南條竹則のレビュー一覧

  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ずっと読みたいと思いつつも、読んでいなかったラヴクラフト作品。
    面白かった。
    訳文も良かった。

    幽霊やお化けが出て来るようなホラーは苦手だけれども、怪奇小説は面白い。
    これが映像や漫画だったら、きっと見ないし読まないだろう。
    小説だからこそ、存分に楽しめるのだ。

    『異次元の色彩』
    クトゥルー神話の始まりとも呼べるような作品(だと個人的には思っている)。
    太陽系よりもっと遠い宇宙からやって来た神々。
    それは人間の文化や文明とはまったく違う感覚を有していて、何より人間がちっぽけでもろくて何の役にも立たないような存在であることを知らしめる。
    神々を前にした時、人間には太刀打ちなど出来ないのだ。

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    2025年09月03日
  • 怪談

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    『耳なし芳一の話』
    知名度の高い話。琵琶の名手芳一は、和尚も小僧もいないある夜に、武士から「やんごとなき方がお前の琵琶を所望している」と言われて、ついていく。彼らは平家滅亡の壇ノ浦の件になると、いたく涙を流し、七夜通って欲しいと頼む。誰にもこの事を言ってはならないと言われ、芳一はこっそり出かけていたが、ある日ばれてしまう。

     再読してわかったのは、芳一の通う期限があったことだ。永遠に琵琶コンサートをやってほしかったわけではない。七日といえば初七日が浮かぶが、呼び出した相手からすれば、とっくにその期限は過ぎている。普通に誰にも知られず七日通えば、無事に過ぎたのでは。それとも七日過ぎて、いよいよ

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    2025年08月14日
  • 消えた心臓/マグヌス伯爵

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    ミステリーの短編集。中にある「銅版画」という短編が読みたくて。メゾチントという銅版画の技術が使われた、奇怪で不思議な絵の話。
    現実にメゾチント展を見に行った。銅版画の暗く、奥の深い色合いがとても素敵だったのを思い出す。

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    2025年04月28日
  • 狂気の山脈にて―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    怪奇小説を語るなら欠かせないだろう、というのとボクの嗜好で、読もうとうずうずしてたけどようやく読めた
    表題作の「狂気の山脈にて」は言わずもがな、他の収録作もクトゥルー神話ならではの不気味さと深遠さを感じさせられた

    TRPGとかで見知ってたし、こんな感じの体系をなしたファンタジー大好きだから調べていたりもしたから、読んでて「こいつらってこうだったのか」みたいな気づきも得たりして楽しかった
    次作の『アウトサイダー』と前作の『インスマスの影』も読みたい

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    2025年01月02日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    深い恐怖と興味の入り混じった作品でした。
    特徴的なホラー要素が詰まった物語に、一瞬で異様な世界へと引き込まれます。

    登場する街は全て、その描写からして非常に不気味で異様な雰囲気を漂わせています。廃墟となった建物や奇妙な住民たちの描写を通じて、常に一貫した不安感を与えられました。特に、町の住民が人間ではない何かに変わりつつあるという事実が明らかになる場面が恐怖の頂点です。

    また、文体と想像力にも魅力を感じます。
    非常に細かい情景描写に、まるでその場にいるかのような感覚を味わえました。クトゥルフ神話の一端が垣間見え、インスマスの秘密が明らかになるにつれて、未知の恐怖に対する好奇心が止まらなくな

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    2024年07月21日
  • 白魔(びゃくま)

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    「白魔」「生活のかけら」「薔薇園」「妖術」「儀式」を収録。最初の二篇は平井呈一訳『恐怖』で読んでいる。

    この人は物事を匂わせるような暗示的な書き方が特徴でそれが気味の悪さを醸している。「白魔」「妖術」「儀式」はどれも魔女の話だが具体的な動機や結果は書かれない。モヤモヤするがだからこそ記憶に残る。

    「生活のかけら」、前に読んだときは謎めいた雰囲気はユニークだが退屈な話と思った。これまで現実だと思われていたものが実際には夢幻であり、これまで夢幻と思っていたものこそが現実だった、と神秘主義に開眼する銀行員の話。が今回読んで、マッケンが43歳のときに書かれたこの小説は「中年の危機」を描いた小説なの

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    2024年05月24日
  • 狂気の山脈にて―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    「ダゴン」のラスト
    私の初読は、文庫の全集(あの黒い有名な表紙)だったので、ダゴンのラストは「窓に」「あの手」があるものだとばかり思っていた。
    しかし、久しぶりに令和の時代に発行されたこちらの訳をなんとなしに、再読の記憶をたどりながら、本当に何となく、読んでいたら、ラストに、「窓へ!」と来たもんだから、「(これ投身エンドか!?)」と、気付いてしまったときの鳥肌と言ったら、計り知れない恐怖、二度と味わえない面食らい、こっちが放り投げられたような気分。
    調べてみたら海外でも読み取り方はそれぞれのようで、ラヴクラフトにやられたと嬉しくなる。ダゴン沼である。
    ちなみに「ダゴン」は海外で短いゲームとして

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    2023年11月02日
  • マンアライヴ

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    チェスタトンはブラウン神父しか知らなかったが、こんな作品もあったのか。
    目眩く展開に圧倒されながらもどこか心地よい風が強く吹いている感じで読んだ。風の描写があったから、それがとても目に浮かぶものだったから、嵐の高揚感、黄昏前の開放感、子供っぽさ、そういうものを呼び起こしたせいかもしれない。

    久しぶりに引き込まれる文を読んだ。

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    2023年05月03日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    ラブクラフトは初体験だが、翻訳ものの小説でここまで一気に読めたのは久しぶりという気がする。何かが起こりそうな予感が濃密な書きぶりに惚れ惚れする。

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    2023年03月26日
  • 人間和声

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     昔ちょっと音楽の勉強をしていたから、和声?人間?とタイトルに目を引かれたのが出会いだった。紹介文によるといわゆる幻想怪奇小説という類の物語らしい。あまり馴染みがない。きっとどうせ完読できないだろうという弱気から手に取るまで時間がかかったが、色々と偶然の後押しもあって読んでみたらとても面白かった。まずはその達成感が嬉しい。
     
     主人公はロバート・スピンロビン、二十八歳。彼は何か大いなる物に憧れ、魂の真の冒険を求めている夢想家だが、臆病さゆえに自ら行動を起こすことはできず、そんな自分の卑小さ平凡さを恥じる謙虚さはきちんと持ち合わせているというところがまた可愛らしくもある、そんな人間である。彼は

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    2022年09月24日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    クトゥルーやラブクラフトの名前は知ってるけど、よく知らないという状態で挑戦。
    これは面白い!
    化物じみた「名状しがたい」あれやこれやが出てくるのも面白いが、その前のじわじわじわじわやってくる心理的恐怖、雰囲気や舞台設定がたまらなくいい…!
    怖いけど、気になる。でも見てしまうと、アワワワワ…。
    日本の湿度満点なジャパニーズホラーに通じるところがあるのかも?
    何度か他の本で読んでいますが、南條先生の訳も変わらず読みやすくていいですね。

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    2022年09月21日
  • 新アラビア夜話

    ネタバレ 購入済み

    「自殺クラブ」という奇怪なタイトルの短編に心惹かれて購入したが、内容はそこまで猟奇的とも思えず、良識の範囲内に止まっている感があった。むしろ、「ラージャのダイヤモンド」の話の広がり方や、ハラハラさせる場面展開の方を面白く読んだ。

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    2022年06月23日
  • 手招く美女

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    表題作「手招く美女」は幽霊に魅入られた主人公が狂気の世界へおちてしまう心理的な怪奇小説。傑作と呼ぶにふさわしい読み応えです。巻末の解説が丁寧で怪奇幻想文学の知識を深める事が出来ます。

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    2022年05月17日
  • 酒と酒場の博物誌

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    酒にまつわるエッセイ集です。と書いて
    しまうには申し訳ないくらい、あらゆる
    お酒に精通している内容です。

    酒にまつわる随筆集というのが、ふさわ
    しいかもしれないです。随筆も英訳する
    とエッセイですが・・・・

    中国の老酒や紹興酒は中国の地酒であっ
    て、その土地土地にそれぞれの地酒が
    あります。日本と同じです。

    日本ではまだまだ知られていない中国の
    地酒を体験して、紹介しています。

    今でもその土地に行かないと手に入らな
    いような希少な酒もです。

    量を飲むだけでなく、やっぱり色々な酒
    の種類を楽しみたくなる一冊です。

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    2022年02月17日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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     初出1920-1936年のラヴクラフト短編小説を集めたもの。昨年読んだ『狂気の山脈にて』と同じく新潮文庫版「クトゥルー神話傑作選」。
     ラヴクラフトの文章はどこか変で、つながりが悪く、明らかにおかしな箇所もあったがそれは原文のせいか翻訳のせいか分からない。いずれにせよ悪文に属する文体だろう。読みにくいし、エンタメ系小説ではこんにちのものならことさらそうであるように、登場人物たち相互の会話で話がどんどん進んでいくのが定石なのに、ラヴクラフトにおいては、人物同士の会話が極度に少ないか、あるいは皆無である。その分、叙事的な文体なのだと受け止められる。
     悪文にもかかわらず、本書中の作品には、「ホラ

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    2022年01月05日
  • 新アラビア夜話

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    宝島を書き、ジキルとハイドを書き、自殺クラブを書いたということでスチーブンスンの天才ぶりがわかる。ヴィクトリア朝のロンドンの夜、クリームタルトを配る若者に連れられてきた自殺願望者の集まる自殺クラブに乗り込んだボヘミア王子フロリゼルの無茶苦茶な冒険談。アランビアンナイトのように話は別の話に広がって7つの話からなる短編集になっている。どの話も謎が提起され陰謀が謀られ、薔薇十字探偵社の榎木津並みに無茶苦茶なフロリゼルの活躍が繰り広げられる。たまらない!

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    2022年05月10日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    掘り出し物。
    ラブクラフトは読んでみたかった作家だった。
    すべてクトゥルーに関する恐怖小説。
    怖い、すごい、忘れられない。
    この本を読む時は、グーグルで航空地図を見ながら読むことを進める。
    特に「インスマスの影」はマサチューセッツの地図でグロテスクな海岸沿いを見ながら読むと恐怖が倍増する。

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    2019年08月17日
  • カンタヴィルの幽霊/スフィンクス

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    東雅夫氏がブログにて映画『クリムゾン・ピーク』を観る前に「カンタヴィルの幽霊」を読んでおくと吉と書かれていたので手に取りましたが、これがものすごく個人的にはアタリ本でした。表題作はもちろんのこと、ワイルドの友人であるエイダ・レヴァーソンの回想や作品も付録で載っており、これもまたかなり惹きこまれ、こんな本を出された南條竹則氏と光文社はホントすごいです!「スフィンクス」については、まだまだ知識の足らない私には難解でしたが、また時期を置いて読み直してみたいと思います。

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    2016年02月16日
  • 秘書綺譚~ブラックウッド幻想怪奇傑作集~

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    「幻想怪奇」という言葉に惹かれて。

    一つ一つの話が「アレは何だったんだろう?」という後味の悪さを残して終わっていく。特に表題作「秘書綺譚」のアレは何だったろう?感が凄い。こういう引っかかる感じが、本読みにはたまらない。

    確かに幻想怪奇な傑作が詰まった素晴らしき1冊。江戸川乱歩が絶賛しただけあるなぁ…。

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    2013年01月20日
  • 秘書綺譚~ブラックウッド幻想怪奇傑作集~

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    百年前の作品なんて信じられないです。
    最近は妙に凝った作風のものが多いせいか、こうあっさりとしたプロットなんだけど文章力で勝負! ていう作品がひどく新鮮でした。
    本当に面白い。
    じっくりと読みたいって思っていたのに、この後どうなる? で、どんどんページをめくってしまい、すぐに読み終えてしまいました。
    古典文学に分類される作品ですが、新訳だからか読みやすかったです。

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    2012年10月28日