あらすじ
受験を控えた私の元にやってきた家庭教師の「先生」。授業は週に2回。火曜に数学、金曜に英語。私を苛立たせる母と思春期の女の子を逆上させる要素を少しだけ持つ父。その家の中で私と先生は何かを共有し、この部屋だけの特別な空気を閉じ込めたはずだった。「――ねえ、ゲームしようよ」。表題作他2編。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
【禁じられた遊び】
恋とも愛とも呼べないなんとも形容しがたい歪な関係性が描かれた3つの短編集。村田沙耶香さんに思春期の女の子を書かせるのは危険だ。表題作『授乳』の多感な中学生女子が家庭教師の年上男性に仕掛けた不埒なゲームとは?その引き金は好奇心か?母性か?性に対する嫌悪感か?それとも?デビュー作から人道に悖る行為や発言をここまでイノセント且つグロテスクに描写するとは、さすが村田さんは表現の仕方に容赦がない。加減というものを知らないのか?ただそこに私はとてつもなく惹かれ虜になっているのも事実なのだ。
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群像新人文学賞受賞作のこの書は、芥川賞受賞作の『コンビニ人間』より、ずっと面白いぞ??
狂気の女性を表現させたら天下一品だな。村田沙耶香さんは。
狂気ではあるんだけど、我々にも理解できる一般性もあって、非常によい!星⭐︎5、文句なし。
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表題作含めて3編全てに、人が無意識に真顔になったり微笑んだりする時ような影を感じる。ホラーとは違う怖さでぞっとするほど。村田作品3作目にして処女作に辿り着いたが、自分の中にある(かもしれない)異物感とでもいうべき感情、対外的な自分と「自分だけの」自分とのギャップ、大き過ぎる自意識など、著者の他作品にも通じるものを感じた。こんなに突拍子もない展開で、よく分からない行動をする登場人物にもかかわらず、どうしてこんなに揺さぶられるんだろう。この人の本を読むと、やっぱり自分は繊細な人が好きなんだと再確認できる。
授乳ーー真似てはみるが
この小説では、大人も模範になれない。
子の行う、母親の真似は、慈愛とは程遠い。
唾液、蛾の体液。血液。(ああ、そして母乳なのか?)
『謎の彼女X』という漫画では、恋人の唾液が絆の状態を
知らせる印として働き、愛は死を乗り越える手段と言えた。
一方、この小説のような、仮借なく描かれた破滅を
目にすると、生き方を問われていると感じる。
周作先生の『深い河』では、女性に対しては「授乳」
どまりの中途半端な交わりが、キリスト教に対しては、
異端とも、ある意味徹底しているとも言える生きざまが
描かれる。
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三つの短編から成る作品集で、どの物語にも驚くほどドロドロした感情が渦巻いている。読んでいて胸が重くなるほど辛い描写も多いのに、読み進めてしまう。
これが村田さんのデビュー作であり、発表は2003年。当時からすでに村田作品らしい異物感、人間関係の歪さ、そして「普通」を揺さぶる視点がぎゅっと詰まっていたのだと驚いた。
まさに“the 純文学”という重さと余韻。世の中のほんわかした物語にお腹いっぱいになったとき、またこの本を手に取りたくなるような一冊だった
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私の身体を生きるというエッセイ集で著者の言っていることが理解出来なかったけれど、この短編三作品を読んで少しだけ分かったような気がしなくもない。
エッセイではあくまで性の話としていたが、世界との接点が本題なのだろうか。
Posted by ブクログ
試し読みで、パラパラめくってみた時の一文からもう心惹かれ、読みたくなった。
解説を読んでやっと理解できたところがある。彼女たちは、彼女たちの作る世界の頂点にいる。彼女たちの作る世界のなかで、彼女たち以外の主要人物はみんな、表情のないマネキンのよう。最初に言ったように、文章ひとつとってみても、その表現、観点から、すでに彼女ら独自の世界が型作られていて、引き寄せられる。
これで、この方の作品は読むのが2冊目。今の所、村田沙耶香さんの世界が一ミリも理解できない。できたと思うと、すぐに遠ざかるような感覚。理解できないから、理解したいと思う。
Posted by ブクログ
「授乳」
誰が授乳するのかと思ったら、中学生の少女だった・・・。自分も中学生であったからわかるが、まあ普通はこういうことはない。が、体の中から自分の意思とは関係なく湧き出る欲求のようなもの、名前をつければ性欲というのかもしれないがが、それが支配したい気持ちと慈しみたい気持ち、そして自分はちゃんと慈しまれていなかったという怒りも合わせて、すべてがごちゃ混ぜになって、自分の体を操る。そんなぐちゃぐちゃなことってあるじゃないかと思った。変わりつつある身体から発せられるエネルギーそのものは、いろんな形をもって発現するのである。もちろんこういう極端な形をとることは少ないのだろうけど。だから、発現の仕方に私たちは気をつけなきゃいけない。なにか破壊的な形だったり、自分や人を傷つけるような形だったりするとき、やっぱりそれは修正できなくても、どこかで癒しが必要なんじゃないかと思う。
「コイビト」最後のぞっとするような現実はいささかショックである。依存は人それぞれ。家族であり恋人であり友人である「もふもふ」したものは実は自分自身の延長で、他人など必要ない完結した自分を持つことも可能なんだなと思った。いまはやりのAIキャラと恋をする感じに似ているのかも。不気味であることに気がついても、そんなに簡単に逃れられないでしょ?これがあなたの生き方なんでしょ?と追いつめる小学生の女の子が怖い。というか、なんだか彼女が正しいような気もするのである。
「御伽の部屋」
若い大学生要二の部屋に通い続ける女の話。「わたし」は芝居小屋の主役で、相手は要二。肉体的な性行為はしないが、その演技そのものが官能的に2人を結びつけている・・・はずだったのだが、ほかの男と肉体関係を持ってみる試みから軌道が狂っていく。合間に改装される小学生時代のお友達マリちゃんのお兄ちゃん、女の子になりたい、別の場所で生きていきたい正男お姉ちゃんの思い出が切ない。御伽話を生きるから、私たちは現実世界をやるすごすことができる。要二が役を降りた時、「わたし」は自分が「僕」の役を引き受けることにした。これで芝居も完結する。それでいいじゃないかと思わせるところが、ホラーストーリーじゃないところなのだね。設定だけ見たらかなりホラーなんだけど。
Posted by ブクログ
なんかよくわからないけどすごかったな。
授乳
思春期 中学生 が容姿、内面共にこの世で一番中途半端で気持ち悪い時期だと思っているから、この主人公はとても気持ち悪くてよかった。
自尊心、自意識が異常に高くて自分は間違いなくて周りがおかしい。
他社への支配欲、両親への嫌悪、憎しみ、加虐心の暴走。
自分が周りと違うということに、殊更にプライドを持っている気すらする。
コイビト
同族嫌悪。
自分自身が隠しているナニか。
脳みそがカッとなるような感覚があった。
私自身にある幼少期のコンプレックスみたいなものが湧き出てきた気がした。
そして、おんなのこはこわいよ。
御伽の部屋
3作の中で一番わからなかった話。
まとまらない。
Posted by ブクログ
気持ち悪いキモチワルイ!(好き!褒めてる!)
デビュー作からこんなにねっとりとじんわりと狂気に魅せられてしまう作品?作家?はそうそういないと思う。
個人的に蛾の部分と嘔吐シーンがお気に入り。
Posted by ブクログ
女と言う性への違和感をこれでもかと煮込みに煮込んで、焦げる寸前のドロドロこってり濃いめのえげつない作品(笑)
超濃厚な佃煮は何とも狂気でグロテスク。
人間の皮膚感とか、様々な感触の表現の仕方がやたら細かくてめっちゃキモい←尊敬の意
これがデビュー作かぁ…
語彙力無さすぎて申し訳ないけど
『マジすげぇ』です。
Posted by ブクログ
本屋でジャケ買いした一冊。
この作家の著書は初めて読んだが、女という性が相当嫌いなんだろうなと感じた。
見たくない女の一面を集めて煮出して絞って濃縮還元したような作品で、作中で描かれる女性達は皆どこか狂っているように思えるが、その実非常に現実的だ。
面白いというより興味深い作品だった。
「好きな小説は?」と聞かれて意気揚々とこの作品を出してくる人とは関わりたくない。
Posted by ブクログ
久しぶりに1冊をすぐに読み終えた。最近、読みたい内容がミステリーでも恋愛でもほっこりしたものでもないんだよ…と感じていて、途中で読むのをお休みしている作品が多いわたしにはぴったりな内容でした。自分の中にありそうでないような、でもあるんだろうなと思う感情や考えに目が離せなくなりました。新作も読みたいな。
Posted by ブクログ
4.2/5.0
表題作含め3篇収録。
どのお話も主人公の内面は一般的にみれば異常で狂人的。
だけどそれを周りと比べたり、他者と比較したりはせず基本的には自分の中で完結しているのが印象的だった。他人や世間には興味を示さずそこにコンプレックスを感じたりはしない。それは強さでもあり弱さでもあり幸せでもあり不幸でもあるような気がした。
そして主人公が女性であるということを拒絶しているように感じることもまた印象的だった。
Posted by ブクログ
読んだことないと思ってたけど既読本だった。
デビュー作の授乳
衝撃的なラスト、蟻を踏み潰すシーン
突然終わってしまうラストに置いてけぼりにされた感じ
女性性への嫌悪感がすごい
コイビト
他者を通して自分の行為を不快に感じる様が目の前で起きているようで、実体験のようで面白かった
ラスト怖かったなぁ
それなしでは生きられない、本当にその通りでまた同じ対象物を求めてしまうんだろう
御伽の部屋
正男お姉ちゃん元気かなぁ
妹の様子を見るに、告白したけど親兄弟に拒絶され、家を出たか諦めたか
ユキも同様に男性のようになりたかったんだろうか?正男お姉ちゃんのことは特に気持ち悪いとは思ってなかったけど、外では普通の女の子らしく振る舞えているけど
ずっとおままごとの延長線で本当の自分は違うものだとやっと気付いたのか?
感想が難しいけど解説で語られていることが全て
なるほどーと納得して、分かりやすい簡潔な言葉で説明されていて面白い!
なるほど村田沙耶香さんは凄いのだな
デビュー作でこれだから最近の著書は凄いのだろう
読み進めたい
Posted by ブクログ
村田沙耶香さんの作品で1番好き。
他のみんなに話してもきっとわかってもらえないだろうな。と、日々押し留めて無かったことにしているマニアックでダークな秘めたる志向を残らず言語化してくれた。
Posted by ブクログ
どの話も、読んでいて心がざわつくのに、妙に惹き付けられる。
主人公である彼女たちは皆かなりアクが強く、感情移入が出来ない部分や好感を持てない部分も多かったのだけど、でもそんな彼女たちのことが何だか気になって、ズルズルと読んでしまう。そして俯瞰して見ているつもりだったのに、気付いたら彼女たちが語る言葉に没入してしまっていた。
村田さんが綴った文章を読んでいると、やけに人間のことが生々しく気持ち悪く感じられてしまい、自分の心の底にある"ヒト"という生き物への嫌悪感や不快感を否が応でも引きずり出される。
私自身も性というものに対して嫌悪感を覚えることがあるからか、自分とは似ても似つかない主人公たちの感情に不思議と同調出来てしまう箇所もあり、読みながらひどく暴力的な、冷徹な気持ちになりました。
本書の解説にある、「心の奥のドロドロを解き放つことによって、壮絶なデトックスをしているのかもしれない」という言葉がすごく腑に落ちる。
『地球星人』を読んだ時も強烈でしたが、今回も個人的には衝撃的な、得がたい読書体験でした。
読んでいて決して気分は良くならないし、何なら「早く終わってくれ」と願いながら読み進めている節もある。それでもつい読んでしまう、独特で強い魅力がある。
これはなるほど、クセになるかもしれない……。
と、村田沙耶香さんの作品を読むこと二冊目にして、しみじみと感じました。
人を選ぶような尖った本だと思いますが、個人的にとても面白い読書が出来たので、自分なりにお気に入りの一冊です。
Posted by ブクログ
面白い…!
色んな人がいってたけど、視点がやっぱり独特で(と言うのも失礼かもしれないが)、でも完全に他人事ではなくて少し共感できる部分もあったりして。でも個人的にはやはり持ち得ない感覚や世界の見方だから、なるほどと舌を打つしか他ならない。
心理描写よりは視覚的情報の描写が多いけれど、その何ともユニークなこと。綺麗なのにどこか虚構的で、でも描いてるものはグロテスクだったりして。気持ち悪さと美しさが共存してるというか…
村田さんの作品は今作が初めてだったけど、他も色々読み漁りたいなあと思った本でした。処女作としての完成度も高すぎる!
Posted by ブクログ
人間の醜い部分とか嫌悪感を描写するのが天才的に上手だなあと思う。ここまで詳細に言葉を尽くして、目の前にある醜さや心の内側から湧き出てくる嫌悪を描写することになんだか執念みたいなものを感じて、謎の感動が生まれる。あと、作中に出てくる奇妙なエピソードになぜか説得力があって、実在する記憶を辿って書いてるんじゃないかという気がしてくるのも不思議(「授乳」の母親のおにぎりの作り方、「コイビト」のぬいぐるみとの関係、「御伽の部屋」の正男お姉ちゃんとの思い出、など)
解説の言葉を借りると、自分だけの王国を築いている三人の女性の物語。私には、村田沙耶香さんこそが初期から完成された自分だけの王国を持っている人に思える。
作品同士が繋がっていたりはしないのに、どの物語もパラレルワールドみたいに分岐した世界で根っこは同じ場所にあるような感覚がずっとある。その根っこにあるのが彼女の王国なのかなあと。
Posted by ブクログ
デビュー作ではまだテーマが表に出てこない。固まっていなかったのか,意図的に伏せているのか。最新作から読んだので,文章の生硬さが目につく。それが成長の幅でもある。これを見出した選考委員は先見の明があったと思う。
Posted by ブクログ
ぬぉぅグロテスクだ表現が。グロテスクといってもスプラッター的なグロテスクではなくて、こうなんか心の闇の部分を引っ張り出されるようなうぅぅってなるグロテスク。
女の作家さんでこういう感覚になったの初めてです。
短編3作。
この子達はこの後どーなっていくんだろう。
自分の世界が内に内に向かう主人公ばかり。
共感は出来るものでもないが、誰しも少しは自分の中の奥の奥のずっと深いところに少しはなにかドロドロしたものがあって、普段は気付かない忘れているというかいつの間にか蓋をしていたところに石を投げられ、ホラここだよと言われている感じがしました。なんか怖いわ(笑)
Posted by ブクログ
正直気持ちがあまり良くない作品ではありました。
村田沙耶香先生の作品はコンビニ人間で知りすごく好きな作家さんでデビュー作をすごく読んでみたかったんですよね。
話に聞くとコンビニ人間はマイルドと聞いてたので。
とりあえずコンビニ人間は全然マイルドでした。
Posted by ブクログ
装画がよい味を出してる
この作品が単行本として出たときは、
もう20年も昔のよう
最新の世界99に繋がるであろうものを
節々に感じることができた
何かと戦ってたり、抗ってたり、
憎悪したりを感じた
デビュー作を含む
3つの短編集
Posted by ブクログ
通常はグロテスクな場面ではないんだけれども
細かく拡大して書くことで気持ち悪さを表現しているのがすごいと感じた。登場人物がロボットのような描写で表している点は心が失われた人間的な要素をうまく排除しているのも秀逸
Posted by ブクログ
村田沙耶香さんのデビュー作
表題作含め3編が収録されていました
授乳
コイビト
御伽の部屋
村田さんの作品をいくつか読んできたけど、1番濃くてくらってしまった笑
でも、性がテーマになっていたり、読者の価値観を揺さぶる作品であったりすることはデビューの頃から変わっていないんだなと感じました!
『コイビト』の自分と同じぬいぐるみを愛でる小学生(美佐子)に出会うことで、自分の姿を俯瞰でみるようになり、美佐子に対して嫌悪感を抱き自分のホシオの関係の異常性に気がつく話は面白さがありました!
こんなに村田さんの作品を読んでいるけど、やっぱり性的な描写は苦手…。
解説を読んで、作品のテーマについて理解できた気がします
Posted by ブクログ
いきなり言うことじゃないと思うけど、こういう題材に出てくる男の人って絶対に雄々しくないよねえと思った。正男姉ちゃんの話は切なかったな。
読んでいて、村田さんは「子宮なんか取っちまいてえよ!」と思ってんのかなという気持ちを感じた。まあ、わかる。自分は「いつまで女の腹の中で子育てさせるつもりやねん、試験管ベイビーはよ!」と常々思っている。生理がド重い人とかもっとそんな感じだろう。
とはいえ、自分は村田さんほど女体も女性性も疎んでないなーと思ったけど、でももっと芯の部分で理解できるような、でもゾワゾワともするような、不思議な作品群だった。
女の人が自分の性別や肉体について考えた時、肯定的に受け止めても否定的に受け止めてもうまくいかない部分みたいなものがある気がする。なんかそういうことを考えた。
たぶんどの作品も好きだけど、劇薬なので一気にたくさん読んだら変になると思う。用法容量を守って楽しく触れたい。肉体の触れ合いだけがセックスではないって感覚、高校生の時に読んでもわからなかった気がするから、それはわかるようになったことがなんとなくうれしいなと思った。
Posted by ブクログ
不気味で官能的なところが、なんとなく谷崎潤一郎を想起させる気がする。表紙も相まって。
御伽の部屋は???ってなりながら読んだ。まだ彼女の世界に私の理解が追いついてない。