村田沙耶香のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『世界99』、上巻よりは読みやすかった。
出てくる男性は少ないけど、ことごとく気持ち悪い。自分が被害者だと思っているのに、実際には加害者のような存在ばかりだった。
そして一番印象に残ったのは、自分(男)の中にも無意識の「女性はこうするもの」という前提があったこと。
「女性が子育てをするべき」なんて当たり前ではないと思っていたし、自分ではそういう考え方をしているつもりもなかった。でも最近、彼女に「ご飯は自分が作るよ」と言ったとき、その言葉の裏には「世の中、女性がご飯を作ることが多いよね」という前提があったことに気づいた。
分かっているつもりだったのに、自分もその「当たり前」を前提に言葉を発していた。そのことに少し自己嫌悪した。
空子も、そういう社会の「当たり前」に合わせ続けるうちに、自分で選ぶことを手放してしまったのかもしれない。
自由になれば幸せになれるとは限らない。空子が最後にピョコるんになったのは、自由から逃げたようにも見えるし、それが空子にとっての幸福だったようにも見える。
自分では気づいているつもりだった「当たり前」を、もう一度考えさせられた作品だった。 -
Posted by ブクログ
「家族欲」を満たすために、カゾクヨナニーという行為をする主人公。
恋人ができ「この人、私を使ってカゾクヨナニーをしている」と感じてゾッとする。
そして、母や父も、家族を使ってカゾクヨナニーをしているのだ。
作者ならではの、独特な概念を通して語られる世界観。
一人称で語られる小説でありながら、終盤で主人公の世界の見え方が大きく変化し(覚醒したのか狂ったのか)、信用ならない語り手に変貌するいつものパターンなので、そこで語られる内容がどこまで信じていいのか実際に何が起きてるのかわからなくなる。
これ、父と弟はどうなったの?
トビラの外へ「ただいま」って言いながら出て行ったけど、どんな姿でどこへ行った(「帰った」)の?
母親にすごく親近感を感じてしまい、作中かなり辛辣に語られていたのでなんだかグサグサ傷ついてしまった。
私も家族欲が満たされないまま大人になったので、家族欲を満たしたくて子供を3人持った気もするので、この母親と主人公の関係性みたいになってないか不安になった。
母親も、生育環境でみたされなかった「家族欲」を、今の家庭で母というパーツとして「役割」を果たすことで満たしているんだろう。
娘が壊れたと感じて、家族のパーツを失う危機感で「いい家族」らしさを増しましで演じ始めたんだろうな。
食べるシーンで食品や所作が気持ち悪い言葉で描かれたり、それ以外でも人の表情の変化や肉体的な造形を気持ち悪い語彙で露悪的に表現されたりしているので、読んでて顔が険しくなりがちだった。
これも作者による心理コントロールなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレずっとぼんやり意味がわからないまま、淡々と進んでいった。神話みたい。とんでもなくグロテスクなのになんとなく表面上綺麗に見せてて、それを受け入れて慣れてしまうと、違和感すら感じられなくなる。そういう状況に閉じ込められる体験。
読み終わった後は人と話すときに自分の仮面を意識してしまう。
あ、いま、反応して、呼応して、あまり思ってもないことを言ってしまった。気持ち悪い。
普段は違和感を持たずにやっている、生きるためのずるさに自覚的になる。
ずるくなっているとき、自分はどこに行ってしまっているんだろう。それがずっと続いたら、自分は上書きされるんだろうか。
行き着く先は疲れと、ピョコルンなんだろうか。
遅効性の毒みたいな本だった。 -
Posted by ブクログ
こんな世界になってもいいと思う
こう思いました。人間の三大欲求が、最先端に排除されてもおかしくない。この物語は性欲だけだったけど、眠らなくても良くなる注射や、カプセルひとつ飲んだだけで腹が膨れる薬が開発されてもいいのではないか、と思いました。
村田沙耶香さんの世界観のある小説で最高でした!
今回も村田ワールド(私そう呼んでいます)全開で、少し変わった世界を描いている。
少しおぞましいようだけれど、これはこれでいいのかな、とも思いました。
私が感じたのは、地球を4等分にして、その一部に住んでいる人達の物語、というようなものを感じました。
地球だけど、地球ではない。そんな感覚でした。