櫻井祐子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこういう国際情勢分析・予測の類は好きなので、面白く読みました。
分析は鋭く、中国・ロシアにおいては見事に的中しているケースを実際に目の当たりにしています。
これらから先 20、30年の予測については完全に将来予測ですが、一見して信じがたい分析が行われています。曰く、トルコと日本がユーラシアの支配権を強め、アメリカと対立し、最終的には米日、米土戦争が起こるというもの。この分析についてはいろいろと抜け落ちている要素を感じて突っ込みたくなりますが、分析自体は論理的で非常に面白い。
それ以降は戦争計画から実際の戦争に至る予測が続きますが、かなりSF小説的内容になっており、私は興味を失いました。(国際情勢分析を知りたいのであってSF小説が読みたいわけではないので) -
Posted by ブクログ
マイケル・ポーター、久しぶりである。
ポーターは、戦略というか、経営について考えるときに、知っていなければ、話しにならないのだけど、なんか理屈ぽい、というか、市場をいろいろ分析して、知的に自分のポジション、戦略を設定する、という合理主義的・客観主義なフレームの人という印象であった。で、現場力というより、知的なトップによるトップダウン経営というイメージ。
戦略論的には、ポーターより、コアコンピタンスとか、リソース・ベースト・ビューみたいな内部的な「強み」に注目するアプローチのほうが、好きだし、ミンツバーグ的なやっているうちにできてしまう、という創発的な考え方により共感している。
というある種のネガティブイメージをもちつつ、頭の整理のために、コンパクトにまとまっていそうな本書を読んでみた。この本の著者は、ポーターではなくて、近年、一緒に活動することが多いジョアン・マグレッタによるもの。最近のポーターの考え方もアップデートして、ポーターの主要な概念を解説している。
書いてあることは、一応、どこかで読んだ(主に、HBRの論文)ことなんだけど、こうして、ポーターのいっていることを、全体としてまとめると、「そうだったのか!そこがそうつながるのか!」とかなり目から鱗が落ちる感覚があった。
で、ポーターの言っていることと、自分が考えているというか、大事だと考えていることに大きな違いがないことが分かって、驚いた。これまで、食わず嫌いだったことを反省した。
主に共感したところは、
・要するに戦略とはナンバーワンになることでなく、オンリーワンになることである。自社にしかできない価値をお客様に継続的に提供すること
・5フォースとかの環境分析をなんか考えて、うまいポジションを見つければいい、というようなものではなく、一つの正解があるわけではないんだから、経営層がしっかり議論して合意するしかない
・戦略を決めるのに、未来の予測は必要なく、こういう方向に変って行くとか、こういう顧客のニーズが増えて行くという方向感があれば、十分で、それに向かって一種の賭けとして、戦略を決める
・で、議論をつくしたうえで、役員で合意する。そして、その戦略に納得しない役員はやめていただく
・戦略を決めたら、顧客への提供価値を他に模倣されないようなヴァリューチェーンをつくっていく
・戦略は、何をするか、というより何をしないか、ということで、トレードオフが存在する。そうした選択にもとづいて、たくさんの他の会社にできないような選択をヴァリュー・チェインのなかに組み込むこむ。具体的には、様々な活動を一つの戦略に埋め込んで行く
・一旦、戦略を決めたら、ある程度の期間、それを継続して、同じことを何度も何度も言い続けて、従業員に浸透させていく
・といっても、業界全体の効率性の追求というところで、他社に遅れてはいけない。トレードオフの選択に関係のない業務の効率化は徹底すべき
・戦略はむしろオープンにしたほうがいい。外部に対して、こういうポジションで、ここに集中すること、徹底することを宣言すれば、他社がそこに入っていこうという意志を削ぐことができる
・長期に継続的に戦略を維持することは、時代の変化、破壊的なイノベーションに遅れを取るという意見もあるが、本当に本質的な環境変化はあまりなく、戦略を明確にしたほうが、顧客価値をどうしたら変化のなかで維持するか、ということに絞って取り組む。このことによって、逆説的ではあるが、変化への対応力が高くなる
という感じ。
そんなことだったんだ。
と納得するとともに、「まあ、そういうことであれば、とくに異論はありません」というか、「RBVのバーニーとの論争って、結局、なんだったんですか?」とか、「本当に最初からそう思っていたんですか?」「年とって丸くなったんじゃないですか?」、みたいな気持ちになりました。
よくまとまった本だと思います。ポーターを読もうと思う人は、これから始めるといいと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレマーケットデザインでノーベル賞を受賞した著者自身による本書はかなり具体的な例をたくさんあげており、数学的な話もなくかなり読みやすい。マーケットというものの存在意義自体についても考えさせられる点が多かった。
例えば小麦なども、もともとは相対での取引であった。そこでは実際に小麦の質を見聞し、農家の素性を調べ、、、ということが必要であったが、市場が「十分に厚みを増す(買い手はどの売り手からも買え、売り手はどの買い手にも売ることができる)」ことによって小麦市場はコモディティ化した。コモディティ化してしまえば品質や種類は格付けされ、買い手は実際に確かめなくても安心して買うことができるようになった。
コモディティ市場の対極にあるのがマッチング市場である。こういう市場ではデザインによって市場がうまく機能したり厚みを増すように改善できる。
物々交換取引が難しいのは「自分がほしいと思うものをもっていて、かつ自分のもっているものをほしがっている相手を見つける」という点にあり、これが「欲求の二重の一致」という難問である。貨幣を媒介とできる場合は解決が簡単である。自分がほしいものをもっている人さえ見つければよい。しかし、腎臓移植のように金銭を解することが望ましくない場合は
金銭を介さずに効率的に機能する、クリアリングハウスをデザインする必要がある。
・腎移植
腎臓の場合はドナーAからレシピエントAに移植すればそれで終わりだが、ドナーAとレシピエントAの組織型が適合しない場合も多く、そのような場合、別の腎移植ペアを見つけてきてドナーAからレシピエントB、ドナーBからレシピエントAとすることで、0件の腎移植が2件に増える。このペアの数をどんどん伸ばせばそれだけ恩恵を受けられる患者が増える。ただし、自分のレシピエントが移植を受けたらドナーになるのを拒否するというペアが出ても困るので、通常はすべてのペアを同時に手術する。そのため、チェーンをあまり長く伸ばすことができないでいるが、レシピエントが腎臓を受け取ってから同じペアのドナーが提供するまでに数ヶ月の期間が空いたことも何度かあり、約束を反故にするような人はこれまでいなかったという。
・抜け駆け
研修医のフェローシッププログラムの責任者はできるだけ優秀な研修医を採用したいと思っている。どのプログラムも同じことを考えているため、早期採用がどんどん進み、三年間の研修医生活の一年目でプログラム先が決まることが常態化してしまい、その結果、採用側も人となりがわかりやすい地元の研修医の採用にかたよるということになっていた。
著者らは早期採用の中止を提案したが、これは受け入れてもらえなかったため、早期オファーを受けた応募者は、後でクリアリングハウスを介してよりよいオファーがあれば断ってもよいということにした。この方式であれば、研修医の資質を見極める前に抜け駆けして青田刈りをすることのインセンティブがなくなるため、早期採用がなくなった。囲い込んでも優秀な研修医ほどよりよいオファーを後で受けて断ってくるため、プログラムとしては期待を下回る効果しかあげられないからである。
・早すぎる市場
証券市場ではサーバーのすぐ近くに端末を置き、ミリ秒単位の取引を繰り返すトレーダーがいるが、リアルタイムの取引をやめ、一秒ごとに板寄せする方式にすればよい
・シグナルを送る
就職や大学(米国では)の出願は、近年随分簡単になっており、数百件の応募を一気にすることもできるようになっている。受け取る側も多量の応募を受け取るため、有能な応募者を見附、本当に関心を持っている(面接をするに値する)者をよりわけることが困難になっている。カバーレターに志望動機を書いたり、見学に行ったりすることは本当に関心を持っていることを相手に示すシグナルとして働く。オークションなどは、最高入札者が「自分はその品物を他の誰よりも高く評価している」というシグナルであり、しかもそのコストが無駄にならないため、オークション形式は古くから重宝されてきた。 -
Posted by ブクログ
このような本があることを知ってはいたのですが、ある本を読んでいて初めて題名を知りました。あの有名なフリードマン氏が書かれた本の訳本が、2009年に単行本で発行されたものが文庫化されたものです。
私が興味を持っている「地政学」を駆使して、全世界の今後100年間にわたる予測を行っています。気になった所に付箋を貼りながら読むのですが、本が付箋で一杯になりました。凄い本でした。
21世紀もアメリカが世界一であり続けるのが結論ですが、それに挑戦する国として、日本がトルコと同盟を組んで挑み敗北するというストーリーが印象的でした。
つい数年前までは大国化すると騒がれていた、中国、インド、ブラジル、ロシアは難しいようですね。ロシアの衰退に代わって欧州で成長するのは、現時点で一人勝ちしているドイツではなく、ポーランドというのが驚きでした。
また、メキシコが経済大国化して、アメリカとの事実上の国境が北上して、かつてのメキシコ領土に迫る、という考え方も面白かったです。この本は、すでに続編が二冊も出されているようです。これからそれらを読むのが楽しみです。
以下は気になったポイントです。
・アメリカへの次なる挑戦者は中国とは言い難い、理由として、1)孤立した国であり領土を拡大できない、2)海軍国ではない、3)本質的に不安定、内陸部の国民は貧困のまま(p21)
・世紀半ばに他の強国が台頭する、日本、トルコ、ポーランドである(p22)
・宇宙で発電した電力をマイクロ波に変換して地上に送信するという、戦争前に開発された構想が、来たる世界大戦中に試作から実用化へ移行する(p23)
・統一ヨーロッパが実現しなかった理由は、英仏海峡である。最初はスペイン、続いてフランス、最後にドイツが大陸の支配に成功したが、統一できなかった。(p43)
・イスラム教徒が多数派を占める旧ソ連共和国(アゼルバイジャン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギスタン、カザフスタン)は、ソ連が崩壊するといきなり独立した。(p63)
・出生率の低下と平均余命の延びの鈍化により、人口増加は終わらざるとえない(p93)
・ロシアにとって冷戦後の世界が本当の意味で終焉を迎えたのは、2004年12-1月にかけて、ウクライナでオレンジ革命が起きた時)p115)
・インドネシアとパキスタン以外に、主要イスラム系国民国家は3つある、人口8000万人のエジプト、7100万のトルコ、6500万人のエジプト(p126)
・過去50年で約4倍に増えたメキシコの人口は、今後50年間で安定する、人口減少に悩まされることなく労働力が確保できるのが強味(p132)
・中国を地政学的に見た場合、島国である、他の地域から事実上隔離されている(p141)
・中国政府が拠り所にしているのは、1)国家を運営する巨大な官僚機構、2)共産党の意思を執行する軍事安全保障機構(p152)
・ロシアは2000年ころに戦略を転換した、1世紀に渡って取り組んできた工業開発に見切りをつけて、エネルギー資源を中心とする資源輸出国となった(p163)
・アメリカで220周年前から続いている周期の信頼性が高いとすると、現在は1980年のレーガン選出に始まった第五期の真っただ中、このパターンは2030年頃まで存続する、2032年の選挙で決定的な転換がなされるだろう(p195)
・社会保障制度が退職年齢を65歳と設定したとき、平均余命は61歳だった。その平均年齢の延長が年金制度の収支計算を変えてしまった(p201)
・2040年代までに、アメリカは、日本・トルコ・ポーランドと同盟を組んでいるが、日米間には著しい利害の不一致が生じている、アメリカは韓国(統一朝鮮)および中国の政府と手を組んでいる(p220)
・アメリカは金のかかる非効率的な従来の戦略を放棄して、その代りに、極超音速無人機のシステムを構築する(p253)
・20世紀に戦争を戦うには、何千人もの爆撃手と何百万丁ものライフル銃が必要だった、21世紀には、この数分の1で戦えるようになり、総力戦の終わりを告げる(p268)
・21世紀の制海権は、外航艦隊よりも敵艦を識別し、狙う事のできる宇宙システムに依存するようになる(p275)
・21世紀の戦争にとっての電力は、20世紀の戦争にとっての石油に相当する(p303)
・2050年代の戦争中に、新しいシステムの本格利用が始まるだろう、2060年代の宇宙発電計画を通じて、宇宙発電は日常生活の一部分となる(p327)
・貧しい国から富める方への人口移動は起こるが逆は無い。メキシコとの政治的境界は変化していないが、文化的境界は北方に移動している(p336)
・社会的、政治的危機が起きる2030年ころまでにロボット技術の実用化に向けた試験が行われて商業化の準備が整うだろう、2030年のロボットは、1975年ころのコンピュータだろう(p338)
2016年2月20日作成 -
Posted by ブクログ
「影のCIA」と言われる情報機関の創始者が、今後100年の世界情勢の変化を地政学的見地から予測したものである。2009年に単行本で発刊され、今般文庫化された。
単行本発刊後まもなく本書を読んだときに最も印象に残ったのは、2020年代以降トルコとポーランドが存在感を大きく高め、2060年代にはメキシコが世界有数の大国になるということであった。因みに、米国は今後100年間覇権国であり続けるが、中国とロシアの影響力は大きく低下するという。いずれも、地政学的見地から論理的に予測した結論である。
単行本発刊後5年が経っており、本書の内容と現在の世界情勢を比較してみると、ロシアのウクライナへの介入は予測された通りであるが、nation stateの枠組みを超えるIslamic Stateの出現などのイスラム世界の混乱は予測の範囲を超えている。
しかし、本書の重要性は、予測が実際に的中するか否かというより、欧米の最先端の専門家が国際情勢を分析・予測するにあたり、どのようなアプローチをとり、どのような思考プロセスを辿るかを知ることである。
国際社会において主要プレーヤーとして戦うためには、相手の思考・作戦を読むことは不可欠であり、そのためにこそ価値ある書と思う。
(2010年1月単行本了)