村田沙耶香のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
数年前に読んだ本の再読。最高に面白い。
そうそうと思った箇所は、以前Kidnle上でハイライトしていた箇所であった。
>「……なんか、宗教みたいっすね」
>そうですよ、と反射的に心の中で答える。これから、私たちは「店員」という、コンビニのための存在になるのだ。
朝礼のシーンである。主人公は、「コンビニ店員」という社会の歯車、一部になることを心から望んでいる。一人の人間ではなく、コンビニ店員であれば、機械と同様であり、変に介入されることもない。
主人公は、死んでいる鳥を焼き鳥にしたら美味しそうと言ったり、喧嘩を止めるために男子生徒の頭をスコップで叩くといった”普通ではない”こ -
Posted by ブクログ
ネタバレ本屋でたまたま手に取った一冊。最初は「ディストピアもの」という設定に構えていたけれど、読み進めるうちに、今の自分たちが無意識にやっていることの延長線としてあり得るなと思ってゾワッとした。
自分の心地よい世界を守るために、別の世界を作ってキャラを使い分けながらコミュニケーションをとる姿。これって、今の世の中で生きていくために、私たちが当たり前のようにやっている「自己防衛」そのもの。面倒な現実や汚らわしいものを見ないようにして、自分のテリトリーから追い出す。そうやって自分を保つことは、今の社会では生きていくための「正解」ですらある。
もう一つこの本が視点として与えてくれたのは、「自分たちの -
Posted by ブクログ
やはり面白い。これほど世の中をデフォルメしつつ、生々しいリアリティを伝えてくれる作品はなかなかない。滑稽でユーモラスに感じることもあれば、生き残るために切実に普通を求めるお話でもある。
昔から家族に”普通”になることを望まれていたのだけど、本人は普通の基準がわからない。
そんな彼女がコンビニに出会い、その店員としてコンビニの部品になることで、普通に生きるための基準を得る。
コンビニというシステムの中で部品となることで輝く古倉恵子。
そんな彼女が結婚適齢期を過ぎてもコンビニバイトをし続けることに奇異の目を向ける世間…。
芥川賞受賞後にすぐ読んだので、その時以来だが今のほうが面白く読めた。いくつ -
Posted by ブクログ
年末年始の帰省中に読みました。
あっという間に読み終えてしまいました。私はハッピーエンドだと思います。
「普通の幸せって何?」「普通の生き方って何?」を考えさせられました。
結婚して、子どもを産んで、安定した仕事に就く——それが“幸せの形”だと無意識のうちに思い込んでいて、それに苦しんでいる人も多いと思います。
でも主人公のように、コンビニで働くことに喜びを感じ、自分の役割を果たしていると感じられるなら、それは立派な「幸せ」。
誰にも迷惑をかけず、その人自身が満ち足りているなら、それで十分のような気がします。
「仕事は?」「結婚は?」「子どもは?」の話題になりがちな帰省中に読んだのも良か -
Posted by ブクログ
ネタバレこれが芥川賞を取る作品なんだと思った。
主人公を誰か正社員で雇ってあげて欲しい(しかしそうすると物語が破綻する)
読んでて怖かった。主人公と自分を重ねて読んでしまった。自分の内面を言い当てられてるみたい。自分の仕事を把握して、成し遂げられているときだけ、全能感があって幸福を感じる。
世間一般とは違う人生や考え方を"治さないと"と思っているところが悲しい。主人公とよく似ている私はごく普通の一般人の"真似をしないと"と思っていた。言葉は違うが大体意味は一緒だと思う。
主人公がコンビニの廃棄を食べる描写があり、週5で出勤するならコンビニ飯ばっかりじゃないかと疑 -
Posted by ブクログ
一般的と言われる【カテゴリー】から外れた考え方を持つ古倉恵子は18歳から18年間彼氏も作らず、同じ店でコンビニバイトを続けていた・・・
物語の始まりから恵子の考え方が一般的な考え方から外れ、全ての物事に対して正解を理解できない事が分かる。
複雑にマニュアル化された、コンビニでの業務を行い、コンビニの店員という【役割】を得ることで、一般的な人間としてカテゴライズされ、恵子は人間に擬態する。
人というものは、【カテゴリー】から外れたモノを畏怖・嘲笑する生き物だ。コンビニで求められたマニュアル事項を守る事で擬態していた恵子は、ジャンルは異なるが、同じく【カテゴリー】を外れた白羽によってマニュア -
Posted by ブクログ
ネタバレtoi booksで購入。
ものすごかった。SFチックな世界を描きながら、怖いくらいに今の社会の雰囲気がありありと描かれていて恐ろしい。それは言わない約束、気づいてないふりしてやり過ごすことになっていることを全部剥ぎ取って、顔を両手で掴まれ「こうですよね。私たちの住む世界ってこうなっていますよね」と無理矢理に直視させられる感覚の読書だった。
この社会はそれぞれの存在に対して、一定の果たすべき役割や振る舞い、感じ方を受け入れさせようとする圧力に溢れている。そこから外れてしまったら、はぶられてしまったらサバイブできない、と感じる生きづらさ。
中心的には女性の生きづらさ、息苦しさ、が描かれてい -
Posted by ブクログ
村田沙耶香さんやっぱり好き。
と思わせられた一冊。
(村田沙耶香さんの作品を読むと毎回言ってる気がする笑)
結婚って何?出産は必要?
子どもを作ることは当たり前なの?
世の中に流されていない?
というわずかな苦しさを
普通なんてないんだよ。
価値観は自分で選ぶんだよ。
って耳元で、いや
大声で伝えてくれるそんな作品。
『どこまでも正常が追いかけてくるの。
ちゃんと異常でいたいのに。
どの世界でも正常な私になってしまう。』
このセリフがすごく好き。
マジョリティでいることの難しさ。
自分を持ってたはずなのに
気づかないうちに世界に溶け込んでしまってる自分。
なんか私自身も感じるところ -
Posted by ブクログ
表題作「信仰」を含むいくつかの短編と、
いくつかのエッセイで構成された作品。
“あの”村田紗耶香が描く“信仰”というタイトルを冠した作品ということで、
単行本が出たときから是非にも読みたかった作品。
やっぱり読むことができてよかった。
均して語ると結局のところ常識と非常識の境界とは、みたいなところに集約してしまいそうな話題ではあるけれど、村田さんにしか抉り出せない凹凸がある。
最後の「いかり」「書かなかった日記」は鬼気迫るエッセイだった。
あまり簡単に共感など示してはいけないとは思うけれど、何かの感情をわざと故障させるというのは、覚えがあった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ全部で4本の短編を収録している短編集。
全部の作品がってわけではないけど、
わりとシリアスな状況なのに傍から見ているこっちとしては笑ってしまう荒唐無稽さがたまらない。
それで、これまた全部の作品ではないけど、
我々人間の中に存在するものを1つ制限するだけで、
これほどのディストピア感を出すことができるなんて、
驚きとともに今の人間社会がたったそれだけのことで
大きく変わってしまうのではないかという恐怖も感じた。
しかも読んでいて段々とそれが正しい形だったかのように思えてくるんですよ。
まさに4本目のタイトル通り、私たち読者はこの本を読んでいる間に『変容』してしまっているという……
全体を