村田沙耶香のレビュー一覧
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何か大きな社会の枠組みに飲み込まれる地球星人。大人になったら働いて社会の歯車に、適齢期で番と子供を産み育てる人類の生殖器に。それに抗う主人公、親戚で秘密の恋人だった由宇、プラトニックな結婚相手。地球星人じゃないから馴染めない、母性に還らないと。
何か莫大な社会が取り決めた人生のレールを踏まされることの違和感は誰にでもあると思う。なんもないなら大学には進学しとけ?結婚しなきゃいけないの?30とかには子供産まなきゃおそいの?働き始めたら自分の学費も払い途中なのに子供の学費なんてどうやって払うの?私個人にフォーカスするとそんな感じで、なんだか一般論みたいな人類が踏んできた道から作り出された「スタンダード」が、のしかかる違和感を見事に昇華した作品だと思う。 -
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幼い頃の奈月の生き辛さの描写はとても胸に迫る。
バランスが壊れている母親を持つ子供の悲劇はそこここにあって、子供はみんな被害者だ。
それでも彼女は由宇と約束するのだ。
「なにがあってもいきのびること」
奈月も由宇も生きようとする。
二人とも自覚せずとも底力を持っているのだ。
どんなに辛くても生き延びようとする強い本能。
生きたいと思う。
それはエネルギーだ。
そして、それは智臣も同じであって、実は三人(3匹?)とも、身体的にエネルギーが強くタフな生き物であるという部分がとても面白かった。
身体はタフだから生きようとする。
でも、中身を逸脱させないと工場では生きていけない…
この上なく切ない物語。
これをこれほどまで猟奇的に描きながらもリアルを感じさせる力量。
村田沙耶香という人の才能は計り知れないと思った。 -
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面白いという表現が適切なのかは分からないけれど、早くこの薄い不安から解放されたいと思う一方で、物語がどう終わるのかが気になって、3日で読みました。
「可哀想」が娯楽になる。
衝撃的だけれど、そうなのかもしれないとも思う。SNSの中で生きる人の人生を、覗き見ているような感覚がありました。
「可哀想」と思いながら見ている自分も、完全にはその外側にいるとは言えない。誰かの人生を見て、安心したり、自分と比べたり、面白がったりしている。そんな自分の中にもあるものを突きつけられたようでした。
相手や時代に合わせて自分の考えを変え、その時々の「こうすべき」に囚われて、自分自身を調整していく。自分の信念で生きているつもりでも、いつの間にか「この相手にはこう振る舞うべき」「今はこうあるべき」に合わせている。安心できる世界にいたいからこそ、自分の悲しみや違和感は置き去りにしていく。そうしているうちに、少しずつ息苦しくなっていく。
女性として、女性だからこそ抗いきれない息苦しさ。そして男性にも、「男性はこうあるといい」というものがある。それぞれに求められる「こうあるべき」の強さが、極端な形で描かれているように感じました。
なんとも、どんよりと薄い霧がかった森の中にいるような気色悪さ。
でも、その気色悪さは物語の中だけにあるものではありませんでした。登場人物を見ているつもりが、その人たちを安全な場所から眺めている自分自身まで見られているような感じがした。
自分の奥底にある、人間的な気色悪さまで覗かれ、突かれ、すべて見通されているようでした。
読み終わったあとも、薄い霧のような不安が残る本でした。 -
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村田沙耶香がクレイジー沙耶香である由縁がまさに詰め込まれたバラエティーパック
感性では理解できないのに頭では理解できる恐ろしのエデン。ユートピアやディストピアを超越してまさにエデンなんですね。
性欲に挑んだ今作の村田沙耶香はそれを失くすこと、そして作ることを選ぶんですね。
まず、まずですけど、これを思い付いてそして描くことが頭おかしいって話で、主人公は最後…
私は神話で言うところの彼女はイブになったんじゃないかと思いました。
蛇がイブを唆し、禁断の果実を教えたように、彼女は蛇(母の呪い)によってイブになったのかもしれないと、そしてアダムに教えようとしている。それは神視点の私たちはどう捉えようか…実は村田沙耶香は最後に旧約聖書に戻した、いや作ったんじゃないかと、ほんとは最後どうなることが正解なのか…ほんとにすごい作品を手にしていると思いました。
関係ないかもしれないが、旧約聖書を読みたい -
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ネタバレ本質かつ純粋な疑問ほど心動かされ思考を巡らすものはない。
現代を生きる人間のジレンマやもどかしさなど答えを見つけようとすればするほど答えの無いものになっていく、そんな心情を改めて突きつけられるそんな衝撃の走る1冊。
我々現代地球星人は「工場」の一部でありながら「ポハピピンポボピア星人」の血も流れている事を感じられる。
自分たちの理想を叶え、それが例え大衆に理解されなくてもそれを全うする心の強さを持ち「いきのびる」為にはと考えれば考えるほどそれに答えはなく酸素は薄くなる世の中。
この星には様々な星人が地球星人のふりをしながら酸素を求め、ひしめき合っているのかもしれない。 -
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セックスを自分のものにできない女性たちの話。
フリーターの里帆は、男性に触れられる途端に覚える嫌悪感から自分の性は男性なのではないかと悩む。一方知佳子は、人間としての生命感覚が薄い。椿も、社会で衝突を繰り返して傷ついているからこそ、強く跳ね返すことができるような女性であろうと、やや固執しているようにも見える。
そんな人間世界は、わたしたちをなにかにカテゴライズすることを強いる。しかし、「自分が自分の中に内包している性質としての性」や「自分だけが享受できる快感」などを、言語として情報化しようとすると、「それは間違っている」、「あなたはこのカテゴリのこの定義とは異なるからこのカテゴリではない」などと排除されていく。
性や快感を感覚を誰かに伝える手段として、わたしたちは言語という不完全なモーダルしか持たない。それは不可逆な圧縮をされ、圧縮とは全く違う方式で復号される。悩んでも、自分の性と快感は自分だけのものとして慈しみ、カテゴライズを強いる社会に対抗していくことを、村田沙耶香さんの小説は教えてくれる。 -
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主人公の結佳の小4と中2時代という”女の子”が”少女”へと変化していく時間を描いた作品。村田沙耶香作品はこれまでにも何冊も読んできていますが、他作品のようなぶっ飛んだ切り口の設定や世界観で魅せる作品とは一線を画した一作ですが、だからこそ余計に作家の凄みのようなものを感じました。自身の身体や性格、周囲との関係や環境などままならないものに対しての思春期の痛ましい程の葛藤は読んでいて苦しさを感じる程でしたが、終盤の結佳の自己理解、世界理解の変容は前半の苦しさがあるからこそ鮮やかで美しいカタルシスがありました。素晴らしい点はいくつもある作品ですが、本作の舞台をニュータウンとした点が素晴らしいですね。タイトルにも表れているように変化し、成長していく街と二次性徴期の精神と身体の変容と重ねながら捉え描いている点が秀逸でした。