あらすじ
夫も食べてもらえると喜ぶと思うんで――死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作のほか、村田沙耶香自身がセレクトした、脳そのものを揺さぶる12篇。文学史上、最も危険な短編集!
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Posted by ブクログ
短編集です。めっちゃ読みやすい。
村田さんのちょっと奇妙な怖いようなでも、そんな世界あるんじゃないかみたいな物語の書き方が詰まってて好きです。
死んだ人を食べる文化とか、出生の価値観とかが村田さん目線で書かれててとても面白いです。
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中学生の時まさしく「オタク」と呼ばれて冷笑されていました。しかし、近年社会経済がオタクの価値を見出してこちら側に縋り付いて全員が何かのオタクであることを許容しています。それが私には本当に許せないことで、その経験があったので生命式の主人公には共感できるところがありました。昔の痛い経験が今は当たり前で、ただその今の文化にもちゃんと恩恵があるし共感できるところもある。少数派が急に多数派に連れてこられたら動揺しますが、社会は常に流動的なので、私も受け入れられるようにしていきたいなと思いました。
互いに人の価値観を受け入れはしなくても、理解し合える仲になれれば理想的です。
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とても興味深く読んだ。
「生命式」「素敵な素材」はグロい描写に参ったが、ここまで書けるのがえらい。
「生命式」は「殺人出産」と同様、高級な倫理学小説だ。同じ枠組みの小説なので、ワンパターン感は否めない。「孵化」も「コンビニ人間」と同じだなあ。
「二人家族」は、結婚の哲学小説。
一番好きだったのは、「魔法のからだ」。高度なセックスの哲学小説だと思うし、メッセージも素晴らしい。
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「生命式」と「素敵な素材」でガツンと正常とは何かを問われた。
「素晴らしい食卓」で、多様性を認める行動の気持ち悪い一面が書かれていて印象に残った。
多様性は混ぜたらいけない。
無意識にしてしまう正常と異常の線引きを考えさせてくれる短編集でした。
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お久しぶりの村田沙耶香さん。特に最初の三編が好きだった。
『生命式』、『素敵な素材』は、「命を食べて、命を作る」葬式に代わる儀式も、「人間を素材として使う」よりも「全部燃やしてしまうほうがずっと残酷」という発想も、確かにそうかもなとも思うのに、想像するとどうしても気持ち悪かった。どうしても今まで生きてきた中で刷り込まれてきた倫理的価値観が、生理的感覚として自分の中に根を張っているんだなと思う。柔軟でありたいものだけど。
『素晴らしい食卓』は、無理やり文化を融合させるのは気持ち悪い、というラストに風刺が効いていてよかった。
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何か根本的な違和感を抱えつつ、それが合理性を持っている。この世界の根本的な在り方を問うている。その根本的な在り方とは、そもそもいったい何なのか。
人間の始まりと終わりのタブーに踏み込み、世界が、人類が、脈々と受け継いできた常識という妄想への挑戦。常識など案外脆いのに、みなは大事そうに、それを信じている。最後の話は分人思想を思わせる。
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著者が自選した、短篇12作。好き嫌いが分かれそうな本だけど、自分は面白かった。登場人物はひたむきに狂っていて、それを笑って読んでいると、著者からの鋭い問いが直撃する感じがたまらなかった。表題作の「生命式」で、山本が言っていたが、常識や本能、倫理はずっと変容し続けていて、それに適応した多数の人間がその時代の「普通」を作り出しているだけだと思ったら、気が楽になった。一気に世界に引き込まれた「生命式」、面白可笑しくて一番好きだった「素晴らしい食卓」、比較的マイルドで共感しやすい内容の「孵化」が印象的だった。
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この本に対しては生半可な感想は許されない感じがする。感想、つまり自分のスタンダードと本の比較行為が、社会規範という基準に対して石を投じ続けたこの本に対してはよりより一層と真摯でなければいけない気がする。
本書はクレイジー沙耶香らしさ全開。生々しく正しさとやらに挑戦している。正しさの元で犠牲になるのではなく、それぞれの世界の正しさ、のルールとそれに対峙する人の葛藤を記す。この葛藤を通じて、正の基盤は蒟蒻のようにゆるゆるだと言うことが伝わってくる。挑戦しているのだけれども、答えを出す訳ではない。だからこそ、この本に対して多様な解釈、そして感想を抱いた。読んでいて本がこちらに凄く語りかけてくるようだった。
どの話も違った角度で違った正に挑戦している。全ておもしろかったけれど、個人的には食に関わる4つの作品が好き(生命式、素敵な素材、素晴らしい食卓、街を食べる)。生きる上で欠かせないし、1番身近な食だからこそ、本の中の世界の異様さが湧き出てくる感じがしたし、その世界を通じて今自分が立っているルールに対峙した気もした。
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ここ最近クレイジー沙耶香さんの作品を数冊読んで
【変容】という言葉が必ずでてくる。どの類の小説か難しいが、この生命式の短編集を何冊目に読むかで好みが枝分かれするだろう。
今まで読んだ小説の中で1番好きなレベルでした。
村田沙耶香さんの小説は好きで何冊も持っていますが、彼女の独創的な思想と文章を楽しめる作品でした。個人的には3つ目の話が好きでした。タイムリーに食の相性について考えていたので笑ってしまいました笑
Posted by ブクログ
最後の話が1番好きだった。自分が属する集団によってキャラが変わってしまうのは意外とあるあるなのかもと思うけどここまで極端な人はそういないだろうな。人生疲れそう。こういう人いるんだろうな感じがする話ばっかりだった。世界観が独特だし描写が丁寧だから所々気持ち悪い部分もあってホラーとは違う意味で怖いところがある。
Posted by ブクログ
「生命式」
会話が異常だが、日常に馴染みすぎていた。
レシピに「俺の肉」で不謹慎ながら笑ってしまった。
葬式なのにパーティー、宴会のようだ。
「素敵な素材」
物語の中で出てくるものが想像できなかった。
いい話だった。
「素晴らしい食卓」
変わった食事。p102の圭一さんの母のストレートな物言いが面白かった。
「夏の夜の口付け」「二人家族」
性的指向。自分の想像にはない家族の形。
長女の6年生の時、面白かった。
「大きな星の時間」
絵本の読み聞かせのような文章だった。
「ポチ」
事件が起きないかヒヤヒヤした。
「魔法のからだ」
性について向き合っていて、神秘的な表現がされており、とても美しいことのように思った。
「かぜのこいびと」
お気に入りのものについて人間のように扱っているのが新鮮だった。主人公がカーテンであることも新鮮だった。
「パズル」
離人感というものだろうか。主人公は、自分には生気がない、人間らしさがないと感じている。
それゆえに、人間らしさ、人間の生々しさに憧れや羨ましさがある。
世界観の理解が遅れてしまったり、わからなかったりしてp195くらいから比喩表現がうまく読み取れなかった。
カルトにはまっている人のようだった。
「街を食べる」
主人公の野草に対する好感度が高まりすぎて怖かった。
「孵化」
怖いと思ったが、同時にコミュニケーション能力が高いとも思った。
ハルカもハルカだが、マサシも怖かった。
Posted by ブクログ
1月最後の本は、昔に買って途中まで読んでいた本。
とても面白かったけど、途中で気分が悪くなって読むのを中断していた、それ程に自分の中の正常な何かがぐらりと揺れて崩れそうになる一冊でした。
短篇十二篇の中のほとんどが、常識からズレた主人公たちで構成されているのでその都度、色んな自分の中の常識との乖離がすごかった。とても興味深いと思う反面、本能的にすっと受け入れなくて、読んでる途中で吐き気を催したのはこの本が初めてだった。
その世界ひっくるめて常識が改変されていることにに違和感を覚えている主人公のパターンや、それと真逆に主人公だけズレているパターン。読み手としては、世界のズレに対して違和感を覚えている主人公の方が最初は共感を覚えるんだけど、その主人公自身がその違和感に迎合していくと、自分もそれに引っ張られて、気付けば最初に抱いた世界観への強烈な違和感がなくなっているという怖さもありました。
主人公の中にはこの感覚は共感出来ないと思っていても、村田さんの圧倒的な文章力、どんな非常識もその人にとっての常識として淡々と、けれど強く描き切る文才によってずるずると引き摺り込まれていく感覚を覚え、えも言われぬ感覚に陥りました。
全部に対して細かく感想を言っていたらキリがないので、私の中のいくつかのお気に入りに絞って。
「生命式」
表題作。最初から世界の常識が故人は美味しく料理して食べるもの、食べたら新しい命を紡ぐための「受精」をすることがセットだったので、最初からすごく引き込まれました。読めば読むほど、こんな世界観も悪くないのかも…人間って本当にそんなに美味しいのかな、こんな気軽に「受精」出来たら現代の色々な面倒な手順も省けるのにな、と、この世界観を羨むまでになってて、なんとも言えない気持ちになりました。
「素敵な素材」
人間の死体を服や家具などの素材としてリメイクする世界線の話。なかなかグロい題材なのに、「人の素材」自体が高級品として扱われているせいか気持ち悪さよりも興味が勝つ。歯や骨ならなんとなく加工したら綺麗そうだし……でも爪で出来たシャンデリアは流石に気持ち悪いやろ!と突っ込みたくなった。
「素晴らしい食卓」
食文化の自由を謳ったお話。出てくる料理がどれも全然美味しくなさそうで面白かった。
「パズル」
読書中にガチで気持ち悪くなった作品。
主人公がどこまでも地球外生命体のような描かれ方で、その主人公が自分の肉体を評価するときの気味の悪さ、生きた人間の呼気や臓器に対する生々しい渇望、生々しい描写の数々に自分の臓器を覗かれているようで胃が気持ち悪くなった。
「街を食べる」
食や植物の描写がすごいなと思った。
村田さんはどこまでも、食べ物を不味そうにも美味しそうにも描き切れる方だなと思った。道端の雑草への食指が動いてしまったのも、主人公の思う壺のようでぞっとした。
Posted by ブクログ
何が普通で何が異常なのか。
この世界の変容はその時点では誰にも捉えられない。
変わっていって、その後、あれは異常だったなと気付く。
なので、誰にも何かに対して「おかしい、普通にしなさい」と言う権利はないのでは、と思わされる。
でも、現実はそういうことを思うし、言ってしまう。
みんなズレ合っている、この世界。
人間としての生き様、社会的道徳倫理、どこにどう問えばいいのか。とても怖くなると同時に、妙に納得して読み終えた自分がいる。
Posted by ブクログ
初めて読んだ村田沙耶香さんの作品。
短編集でもしもの世間の常識。
今の現実では考えられないモノだけど、10年、20年でも大きく常識は変わっていくのだからもしかしたら‥‥?という気持ち。
人によっては結構気味が悪いかもしれないが、私はかなり興味引く内容でした。
Posted by ブクログ
毎回、村田沙耶香の物語を読むと自分の発想の乏しさに絶望する。正しいとか常識だとか思っているものが実はとても脆い基盤の上に成り立っているものなのかもしれないと。そしてそれをここまで面白く物語として組み立てられることにも驚く。
近未来の日常SFと言った感じで、こんな未来が来るかもしれない、もうそこまで来ているかもしれないと怖くなる。でも、案外今と変わらずそれなりに受け止められるのかもと希望も感じられるのが、なんだかよくわからない。
Posted by ブクログ
消滅世界を読み、そのままの流れで読んだ。
同じような世界観を持っていたが、飽きることなく読み終えた。
結構昔に読んだから詳細は覚えていないが、面白かったことは覚えている。
多分、藤本タツキの庭には2羽ニワトリがいたと似てる気がする。
Posted by ブクログ
自分は短篇集に少し苦手意識があるけれど、好きになりたくて色々読んでみている。
苦手な理由は、同じ本の中で刺さる篇と刺さらない篇が同時に存在していることに違和感を感じちゃっているからだと思う。
短篇集が好きな人も、自分と同じように合わない物語があるのかな...
Posted by ブクログ
昔はおかしいとバカにされたり、
けなされたりした事が、
時代が変わって、当たり前になる。
自分の人生これの繰り返しだったなぁ。
何故かその時は受け入れられず、
10〜20年経つと、時代が追いついてくる。
周りがその話題で盛り上がっていても、
あの時散々けなしてたクセに、調子のいい奴ら!
と腹が立ってしまう。
Posted by ブクログ
自分は正常な人間だという思いが揺らぐ短編集。
それぞれの世界観での常識と、それから逸脱した人々の話で構成されており、その食い違いようと現実の価値観との違いにいい意味で気持ち悪さを感じる。嫌悪感さえ感じるのに、読まざるを得ない感覚に襲われる。
「パズル」と「街を食べる」が特に異様に感じた。正常は発狂の一種というが、こうなるくらいなら、正常に発狂していたい。
Posted by ブクログ
まずはこの本を読む際は「気分が悪くない時」「朝イチ」「食事した後」という条件が一つでも当てはまっていれば本当におすすめしない。定期的に村田ワールドに触れたくなってしまう私はこの「生命式」も楽しみにしていた。が、朝の電車で読んでいたことと朝食べたものと表題作が強烈だったことが重なり本当に気持ち悪くなった。しかし、村田ワールドは本一つで体の調子を変えることができるので中毒性がある。吐き気を催すような短編も多くあるなか、受け入れがたい世界を淡々と描いている面白い作品も沢山詰まっている。村田さんの作品は常識を覆す作品が多い。個人的には「素晴らしい食卓」が好きだった。笑う描写ではないのかもしれないが、それが普通に描かれているので面白くて仕方がなかった。
『世界99』が好きなのでそれに似た「孵化」と「ポチ」も面白かった。「孵化」は『世界99』の主人公空子と全く一緒でトレースしている主人公で「ポチ」はポチと呼ばれるよく分からないおじさんはピョコルンを思い出させるキャラクターだった。
『生命式』も「常識とは何か」を問いているような作品だった。ただ、読む際は気分が悪くなることを覚悟した上で読んでもらいたい。(良い意味で)
Posted by ブクログ
文学史上最も危険な短編集!
癖強猛毒短編集と噂の今作。
村田沙耶香さんは初めて読みました。
まず、最初の2作「生命式」「素敵な素材」に面食らいました笑
葬式ではなく、故人の肉を調理し皆で食べる「生命式」
その場で気が合った男女は、受精しに行くというぶっ飛んだ世界…
「素敵な素材」の世界は、家具やアクセサリーに、髪や皮膚など人間の素材が使われているものこそが、最も効果でサステナブルという、これまた今の世の中では考えられない世界線。
読んでいて、まるで自分がこの異世界に入ったかのような奇妙な感覚になりました。
インパクトにおいてはこの2作がダントツでしたが、続くお話もとても面白かったです。
「二人家族」では、性格が正反対な二人の女性が、「お互い結婚しなかったら一緒に住もう」という、誰もが言いそうな約束を実行し同居していたり、とにかく街に生えてる雑草を食いまくる「街を食べる」と言う話があったり、「ポチ」という、おじさんをこっそり山奥で飼っている小学生の話が入ってたり…!
飽きることなく、奇怪さてんこ盛りの内容でした。
どの話にも共通しているのが、その世界の”正常”に対していろんな形で抵抗しているところです。
特に、最後の話の「孵化」は、コミュニティによって5人のキャラクターを使い分けているハルカの話ですが、成長するにつれ、普通人は多かれ少なかれ色んな面を環境によって使い分けます。
しかしハルカはそのことに対し「本当にこれでいいのか?」と自分を異常と捉え続けるのです。
皆、悩めることは違うのだなと、猛毒な設定の多い中読んでいて学びになりました。
Posted by ブクログ
人間が別の生物や寧ろ無生物のように、ビルや機械が生き物のように感じてくるのはなに!!!やっぱ村田沙耶香すごい、、
生命式
山本の塩角煮、山本の団子のみぞれ鍋、山本のカシューナッツ炒め、山本を食べたり、台所から追加の山本を持ってきたり、
出来るだけ想像しないようにしているのに、滲み出てくる人肉のイメージに嫌悪してしまう
素晴らしい食卓
途中から笑いが止まらなくなった
街を食べる
これは自分のど真ん中の純文学に感じた
中国ではちょっと躊躇われるが日本に帰ったら、道端の野草を調理してみたくなった
「飼い猫が野良猫になるときって、こういう気持ちに」ってめっちゃしっくりきた
突然ひらがなで埋め尽くされるところゾワっとした
孵化
人やコミュニティによって異なるキャラを演じる
このことは自分も中学生くらいの時から思っていた
誰しも親、恋人、学校、仕事場でのキャラクターは同じでないと思うが、度が過ぎるとこの主人公のようになるのか
Posted by ブクログ
体調良くない時に読むとちょっと気持ち悪くなる感じの内容だな〜と思ってたけど、結局それは自分の中のあたりまえと違ってたからなだけなんだなと解説まで読んで思った
Posted by ブクログ
コンビニ人間以来の村田沙耶香さん作品でした。
相変わらずの不思議な不気味な世界でしたが、今話題の世界99に繋がるストーリーだと思われる孵化が一番自分にも当てはまると感じたので、世界99も読んでみたくなりました。
Posted by ブクログ
村田さんらしい短編集でした。
どれも独特な世界観。
どの作品を読んでも思うのは『あなたが思っている常識(正常)は世界が変われば非常識になる』ということ。
自分が思っている正義は誰かの不義になっているかもしれない…という恐ろしさ。
作品中の主人公の変な考え方を学ぶことで、こういう価値観の人もいるかもしれないなと改めて考えることができる。
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今回の短編は他の作品の元ネタみたいなところが多かったです。特に最後の『孵化』は『世界99』そのもの…。ピョコルンは『ポチ』のバージョンアップかな?…と思ったり。
『魔法のからだ』も村田さんらしい性の考え方。アンソロジーエッセイの『私の身体を生きる』に通ずると思った。
Posted by ブクログ
「生命式」(せいめいしき)というのは、(このお話で言うと「30年ほど前の」)「お葬式」に対応する言葉です。
(丁寧・美化の接頭辞を付けると「お生命式」となるのでしょうか?w)
(ちょっと五条院 凌(ごじょういん りょう)さん(ピアニスト)みたいw)
さて、本文では、こう説明されています。
「生命式とは、死んだ人間を食べながら、男女が受精相手を探し、相手を見つけたら二人で式から退場してどこかで受精を行うというものだ。」
本書の表紙のイラスト(顔の部分が咲き誇ったお花になっている人が、「心臓」にナイフとフォークを入れようとしている絵)が象徴的です。
「生命式」がスタンダードになっていった時代背景は、「人口が急激に減って、もしかしたら人類はほんとに滅びるんじゃないか、という不安が世界を支配し、「増える」ということをだんだん正義にしていった。」ことにあるとしています。そして、「セックスという言葉を使う人はあまりいなくなり、「受精」という妊娠を目的とした交尾が主流となった。」そうです。
なので、お話の始まりから、
「総務にいた中尾さん、亡くなったみたいですね。」
「中尾さん、美味しいかなあ」
「池谷さんも行くでしょ? 生命式」
「どうしようかな~。(中略)最近胃もたれしてて、それに生理だし。」
といった言葉が並びます。
そして、「生命式」に行ってみると、中尾さんの奥さんが、白菜やエノキと一緒に味噌出汁で中尾さんを茹でて調理してから、こう言うのです。
「じゃあ、これから中尾の生命式を始めます。皆さん、命をたくさん食べて、新しい命を作ってくださいね」
身の毛もよだつ、とは、こういうことでしょうか?
読者は小説の中で、異常な慣習が当たり前になった社会の描写にゾッとします。
ここで気持ち悪くなって読むのを止めても良いのですが、ひとつ考えてみましょう。
「なぜ、人肉を食べてはいけないのでしょうか。。。」
「牛さんや豚さんや鶏さんは食べても良いのに、なぜ人を食べてはいけないのでしょうか?」と。
タブーを超えた(小説)世界に身を置くことにより、現在の価値観を改めて考えさせられる。自分の文化と相容れない他の文化の価値観に気付くきっかけになるかもしれません。そうすれば、戦争や紛争を回避する思考が芽生えるかもしれません。
相手を食べる目的以外に殺す動物は、人間だけだそうですよ。
ゾッとする設定の小説から「学び」を見つけた気がしました。(あくまで個人の感想ですが)