村田沙耶香のレビュー一覧
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トレース(呼応)。
確かにみんな気づかずこれしてるなーって心理を突かれた気がする。コミュニティによって、自分は何人もいるような感覚はすごく理解できた。
空子が白藤さんに対して、
「そうだよね。人を救うのってすごく気持ちいいもんなぁ、と私は思った。」
って感じてるのが、なんだかとっても胸にくるものがあった。どの視点で人間を見るかによって、人の善悪みたいなものは決まってくる。
私が正しいと感じることを相手に押し付けて、あたかも自分が正義を振り翳してるような気になっていても、実は相手からは私は客観的に見ると、「無駄な正義感を誇りにズカズカとプライベート無領域に入ってくるヤツ」だったのかもって思わされ -
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古倉さんは何気にコンビニで仕事をする上では有能なところが結構あると思うんですが。冷静だし、観察力もあるし、何より真面目である。
ただ、世の中の常識的な感覚がない、普通がわからない。ある意味すごく純粋だから、家族のため、親や妹が喜ぶことをしようと、自分を犠牲にする事もある。おそらく何かしらの病を抱えているだろうに、自立していることは立派であるし、幸せは人それぞれなのに。
一方白羽は人として最低だけど、普通の、世の中の常識的な感覚はまだ持っている。だから自分が出来ない事に対しても、言い訳をしながらも苦しんでいる。
普通とは何かを考えさせられる物語ですが、古倉さんには幸せに生きて欲しいし、自分を -
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ネタバレ村田沙耶香の作品に共通するテーマは、セクシャル及びジェンダーの常識や定説に対する忌避感であると思う。女性が被る男性性からの抑圧や差別、性行為で直面する男性優位。著者はそのような状態からの脱却を試みる。
しかも、完全にないものにするのではなく、無味無臭で高尚な営みへと変換するのだ。登場人物や設定が提示する身体性からの脱却と再結合に読者は不信感を抱く。その不信感を持つこと自体、常識やイデオロギーに覆われているということを読者は自ずと認識し立場を危うくする。
そういった観点から「無性教室」をおすすめする。
舞台となる学校は「性別」が禁止される。真っ白な校舎はその中性的な空間の象徴であろう。
性 -
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ネタバレ奈月が子供の頃セックスをしているところが見つかった時、大の大人たちが阿鼻叫喚しているところを冷めた気持ちで見ているところが印象的だった。
『大人は子供を性欲処理に使うのに、子供の意思でセックスをしたら馬鹿みたいに取り乱している。笑えて仕方がなかった。お前たちなんて世界の道具のくせに。』
↑ここかっこよすぎて痺れた 奈月マジでかっこいい
子どもが子どもの意思でセックスしたら可笑しくなったと暴れ狂うのに、大人が大人の意思でセックス“しない”と言ったら同じように腫れ物扱いなのおかしすぎるだろ。大人になったら、結婚したらすることがセックスしかないんですか?
ていうかセックスを『仲良し』とかいう奴ら全 -
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芥川賞受賞作『コンビニ人間』の
プロトタイプ的な要素を感じた
マウスにはスラング的には
臆病・小心者という意味がある
一方で、可愛らしい・魅力的なという
ポジティブな意味あいが含まれる
登場人物の心の機微や、成長も経て
次第に魅力的になっていく
ダブルミーニング的な側面も感じた
更に言えば、
実験動物のように、
与えられたもので変わっていく様を
見受けられる読者目線としての
トリプルミーニングともとれる
非常に奥深い話に思えた
久々に村田沙耶香さんの本を読んだが、
今まで最も温かみを感じた
これは、ジャンルとしては
シスターフッドものになるのかな?
世界観、衝撃度、大作という点では
世界 -
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ネタバレ気持ち悪くて気持ち良い、
最高の読後感です。
ありがとうございます。
文章で物語を書く良さが凄く出ていて、読者をこの歪な世界の住民にさせてしまう村田さん恐るべし。
文章だからこそ描き出せる現実感と非現実感のバランスが心地よかったです。
出てくる人も生物も世界も、自分が生まれ育った所とはかけ離れているのになんか見覚えのある感じ。私も空子のように世の中に蔓延るいろんな情報を仕入れ、それを自分の中にダウンロードしているからそう思えたのかな、なんてことを思いながら読んでいました。
以下、好きなフレーズ。
「呼応」が上手くいった時の甘い空気の振動。
「性格」とは自分ではなく他人が創るものなのだ -
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「続きが読みたいのに手が止まる」こんな体験は初めて。上巻のスリリングな人生は魅力的かつ悍ましい。一方、下巻は物語を補完、そして読者の思想を反転させ麻痺させる。たとえ上巻だけの話でも私は好きだし、むしろその方が好きかもしれない。同時にこんな小説は、私には書けないと心の底から思った。
女性の悪口は嫌いだった。けれども、彼女らはいつも知らぬところで犯され続けている。自身で守る術など無いに等しい彼女らにとって、悪口は心を優しく包むホワイトなメッセージだった。生物の体力の上下がある同種、いま私たちは残酷な世界に生きている。
呼応とトレース。意識してないだけで多くの人が無意識下で行なっているもの。人間 -
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読み終わった直後に残ったのは、スッキリでも感動でもなく、静かなモヤモヤだった。けれどその感覚こそが、この作品の本質なのだと思う。
印象に強く残ったのは、異様な世界観とそこに生きる人々の思考だ。最初は「どこかおかしい世界」の物語として読んでいたはずなのに、物語が進むにつれて自分の感覚のほうが少しずつ揺さぶられていく。気づけば「普通」とは何かを考えさせられている自分がいた。
読んでいる間に感じた怖さは、派手な恐怖ではない。
それは、世界の前提が静かに書き換えられていくような不安や、人間の感覚そのものがずれていくような気味の悪さに近いものだった。極端な世界を描いているはずなのに、どこか現実と地続 -
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ネタバレ直木賞も本屋大賞も受賞作を読んだことがありますが、芥川賞はなんと初読です。純文学とは何ぞや…と構えて読みましたが(この辺、「響」の影響を受けちゃっていますね)、小説は小説であって色眼鏡は不要でした。と言うか、大変読みやすかったです。
とりあえず白羽がウザいのですが、これはもう類型的に「嫌なヤツ」を描いているだけでしょうから、まあいいでしょう。やっぱり怖いのは古倉さんで、本人の語り口は平然としているのですが、どれだけ勤務歴が長くてもバイトリーダーに任ぜられなかったり、妹の「表情も変だよ」という点からして、白羽絡みのエピソードを脇に置いたとしても、ああ、世間からみるとあんな感じの人なんだろうなあ -
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30半ばの中年コンビニバイトで恋愛経験もない主人公。社会の「普通」から外れているものの、そのことに違和感をもたずに生活している。しかし、同じコンビニのバイトに白羽が登場してから場面が展開していく。白羽も30代で碌に仕事もせず結局バイトも辞めてしまう。「普通」に働き続けることは彼には困難である自覚はあり、働くという「普通」の行為を彼は嫌悪しつつも、結婚という「普通」のステータスに憧れをもつ矛盾した人物であり主人公との対比が面白かった。彼も普通に憧れていると言うよりは、普通でない人に対して、社会は異常者を排除するために攻撃的に干渉してくるが、結婚して普通に溶け込むことで社会からの無関心を求めてい