南條竹則のレビュー一覧

  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    クトゥルー神話は作家が創造した架空の神話ということを初めて知ったので相当驚いた。それだけ広くさまざまな創作の元になっている存在。
    SFホラーといった内容だった。
    この中では表題作が1番読みやすかった。旅行で訪れた先で恐ろしい体験をして逃走劇が繰り広げられるシーンも良かったが、更に自分との血の繋がりに話が発展していくのが良かった。伏線の回収もあり、面白く読んだ。
    「あの深きものらの棲処で奇蹟と栄光に囲まれ、とこしえに暮らすであろう」こんなラスト想像していなかった。あれほど忌み嫌った存在そのものになることをもう受け入れていてゾクゾクする。

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    2022年09月12日
  • 奇商クラブ

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    ネタバレ

    正直に言えば、アシモフの「黒後家蜘蛛の会」シリーズのようなクラブメンバーが奇妙な事件に出くわす、といった内容を期待していた。
    本作はミステリーと言えばミステリーだが、巻末解説にあるように奇譚とも言える。
    バジル・グラントの“探偵”ぶりはホームズやポワロとも異なっているが、変人さ/面倒臭さは負けず劣らず。
    最後に収録されている「老婦人の風変わりな幽棲」のオチは、少しずるいと思った。

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    2022年09月11日
  • アウトサイダー―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    新潮文庫のラヴクラフト新訳選集も第三弾、ラヴクラフト氏の「うぶなロマンチスト」(巻末の解説から)的側面が味わえる、ファンタジー寄りの作が多めだろうか。あと、「魔女屋敷で見た夢」はクトゥルー神話の元々のアイデアが、使い古された怪奇小説のガジェットを疑似科学(SF)の用語で語り直すことだったんじゃないかと、思わせてくれて楽しい。個人的ベストは、そういう意味でもストレートなSFホラーになっている「忌まれた家」。

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    2022年08月27日
  • 臨海楼綺譚~新アラビア夜話 第二部~

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    新アラビア夜話の第二部なのだが、フロリゼル王子は出てこないし奇譚を期待した私にはハズレだ。表題作「臨海楼綺譚」は、友達もおらず孤独だった〈私〉が放浪の途中で、学生時代の唯一の友、偏屈なノースモアを思い出して訪れた楼閣で巻き込まれた不穏な事件。裏切り者を追い詰める炭焼党のイタリア人たち。彼らを裏切り追われる老人とその美しい娘クララ。そしてクララを守ろうとするノースモア。そこに加わる〈私〉。いわゆる恋と騎士道譚だ。何が起きてるんだろうかとミステリっぽく展開する。しかしアラビアンナイトをなぞった話ではない。他の3篇も同様だ。

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    2022年08月16日
  • 秘書綺譚~ブラックウッド幻想怪奇傑作集~

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     1906年から1923年に書かれたアルジャーノン・ブラックウッドの短編を集めたアンソロジー。
     ブラックウッドといえば、どの作品だかもう分からないが(本書にも入っている「秘書奇譚」かもしれない)高校生の頃読んでひどく衝撃を受け、「これは凄いかも」と思ったことがある。しかし、その後創元推理文庫『ブラックウッド傑作選』を読んでみると、そんなにショッキングなところはなくむしろ「ふつう」っぽくてがっかりしてしまった。あの時の「衝撃」というのは、その短編では恐怖小説の骨格ばかりが肉を落とされて露出し、その小説システムの露見が極めてラジカルなものに思えたのだ。骨格が露出するとともに、登場人物はハリボテ人

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    2022年07月29日
  • 怪談

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    他の話は有耶無耶になったり不思議だなぁって話が多い中、「ろくろ首」だけ力技で倒してるのがツボに入った
    最後の訳者の昔話が怖かった

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    2022年06月17日
  • 盗まれた細菌/初めての飛行機

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    ウェルズの印象を覆す短編集。
    書いた絵が喋りだす「ハリンゲイの誘惑」、ミュージカルを初めて観て、その役者の大げさな挙動が感染ってしまう「劇評価悲話」が特に印象に残る。かなり突飛な話が多く、ついて行けないことに加え、語り手が突飛なことをする人であることから感情移入にかなり苦労しました。
    訳者が解説で触れた作品「壁の扉」をいつか読んでみたいです。

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    2022年05月08日
  • 臨海楼綺譚~新アラビア夜話 第二部~

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     表題作の「臨海楼綺譚」、冒険小説とか、女性を守る騎士道的な物語が好きな読者であれば、それなりに楽しめるだろうと思う。
     舞台は、リンクスと呼ばれる底なし沼のような流砂のあるエリアに所在する、世を拗ねた者が住む館。昔、彼と喧嘩別れしてしまった語り手が、各地を放浪の果て、久方振りにその土地にやってくる。人嫌いだった彼の館に、深夜、海から上陸してきた長身の紳士と美しい娘。一体彼らは何者なのか、またなぜ秘密めいた行動を取っているのか?
     そこから、美しい女性の愛情獲得を巡る男の争い、秘密結社から命を狙われている彼女の父親を守ろうとしての命懸けの戦いが始まる。果たして‥‥。
     この時代ならではの感は否

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    2022年05月02日
  • 臨海楼綺譚~新アラビア夜話 第二部~

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    新アラビア夜話の第二部だけれども、フロリゼル王子の登場は無し。昔のエンタメなので、今の目で見ると展開がもっさりし過ぎている感は否めない。それを味と思って楽しめるかだと思うが、冒険譚とは言えない話が続くと多少しんどい。

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    2022年04月21日
  • 木曜日だった男 一つの悪夢

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    ブラウン神父が面白かったので読んだ。
    ブラウン神父にも通じるミステリ的な部分も面白かったが、わからないものに向かい合う恐怖や不信感がとても感じられてページが止まらなかった。

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    2022年03月30日
  • 消えた心臓/マグヌス伯爵

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     原著は1904年刊行の『考古家の怪談集』で、M・R・ジェイムズの最初の小説集。
     20世紀初頭に出現したイギリスの怪奇小説の御三家として、アーサー・マッケン(1863-1947)、アルジャーノン・ブラックウッド(1869-1953)、そしてこのモンタギュー・ローズ・ジェイムズ(1862-1936)が並び称されており、アメリカのラヴクラフトより少し前の世代で、古典的な怪奇小説の作り手たちである。もっとももっと前の世代の作家としては、アイルランドのレ・ファニュ(1814-1873)という先達がいる。
     これらの有名な「古典的」怪奇小説作家の本を私は高校生の頃幾らか読んだのだが、その中でこのM・R

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    2022年01月27日
  • 詩人と狂人たち

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    画家であり詩人であるガブリエル・ゲイルが、特異な観察眼と狂人の理論に寄り添える想像力によって、不思議な事件の真実を明らかにする連作短編集。
    チェスタトンの作品なのだから、主人公の名前がキリスト教三大天使の中の「ガブリエル」を採用してるのも狙いがあっての事だと思う。ガブリエルは神の声を伝える者であり、幻の意味を説明する役割を担っている。今回のこの狂人達が巻き起こす事件の謎解き役の名前としては最適ですね。
    今作も逆接の論理が炸裂していましたが、思いの外、ロマンチックな物語でメロドラマとしても楽しめました。

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    2022年01月16日
  • カンタヴィルの幽霊/スフィンクス

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    ワイルドの小説はワイルドらしい道徳的説話集になりそうでならないところをうまく語る短編になっている。「カンタヴィルの幽霊」については、一般的に幽霊より人間の方が強く人間が脅かされるだけだが、この幽霊はかなり弱い。この着眼点は面白い。「スフィンクス」は流麗な詩といったところ。このような詩も書けることがワイルドの教養の深さでもあると思う。
    後半のエイダ・レヴァーソンはなかなか辛かった。ワイルドの友人・同時代人ということで「回想」では同時代人ならではの事象に言及されているが、個人的にはそこまで興味が持てず、私自身がそこまで細かい話に興味がないということなんだと思う。

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    2021年12月13日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    なんでコッチ系って、ヌルヌル系や海鮮系なのかしらねー。
    雰囲気はB級映画。S・キングとか。ウルトラQとか。
    ゲームのブラッドボーンがちょっと似てる。
    あっと驚く仕掛けがあるでもなし、芸術性があるでもなし。何となく思想が偏っている。キリスト教圏の人が書くとこんなものか。
    たまーにネットやゲームで見かけるクトゥルー(フ)神話ってどんなものか、ちょっと知りたいなら読んでみるといいかも。
    有名な《窓に! 窓に!》がなかったのが残念。

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    2024年04月11日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    クトゥルー神話(クトゥルフ、ク・リトル・リトルなどの表記もあり)で知られるH.P.ラヴクラフト(1890-1937)作品の新訳版。
    「神話」を象徴する7篇(「異次元の色彩」、「ダンウィッチの怪」、「クトゥルーの呼び声」、「ニャルラトホテプ」、「闇にささやくもの」、「暗闇の出没者」、「インスマスの影」)を収める。

    生前は不遇であり、存命中に出た単行本はわずかに1冊。
    だが、彼の描く独特の怪奇世界は、死後、徐々に受け入れられ、多くの作家にも影響を与えた。クトゥルーの名はゲームやアニメなどにも取り入れられ、予想外の広がりを持つことになった。

    普通の町、普通の村に、不吉と捉えられる場所がある。そこ

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    2021年08月16日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    怪奇小説。白日夢に見そうな話だ。あまり読まないジャンルでなかなかページが進まなかった。視覚だけでなく、聴覚、嗅覚、それに気配が、耐えられない気分にさせられる。2021.8.7

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    2021年08月07日
  • 爆弾魔: 続・新アラビア夜話

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    本邦初訳! 前作『新アラビア夜話』の続きの物語ですが、この本から読み始めたとしても問題ないように、冒頭に押さえておくべきポイントとして「注意書き」が作者からのメッセージとして入っているのが親切ですねw

    今回のストーリーは、前作の主役だったフロリゼル王子は脇役に引っ込み、金はないが暇を持て余ししてる三人の若い紳士を中心に物語が展開される。思わぬところから「爆弾魔」と因縁を持つことになる三人が、ボンクラながらがむしゃらに突き抜けていく感じがコメディ風味もあり面白かった。

    前作「新アラビア夜話」は同じ翻訳者さんで光文社古典新訳文庫から出ています。そちらも陰謀活劇もので面白いのでオススメ。

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    2021年07月24日
  • インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    装丁がふと目に留まり、ラヴ・クラフトのクトゥルー神話に手を出しました。
    翻訳モノは苦手意識があるので、最初の方は読み進みが遅かったけど、クトゥルフの概念・展開が分かってきてから中盤~後半の話は、不穏に付きまとう影を追いたくて、ページをめくり続けてしまいました。

    同シリーズ「狂気の山脈にて」も読んでみようかと。

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    2021年01月28日
  • 狂気の山脈にて―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    この本の中で一番好きな話は、『ランドルフ・カーターの陳述』。『狂気の山脈にて』と『時間からの影』が順番に並んでるのは、よかった。

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    2021年01月03日
  • 狂気の山脈にて―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

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    新潮文庫のクトゥルー神話傑作選第二弾。今回のセレクションがちょっと変わったラインナップだなーと思いつつ読んでましたがそれらについては巻末の編訳者解説に書いてあるのでいろいろ納得。
    なにはともあれ『狂気の山脈にて』→『時間からの影』の2作がこの順番で収録されているのは大変オイシイ展開なので、順番に読んでその世界観を堪能して欲しいですね。

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    2020年12月12日