無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで203万冊以上配信中!
受験を控えた私の元にやってきた家庭教師の「先生」。授業は週に2回。火曜に数学、金曜に英語。私を苛立たせる母と思春期の女の子を逆上させる要素を少しだけ持つ父。その家の中で私と先生は何かを共有し、この部屋だけの特別な空気を閉じ込めたはずだった。「――ねえ、ゲームしようよ」。表題作他2編。(講談社文庫)
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
村田沙耶香のデビュー作「授乳」
村田沙耶香は、マイノリティから見た「普通」の世界、そしてその「普通」を謳う世界の異様さを描くのが得意な作家だと思っていたが、やはりデビュー作ということもあり、そうした作風と微妙に異なっていた。
「授乳」で驚いたのは、主人公の微妙にサディスティック的な性格だった。村田沙耶香といえば、主人公に攻撃性などなく、むしろ外の世界に対して無関心的であったり、無感情、どこか感情の鈍麻したところがある主人公ばかりだ。その中で、サドに快感を抱いてそうな少女が主人公として描かれるのは驚いた。
他の作品でも、「マイノリティ」が描かれているのはあまり変わりないものの、「マイノリティ」のおびる、生きながら滲み出てくる狂気が目立った。「普通」の異常性より、「普通」の世界に馴染めず、苦しみ、浮き出てくる腫れものを描いているようだった。
どの短編も面白く、やっぱり村田沙耶香は天才だなと思った。他の作品も全部読みたい。
Posted by ブクログ
面白い。これを読めるのが読書の醍醐味だと言ってもいい。自分だけでは触れることのない価値観、世界観をSFではなく、想像の範疇として捉えることができる。
皆、自分の独自性と異常性を抱えながら、世間の枠の中に納めながら生きているのだと思う。
各人の異常行動よりも、それを社会に染み込ませる作業に本当の怖さを感じた。
"あたしは思う。たとえば自慰の才能があって、自分の性欲を完全に満たすことが出来る人がわざわざセックスなどしなくてもいいように、あたしのように愛を自己生産できる人間は、わざわざ他人との人間関係なんていらないんじゃないか。あたしはホシオをポケットにいれてさえいれば、誰もいない海の上に一人で浮かんでいたって、少しも寂しくなく生きていける。それどころか誰にも邪魔されずに思う存分満たされ続けることができるだろう。"
授乳ーー真似てはみるが
この小説では、大人も模範になれない。
子の行う、母親の真似は、慈愛とは程遠い。
唾液、蛾の体液。血液。(ああ、そして母乳なのか?)
『謎の彼女X』という漫画では、恋人の唾液が絆の状態を
知らせる印として働き、愛は死を乗り越える手段と言えた。
一方、この小説のような、仮借なく描かれた破滅を
目にすると、生き方を問われていると感じる。
周作先生の『深い河』では、女性に対しては「授乳」
どまりの中途半端な交わりが、キリスト教に対しては、
異端とも、ある意味徹底しているとも言える生きざまが
描かれる。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。