あらすじ
受験を控えた私の元にやってきた家庭教師の「先生」。授業は週に2回。火曜に数学、金曜に英語。私を苛立たせる母と思春期の女の子を逆上させる要素を少しだけ持つ父。その家の中で私と先生は何かを共有し、この部屋だけの特別な空気を閉じ込めたはずだった。「――ねえ、ゲームしようよ」。表題作他2編。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
試し読みで、パラパラめくってみた時の一文からもう心惹かれ、読みたくなった。
解説を読んでやっと理解できたところがある。彼女たちは、彼女たちの作る世界の頂点にいる。彼女たちの作る世界のなかで、彼女たち以外の主要人物はみんな、表情のないマネキンのよう。最初に言ったように、文章ひとつとってみても、その表現、観点から、すでに彼女ら独自の世界が型作られていて、引き寄せられる。
これで、この方の作品は読むのが2冊目。今の所、村田沙耶香さんの世界が一ミリも理解できない。できたと思うと、すぐに遠ざかるような感覚。理解できないから、理解したいと思う。
Posted by ブクログ
「授乳」
誰が授乳するのかと思ったら、中学生の少女だった・・・。自分も中学生であったからわかるが、まあ普通はこういうことはない。が、体の中から自分の意思とは関係なく湧き出る欲求のようなもの、名前をつければ性欲というのかもしれないがが、それが支配したい気持ちと慈しみたい気持ち、そして自分はちゃんと慈しまれていなかったという怒りも合わせて、すべてがごちゃ混ぜになって、自分の体を操る。そんなぐちゃぐちゃなことってあるじゃないかと思った。変わりつつある身体から発せられるエネルギーそのものは、いろんな形をもって発現するのである。もちろんこういう極端な形をとることは少ないのだろうけど。だから、発現の仕方に私たちは気をつけなきゃいけない。なにか破壊的な形だったり、自分や人を傷つけるような形だったりするとき、やっぱりそれは修正できなくても、どこかで癒しが必要なんじゃないかと思う。
「コイビト」最後のぞっとするような現実はいささかショックである。依存は人それぞれ。家族であり恋人であり友人である「もふもふ」したものは実は自分自身の延長で、他人など必要ない完結した自分を持つことも可能なんだなと思った。いまはやりのAIキャラと恋をする感じに似ているのかも。不気味であることに気がついても、そんなに簡単に逃れられないでしょ?これがあなたの生き方なんでしょ?と追いつめる小学生の女の子が怖い。というか、なんだか彼女が正しいような気もするのである。
「御伽の部屋」
若い大学生要二の部屋に通い続ける女の話。「わたし」は芝居小屋の主役で、相手は要二。肉体的な性行為はしないが、その演技そのものが官能的に2人を結びつけている・・・はずだったのだが、ほかの男と肉体関係を持ってみる試みから軌道が狂っていく。合間に改装される小学生時代のお友達マリちゃんのお兄ちゃん、女の子になりたい、別の場所で生きていきたい正男お姉ちゃんの思い出が切ない。御伽話を生きるから、私たちは現実世界をやるすごすことができる。要二が役を降りた時、「わたし」は自分が「僕」の役を引き受けることにした。これで芝居も完結する。それでいいじゃないかと思わせるところが、ホラーストーリーじゃないところなのだね。設定だけ見たらかなりホラーなんだけど。
Posted by ブクログ
読んだことないと思ってたけど既読本だった。
デビュー作の授乳
衝撃的なラスト、蟻を踏み潰すシーン
突然終わってしまうラストに置いてけぼりにされた感じ
女性性への嫌悪感がすごい
コイビト
他者を通して自分の行為を不快に感じる様が目の前で起きているようで、実体験のようで面白かった
ラスト怖かったなぁ
それなしでは生きられない、本当にその通りでまた同じ対象物を求めてしまうんだろう
御伽の部屋
正男お姉ちゃん元気かなぁ
妹の様子を見るに、告白したけど親兄弟に拒絶され、家を出たか諦めたか
ユキも同様に男性のようになりたかったんだろうか?正男お姉ちゃんのことは特に気持ち悪いとは思ってなかったけど、外では普通の女の子らしく振る舞えているけど
ずっとおままごとの延長線で本当の自分は違うものだとやっと気付いたのか?
感想が難しいけど解説で語られていることが全て
なるほどーと納得して、分かりやすい簡潔な言葉で説明されていて面白い!
なるほど村田沙耶香さんは凄いのだな
デビュー作でこれだから最近の著書は凄いのだろう
読み進めたい
Posted by ブクログ
どの話も、読んでいて心がざわつくのに、妙に惹き付けられる。
主人公である彼女たちは皆かなりアクが強く、感情移入が出来ない部分や好感を持てない部分も多かったのだけど、でもそんな彼女たちのことが何だか気になって、ズルズルと読んでしまう。そして俯瞰して見ているつもりだったのに、気付いたら彼女たちが語る言葉に没入してしまっていた。
村田さんが綴った文章を読んでいると、やけに人間のことが生々しく気持ち悪く感じられてしまい、自分の心の底にある"ヒト"という生き物への嫌悪感や不快感を否が応でも引きずり出される。
私自身も性というものに対して嫌悪感を覚えることがあるからか、自分とは似ても似つかない主人公たちの感情に不思議と同調出来てしまう箇所もあり、読みながらひどく暴力的な、冷徹な気持ちになりました。
本書の解説にある、「心の奥のドロドロを解き放つことによって、壮絶なデトックスをしているのかもしれない」という言葉がすごく腑に落ちる。
『地球星人』を読んだ時も強烈でしたが、今回も個人的には衝撃的な、得がたい読書体験でした。
読んでいて決して気分は良くならないし、何なら「早く終わってくれ」と願いながら読み進めている節もある。それでもつい読んでしまう、独特で強い魅力がある。
これはなるほど、クセになるかもしれない……。
と、村田沙耶香さんの作品を読むこと二冊目にして、しみじみと感じました。
人を選ぶような尖った本だと思いますが、個人的にとても面白い読書が出来たので、自分なりにお気に入りの一冊です。