南條竹則のレビュー一覧

  • 裏切りの塔 G・K・チェスタトン作品集

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     チェスタトンの面白さがやっと分かってきた感じがする。
     高校から大学にかけて、ドイル、クリスティー、クイーン、カーと読んできて、そこからブラウン神父に手を伸ばした。当時は何かひねった文章というイメージが強く、チェスタトンの逆説というような解説を読んで、こういうものを逆説というのかと、良く分からないまま文字面を追っただけだった。

     最近、南條氏訳のチェスタトンの短編集を何冊か読んできて、理性と狂気、信仰と科学、迷信、伝説と論理といったことについて、チェスタトン流の表現方法が漸く分かってきた気がする。

     謎を解き明かすといった点からも、本作に収められている各編はとても面白い。

     冒頭作の『

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    2021年05月30日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    大半の作品が創元推理文庫版の全集いらい数十年ぶりの再読だったが、内容をほぼ(覚悟していたもののそれ以上に)憶えていなかったことに驚く。特に「インスマスの影」こんな逃走アクション場面あったっけ⁈ 私、TVドラマ版とだいぶ混同してたかも。

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    2021年05月08日
  • 新アラビア夜話

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    『自殺クラブ』3篇『ラージャのダイヤモンド』4篇の二部構成で、各篇のメインキャラクターは異なっているがボヘミアのフロリゼル王子がストーリーに絡む。「これで(とわがアラビア人の著者は言う)「~の話」は終わる」と各章は締めくくられる。最初よくわからず?となったが、読み直してから意味がわかった。フロリゼル王子の視点で書かないことで、突然わけのわからない状況に置かれたメインキャラクターのきもちになれてワクワクした!
    『宝島』と『ジキル博士とハイド氏』と同じ作者とは思えない、荒唐無稽なファンタジー!

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    2021年04月18日
  • ゴーストリイ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚

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    17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚を、紹介する随筆集。
    雑誌「幽」に連載された作品を改稿している。
    全18話。文字と挿絵は紫色で統一。
    自らを“吾輩”と称し、7世紀~20世紀初頭の好事家の如くの
    口調で語る、英国怪異譚中心の随筆です。
    「幽」の読者を対象にした随筆と作品紹介なだけに、
    マニアックで専門用語をちりばめていますが、
    純粋に怪奇譚として楽しむのには、興味深い内容でもあります。
    幽霊、魔所、異人への偏見と恐怖、宗教、地獄、古き神々、
    ファム・ファタル、妖精、さわりの木、屍蝋燭等を語り、
    加えて、そこはかとなく翻訳家の矜持を示しているのも、良い。
    特に、バラッドとロバート・バーンズのタム

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    2021年04月10日
  • 狂気の山脈にて―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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     H. P. ラヴクラフト(1890-1937)といえば怪奇(ホラー)小説の有名どころで、マニアックなファンも世界中に多く抱え、多くの、今日言うところの「二次創作」の作品群のみなもととなった「クトゥルー神話」の作者であり、私も高校生の頃に創元推理文庫の『ラヴクラフト全集』全7巻のうち1巻から3巻までを買って読んだ。が、その当時どうもこの作家の作風に今ひとつ乗り切れないものを感じ、若干苦手なような、「好き」とまでは言えないような状態であった。
     新潮文庫版のこれは新訳で、昨年12月に出たばかりの文庫オリジナルである。実はこれは新潮文庫版「クトゥルー神話傑作選」の2冊目のようで、既に既刊があるらし

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    2021年01月10日
  • 狂気の山脈にて―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    必ずしも神話に組み込むことを意識した書かれたわけではない作品をも含む短編集。さすがに古風だけれども、普通に怪談として楽しい。ただ怪談語りとしてみると、お世辞にも語り口が見事とは言えないなあ。独特の世界観に魅せられるかが、評価の分かれ目。

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    2020年12月09日
  • 白魔(びゃくま)

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    完全にあっちの世界に行っちゃてるのがファンタジーで、狂気か神秘か、現実とのあやふやな境界を行ったり来たりするのが幻想小説あるいは怪奇小説である。これは現実なのか脳内で起きてる狂気なのか。現実って何だ?「白魔」は善悪論争から始まる。殺人者と虎のような野蛮な人間の違いは何か。悪の基準は社会の色眼鏡で見たものに過ぎない。悪意なく悪事を働くこともある。違いは悪意の有無?その具体例として借りた一冊のノート。それは一人の心優しい女性が白い妖魔たちに囲まれて育ち周囲に隠れて常識人には悪である向こうの国に行き来した手記だった。マッケンは神秘を否定する人物を登場させながらその存在を肯定する。「生活のかけら」は幸

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    2020年11月16日
  • ゴーストリイ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚

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    最初は本文の間にある編者の解説がうっとうしかったが、慣れてきたらそう悪くないと感じるようになった。集められた作品は基本的に好みのものが多くて気持ちが休まる。

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    2020年11月02日
  • 英語とは何か(インターナショナル新書)

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    文字通り、英語がどういう歴史で世界語となったか、また英語以外の言語にどのような歴史があるかを綴った一冊。

    英語学習について知りたい人にはあまり役に立たないけど、語学について興味ある人にとっては楽しめるかと。

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    2020年09月05日
  • カンタヴィルの幽霊/スフィンクス

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    何で読んだだらうか。スフィンクスの話のあらすじを読んで心惹かれたことを覚えてゐる。
    あらすじでは謎こそスフィンクスといふことだつたが、それはかなり大雑把すぎるあらすじだらう。さういふ話があつたらしいとしめくくつてゐるところに謎があるのではないか。あくまで、この話は伝聞でしかない。謎の内容ではなく、謎を問いかける存在そのものこそが謎。スフィンクスの異国的な姿かたちとあひまつて、謎はひとを魅了する。現存するエジプトのスフィンクス像のその先にある謎。
    カンタヴィルの幽霊は、喜劇的な物語の中に、皮肉と哀愁、そして浄化を含んでをり、単なるコメディではない、印象的な物語。劇で上演されたならかなり舞台映えす

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    2019年11月18日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    ラヴクラフトの傑作ばかりを集めた贅沢な1冊。しかも新訳なので、再読勢も楽しめます。
    収録作は、異次元の色彩、ダンウィッチの怪、クトゥルーの呼び声、ニャルラトホテプ、闇にささやくもの、暗闇の出没者、インスマスの影、の7篇。ね、どれも傑作揃い。
    一通り読んでみて「やはり何度読んでもインスマスの影は名作だ……」と再認識しました。
    巻末の解説も丁寧で、他社のラヴクラフト関係の全集などについても触れていますので、とりあえずなにかクトゥルー神話を読んでみたい、全集は冊数が多すぎてちょっと…という入門者にもオススメできる1冊です。

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    2019年08月11日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    宇宙的恐怖(コズミックホラー)の始祖
    売れ出したのは死後らしいですが、
    他の作家たちが、話を広げていったエピソードが、ファンが2次創作で広がっていったスターウォーズの流れにも似てます。
    そんな、作家の入門編

    表現しづらい見えない怪物(蟹、鳥、烏賊蛸、菌、山のキメラっぽいやつなど様々)、怪奇現象に気づいてしまった、巻き込まれてしまった人々の恐怖を様々なパターンで描きます。
    暗躍する怪物の名から「クトゥルフ神話」と呼ばれているシリーズ

    キングやクーンツなどのモダンホラー(古!)を読んでる私としては、どの話も真面目に「ボブは自分の体が、首の無い状態で倒れかかってくるのを見る羽目になった。何故なら

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    2019年08月08日
  • カンタヴィルの幽霊/スフィンクス

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    お得な一冊。後編にてエイダ・レヴァーソンという女性の作品が掲載。解説は彼女と作者の関係に触れ、ワイルドの私生活が覗ける。何だか有名な人らしいなという印象しか持っていなかったが、エキセントリックな愛人の父親に憎まれ、同性愛という理由で逮捕された人なのね。やはり作品はウィットに富みながらも繊細でロマンチック、三島由紀夫ぽいなと思いました。エイダの方は女性であることを心から謳歌しているような陽気な作風で、花のような存在感がある。

    全体的にとても好きなので、他の作品も読んでみるつもりです。

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    2018年08月27日
  • 新アラビア夜話

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    海の中で高波が来たらちょいと体を浮かせるような、クロールの息継ぎがビシリと決まるとか、いわゆるシャッターチャンスの瞬間をわかってらっしゃる作家だなあ、と思たら「ジキル博士とハイド氏」を書いた人だった。多分自分が翻訳物を初めて買った本がこれだった気がするの。だからしつこい位に何度も読み直してる訳で、二人で息の合った社交ダンスを踊るような、ガラス越しに手を合わせるような、変な一体感と恍惚感がありました。ボヘミアの
    王子がロンドンにて「遠山の金さん」をやるシリーズもの。楽しい。ちょっとずつお話が続いている。

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    2018年07月18日
  • 木曜日だった男 一つの悪夢

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    非常に多面的な顔を持つ小説だ。冒頭の抽象的な詩文から始まり、無政府主義結社に潜入し真相に迫ってゆくサスペンス調の中盤とは打って変わり、後半はなんだか喜劇を読んでいるようである。めまぐるしく遷り変る立場と音楽的な文章が読者を混乱させる。エンターテイメント性があるのは間違いないが、なにやら哲学小説なような側面もある。

    序盤はやや退屈かもしれないが、進むにつれ面白みは増していくので、読み手を煙に巻くような妙を味わっていただきたい。

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    2017年04月03日
  • 木曜日だった男 一つの悪夢

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    ネタバレ

    秩序と常識とカトリック信仰を愛するサイムは、無政府主義者を嫌悪し、警察の対無政府主義特殊部隊に入隊する。そして彼は策略を用いて無政府主義組織の幹部の地位を得る。無政府主義組織の評議会は「日曜日」と呼ばれるカリスマを頂点とし、月~土曜日の6人の幹部によって構成されているが、実は日曜日以外の6人は皆サイムと同じ特殊部隊の刑事であり、彼らを特殊部隊に勧誘した警察幹部と日曜日は同一人物であることが判明する。結局物語はサイムの夢であった。

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    2017年04月03日
  • 秘書綺譚~ブラックウッド幻想怪奇傑作集~

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    「空家」は何度読んでもゾクゾクします。
    ビジュアルではなく、音や触感で感じる恐怖。
    私にとっては最高傑作です。

    けれど他のどの作品もブラックウッドらしい美しくもの悲しい雰囲気の中、恐怖や不思議が絶妙に描かれていて読みごたえがあります。

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    2016年05月17日
  • 木曜日だった男 一つの悪夢

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    ミステリものかと思っていたけど、ミステリ要素もある冒険活劇もので、さらにとても詩的だった。山田風太郎はこの影響を受けてたりするのかな、とも思う。とにかく詩的で幻想的だったのが印象として強い。

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    2015年03月21日
  • 木曜日だった男 一つの悪夢

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    曜日で呼び合う無政府主義者たちがおいかけっこをする話(無体な説明)。ところどころ入るうだうだした哲学めいた議論がおもしろい。
    続きが気になってサクサク読んだ。よくできたキャラクター小説といってもよいんじゃなかろうか。月曜日から日曜日までキャラたちすぎ!ホワイダニットかと思って読み進めたらもっと壮大な話でちょっと肩すかし。
    その後解説を読んでちょっと納得。壮大な中二病小説だったんだよ!とか言うとファンの方に怒られるかしら。でもそうするとのめり込んで読んだことにも納得できるんだよなぁ。世界に絶望し、思想に耽溺し、破滅を希求していたあの頃…つって36になったおじさまが思い出しながら書いてたと思うとち

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    2014年04月23日
  • 人間和声

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    The Human Chord, 1910.
    ジョン・サイレンス先生のブラックウッド。
    (Algernon Henry Blackwood、1869年3月14日 - 1951年12月10日 )

    真名を四重奏で歌うことにより神の力を手に入れる。
    そのために集められた4人の唄い手(詠唱者)。
    和音を醸すソプラノとアルトは恋仲になってしまい神の力か人の世の愛か悩む。

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    2013年12月11日