南條竹則のレビュー一覧

  • ゴーストリイ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚

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    雑誌「幽」に連載していた随筆をまとめたもの。イギリス17世紀~20世紀初頭の民間伝承や文学作品を、テーマに沿って気ままに紹介してくれる読み物。
    随筆そのものの語り口といい、紹介される作品達に合わせた装丁のデザイン、特に本文のデザインが雰囲気にマッチしていて秀逸。フォントの選び方からレイアウト、紫のインクで刷ってる文字から漂う香気。目で楽しめて読んで楽しい一冊です。

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    2020年08月17日
  • カンタヴィルの幽霊/スフィンクス

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    好きな短編小説の類。詩も入っていて、詩とかはよく分からないけど一応読んでみて、やっぱりよく分からない。海外の短編はサキとかカポーティとかフィッツジェラルドとかヘミングウェイとかO・ヘンリーとかロアウド・ダールとかマーク・トウェインとか好き。これもちゃんと偏りがあるのだろうと思う。

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    2020年08月03日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    クトゥルーの神々、おぞましさがうまく想像できないけれど、おぞましさが文章の端々から滲み出ていました。面白かったです。
    神話というのが良いです。
    「異次元の色彩」「ダンウィッチの怪」「クトゥルーの呼び声」「インスマスの影」が特に好きでした。
    みんなして「私も……」「実は私も……」と冒涜的な何かについて話始めるの良かった。
    「インスマス面」とは一体……怖いけど見てみたいです。

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    2020年07月28日
  • 消えた心臓/マグヌス伯爵

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    ・梅雨明け前ではあるが夏である。夏は怪談がふさはしいといふのは今も昔も、そして出版界も変はらないやうで、今年もまた怪談が出た。たぶんこれはほんの序の口であらうと思ふが、それがM.R.ジェイムズであつた。いきなりの大御所の登場である。それはM.R.ジェイムズ「消えた心臓/マグヌス伯爵」(光文社古典新訳文庫)であつた。本書の原題は”GHOST STORIES OF AN ANTIQUARY”といふ。「好古家の怪談集」と訳されてゐるジェイムズの第一短編集である。表題作2作を中心に全8作からなる。 いづれも古き良き時代の怪談集といふにふさはしい。しかもそれがゴシック的な要素をまとつてゐるたりする。そし

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    2020年07月24日
  • 消えた心臓/マグヌス伯爵

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    いやはや見事な怪談集。作者自身の専門分野である古書や古物の研究の余技として書いていた短篇集な訳ですが、どれもとても面白い。
    専門分野の知識をいかして、いかにもな設定・雰囲気作りから、短篇なのでサクッと読ませる鮮やかさと。そして個人的に良いなと思ったのは、怪異に遭遇する主人公が皆、理性的に対応して話が展開していくところがストレス無くて良いですね。(怪異慣れしてる主人公ってのともちょっと違うのですが、対処方法や、埒外からの理不尽な妨害があんまり無い…と言えば良いのか)
    巻末解説も丁寧です。

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    2020年06月17日
  • 消えた心臓/マグヌス伯爵

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    イギリス怪奇小説の大家として名高いM.R.ジェイムズの第一短編集。

    その特徴は、解説にも紹介されているが、「怪談をこしらえるのにもっとも大切な二つの要素は…雰囲気と巧みに作られたクレッシェンドである。…穏やかな環境の中に不気味なものが首をもたげ、初めのうちは控え目だが、やがてしつこくなって、しまいには舞台を占領するように」という作者の言の通りに物語が進展し、最後には曰く言い難くゾッとなってしまう。

    「銅版画」、「マグヌス伯爵」が気に入った。

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    2020年06月18日
  • 知りすぎた男

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    政界や外交問題に関わる難事件を「知りすぎているがゆえに何も知らない男」が解決に導くが……というあらすじ。
    「知りすぎるゆえ知らない」という逆説テイストはチェスタトンお得意の分野で安心のクオリティ。ただし、同作家のブラウン神父や奇商クラブなどとは一味違ったストーリー展開になるのが今回の一番のポイントで、そこが面白いですね。
    聖書や文学からの引用など、分かりにくい所には注釈もついてて読みやすかったのも良かった。

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    2020年05月24日
  • 知りすぎた男

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    犯罪の真相が明らかになり犯人が分かっても、政治や外交が絡むことから、探偵役フィッシャーの付ける結末は苦いものとなり、カタルシスには至らない。最初のころはなかなか人物像が浮かんでこないフィッシャーであるが、連作を通じて次第に、その置かれた社会的位置から来る制約であったり、彼なりの行動原理が分かってくる。その意味でも、最終話は感動的でさえある。

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    2020年05月17日
  • 不思議屋/ダイヤモンドのレンズ

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    怪談物のおもしろいところは怖さというよりも、綺麗に解決されないモヤモヤ感や、釈然としないところだと個人的に思っています。

    ミステリーなら怪談の現象にも何らかの説明をつけるでしょうし、ホラーに振り切ったなら、派手な流血や命の危険を強調すると思うのですが、
    怪談物は特にオチや伏線があるわけでもなく、命の危険までいくこともあまりない印象があります。(そもそも語り手が死んでいたら、怪談として伝わることもないですし)

    特に説明やオチもないけど、なんだか不気味で尾を引く。それが怪談の面白さだと自分は思うのです。

    この短編集の著者はフィッツ=ジェイムズ=オブライエンはアメリカの作家だそう。でも、収録さ

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    2020年03月09日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    最近ではTRPGなどサブカル界隈でよく知られている〈クトゥルフ神話〉。ラヴクラフトの作品群は、その原典だ。あの奇怪な架空の神話体系は、ひとりの男のパラノイア的妄想に端を発しているのである。

    …人類の誕生よりはるか昔、宇宙の彼方から地球に降り立った異形のモノたち。その存在は謎に包まれており、彼らの正体を暴こうとする者には死が待ち受けている。〈Cthulhu〉ーークトゥルフ或いはクトゥルーと仮称される、〈それ〉は人外の秘境に身をひそめ、復活の時を待っている。〈大いなるクトゥルー〉が目覚める時、地上には災いが満ち人類は滅亡するという…

    …こう書くとB級SFホラー感満載だが、実際に読んでみるとSF

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    2019年08月28日
  • 人間和声

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    読んだ手触りがゴシックホラーと言うよりは、SFに近いテイストで、ブラックウッドってこんなの長編も書いていたのか!と。
    「カバラ」や「真の名前」を正確にいにしえの発音で発声することで実体を持ち力を得る…と言った(ちょっと日本の言霊に近い感じの)思想。それにより「誰」を召還しようとしているのか、全く知らされないまま実験に巻き込まれていく主人公の青年……。前半の周囲の人物描写からにじみ出す不穏な雰囲気はちょっとクトゥルー作品なんかを彷彿とさせて、そういうのが好きな人にはオススメの作品です。
    青年の神秘体験の描写については、音に色や形を持たせようとして筆を尽くしての描写が圧巻。面白かったー。

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    2019年07月22日
  • 奇商クラブ

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    チェスタトン初期の連作短編集。話の手法は、後のブラウン神父シリーズを彷彿とさせる、
    発端は奇妙な出来事の発見→探偵役のさらに奇妙な行動→理由が判明してすっきり
    という例のパターン。毎度、読んでる最中に訳がわからず読者すらも翻弄する読書体験がとても楽しい。
    さらに、本作に感心したのは、タイトルにもなっている「奇商クラブ」というキーワードを使ってこの1冊を仕上げてきたという事。詳細は実際に読んで汲み取ってほしい。
    解説も丁寧でわかりやすくて良かった。
    (もし、本文を読んでて、チェスタトンの文章が理解しづらく躓きそうになったら、まず解説の最初の2頁程を読んでから本文にとりかかると少し楽になるかもしれ

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    2018年12月16日
  • 英語とは何か(インターナショナル新書)

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    タイトルに惹かれて購入。
    日本人にとって…という補足が必要か。
    日本人にとって、苦労する(した)であろう事柄について、著者の考えを述べた内容。
    実際のところ、いわゆる英会話には役に立たないが、英語という言語を考える上で参考になるのではないでしょうか。

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    2018年08月25日
  • 不思議屋/ダイヤモンドのレンズ

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    この表紙ポカーンシリーズの、不思議奇妙怪奇な作品達は正直私には似たり寄ったりの印象だったが。作者はアイルランドに生まれ、遺産を食い潰し、アメリカに渡って執筆活動をした。他の病弱で夢見がちな作者達と異なり、世間に揉まれたのかなあ。非常にダイナミックな書き味で、我々を手品師のように活劇の世界に連れてゆくのだなあ。m&m'sというチョコレートがあるが、あんな感じ。チョコにチョコをコーティングして歯触りよくし、素材の持ち味を引き立てている。一歩踏み出た読ませる感で、惹き付けていると思う。

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    2018年08月11日
  • ケンジントン公園のピーター・パン

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    ロンドンのケンジントン公園を舞台とした、ピーターパン(牧神)も出てくるが、主に妖精たちの生態を描いたおとぎ話。子供の頃はおとぎ話が大嫌いじゃった。今でいう所の辻褄合わなくなると夢落ちですかい、と勝手に怒りをあらわにしていた。竹取物語、浦嶋太郎は今でもトラウマじゃ。現在は少しは経験値積んでるので、ごっつりメルヘンにも優しい。あんまり深く掘り下げると悲しさが染みでるタイプの本なので、サラッと読むのじゃ。挿し絵が素晴らしいー。

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    2018年07月31日
  • 白魔(びゃくま)

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    なんか自分には染み入らなかった。常々へんてこに対する人間の苦悩恐怖もがき羞恥、そういうのを追いかけてる気がするが、この作品は自分には美しいファンタジックな世界への賛美としか感じとれず薄味だった。丁寧に作られた郷土料理をふるまわれ、素材の良さを感じ取れなかったみたいな。

    冒頭に、聖者とは罪人とはその本質を
    語る部分がある。我々は自分にとって不愉快な人間を罪人と考えたがるが、その行動事態は人情である。盗人は未発達な人間にすぎない。悪とは関係ない。非常に興味深い匂わせが書かれているがそれが具体的じゃなかった。

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    2018年07月29日
  • 詩人と狂人たち

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    なかなか文体が高尚な感じで読みづらさはあったけど、普通のミステリ作品とは一線を画すようなちょっと異色な短編集。これ好きな人はオコナーも好きなんじゃないかな。

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    2018年06月28日
  • 新アラビア夜話

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    ネタバレ

    冒険小説の古典的名作「宝島」の作者スティーブンソンが書いたミステリー風の小説。

    ボヘミアの王子フロリゼルの関わる二つの奇妙な事件が収録されている。
    メインキャラクターはフロリゼル王子なのだが、章によって違う登場人物の視点での物語になる。
    19世紀のロンドンとパリが舞台。

    序盤のフロリゼル王子は、自ら刺激を求めて危ないことに首を突っ込んでゆく感じで、お付きの臣下ジェラルディーン大佐が諫めても聞かないタイプでなんと

    なく漫画「レベルE」のバカ王子とダブってしまって、あのキャラクターの元ネタはこの王子なのかと思ってしまった。
    しかし、後半の章になるにつれ高潔で正義感の強い人物になってしまい、さ

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    2018年02月25日
  • 秘書綺譚~ブラックウッド幻想怪奇傑作集~

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    ジム・ショートハウス物を全篇収録。解説でも書いてある通り、佳作揃いでどれを読んでも面白かった。クラシカルな怪奇モノではありますが、バリエーションに富んだ品揃えで。
    あと、解説で芥川や乱歩のブラックウッド好きに触れてます。早くから日本に紹介されてた作家なんですよね-。

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    2018年01月10日
  • 木曜日だった男 一つの悪夢

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    反政府主義者×詩人×警察を巻き込み、秘密組織の謎を巡るストーリーなのだが、序盤の展開の速さ・中盤の謎が明らかになっていく様子・終盤のドタバタ感の妙な緩急が心地良く、癖になる。

    哲学的な要素や、詩的な要素もあり、イギリス人のシニカルな表現が好きな人ははまると思う。自分がキリスト教観や哲学的思想に乏しいせいか、ラストはそこまでズシンと来なかったので、またいつか再読したい。

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    2017年09月06日