村田沙耶香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
小説とエッセイが織り交ぜられた作品集です。
小説だけの短編集かと思って読んでいたら急にエッセイが来て少し驚きました。
著者のエッセイを読んだことがある人なら抵抗なく読めますが、初めて読む人には少し取っ付きにくいかもしれません。
私は著者のエッセイ(思考、価値観、物事の捉え方)が大好きなので楽しんで読めました。
小説の短編集はSF的なお話も多く、星新一のショートショートが好きな人が楽しめそうな内容でした。
1番心に残ったのは「いかり」です。
これは戦争に関するエッセイでした。
著者にしてはとても珍しいテーマのエッセイだと思いますが、ものすごく心が揺さぶられたのが伝わってきて鬼気迫る内容でした -
Posted by ブクログ
きっと多くの人が、自分の「コンビニ」の中で、誰かに合わせて愛想笑いをしたり、共感した(フリをした)り、その場にふさわしい「私」を演じたり、流行りの服を着て曖昧にやり過ごして生きている。この物語の主人公のように特別意識せずとも、それがこの世界を生き抜く術だと心得ている。改めてムズカシク考える必要なんてないのだ。そしてその大多数の人たちにとって「コンビニ」はひとつではない。「私」は一日の中でくるくると変化する。
作中説明はないので想像でしかないけれど、脳の発達過程での問題を抱え、そのために思考が大多数とはズレてしまうのだと思われる主人公。彼女の「コンビニ」はひとつだけ。失敗を重ねながら作られるマ -
Posted by ブクログ
村田沙耶香さんの作品、初読みです!
2025年初作家、59人目です。
芥川賞を取った作品で、作品も作家さんも有名だけど、読んだことがなかったんですよね〜。
読みにくいのかなぁとか思っていましたが、めっちゃ読みやすかったですね!
普通とは何か?普通に生きられない人は疎外されなきゃならないのか?
主人公はアルバイトとはいえ、ちゃんと仕事をして一人暮らしもしてるんだし、いいんじゃないのって思っちゃいました。
白羽はシェアハウスの家賃は踏み倒すし、気に入った女性にストーカーするし、仕事はサボるし、真面目に働いている人をバカにするし、悪いと思うけど。
もっと深く読まないとダメなのかなぁ(^^ -
Posted by ブクログ
上巻に続き、わからなさと違和感を抱えながら読んだ。
人間のリサイクルとわかっていても求められるピョコルンに、人はどれほどのしんどさを抱えながら生きているのだろうと心がざわつく。
ピョコルンになりたいという気持ちは、どうしても理解できない。
それで、すべてから解き放たれるのだろうか。
人間をやめたくなるほどの苦しみを想像して、ゾッとした。
汚い感情を持たずに、みんなが同じ記憶を共有し、同じように考える世界は本当に楽なのか。
幸福とは何か…そんな問いが浮かぶ。
自分の中の何かが見透かされたような怖さと、それでも読むのをやめられない面白さがあった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレここまでドラスティックに、かつ合理性を突き詰めた社会システムの姿を思考実験として描き切ることができるのか──それが、この作品を読み終えたときの最初の印象だった。
性行為による生殖がタブーとされる世界で起こる、家族や子どもの生育を描いた本作。設定としては極端なのかもしれないが、人口減少や少子高齢化が進む社会において、これは決して完全な空想のディストピアではなく、「起こり得るシナリオのひとつ」として読みたくなる。
特に印象に残ったのは、実験都市エデンの社会システムだ。
生殖は体外受精に固定され、「一人の親に対する一人の子」という概念は消失している。都市は共同体として機能し、子どもは共同体全体の