村田沙耶香のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
村田沙耶香のデビュー作「授乳」
村田沙耶香は、マイノリティから見た「普通」の世界、そしてその「普通」を謳う世界の異様さを描くのが得意な作家だと思っていたが、やはりデビュー作ということもあり、そうした作風と微妙に異なっていた。
「授乳」で驚いたのは、主人公の微妙にサディスティック的な性格だった。村田沙耶香といえば、主人公に攻撃性などなく、むしろ外の世界に対して無関心的であったり、無感情、どこか感情の鈍麻したところがある主人公ばかりだ。その中で、サドに快感を抱いてそうな少女が主人公として描かれるのは驚いた。
他の作品でも、「マイノリティ」が描かれているのはあまり変わりないものの、「マイノリティ」のおびる、生きながら滲み出てくる狂気が目立った。「普通」の異常性より、「普通」の世界に馴染めず、苦しみ、浮き出てくる腫れものを描いているようだった。
どの短編も面白く、やっぱり村田沙耶香は天才だなと思った。他の作品も全部読みたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ殺人出産を読んで疲弊しちゃったので村田沙耶香作品の中で比較的ライトそうだと思って読んだ。SF多めでどの話もシンプルにすごく面白かった!特に「生存」「書かなかった小説」「最後の展覧会」「彼らの惑星へ帰っていくこと」が好き。エッセイの現実の話なのかフィクションなのか境界がぼやけることがあったけどそれもそれで面白かった。
以下備忘録
■信仰
最後の展開ドキドキした。主人公のミキほどではなくても原価や現実的なことを考えちゃうタイプだから、どういう結末になるのか楽しみだったけどかなり予想外だった。現実ってカルトの対義語だと思ってたから混乱した。現実主義者ならそれでもいいけどそれを他人に押し付けたらカルトと一緒だ。
■生存 ★
こんな未来は嫌だ。けど温暖化や格差がこのまま進んだらこうなる可能性もあるのかも。。。通知表やらアドバイザーの設定がリアル。クミの諦念感が悲しかった。ハヤトと結婚する未来を選んでほしかった泣
■土脉潤起
切ない苦しい。。野人の続きが気になってはいたけど、家族視点で見るとやるせない悲しすぎる。
■彼らの惑星へ帰っていくこと ★
好きだな・・・と思っていたら終盤でやっとエッセイだったことに気づいた。「地球は、私が現実に触ることができる唯一の星だ。いつからか、そのことに感動するようになった。」というフレーズが特に好き。地球星人で似たような話が読めるのかな。
■カルチャーショック
均一化SF!!ハーモニーをもう一度読みたくなった。
■気持ちよさという罪 ★
個性という言葉への不快感の言語化がシンプルで的確で感動した。「クレイジーさやか」は聞いたことがあったけどそんな裏話があるとは知らなかったし、途中まで何が問題なのかよくわからなかったけど、プロデューサーのセリフでラベリングの不快感がよくわかった。自分を裁き続けられますようにという多様化を願う理由が素敵。
■書かなかった小説 ★
クローンSF。テンポよく展開の予想を裏切られて楽しかった。性格とか感情ってなんなんだ??
■最後の展覧会 ★
「Kとマツカタは、彼らの中で、何度も咲いた。」好き。読み終わった後に日本人とドイツ人の美術収集家の架空の出会いがテーマになっていると知ってより好きになった。この話に限らずだけど、村田さんのSFって特殊な設定でも短い文章の説明だけですんなり入ってきて情景が浮かび上がってしまうのすごい。
◼️無害な生きもの
人間が人間を害獣と認定してから1000年後の未来の話、深夜に弥生さんからメッセージを受け取ったあたりから急に訳分からなくなってしまった。「肉」も結局正体がわからないし実態は人間みたいな話と予想してたけど違うのか・・?大人は子供に害獣と洗脳しておいて、「罪滅ぼし」をきっかけに再洗脳して本当は絶滅させる気がなかったってこと?あと4回くらいしっかり読まないと理解できないかも。大混乱。
■残雪
遺書の相手が予想外すぎた。ページ数も会話量も少ないし琴音の素性もよくわかっていないままなのにラブレターみたいでときめいてしまった。。。
■いかり
「まるで繊細な傍観者か、情報の暴力の被害者であるかのように、」「絶望と後悔に殴られ続けている。そのことすら卑怯だと思う。」の文が好き。スケールの大きな現実に対して自身の気質のまま向き合っているのが素敵だと思った。アダニアさんの小説読んでみたいけどかなり勇気がいる。 -
Posted by ブクログ
面白い。これを読めるのが読書の醍醐味だと言ってもいい。自分だけでは触れることのない価値観、世界観をSFではなく、想像の範疇として捉えることができる。
皆、自分の独自性と異常性を抱えながら、世間の枠の中に納めながら生きているのだと思う。
各人の異常行動よりも、それを社会に染み込ませる作業に本当の怖さを感じた。
"あたしは思う。たとえば自慰の才能があって、自分の性欲を完全に満たすことが出来る人がわざわざセックスなどしなくてもいいように、あたしのように愛を自己生産できる人間は、わざわざ他人との人間関係なんていらないんじゃないか。あたしはホシオをポケットにいれてさえいれば、誰もいない海の上に一人で浮かんでいたって、少しも寂しくなく生きていける。それどころか誰にも邪魔されずに思う存分満たされ続けることができるだろう。" -
匿名
購入済み👏
村田さんの作品で話題になっていたため購入しました。ここ最近で一番の衝撃でした。人に気軽にすすめられるものではないけれどみんなに読んで欲しい、良き作品に出会えました。
-
Posted by ブクログ
村田沙耶香ワールド全開。
人間は弱いからこそ何かを信じたい生き物である。
信じることは、考えることをやめること。
世の中には支配する人支配される人、騙す側の人騙される側の人が確かに存在している。信仰なしでは生きらない。歴史や伝統、世の中のルールなどはすべて誰かに創作された宗教のようなもの。途中でそれが全部誰かの利益のために変えられたとしても、人間は何の疑問も持たず受け入れて生きてく皮肉な生き物である、そんなメッセージ性を感じた作品。
昔からのお祭りや地元の言い伝え。それってもしかしたら伝統なんて何もなくて、誰かがただ面白おかしくエロ目的で作ったものだったりする。その事実を知らずに、信仰し続けている可能性がある。
今自分が生きているこの世界何もかも信じられなくなった。
人間として生まれたって思ってるだけで実はこの事実すらも操られてるのかなぁと地面がぐらっとひっくり返るような感覚。
2作目は夫婦がクジラしたくてひたむきに頑張る爽やかエロストーリーです。(笑) -
Posted by ブクログ
芥川賞受賞作『コンビニ人間』の
プロトタイプ的な要素を感じた
マウスにはスラング的には
臆病・小心者という意味がある
一方で、可愛らしい・魅力的なという
ポジティブな意味あいが含まれる
登場人物の心の機微や、成長も経て
次第に魅力的になっていく
ダブルミーニング的な側面も感じた
更に言えば、
実験動物のように、
与えられたもので変わっていく様を
見受けられる読者目線としての
トリプルミーニングともとれる
非常に奥深い話に思えた
久々に村田沙耶香さんの本を読んだが、
今までで最も温かみを感じた
これは、ジャンルとしては
シスターフッドものになるのかな?
世界観、衝撃度、大作という点では
世界99が未だに一番だけど、
純粋な好みとしてなら、
これが一番好きかもしれない
村田沙耶香さんの作品を読みたくて
手にした方は、少し物足りなさや違和感を
感じるかもしれない
-
Posted by ブクログ
「私の身体」を「生きる」とは何だろう。いや、「私の身体」とは何だろう。そもそも、「私」とは何だろう。
各作家たちの切り口は様々だが、みな共通しているのが、己という存在を不可欠に構築するこの肉体というものの生物的な役割にも社会からの眼差しにもかなり戸惑い、苦しみ、受け入れたり受け入れられなかったりしながらどうにか生きている点で、強く連帯感を持ちながら読んだ。
痛ましさを感じたのが、執筆陣の女性たちはほぼほぼみな性被害の経験がある点。私にもあるし、私の友人たちもほとんどあると思う(学生の頃、痴漢が話題になったとき、その場にいた10人ぐらいのなかで痴漢に遭ったことがない子は1人しかいなかったことを覚えている)。この社会で、そうやって女性は、否応がなしに「私の身体」は本当に私のものなのかと、「私」がモノとして扱われ得るということに向き合わされてしまう。時には、まだ第二次性徴も迎えていないうちに。だからこそ、このようなアンソロジーが興味深い。
とはいえ男性視点の「身体」やその社会的表象については私にはわからない部分なのだが(この辺りのアンコンシャスバイアスについて、鳥飼茜さんとパートナーの方との会話が面白かった)。男性作家たちに、同じテーマでアンソロジーを書いてもらったらどのようなものが生まれるのだろう?と好奇心を抱く。