村田沙耶香のレビュー一覧
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ネタバレこの物語の主要人物は空子、白藤、音の3人。
空っぽな空子と、信念に頑なな白藤の対比が印象的で、面白い。
音は空子をさらに上回る「世界99」の人物で、空子にとっては唯一の理解者なのだろう。物語が進むにつれて、空子や白藤を上から見下ろす「神」のような存在に感じられた。
随所に「わかる!」と思えることが多々あった。感動は娯楽、悲劇も娯楽。差別者じゃない人間はいない。事実は歪曲され、記憶は変わる。感動は視野を狭くし、中毒性もある――そのような「真実」が言語化され、突きつけられる。
後半、空子は自分の「記憶」を差し出し、ピョコルンになる「儀式」に向かう。自殺に近い行為なのに、描かれ方は晴れやかだ。 -
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ネタバレ強烈な近代dystopia小説でした。
主人公の空子が現代の分人主義的な立ち回りをしており、ちょっと分かるなーという場面もあり、強制的に世界観に移入させられる場面が個人的にすごく心地よかったです。
上巻では人間の穢れが強く前に出されているように感じたが、下巻では人間らしさを排除していくことを前に出されていき、それに抗う人間白ちゃんに少し感情移入もいたが、もはや登場人物も設定も全て狂っているのでもはや感情移入ではなく、自分の世界(価値観や思考)が一つ拡張される読後感でした。
これを機に村田さんの作品を色々読んでみようと思います。 -
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ネタバレ『村上春樹の読みかた』で石原千秋氏が提示した「二人の村上春樹」という切り口を携え、上巻で感じたあの奇妙な違和感の正体を突き止めるべく下巻へ飛び込んだ。読み終えた今、私の脳内には「もやっとした霧」ではなく、作品の構造を多角的に解剖したあとのような、冷静でいてリアルな手触りが残っている。
上巻で抱いた最大の違和感は、カオスであるはずの子供の心理が、あまりに理路整然と、かつ冷徹に分析・言語化されている点だった。賢くないはずの設定なのに、瞬時の判断で困難を乗り切る子供たち。その姿は伊坂幸太郎作品の寓話的なキャラクターのようでもあった。しかし、下巻を読み進めるうちに、この「違和感」こそが村田氏の仕掛け -
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ネタバレ・当たり前を疑うということ。それを促すのではなく、我に返って「宇宙人の目」を持ってしまうことの不幸を描いていると思った。主人公の言うように、地球星人に洗脳されてしまったほうが絶対にラクだ。我に返ってしまうと生き延びるのって難しい。我に返ってしまった三匹の苦しみを容赦なく描いた作品だと思った。
・とてもえげつないラストだったが、何故だか読み終わってスカッとした。間抜けな地球星人が、あの三匹をみて狼狽えている不様さに、ざまあみろと、そう思ったのかもしれない。
・宇宙人の目=自分の目なんだと思う。自分の目で世界を見ると、その歪さや理不尽さ、非合理さにどうしても気づいてしまう。そうすると簡単には周 -
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読み終わったあと、何だか体の力が抜けて心地よさもありました。
『生命式』に収録されていた短編の「孵化」が好きだったので、長編として『世界99』を生み出してくださり感謝の気持ちでいっぱいです!
それぞれの環境で『呼応』していく主人公の空子に共感するところは多くの人が当てはまるのではないでしょうか?
私も『トレース』+『呼応』してきたことが多々ありました。
現在仕事でも、一対一の接客業をしているので日々多少なり行なっている行為です。
ただ、こうしてると本当の私はどんな人間なんだと考えることもあり、また、『呼応』が下手な人は苦手というか、そういう面が過敏なんだろう、空子のような人が身近にいれば私は生 -
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強烈である。どうすればここまでたどり着けるのか。
宇宙人って感染症なんだ、と笑えた。
世間とのズレに自分を閉じ込めて
魔法で蓋さえしてしまえば、
そこはもう完璧な宇宙なのだろう。
主人公の生い立ちのようなものに
少し自分と重なる部分を感じて苦しくなった。
この苦しみがわかってしまうと、
もう彼女を否定することなんて
私にはとても出来ない。
生き延びなくてはならない。
女としても働く道具としても、
完璧になれないとわかった時、
その中途半端な全てを損ないたくなってしまう衝動。
どこまでも前を走ってくれて、
手を引いてくれて、
こうやって生き延びて行くんだなと思った。
人生に思い悩んでしまっ -
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小説では、嘘みたいに目を背けたくなるような醜悪な世界が描かれているのに、実際SNSを見ているとリアルに存在する。
そんな世界に生きる人間が怖くなる。
この世界の人があまりにも醜くて怖い、でも物語から脱して現実世界に戻っても実は同じと気付かされる。そこに絶望する。
その繰り返しで読み進めるのがとてもとても苦しかった。
村田さんの本を読むのはコンビニ人間に続き二作目となるが、圧倒的に異質な存在を主人公に据えて世界を眺めたときに、最初は主人公の異質さに気を取られて気づかないけど、世界の方が随分と歪んでることに徐々に気付かされる。
下巻も気合いを入れて読みたいと思います!
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Posted by ブクログ
ネタバレ石原千秋氏が『村上春樹の読みかた』で提唱した「二人の村上春樹」という視点を補助線に、本書を「二人の村田沙耶香」がせめぎ合う物語として読んでいる。
上巻を読み終えて抱くのは、強烈な違和感だ。混沌としているはずの子供の心理が、あまりに理路整然と、冷徹に分析され、言語化されている。瞬時の判断で困難を乗り切るその様子は、作中で「賢くない」とされる設定と矛盾し、伊坂幸太郎作品のキャラクターにも通じる寓話的な不気味さを放っている。
だが、この矛盾こそが村田氏の「作戦」ではないか。本音を封じ、生き残るための「術」だけを磨かざるを得なかった子供の末路――内面を大人のシステムに侵食され、思考回路まで「翻訳」 -
Posted by ブクログ
コンビニ人間よりも鋭利な感じで良い。
地球星人として「工場」の中で生きていくのが難しければ、自分をポハピピンポボピア星人と思い込んでこの世の中を生きていかなければならないのかもしれない。
自分も地球星人とポハピピンポボピア星人の間で常に葛藤している。自分は後者の人間であるものの、それは危うさでもある。
かつての非合理的なルール、タブーなどを全く理解もできなかったし、今でもわからないことは多い。ただし、一見すると非合理的に見えることは、地球星人の社会を維持する上で実は合理的なこともある。
近親相姦、カニバリズムといったタブーが、なぜタブーとして機能しているのかを考えるきっかけにもなるなと。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ飽きが来なかったという点で⭐︎5
中盤で飽きるということがなかった
ただ、ミステリーのような、怖いもの見たさの好奇心で読めてしまったような、これを好奇心と思う自分を後ろめたくなるような物語
主人公は、人間関係をグルーピングして役割を持たせて、自分をそれに合わせるようなコミュニケーションを無意識にしていた。次第に、それぞれの世界の自分を客観視するようになる。
一方、ペットのような立場の、ピョコルンが、生殖能力を持つようになる。それが実は、リサイクル人間だった(最後)
下巻は、この調子でどういう方向に話が向くのか。
予想外の流れしかないです。