あらすじ
夜中の3時、正装した紳士が自分の部屋に立っていたら……。古典的幽霊譚である「空家」、「約束」、吸血鬼と千里眼がモチーフの「転移」、美しくも奇妙な妖精話「小鬼のコレクション」、詩的幻想の結晶「野火」ほか、名高い主人公ジム・ショートハウス物を全篇収める。芥川龍之介、江戸川乱歩が絶賛したイギリスを代表する怪奇小説作家の傑作短篇集。「恐怖の王道」ここに降臨す!
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Posted by ブクログ
「幻想怪奇」という言葉に惹かれて。
一つ一つの話が「アレは何だったんだろう?」という後味の悪さを残して終わっていく。特に表題作「秘書綺譚」のアレは何だったろう?感が凄い。こういう引っかかる感じが、本読みにはたまらない。
確かに幻想怪奇な傑作が詰まった素晴らしき1冊。江戸川乱歩が絶賛しただけあるなぁ…。
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百年前の作品なんて信じられないです。
最近は妙に凝った作風のものが多いせいか、こうあっさりとしたプロットなんだけど文章力で勝負! ていう作品がひどく新鮮でした。
本当に面白い。
じっくりと読みたいって思っていたのに、この後どうなる? で、どんどんページをめくってしまい、すぐに読み終えてしまいました。
古典文学に分類される作品ですが、新訳だからか読みやすかったです。
Posted by ブクログ
全編面白かった!
100年前の作品なのに、全てやりきっている。ジム・ショートハウスを主人公とした短編が全て入っていたのがありがたい。この本には収録されていないが、ジョン・サイレンスを主人公にした作品の方が有名らしいので、それも読んでみたいと思った。
が、果たして翻訳されてるのか…?
Posted by ブクログ
アーサー・マッケン(1863~1947)、M.R.ジェイムズ(1862~1936)らとともにイギリス三大怪奇小説作家とも言われるアルジャーノン・ブラックウッド(1869~1951)の傑作集。芥川龍之介や江戸川乱歩も影響を受けた古典的ホラーである。高校生くらいのころに創元推理文庫の『怪奇小説傑作集1』で「秘書綺譚」を読み、最近岩波文庫の『芥川龍之介選 英米怪奇・幻想譚』で「スランバブル嬢と閉所恐怖症」という作品でこの作家と再会したのを機に、この傑作集を手に取った。
「空家」「壁に耳あり」「スミス―下宿屋の出来事」など、古い家屋にとり憑いた霊という常套的な設定が、安定した(?)恐怖を読者に提供してくれる。
「スミスの滅亡」はアメリカ西部が舞台で、スミスヴィルという火災で全滅した街の霊があらわれるというちょっと変わった作品。
「秘書綺譚」でのユダヤ人、「小鬼のコレクション」でのアイルランド人など、異民族への恐怖がテーマになっている作品はいかにも19世紀的である(発表は20世紀だが)。差別感情は、異なるもの・未知なるものへの恐怖感情と密接にかかわっている。それは21世紀になっても本質的に変化していない。
訳者の南條竹則氏は、1993年『酒仙』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しているほか幻想小説を多く執筆し、ラヴクラフト(新潮文庫)やチャールズ・ラムの「エリア随筆」などの翻訳、評論活動でも知られる。
Posted by ブクログ
「空家」は何度読んでもゾクゾクします。
ビジュアルではなく、音や触感で感じる恐怖。
私にとっては最高傑作です。
けれど他のどの作品もブラックウッドらしい美しくもの悲しい雰囲気の中、恐怖や不思議が絶妙に描かれていて読みごたえがあります。
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幽霊譚など怪奇幻想もの。小説の構造として奇妙なものも多いんだけど、文章の密度というか、ビジョンというか、雰囲気がすごく良くて、怖いというよりも、物語がしみじみ心にしみてくる感じ。
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ショートハウスが出てくる作品を主に集めた短編集。
ゴーストが主だけど、人狼的なもの、吸血鬼的なもの、バラエティに飛んでいて面白く、すぐに読み終わってしまった。何度でも読み返したい本。
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表題作他10編の、英国式古典的怪談集。
蝋燭の仄明かりを頼りに暗がりを進んで行くと、
フッと何者かの顔が視界に飛び込み、
またすぐに消えた……が、
それが何だったのか、説明がつかないまま終了――とか。
このモヤモヤ感が堪らない。
本体が死すとき、
その分身(投影、あるいは副産物)も共に滅びる、
という「スミスの滅亡」や、
牙を剥いて生き血を啜る典型的なタイプではない吸血鬼の話
「転移」が特に面白かった。
Posted by ブクログ
・私がアルジャノン・ブラックウッドですぐに思ひ出すのは短編「柳」である。これは超のつく有名作で、ブラックウッドにつ いて書く時には、誰もが必ずといつて良いほど言及する作品である。あの自然の怪異と畏怖には圧倒的なものがあり、一読讃歎、彼の代表作と いふにふさはしいと思ふ。同じく、「古い魔術」も彼の代表作であり、実に多くの人がこれに言及してゐる。もしかしたら猫好きな人には愛憎 半ばする物語かもしれないが、あの紛れ込んだ世界の実在感もまた圧倒的である。ブラックウッドは多くの怪奇幻想小説を書いた。この2作以 外にも優れた作品が多い。生まれは1869年、日本では明治元年になるのであらうか。30代終はりに作家となつた。イギリスの怪奇小説黄 金時代を生きた人である。そんな人だから、優れた怪奇幻想小説を書いてゐるのは当然であらう。ブラックウッド「秘書綺譚 ブラックウッド幻想怪奇傑作集」(光 文社古典新訳文庫)には11の短編を収める。いづれもそんな時代を彷彿とさせ、そんな雰囲気を 堪能させてくれる正統的な短編である。更に、本書のポイントはショートハウス物すべてを収めるといふ点にある。この人物はジョン・サイレ ンスほど有名ではないし、登場する作品は4作しかないが、それをここに収めてあるのである。「彼の性格は作品によって多少違いますが、若 き日の作者の分身である」(「解説」346頁)とか。ブラックウッドは若い頃、様々な仕事を経た後に金持ちの秘書を務めた(同前333 頁)。このあたりを言ふのであらう。
・その表題作「秘書綺譚」、やはり大金持ちの秘書として務めた仕事の話である。主人の命で、主人のかつての盟友の家を、古い契約書の件で 尋ねる。そこは田舎家、奉公人のユダヤ人との二人住まひ、普段は尋ねてくる人とてない寂しい生活を送つてゐる。歓待され、依頼された仕事 は無事終了、さて帰らうとすると……お決まりの如くに、既に最終列車の時間には遅くなつてゐる。そこでやむなくショートハウスは泊まるこ とにする。さうして、後は恐怖の一夜が待つてゐる……本当に型通りの見事な展開である。この先はどうなのであらう。その家の雇ひ人がいさ さか不気味な男であつたり、主人が生肉しか食はなかつたりで、早々に部屋に入れば、そこは「まことに気持ちの良い素敵な部屋だったが、 ショートハウスは(中略)神経が発する警告を無視できなかった」(174頁)。これもまたなかなかのお膳立てである。さうして最後に事が 起きるが彼は難を逃れて帰着、務めを果たしたゆゑに主人は「給料を上げてくれたばかりでなく、帽子と外套を新調しろ、勘定書はこちらへま わせ、と言ってくれたのだった。」(189頁)実際、この物語は綺譚である。単なる怪奇、恐怖小説とは違ふ。その意味では、先の「柳」と は全くタイプの違ふ作品である。これに対して、冒頭の「空屋」「壁に耳あり」は幽霊譚である。「空家」は伯母との幽霊屋敷探検である。こ れは屋敷の様子とそれに対する二人の反応が中心である。「壁に」はその部屋に取り憑いた霊の出現の物語である。最後にその事情が明らかに される。幽霊譚でも律儀なとでもつきさうなのが、ショートハウス物ではないが、「約束」である。日本ならさしづめ○○の契りとでも題され さうな内容である。要するに、ある男がかつての約束を守つて友のところに幽霊として出現するのである。どちらもよくありさうな物語である し、現代ではかういふのは書かれないであらうとも思ふ。古典的である。イギリス怪奇小説の黄金時代を思はせる作品である。他に、変種の吸 血鬼譚もある。代表作ではなくとも、楽しめる作品集である。
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ジム・ショートハウスもの11本。
怖さというより、どちらかというと、不思議だったり薄気味わるかったり。
芥川龍之介や江戸川乱歩が絶賛したというのも、さもありなん。
「秘書奇譚」など、芥川「魔術」への影響を感じる。
Posted by ブクログ
1906年から1923年に書かれたアルジャーノン・ブラックウッドの短編を集めたアンソロジー。
ブラックウッドといえば、どの作品だかもう分からないが(本書にも入っている「秘書奇譚」かもしれない)高校生の頃読んでひどく衝撃を受け、「これは凄いかも」と思ったことがある。しかし、その後創元推理文庫『ブラックウッド傑作選』を読んでみると、そんなにショッキングなところはなくむしろ「ふつう」っぽくてがっかりしてしまった。あの時の「衝撃」というのは、その短編では恐怖小説の骨格ばかりが肉を落とされて露出し、その小説システムの露見が極めてラジカルなものに思えたのだ。骨格が露出するとともに、登場人物はハリボテ人形のような無機質な存在と化してしまう。その非-人間化のプロセスに衝撃を受けたのかもしれない。そうした非-人間化は、やはり私の好きなE. T. A. ホフマンの幾つかの短編にも見られるし、それを突き詰めてあっち側に飛躍してしまったようなのが、カフカの作品と言えるかもしれない。
本書で久しぶりにブラックウッドの怪奇短編を読んでみると、この作家の文章力はあまり良くないなと感じた。ちゃんと筋の通った文章ではあるが、何となく、リアルな描写という近代小説の必須な要素がしばしば置いてけぼりになって、小説と言うより神話的な語り口に見えてくるのだ。ラヴクラフトあたりと比べても、しっかりと描写を重ねていくところが物足りなく、一気に怪異の中心に飛び込んでしまうようなせっかちさが気になる。このせいで若い私に「骨格の露出」という印象を与えたのだろう。
本書前半の方の幾つかの作品は現在から見ると「あまりにもオーソドックスなホラー」という印象があるが、まあ、そういうスタイルを築き上げた古典的作品であるのかもしれない。
しかし特に本書後半はバラエティに富んだ感じがする。結構豊かな引き出しを持った作家だったのかも。あまり丹念に描写しない傾向が、ちょっと惜しい気がする。
Posted by ブクログ
ジム・ショートハウス物を全篇収録。解説でも書いてある通り、佳作揃いでどれを読んでも面白かった。クラシカルな怪奇モノではありますが、バリエーションに富んだ品揃えで。
あと、解説で芥川や乱歩のブラックウッド好きに触れてます。早くから日本に紹介されてた作家なんですよね-。
Posted by ブクログ
冒頭の「空家」が結構苦手な怖さで耐えられるかと心配になったが、あとは比較的好きなタイプの怖い本。
「壁に耳あり」やっぱ壁が膨らむところが怖い。
「スミス―下宿屋の出来事」ラブクラフト的?
「約束」これ好き。冷たいスコーンとか妙にリアル。
「秘書綺譚」壁の絵が怖い。狂気。
「窃盗の意図をもって」他のアンソロジーで読んだ。どれもそうだが、おかしくなった人の描写がリアルで本当っぽいのでぞわぞわする。日本の古典怪奇映画っぽいというのかな。
「炎の舌」ちょっと面白かった。自分でも気をつけよう。
「小鬼のコレクション」小鬼というよりフェアリー。きれい。
「野火」1回スルーしてしまった。改めて読んで詩に近いかなと。
「スミスの滅亡」切ない。
「転移」これがいちばん好きかなぁ。町とか地面とか人でないものが意識を持っているというのは私もそう思うときがあるので共感できるのです。
解説によると明治大正期に愛された怪奇小説。何編かに登場するショートハウス氏は解説を読むと自身の経歴をなぞった人物(破産状態で新聞記者にとか)。
Posted by ブクログ
ショートハウスなる人物が登場する話が複数あるので、最初この人物が主人公なのかと思った。各話によって少し性格設定が違うけども。そして私は南條竹則氏の訳文がやっぱり苦手。訳がイマイチだと思って訳者を見るといつもこの人だ。2012/608
Posted by ブクログ
スタンダードな幽霊譚や幻想的な「転移」「野火」。どれも恐ろしい感じはしないのだけど、不思議と登場人物の表情や暗い風景がありありと浮かぶ。とりあえず、ジム・ショートハウスは怖い思いし過ぎだと思います。
単純に私の感覚的な問題かもしれないけど「ホラー」という言葉には日本の小説がしっくりきて、「怪談」は欧米の古い作品がしっくりくる。
Posted by ブクログ
乱歩が早くから紹介していたブラックウッドの短編集。光文社の古典文庫で、新しく翻訳されて読みやすい。作品も、幽霊話あり心霊現象ありサイコ系ありバラエティに富んでいて、読み飽きません。