あらすじ
孤独な放浪のさなかに訪ねた草砂原の楼閣。そこで巻き込まれた事件の顛末を語る表題作。無頼漢として知られるフランスの詩人ヴィヨンの荒んだ一夜を描く「その夜の宿」。見知らぬ屋敷に閉じ込められた男が思いもよらない結末を迎える「マレトロワの殿の扉」。芸術という宿命に取り憑かれた旅芸人を主人公にした「天意とギター」の4篇。『ジーキル博士とハイド氏』『宝島』などの名作を生み出す作家の筆が冴える傑作短篇集第2弾。
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Posted by ブクログ
新アラビア夜話の第二部なのだが、フロリゼル王子は出てこないし奇譚を期待した私にはハズレだ。表題作「臨海楼綺譚」は、友達もおらず孤独だった〈私〉が放浪の途中で、学生時代の唯一の友、偏屈なノースモアを思い出して訪れた楼閣で巻き込まれた不穏な事件。裏切り者を追い詰める炭焼党のイタリア人たち。彼らを裏切り追われる老人とその美しい娘クララ。そしてクララを守ろうとするノースモア。そこに加わる〈私〉。いわゆる恋と騎士道譚だ。何が起きてるんだろうかとミステリっぽく展開する。しかしアラビアンナイトをなぞった話ではない。他の3篇も同様だ。
Posted by ブクログ
表題作の「臨海楼綺譚」、冒険小説とか、女性を守る騎士道的な物語が好きな読者であれば、それなりに楽しめるだろうと思う。
舞台は、リンクスと呼ばれる底なし沼のような流砂のあるエリアに所在する、世を拗ねた者が住む館。昔、彼と喧嘩別れしてしまった語り手が、各地を放浪の果て、久方振りにその土地にやってくる。人嫌いだった彼の館に、深夜、海から上陸してきた長身の紳士と美しい娘。一体彼らは何者なのか、またなぜ秘密めいた行動を取っているのか?
そこから、美しい女性の愛情獲得を巡る男の争い、秘密結社から命を狙われている彼女の父親を守ろうとしての命懸けの戦いが始まる。果たして‥‥。
この時代ならではの感は否めないが、語り手のかつての友人であり恋敵となったノースモアの人物造形はなかなかのものである。
他の収録作は、やや雑多な印象。