南條竹則のレビュー一覧
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・梅雨明け前ではあるが夏である。夏は怪談がふさはしいといふのは今も昔も、そして出版界も変はらないやうで、今年もまた怪談が出た。たぶんこれはほんの序の口であらうと思ふが、それがM.R.ジェイムズであつた。いきなりの大御所の登場である。それはM.R.ジェイムズ「消えた心臓/マグヌス伯爵」(光文社古典新訳文庫)であつた。本書の原題は”GHOST STORIES OF AN ANTIQUARY”といふ。「好古家の怪談集」と訳されてゐるジェイムズの第一短編集である。表題作2作を中心に全8作からなる。 いづれも古き良き時代の怪談集といふにふさはしい。しかもそれがゴシック的な要素をまとつてゐるたりする。そし
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怪談物のおもしろいところは怖さというよりも、綺麗に解決されないモヤモヤ感や、釈然としないところだと個人的に思っています。
ミステリーなら怪談の現象にも何らかの説明をつけるでしょうし、ホラーに振り切ったなら、派手な流血や命の危険を強調すると思うのですが、
怪談物は特にオチや伏線があるわけでもなく、命の危険までいくこともあまりない印象があります。(そもそも語り手が死んでいたら、怪談として伝わることもないですし)
特に説明やオチもないけど、なんだか不気味で尾を引く。それが怪談の面白さだと自分は思うのです。
この短編集の著者はフィッツ=ジェイムズ=オブライエンはアメリカの作家だそう。でも、収録さ -
Posted by ブクログ
最近ではTRPGなどサブカル界隈でよく知られている〈クトゥルフ神話〉。ラヴクラフトの作品群は、その原典だ。あの奇怪な架空の神話体系は、ひとりの男のパラノイア的妄想に端を発しているのである。
…人類の誕生よりはるか昔、宇宙の彼方から地球に降り立った異形のモノたち。その存在は謎に包まれており、彼らの正体を暴こうとする者には死が待ち受けている。〈Cthulhu〉ーークトゥルフ或いはクトゥルーと仮称される、〈それ〉は人外の秘境に身をひそめ、復活の時を待っている。〈大いなるクトゥルー〉が目覚める時、地上には災いが満ち人類は滅亡するという…
…こう書くとB級SFホラー感満載だが、実際に読んでみるとSF -
Posted by ブクログ
読んだ手触りがゴシックホラーと言うよりは、SFに近いテイストで、ブラックウッドってこんなの長編も書いていたのか!と。
「カバラ」や「真の名前」を正確にいにしえの発音で発声することで実体を持ち力を得る…と言った(ちょっと日本の言霊に近い感じの)思想。それにより「誰」を召還しようとしているのか、全く知らされないまま実験に巻き込まれていく主人公の青年……。前半の周囲の人物描写からにじみ出す不穏な雰囲気はちょっとクトゥルー作品なんかを彷彿とさせて、そういうのが好きな人にはオススメの作品です。
青年の神秘体験の描写については、音に色や形を持たせようとして筆を尽くしての描写が圧巻。面白かったー。 -
Posted by ブクログ
チェスタトン初期の連作短編集。話の手法は、後のブラウン神父シリーズを彷彿とさせる、
発端は奇妙な出来事の発見→探偵役のさらに奇妙な行動→理由が判明してすっきり
という例のパターン。毎度、読んでる最中に訳がわからず読者すらも翻弄する読書体験がとても楽しい。
さらに、本作に感心したのは、タイトルにもなっている「奇商クラブ」というキーワードを使ってこの1冊を仕上げてきたという事。詳細は実際に読んで汲み取ってほしい。
解説も丁寧でわかりやすくて良かった。
(もし、本文を読んでて、チェスタトンの文章が理解しづらく躓きそうになったら、まず解説の最初の2頁程を読んでから本文にとりかかると少し楽になるかもしれ -
Posted by ブクログ
ネタバレ冒険小説の古典的名作「宝島」の作者スティーブンソンが書いたミステリー風の小説。
ボヘミアの王子フロリゼルの関わる二つの奇妙な事件が収録されている。
メインキャラクターはフロリゼル王子なのだが、章によって違う登場人物の視点での物語になる。
19世紀のロンドンとパリが舞台。
序盤のフロリゼル王子は、自ら刺激を求めて危ないことに首を突っ込んでゆく感じで、お付きの臣下ジェラルディーン大佐が諫めても聞かないタイプでなんと
なく漫画「レベルE」のバカ王子とダブってしまって、あのキャラクターの元ネタはこの王子なのかと思ってしまった。
しかし、後半の章になるにつれ高潔で正義感の強い人物になってしまい、さ