩梅って人によるし、正解はないし、その時々で違うし、まさにその辺を両立しようと思うと漂流しているような感覚になるのかも。
下世話すぎる話もあったけど、2人とも自分の周りの人たちとまた全然違うタイプで面白かったな。
自分が彼女たちと対談してもこんなエピソードは聞けないだろうなとも思うし。
対談本もやはり面白い。