村田沙耶香のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
村田沙耶香ワールド全開。
人間は弱いからこそ何かを信じたい生き物である。
信じることは、考えることをやめること。
世の中には支配する人支配される人、騙す側の人騙される側の人が確かに存在している。信仰なしでは生きらない。歴史や伝統、世の中のルールなどはすべて誰かに創作された宗教のようなもの。途中でそれが全部誰かの利益のために変えられたとしても、人間は何の疑問も持たず受け入れて生きてく皮肉な生き物である、そんなメッセージ性を感じた作品。
昔からのお祭りや地元の言い伝え。それってもしかしたら伝統なんて何もなくて、誰かがただ面白おかしくエロ目的で作ったものだったりする。その事実を知らずに、信仰し続 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「私たちは進化の瞬間なの。いつでも、途中なのよ」
衝撃の読書体験だった。読み進めてはいけないような気がしながら、でも読まなければいけないと思った。こんな読書したことがない。気持ち悪いけど、でも面白かった。怖かった。不思議な気持ち。
最初から、かなり変わった設定の世界観から始めるが、何か今の自分と主人公を重ねてしまうところがあった。
特に、「家族」についての考え方が興味深かった。家族でいたい、人とつながっていたい、という感覚さえ、消え失せてしまう日も来るかもしれない。そして、今の私たちから見ると〈ヒト〉としての意味が全くないように感じる世界線でも、未来でヒトは笑っているのかもしれない。
私 -
Posted by ブクログ
ネタバレ村田沙耶香の作品に共通するテーマは、セクシャル及びジェンダーの常識や定説に対する忌避感であると思う。女性が被る男性性からの抑圧や差別、性行為で直面する男性優位。著者はそのような状態からの脱却を試みる。
しかも、完全にないものにするのではなく、無味無臭で高尚な営みへと変換するのだ。登場人物や設定が提示する身体性からの脱却と再結合に読者は不信感を抱く。その不信感を持つこと自体、常識やイデオロギーに覆われているということを読者は自ずと認識し立場を危うくする。
そういった観点から「無性教室」をおすすめする。
舞台となる学校は「性別」が禁止される。真っ白な校舎はその中性的な空間の象徴であろう。
性 -
Posted by ブクログ
芥川賞受賞作『コンビニ人間』の
プロトタイプ的な要素を感じた
マウスにはスラング的には
臆病・小心者という意味がある
一方で、可愛らしい・魅力的なという
ポジティブな意味あいが含まれる
登場人物の心の機微や、成長も経て
次第に魅力的になっていく
ダブルミーニング的な側面も感じた
更に言えば、
実験動物のように、
与えられたもので変わっていく様を
見受けられる読者目線としての
トリプルミーニングともとれる
非常に奥深い話に思えた
久々に村田沙耶香さんの本を読んだが、
今まで最も温かみを感じた
これは、ジャンルとしては
シスターフッドものになるのかな?
世界観、衝撃度、大作という点では
世界 -
Posted by ブクログ
強烈である。どうすればここまでたどり着けるのか。
宇宙人って感染症なんだ、と笑えた。
世間とのズレに自分を閉じ込めて
魔法で蓋さえしてしまえば、
そこはもう完璧な宇宙なのだろう。
主人公の生い立ちのようなものに
少し自分と重なる部分を感じて苦しくなった。
この苦しみがわかってしまうと、
もう彼女を否定することなんて
私にはとても出来ない。
それでも姉の背負ってくれていたものを考えると
もうなにが正しいのか分からなくなる。
人には人の地獄も正義もあるのだろうなと。
女としても働く道具としても、
完璧になれないとわかった時、
その中途半端な全てを損ないたくなってしまう衝動。
人生に思い悩んで -
Posted by ブクログ
ネタバレ全部で4本の短編を収録している短編集。
全部の作品がってわけではないけど、
わりとシリアスな状況なのに傍から見ているこっちとしては笑ってしまう荒唐無稽さがたまらない。
それで、これまた全部の作品ではないけど、
我々人間の中に存在するものを1つ制限するだけで、
これほどのディストピア感を出すことができるなんて、
驚きとともに今の人間社会がたったそれだけのことで
大きく変わってしまうのではないかという恐怖も感じた。
しかも読んでいて段々とそれが正しい形だったかのように思えてくるんですよ。
まさに4本目のタイトル通り、私たち読者はこの本を読んでいる間に『変容』してしまっているという……
全体を -
-
Posted by ブクログ
忘れかけていたあの頃の未熟さ、情けなさ、残酷さを、ヒリつくような緻密さで正確に表現していて、作者はまさにこの渦中にいる女子中学生かと思うほど。解像度の高さよ。すごすぎる。
主人公の捩れっぷりは相当なもので、伊吹くんがかわいそうでかわいそうで…中学校編からしんどいながらも読み進めていたら、急展開からのエンディング。
村田さんの作品を貫く、暗い肉体的な欲望や手に負えない感情を扱いながらも、これはそこからいくばくかの解脱を遂げた数少ないものなのではないかと。絶望の真ん中にほったらかされなくてよかった…
あまり読み返しはしない方だけど、この作品は珍しく最後のパートを2度読みました。直前まで苦しかったか -
Posted by ブクログ
「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。
痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを -
Posted by ブクログ
友達から、好きだと思うとおすすめされて借りた本。正直自分から手に取ったものではなかったし、村田沙耶香の他の作品を読んで想像していたものは、生や性に関するパラレルワールドみたいな世界だったので気は進みませんでした。借り物だし、早く読んで返さなきゃという気持ちと、タイミング(私は積読が多すぎてどれも読みたいので決めるのが難しいのでルーレットアプリに積読本のタイトルを入力してルーレットを回して決めています)が重ならなければ一生読むことはなかったかもしれないと感じています。これまでの村田さんの作風とはだいぶ違っていて、瀬里奈の不思議な雰囲気と主人公の律に部分的に親近感を覚えてすらすらと読んでしまいまし
-
Posted by ブクログ
ネタバレ中学生の時まさしく「オタク」と呼ばれて冷笑されていました。しかし、近年社会経済がオタクの価値を見出してこちら側に縋り付いて全員が何かのオタクであることを許容しています。それが私には本当に許せないことで、その経験があったので生命式の主人公には共感できるところがありました。昔の痛い経験が今は当たり前で、ただその今の文化にもちゃんと恩恵があるし共感できるところもある。少数派が急に多数派に連れてこられたら動揺しますが、社会は常に流動的なので、私も受け入れられるようにしていきたいなと思いました。
互いに人の価値観を受け入れはしなくても、理解し合える仲になれれば理想的です。