村田沙耶香のレビュー一覧
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上巻の最後に行われた「リセット」後、ピョコルンはいなくなるのかと思ったら意外にも健在だった。ラロロリン人がピョコルンとして搾取されることを引き受けたから。世界は3つの階層に分かれ、それぞれの世界で感情は均質化されている。上巻で被害者だった空子は、下巻では搾取する側にいる。
さらに下巻では空子の次の世代である、波や琴花たち(生まれた時からピョコルンが搾取対象としている世代)が描かれる。どういった経緯でピョコルンが家事労働や性的処理を引き受けることになったのか知らないので、いまだに母親がその役割を引き受けている低所得層の家庭を見て、うちにも「母ルン」がいればいいのに。ピョコルンがかわいそうとのたま -
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ネタバレ2026/03/16
36歳未婚の女性が主人公。
コンビニでずっと働き、周りから「普通」を強要されるが、自分にとっての普通はコンビニ店員として働く事と気付いて働く物語。
周りからの目線、評価だけで生きる事を今までしてきた自分にとって、新鮮で自分の生きがいを改めて考える本だった。周りの意見は関係ないと思いたいが、なかなか自分の意見だけで生きていく事は難しい。自分のやりたい事、生きがいは何か?普通って何か?を考えなおして、うまく世渡りしていかなくては、世間の”普通”として生きていけないと思った。
環境によって自分自身が作られているのは本当にそう思う。身なりも話し方も考え方も。いい人の周りにはい -
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ネタバレSFディストピア小説のような、2020年代の現実社会を風刺した小説。ピョコルンという人間にとって面倒で残酷な穢れを押し付けることができる存在を手にしたらという衝撃の思考実験だった。
本作が描くのは、SNSのアカウントごとにタイムライン(世界観)を切り替え、コミュニティごとに正解の振る舞いを「トレース」して生きる私たちの姿そのものだ。我々はすでに、世界①、世界②と無数の世界を所有し、その場にふさわしい人格をアルゴリズム的に最適化して演じている。そして、その無数の「世界」を俯瞰し、画面を切り替えるように自分を操作している一つ上のレイヤーこそが、現実=「世界99」なのだという指摘に、スマホをのぞい -
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ネタバレ社会が求めるのは「共感」か「結果」か?——主人公と白羽の対比から考える
一般的に「正常」とは、共通する感覚をある程度の許容範囲内で持ち、そこからはみ出していない状態を指す。その範囲から逸脱した人間は「正常ではない」と見なされる。
本作の主人公は、この正常な範囲から外れた感覚の持ち主だ。彼女の特性は、一般に「アスペ」と称される人々の抱える違和感に通じるものがあるのではないだろうか。
普通に社会生活を送っている人の中にも、「この感覚は自分には理解できない」と思う瞬間があるはずだ。もし自分がその「理解できない側」だったとして、普通の人がどう感じるかを知識として学び、特定の場面でその知識に基づい -
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序盤から結構しんどい。でもやめられない。
ピョコルンやラロロリン人といったSFっぽい、シュルレアリスムっぽい?要素もあって、一見ディストピア小説のようにも思えるが、ここに描かれているのは紛れもない現実の一側面だ。
人間のダークサイドが強調されているため目を背けたくなってしまうが、世界①も②も③…も多分実際に存在するし、主人公の如月空子が、その場に応じてキャラクターを使い分けるのも、うまく生きていくために誰もがやっていることだろう。だけど、それをこういう書き方で見せられるとは…すごいものを読んだ。
そして、上巻の最後に明かされたピョコルンの正体が衝撃的で、下巻は何が起こるのか不安過ぎるけど、この -
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上巻が今回の物語の核となる部分なら、下巻はエピローグ的な感じだと思った。主人公が色んな世界を色んなキャラクターで行き来し、世の中の本質をガツガツ突くのが面白かったが、下巻は世界が統一された後の話なので、上巻に比べると少しワクワク感に欠けた。
下巻で男性に搾取され続けていた空子がピョコルンを前にして男性側の思考になるの、大分えぐい。ここの展開が見事。明人ピョコルンの末路もいい。
私はピョコルンがいる世界も、記憶ワクチンで思考が共通になる世界も、とてもいいと思った(笑)。その方がみんな楽だし傷つかないしハッピー★
こんな風に思ってしまうぐらいには、私は今の世界に疲れているんだと思うヽ(^。^)