最果タヒのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
主人公は地球で女子高生をやっている宇宙人。でも普通に地球人と同じ生活をし、普通の高校生となんら変わらず友人との関係や進路について悩んだりしている。奇抜な世界設定や特殊能力が幅を効かせるのでもなく、いわゆるキャラクター小説でもない。誰もが思春期に持つ現状や将来に対する漠然とした不安を描きだすことに主眼を置いた青春小説である。ただ、会話文がコミカルで量も多く、地の文も大方が主人公の心の中のツッコミといった具合。なので、ライトノベルと普通の小説の中間くらいの位置付けか。
私はとても面白く読めた。「覚悟」についての主人公の気づきは私にとっても有益な学びであった。登場人物たちの希望進路はバラバラだが、どれもそれぞれ自分固有の価値観を反映していて面白い。個人個人を尊重する空気が物語には流れていて、それが気持ちいい。あとがきには「青春とは何か」ということに対する著者の考えが書かれていて、これが実に素晴らしい。私にはキラキラした青春なんてなかったし、青春とは何なんだろう?とずっと分からないでいたが、初めて納得できそうな答えに出会った。これは衝撃だった。物語はあとがきのための前菜だったのではないかとすら思える。小説の核にある想いが著者自らによって語られていて、読後の味わいを一段と深められるようになっている。
最後に少し客観的なレビュー。著者の感性の鋭さや言葉の展開力、選択眼は唯一無二だと思っているが、詩やブログに比べると本作ではその個性が薄まっている。しかし、それは小説という形式との相性の問題だろう。彼女の表現は、自分の中に潜む感情を自分のものとして短い文章という形に放出するとき最大限いきるのだと思う。長い文章に物語を構築し、創作人物を通した形で心情を表現するのは相性がベストではないのだ。とはいえ、彼女の感性や価値観は存分に反映されているし、詩に比べて小説の方が伝えたいことが分かりやすくなっているのはメリットである。最果タヒ入門用、もしくは彼女の世界観が好きな人にお勧めする。 -
Posted by ブクログ
言葉にしてしまうと零れ落ちてしまうもの、物語が、関係性がある。しかし、人間が人間であるには言葉が必要だ。言葉にする以前の想いと言葉にしてしまった気持ちの差異というかうっすらした膜のようなものを僕らは伝えたいし聞きたいし見たいと思う。
物語という装置はそれを孕んでいる、孕める可能性がきっとあるんじゃないかって思う。きっと最果さんはそう思って詩だけじゃなくて小説も書いているんじゃないかって読みながら思った。だけどこうやって言葉にするとなにかが零れ落ちていく。それは個人個人の物語の中でふわふわと浮かんでいて形にしようとするときにほんのわずかな部分だけは表出できる質のものなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
縦書きではなく横書きなのに意味があると思う。文字が横に並ぶときに見える形(キャラクター的な)をかなり意識して書かれていると思う。同じ言葉でも縦書きより横書きだからこそわかる感覚、ひらがなが特に視覚的に。読むという行為は文字を見ることだから。最初の一篇『星か獣になる季節』は岩井俊二監督『リリイ・シュシュのすべて』を思い出してしまった。蓮見と星野の関係性のように。『星か獣に~』はコミュニケーションと関係性についてふたりの地下アイドルファンの少年について書かれている。その後が書かれたもう一篇『正しさの季節』はふたりの少年と関係があったものたちの話。どこかに行ってしまった者と置いていかれた者の物語としてもこの一冊は読める。星(超越者)になるか獣(地に足をつけて生きる者)になるか。たいていのものは後者であり誰でもない自分を受け入れたくなくて誰か他者を軽蔑しながら自分の足元を確かめていた季節、それが十七才であり人を傷つけながらそれにより自分が傷ついてその痛みや血で安心すらする。見上げた星の輝きに絶望しながら咆哮(彷徨)している。僕らはその季節を通り抜けてきたがその残骸を抱えながら生きている。