村田沙耶香のレビュー一覧
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人工授精が当たり前になって人間は結婚と恋愛を全く別のフェーズでカテゴライズするようになる世界。
人間は人間に恋する必要もなくて、"ヒト"にも別次元を生きる"キャラ"にも恋をするし、"家族"をつくるために結婚する。
セックスは昔の文化になって、嫌悪感を抱く人や、ただ昔はそういうものもあった程度の認識を持つ人が大半。それでも一定数は恋人とセックスする人もいる。そして、夫婦間でのセックスは『近親相姦』と呼ばれる。
主人公はその時代に珍しく恋愛結婚した両親の性行為で生まれたことから、自分は恋人ができるとセックスしたくなること、その自分の中に秘める"本能"は両親と同じものなのか、自分はこの世界の正常なのか。自分の欲望が異常であることを恐れ、確かめるために生活を送る。
いつか自分の子供を持つために結婚した夫とは一緒に住んでいて、ふたりとも恋人とはセックスするが、ふたりの間には性愛はなくて恋愛相談し合ったり、失恋を慰め合ったり、友人や姉弟に限りなく近い支え合える存在だった。
そんなふたりが生きる時代に新しい試みとして実験都市なるものが誕生する。そこではその"家族"すら選ぶ必要がなくて大人は老若男女に関わらずみんな「子供ちゃん」の「おかあさん」で、子供はみんな「おかあさん」の「子供ちゃん」とする"楽園(エデン)システム"の下で生きる。男性や高齢女性にも人工子宮が与えられ、データベースにて管理された全ての大人から一年に一度選ばれた人間だけが受精し子供を産む。
同時期に失恋したふたりは恋愛から逃げ、実験都市へと駆け落ちし家族という概念のないそこで秘密裏にふたりだけの子供を育てようと計画を立て、子供を妊娠する機会が与えられるが、徐々に実験都市での"正常"に慣れだしたふたりの選ぶ世界は? -
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ネタバレ〇丸の内魔法少女ミラクリーナ
36歳のリナが、魔法少女となっていくくだりから既に面白い。ミラクリーナでいる時は、仕事場とかからの評価は高かったが、ミラクリーナでなくなる後半では、冷たくなっていく展開が見どころでした。レイコとの魔法少女ごっこを聞いた正志が、興味を持ち、マジカルレイミーになるくだりも面白かった。優先席のシーンにおいて、正志が妊婦さんに話しかける場面がありましたが、妊婦だと信じませんでした。そこに、初代マジカルレイミーのレイコが現れ、ケンカをするシーンが良かったです。ミントスプラッシュが面白い。
〇秘密の楽園
主人公の内山が、早川君を監禁するという奇妙なお話。初恋の相手を期間限定で、監禁する、お話でしたが、この話も村田沙耶香さんワールド全開でした。最初は、内山は、恋愛というものがよく分からず、早川君を監禁することで、早川君の好きが垣間見えているような気がしますが、最終的に、嫌っていくくだりが面白かったです。監禁といっても、一風変わったところが良かったです。
〇無性教室
性別というものが、なくなった世界においての、とある教室でのお話。主人公のユートは、女性ですが、あの子は、男性と女性どちらなのだろう?と推測していく展開が良かったです。ユキが校則を破り、女性になっていく瞬間は印象的でした。ラストシーンのユナとユートが交錯していくところも、何とも言えない感情になりました。
〇変容
哲学的なお話で、少し自分には難しいお話であったと振り返りますが、良かったです。エクスタシー五十川のくだりが、面白かったです。なもむって、いったい何なのだろうと、考えさせられる読書体験でした。 -
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短編とエッセイが入り混じった構成がとても良かった。商大策「信仰」は、キャッチーで引き込まれたが、その後読み進めるにつれて、人間とは、人生とは、ということについて、とても深く考えさせられる1冊だった。
私が特に好きだったのは「書かなかった日記」で、彼女が世界99を書くために、スイスに滞在した半年間のうちの「調子が良い1日」を綴ったもの。あの素晴らしい大作を書き上げたときに、彼女がどんな精神状態でどんな生活を送っていたのか、知るよしもなかったが、こんなに身を削るような思いをしながら書き上げたのかと、少し胸が痛くなった。
彼女はエッセイの中で何度も自分を馬鹿だとか頭が悪いからと言う言い方をするけど、彼女は実際とてもとても頭が良い人だと思う。彼女の言葉の選び方や思考の癖を見る限り、彼女は理解すると言うことにとても強い警戒心を持っているように思う。私はこれがわかります、わかりました、と言うことで、思考を巡らせるのをやめてしまうことを強く拒否しているというか。人間なんて実際自分が生きている小さな世界のことしか見えていないし、それしか考えていない。それを自覚している人が、この世の中にどれほどいるだろうか。 -
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一つ一つの話が短いので、すらすら読めて良い。面白いな、好きな話だなと感じるものから、あまり好みでないかもなという話まで、さまざまあった。どの話にも共通しているのは、社会常識/通念というものに対する筆者の「疑い」の態度だと感じた。この態度は、あらゆるイマジネーションを想起させる。
キャラクターとして共感できない主人公も多いが、それゆえに次にどう行動するかわからないスリリングさもある。また私が共感できないだけで、この人間に共感し、こういった思考を小説として文章に残してくれる人がいるという事実に救われる人もきっといるのだろう。
そういういろんな人間がいる、存在していて、またそのいろいろの中には確かに自分という存在もいて、そういうことを考えたときに、なんだか不思議で心地よい気持ちになった。
※自分のようなマジョリティ側の人間が書くことで「いろいろ」が矮小化されてしまったら申し訳ないと一瞬思ったが、そんなことで矮小化されるようなものであればくだらない気もする、という使い古されたレトリックについて考える。
また、いうまでもなく『いかり』はとても心動かされる文章だった。 -
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村田沙耶香さんの短編集。表紙やタイトルから「エンタメ寄りなのでは‥」と警戒してなかなか読まなかったことを後悔したくらい面白かった。
表題作はユーモラスでエンタメ風味ではあるものの、しっかりとした純文学。シュールな展開で笑わせてくれると同時に、偽の正義について考えさせられる。
「秘密の花園」は、初恋の人を家で「飼う」お話。
「無性教室」は、生徒が全員無性別者として生活をする学校が舞台。性別のない世界で、人はどう生きるのか。
「変容」は怒りという感情がなくなった世界に適応できない女性が主人公。感情に善悪はあるのだろうか。
全編を通して色々と考えさせられるのだけど、それにしても村田沙耶香さんは性に対しての興味がとてもあるのだなと思う。性について書きたいというより、彼女の純粋な「興味」が文面に浮き出てくるような。 -
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ネタバレすごい気持ち悪かったけど面白かったです。
セックスがなくなって人工授精で子供を産むことが当たり前の世界というテーマでしたが、恋という概念すら薄くなり、家族というのが利害一致で生活しやすくするためのシステムに過ぎなくなってしまうという流れになっていくのが面白かったです。
家族というシステムが廃止されて街中の全てが母親となり、見た目や喋り方や性格も全て統一された「子供ちゃん」を工場のように生み出していく楽園システムがおぞましかったです。一番恐ろしいのは雨音がそのような世界に違和感を覚えながらも、やはり正常な存在として適応していくところです。
何を伝えようとした小説なのか、そもそも何かを伝えようとしているのかもわからない世界観でしたが、世界が変化した結果の一つの可能性として興味深かったです。変化、適応、正常ということについて考えてしまいました。 -
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ネタバレ命を奪ったものは命を生み出す刑に処される。←画期的にも程がある。何でこんなの思いつくんだ。
女が子供を産まないせいにして少子化に危機感感じるくらいなら、男だろうが女だろうが罪を犯したら一生子供生み出す機械になってもらうのある意味いいのかもしれない。人口子宮って実現しないの?!?!?!早くつくって!!!!!!
トリプルも清潔な結婚もなくはないかもな発想で面白いし、余命はある意味安楽死的な話?死ぬことができなくなった人間たちの最期を選ぶ権利みたいな。自然にやってくる死の方がいいのか、自ら選ぶ死がいいのか。考えさせられるな〜。短編だから読みやすくていい!! -
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静かな衝撃作、にぴったり。
このタイトル意味不明、って思いながら読み始め、子どもから思春期の手前の時期が丁寧に描かれている。
タイトルはこういうことかな?と思っていたら残りラスト数ページで、こっちの体温かよ!って突っ込んでた笑 あまりにも素直で、ストレートで、よくこのこれを文章にできたなって、、いう感想ももった。
主人公は、本人はルッキングもイマイチで取り柄がないような女の子でいわゆる漫画のヒロインがいるのだとしたら、その端の端の端あたりのグループにいる子 らしい。情熱と、他者を見る目、自分を他者が見る目が冴えておりきちんと把握できてる。こんな子、意外にいないのでは?自分のこの時代、暗黒レベルだからな…。
そして幸せ者の男子伊吹くん。が、いい子すぎる。
なんとなく、こじれながらも続いて欲しいなと思った2人であり、主人公が大人になったら激しい恋とかするだろうな、って勝手に想像できるあたり、しっかり物語に浸かりました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ表現の仕方と言葉の選びが好きだと思った。
でも、最後、伊吹と関係を結ぶところは詩的すぎて
引いてしまった。正直、あの場面は必要だったのか
と疑問に思った。別の形で伊吹に対する結佳の気持
ちを消化、表現する方法はなかったのか…作家さん
がそうしたのは、それに意味があったということだ
ろうけど、もやもやしてしまう。
小中学生が持つ性への興味も、好きな人に触れたい
と思う気持ちも否定しないし、理解も出来る。
でも、美化するような表現に危機感を感じた。
結佳の性格を考えると違和感はなかったけど、つい、
子を持つ親視点で見てしまった。
叶わないけど、小中学生の頃に読んでたら、私はど
う感じただろう… 無性に知りたくなった。
伊吹は理解があり、ありのままを受け入れてくれる。
そんな友人が誰にでも一人はいたらいいなぁと思う
男の子だけど、結佳というキャラにとって、都合の
良いキャラになってる感は否めなかった。鋭い指摘
はあったものの、善良なためか人間くささがあまり
感じられなかった。
ヒエラルキーのあるクラスの状況や雰囲気がひしひし
と感じられ、結佳が解析する描写は素晴らしくて、
読んでいて息苦しささえ感じた。
中学校のあるクラスの話だけど、そうじゃないとも感
じた。社会でも、職種や地位など様々なヒエラルキー
を意識して、その価値観で過ごしてる人、そうじゃな
い人が混在している。
作られた価値観ではなく、自分の価値観で自分自身を
はじめ、全てを見る事ができたら、多少生きやすく
なると思う。それを中学生で知った結佳は幸運だ。
鋭く胸を突くような表現の中、鋭くても少し笑えて
心が軽くなるようなものもあった。
「めくれたジャージの裾とか、かかとを潰した上履き
とか、一つ一つそんな欠片を集めて、妄想を積み重ね
ていく」
「女の子は妄想と現実を絡み合わせて、胸に巣食った
発情を処理できずに、体の中に初恋という化け物を
育てていく」