村田沙耶香のレビュー一覧
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「理解不能」「ついていけない」
レビュー欄に並ぶこれらの言葉に、ただただ戸惑いと、激しい憤りを覚える。
多くの人が「普通」という信仰の中で安穏としている一方で、心がひき肉のように切り刻まれる感覚を抱え、自分をロボットや宇宙人と定義しなければ一歩も動けないほどに摩耗している人間がいる。
村田沙耶香さんが描く肉を毎日とりにいったり、自分と見た目が同じ複数のロボットとの生活や周りの人が宇宙人に見えていることは、単なる「奇妙な設定」ではない。それは、自分に刃を向けざるを得ない卑屈さを抱えた私たち(側の人間)が、現実という地獄を生き抜くために必死で構築した「高度な生存戦略」であり、聖域だ。希死念慮をひき -
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ネタバレタイトルが気になり読んでみた。
「お姉ちゃんはどうしたら治るの?」
治るってなんだろう。普通って何?
「誰か止めてー!」と言われたからスコップで殴って止めた。それが一番早く止められると思ったから。やり方はさておき、確かにと納得してしてしまった。
自分を出さなければ周りに迷惑をかけないからと、自分を出さなくなる主人公。
周りに合わせ、コンビニ色に染まり、誰にも迷惑をかけずに(なんならとっても優秀な職業人!)なのに、就職か結婚しないのはおかしいと言われ。なぜしないのかと聞かれ続け。プライバシーを強姦。
人間は共感の生き物なのかな。異物は排除。怖い怖い。
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ネタバレ生きている場面で「普通」を社会から求められる圧力はかなりあるし、それに伴って重責や不安を抱かされる場面も多い。主人公の古倉もこのような「普通圧力」を周囲から受けるのだが、ここで古倉が「普通でないと判断される要因を体裁だけでも排除したら問題無いのでは?」と気づき、周囲もその古倉の思惑通りに「普通」の一部となったと歓迎する。しかし、古倉が欲しかったのは「普通」になる事では無かった。
この小説を読んだ感想は恐らく二分されるのではないかと思う。主人公に共感できるかできないか。自分は物凄く共感出来たと同時に、ここまでドライに社会を、自分を俯瞰で見て生きることが出来るか?とも考えさせられた。表面上では適応 -
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村田沙耶香の最高傑作であり、これまでの作家人生の集大成とも言える作品だと感じた。
過去作で繰り返し描かれてきた「普通」への違和感、社会とのズレ、個人と集団の関係、そして身体や性の問題。それらのテーマが本作では極めて濃密に結晶化しており、「決定版」とも言いたくなる完成度だった。正直、この先どんな新作が生まれるのか少し心配になるほどの圧倒的な出来。
本作はディストピアSFという形式を取ることで、現実社会の構造や同調圧力、そして適応という行為の不気味さをより鮮明に浮き彫りにしている。
特に印象的だったのは主人公の存在。彼女はあらゆる局面で適材適所に振る舞い、驚くほど巧みに社会へ適応していく。し -
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ネタバレ「多様性」だなんだと言われる中で、結局は社会の「普通」が基準となり、あくまでも「普通」か「普通ではいか」に二分されているように思う。
それは「人間」の社会においては共通であり、だからこそたくさんの国で読まれているのだろう。
自分自身、今までどちらかというと変人だね、と言われてきたし、自分でも「普通」の生き方ができていないような気がしている真っ只中だ。
共感しながらこの作品を読めてしまったのがその証拠だと思う。
主人公は、「人間」の「普通」を目指すことどころか、「人間」であることを捨て、「コンビニ店員」として生きることを選んだ。
これはハッピーエンドでもあるが、やはり「人間」の「普通」を捨て -
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ネタバレ上巻に引き続き、ページを捲る手が止まらない。
あっという間に読み終わった。
気分が良いものではないので読み返すことはないと思うが。村田沙耶香さん天晴れ。
○女性の人権とは
「女性」として生まれてきた人なら絶対に感じたことのある表現の数々。
自分でもハッキリそれとは知覚できないまま勝手に搾取され値踏みされ「心が擦り減っていく感覚」
「私の子宮が見張られてる」
「性処理の道具、出産家事育児の道具として家族に一生使われる存在」
誇張表現だとしても、目を背けていた物事がこんなに明確に言語化されてしまうとドキッとする。
男性は所詮これは物語、ディストピアだと見るのだろうか?感想を聞いてみたい。
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ネタバレ上巻のレビュー欄では、作品自体の感想文を書きました。
ここでは、主に村田沙耶香さんに対する感想文を書こうと思います。
インタビュー動画でも、よく村田沙耶香さんは「クレイジー沙耶香」と称されており、自分も初めて村田さんの作品(コンビニ人間)を読んだ時は「この人は狂っている」と思ったのですが、世界99を読み終えた時には考えが改まって、
「この人は究極な俯瞰者」
という言葉が出てきました。とある箱(世界)に人物や要因となる物(例:空子、ピョコルン、ラロロリン人など)を加えていき、一体どのような反応になるのかを上から眺めて、結果を本に書き記す。この過程を極めに極めた方だなと思いました。インタビューでも -
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ネタバレ「呼応」と「トレース」を駆使し、自分のキャラを適材適所に創り上げ、様々なコミュニティ(世界)に媚び続ける空っぽな主人公。一見すると、単に空虚な人に見えましたが、読み進めるにつれて、実は人間の根底にある部分を具現化した人物だなと考えるようになりました。人は人に媚び、そして人全員は世界に媚びている。その中のツールとして「呼応」と「トレース」を繰り返してるだけ。人の生き様なんて奥深く辿れば、無機質な歯車にしか過ぎない。主人公は物語の途中、自分が属しているコミュニティに「世界①,②,③」と、読者に分かりやすいように番号付けしてくれました。各世界の特徴や人物、内情を事細かに教えてくれました。常に無機質に