【本書の核心メッセージ:人はタンパク質を求めて食べている】
人間は他の生物と同様に、タンパク質に対して非常に強い食欲を持ち、その欲求が何をどれだけ食べるかを決定している。脂肪や炭水化物ではなく、タンパク質の摂取量を満たそうとする力(タンパク質レバレッジ仮説)が、現代の過食と肥満の根本原因である。
【タンパク質:生命を支える最重要栄養素】
タンパク質とその構成要素であるアミノ酸は、分子中に窒素を含み、ホルモン、酵素、DNA、RNAなど体内のあらゆる重要物質を構成する。人間はタンパク質を摂取しなければ生きていくことができない。
【脂肪:体を守り、細胞を形作る存在】
脂肪は寒さから体を守り、ビタミンを貯蔵し、肌を潤し、眼球や関節を衝撃から守る。脂肪酸は全ての細胞膜を構成する重要な要素であり、脂肪なしでは生命は維持できない。
【炭水化物:エネルギー源であり構造材料】
炭水化物は糖類・デンプン・食物繊維に分類され、最小単位はグルコースやフルクトースである。グルコースはエネルギー源であるだけでなく、窒素と結びつきDNAやRNAの構築にも関わる。人体はタンパク質や脂肪からもグルコースを生成できるため、理論上は炭水化物を摂取しなくても生きられる。
【ビタミン・ミネラル:微量だが不可欠な栄養素】
ビタミンとミネラルは必要量こそ少ないが、生命活動に不可欠な微量栄養素である。ナトリウム、カリウム、カルシウムなどが電流を生み、心臓の鼓動や神経伝達を可能にしている。栄養は単体ではなく、全体のバランスで考える必要がある。母乳はその理想形である。
【食物繊維:食欲を抑え、腸と心を整える】
食物繊維は満腹感を高め、消化吸収を遅らせ、腸内微生物の餌となる。腸内細菌はその見返りに短鎖脂肪酸やビタミンなど重要な栄養素を産生し、免疫や精神の健康にも寄与する。食物繊維は食欲のブレーキである。
【沖縄食に見る食物繊維の力】
伝統的な沖縄の食事は食物繊維が豊富で、肥満とほぼ無縁だった。主な炭水化物源であるサツマイモや野菜、果物に含まれる繊維が、空腹感を抑え過剰摂取を防いでいた。
【乳糖と人類の進化】
哺乳類の乳に含まれる乳糖は、乳児期のみ分泌されるラクターゼで分解される。酪農文化では、発酵による乳糖分解(ヨーグルト・チーズ)と、成人後もラクターゼを分泌できる遺伝的進化によって克服されてきた。
【超加工食品と栄養転換】
伝統的な食環境が、科学的に設計された超加工食品に置き換わると、必ず肥満と関連疾患が増加する。超加工食品の摂取増加は、糖尿病、心疾患、脳卒中などの増加と強く結びついている。
【超加工食品が食欲を暴走させる理由】
超加工食品ではタンパク質が脂肪と炭水化物で薄められ、食物繊維と微量栄養素が除去されている。その結果、タンパク質欲求を満たすために人は食べ続け、必要以上にカロリーを摂取してしまう。
【食物繊維を除くと食欲のブレーキが壊れる】
リンゴ4個は食べられなくても、リンゴジュースなら簡単に飲める。これは繊維が取り除かれたためである。繊維の除去は食欲のブレーキを切る行為であり、肥満と超加工食品の関係を象徴している。
【低タンパク・低繊維・低コストの誘惑】
脂肪と炭水化物が多く、繊維とタンパク質が少ない食品はおいしく、安く、大量に食べられる。結果として超加工食品は市場で圧倒的優位に立った。
【二酸化炭素増加が食の質を下げている】
大気中のCO₂濃度上昇は光合成を促進し、作物中のデンプンを増やす一方、タンパク質・食物繊維・微量栄養素を希薄化させている。これは超加工食品と同じ方向の変化である。
【食品産業の構造的な問題】
食品は誰にとっても必需品であり、食品産業は常に成長と利益を求められる。その結果、安価な原料を加工し高付加価値商品に変える構造が生まれている。
【子どもの食嗜好は一生続く】
子ども時代の食の好みは生涯続き、次世代にも影響する。食品会社が子ども向けマーケティングに力を入れるのは、将来の顧客を確保するためである。
【健康そうに見える表示の罠】
緑のラベルや「果糖入り」「フルーツ〇%」などの表示は健康的に見えるが、実際には加工食品の摂取を増やす結果を招いている。
【インスリンと肥満・糖尿病】
インスリンは血糖調整とタンパク質分解抑制に重要な役割を果たすが、過剰摂取が続くとインスリン抵抗性が生じ、2型糖尿病へと進行する。
【妊娠期・乳児期の栄養が一生を決める】
低タンパク食の母親から生まれた子どもは内臓脂肪が多く、血圧上昇の兆候も見られる。一方、母乳は低タンパクだが、脳の発達と長い学習期間を可能にする最適な設計である。
【年齢によって最適なタンパク質量は変わる】
中年期はやや低タンパク・高繊維が健康と老化抑制に有効だが、高齢期には筋肉維持のため再びタンパク質量を増やす必要がある。
【食欲は敵ではなく調整装置】
極端に炭水化物やタンパク質を制限すると、逆に強い欲求が生まれる。食欲は私たちをバランスの取れた食事へ導こうとする自然の仕組みである。
【超加工食品を見分ける実践的ヒント】
家庭で使わない成分名や、多数の添加物が並ぶ食品は超加工食品である可能性が高い。
【印象に残った言葉】
食欲は最高の調味料