南條竹則のレビュー一覧
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ネタバレ理由なき自殺願望者が集う、ロンドンの街。ボヘミアの王子フロリゼルは、悪の正体をつかむべくロンドンの夜を奔走する。
これも何も知らずに、文庫裏のあらすじだけ見てふっと借りた本(私はそれまで、スティーヴンソンは一冊も読んだことがなかった)。
で、すっかりハマってしまった。
とうにかく私は、こういう話が好きなんである。人間的な感情よりもむしろ、物語としての魅力が詰まった、軽妙だけど割りとこってり系の本が。
この本も読んでいて、会話や文章どころか、行間からも(!)物語の匂いがぷんぷんして、もう堪まらなかった。うーん、最高。物語の香りに酔えた一冊。
でも、多くの人が言っているように、最後がちょっといただけない。というか、もったいない。
私は登場人物の中で、聖職者のロールズが好きだったので、このロールズ氏が成り上がって、フロリゼル王子と全面対決してほしかったな、どうせなら。 -
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ラヴクラフトが描き出した冒涜的物語群クトゥルー(クトゥルフ)神話の短編集、第3集
解説にもある通り、前2集に比べて、ハイ・ファンタジー的な物語を多く収録している。ザ・クトゥルフ神話という感じで、主要な舞台も切り立った崖の上や未開の森林などメルヘンチックなもので冒涜的な好奇心を刺激される。オチも含めて、幻想小説としての体裁が整っている
その一方として架空の街の描写を細かくしてその内の一個の家で物語が展開する作品では、ラヴクラフトらしく実際に何か起きる前の悍ましい予感や身の毛もよだつような噂などが節たっぷりで非常にゾクゾクさせられた。怪奇(ホラー)小説としての要素が強い
書いてて思ったのが、ラヴクラフトは怪奇幻想小説というふうに両方の要素がふんだんに含まれてる作品をいっぱい書いたと言うよりも、それぞれの要素は含めながらも舞台設定や伝説の登場させ方、オチなどで二つのジャンルを分けて書いていたのかなということ
(本当にほとんどの作品好きだったんだけどその中でもとりわけ)好きな作品
・アウトサイダー
・セレファイス
・霧の高みの奇妙な家
・アザトホート
・銀の鍵
・忌まれた家 -
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2025年下期の朝ドラのモデルとして、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の代表作を手に取りました。
改めて、日本の古典文学として認知されている「耳なし芳一」や「雪女」などの話を、外国人であるハーンが蒐集して公表したということに驚かされます。
光文社古典新訳文庫のシリーズだからでしょうか、訳文も読みやすく、すらすらと読み進めることができました。中にはイマイチ理解できないストーリー展開のエピソードもありましたが、現代では不自然に思えるような展開が当時は「ありうること」「恐ろしいこと」として人々に認識されていたのだな、と昔の文化・雰囲気に触れることができる読書体験でした。
タイトルから「ホラー話」ばかりなのかと思っていましたが、決してオバケ一辺倒ではなく、いろいろな「不思議」が紹介されていたことも新たな発見でした。
後半(第二部)の「虫の研究」という昆虫エッセイは少し読みづらい部分もありましたが、「蚊」の節は著者の苦労や苛立ちが良く伝わってきて面白かったです。 -
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「狂気の山脈にて」読みました。
クトゥルー神話という、作られた神話の原点となる、
作家ラブクラフト氏による短編の傑作選です。
「ランドルフ・カーターの陳述」
「ピックマンのモデル」
「エーリッヒ・ツァンの音楽」
「猟犬」
「ダゴン」
「祝祭」
「狂気の山脈にて」
「時間からの影」
の8作品、収録されておりまして、
表題作でもある「狂気の山脈にて」は、南極探検に行った先で、
人類を遥かに凌駕する文明を誇った”最先(いやさき)のもの”が、どのような
文明を作り、そして、滅んでいったのか。その架空の文明を描いた作品でした。
それ以外の作品も、人類が我が物顔で繫栄している、その目に入らない部分・・・
それは古い地下室や、屋根裏部屋の窓の外、外洋のどこか。
そういった部分に、人知を超えた怪物が潜んでいる・・・というようなホラー作品でした。
一番、好きな作品は、最後の「時間からの影」でした。
”偉大なる種族”による、精神の入れ替えを経験した男が、その時の経験を夢に思い出し、
西オーストラリアの遺跡の発掘に参加する話で、前作の「狂気の山脈にて」を踏まえつつ、
描かれた人類の短い歴史の外側を大きなスケールで描いたスペクタクルで、
「狂気の山脈にて」よりも、読みやすい筆致で描かれていました。
ラブクラフトが癌で死去する少し前に書いた作品とのことで、
物語の構成としても、比較的読みやすく書かれていました。
さて。
現在のゲームやアニメの常識として、たとえば、ファンタジーの世界観
・・・例えば、剣や魔法の世界がありますね。それと同じように、さまざまなところで、
作家たちに引用され、登場することで、次第に、人工の神話という体系を作り上げてきた
クトゥルー神話ですが、物語を書くものとして、履修しておこうと思ったわけです。
簡単に言うと、とにかく読みづらい本でした!!
世界観は、素晴らしいし、言葉の選び方も訳も含めて、語彙が豊富で素晴らしいのですが、
悪い意味で話が進まないのと、何を言っているのか分からなくなりがちなのと、
登場人物が何をしているのか分からなくなりがちな本でした。
短いとそこまで気にならないのですが、長編作品だと相性が悪いのです。
文章が、基本、否定形で書かれていて、
「よく分からない、ということはほとんどなかった。それどころか、名状しがたい面白さが分かりやすく伝わってくるのだった」みたいな、いや、面白いって言ってくれよ! みたいな表現は、なかなか慣れずに大変でした。
そういった意味でも、最後の「時間からの影」は、そのあたりの表現も成熟したものであり、その独特の世界を十分に楽しめました。
まあ、あーだこーだ書きましたが、なかなか苦心して読んだ本作の世界観は十分に楽しめました。
おわり。 -
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アーサー・マッケン(1863~1947)、M.R.ジェイムズ(1862~1936)らとともにイギリス三大怪奇小説作家とも言われるアルジャーノン・ブラックウッド(1869~1951)の傑作集。芥川龍之介や江戸川乱歩も影響を受けた古典的ホラーである。高校生くらいのころに創元推理文庫の『怪奇小説傑作集1』で「秘書綺譚」を読み、最近岩波文庫の『芥川龍之介選 英米怪奇・幻想譚』で「スランバブル嬢と閉所恐怖症」という作品でこの作家と再会したのを機に、この傑作集を手に取った。
「空家」「壁に耳あり」「スミス―下宿屋の出来事」など、古い家屋にとり憑いた霊という常套的な設定が、安定した(?)恐怖を読者に提供してくれる。
「スミスの滅亡」はアメリカ西部が舞台で、スミスヴィルという火災で全滅した街の霊があらわれるというちょっと変わった作品。
「秘書綺譚」でのユダヤ人、「小鬼のコレクション」でのアイルランド人など、異民族への恐怖がテーマになっている作品はいかにも19世紀的である(発表は20世紀だが)。差別感情は、異なるもの・未知なるものへの恐怖感情と密接にかかわっている。それは21世紀になっても本質的に変化していない。
訳者の南條竹則氏は、1993年『酒仙』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しているほか幻想小説を多く執筆し、ラヴクラフト(新潮文庫)やチャールズ・ラムの「エリア随筆」などの翻訳、評論活動でも知られる。