【感想・ネタバレ】知りすぎた男のレビュー

あらすじ

「我々は知りすぎているんです。お互いのこと、自分のことを知りすぎている。だから、僕は今、自分の知らない一つのことに本当に興味をおぼえるんです──あの気の毒な男がなぜ死んだか、ですよ」新進気鋭の記者ハロルド・マーチは財務大臣との面会に向かう途中で出会った奇妙な釣師とともに自動車が断崖から転落するさまを目撃する。後に残されたのは車の残骸と男の死体だった。なぜ彼は昼日中見晴らしの良い崖から転落したのか? 国際情勢への鋭い眼差しが光る、英国的諧謔精神に満ちた連作ミステリ集を新訳にて贈る。創元推理文庫初収録作。/【収録作】「標的の顔」/「消えたプリンス」/「少年の心」/「底なしの井戸」/「塀の穴」/「釣師のこだわり」/「一家の馬鹿息子」/「彫像の復讐」/解説=大山誠一郎

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

イギリスの上流階級に属し、国際情勢や政にも精通している知りすぎた男ホーン・フィッシャーが関わる連作短編集。「ついて来れるか」というチェスタトンの意地のようなものも感じる手強い作品。単純明快な切れ味鋭い推理ではなく、読者自らが文の中から真理を紡ぎ出し、推理を咀嚼し、自身を納得させなければならない。全て理解できたとは言いがたいが、一つ二つビビッときた作品もあり、必ずしもつまらない作品などではない。いや、もう本当ブラウン神父ものって優しかったんだな、と痛感する。

0
2024年07月08日

Posted by ブクログ

政界や外交問題に関わる難事件を「知りすぎているがゆえに何も知らない男」が解決に導くが……というあらすじ。
「知りすぎるゆえ知らない」という逆説テイストはチェスタトンお得意の分野で安心のクオリティ。ただし、同作家のブラウン神父や奇商クラブなどとは一味違ったストーリー展開になるのが今回の一番のポイントで、そこが面白いですね。
聖書や文学からの引用など、分かりにくい所には注釈もついてて読みやすかったのも良かった。

0
2020年05月24日

Posted by ブクログ

犯罪の真相が明らかになり犯人が分かっても、政治や外交が絡むことから、探偵役フィッシャーの付ける結末は苦いものとなり、カタルシスには至らない。最初のころはなかなか人物像が浮かんでこないフィッシャーであるが、連作を通じて次第に、その置かれた社会的位置から来る制約であったり、彼なりの行動原理が分かってくる。その意味でも、最終話は感動的でさえある。

0
2020年05月17日

「小説」ランキング