最果タヒのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
映画にせよ小説にせよ選り好みをしているつもりはないですが、何故か最近は生々しい作品によく出会います。
描写とか表現だったりストーリーそのものがリアルで生々しいんです。
この本もそうでした。
淡々と進んでいくところもまたリアルに感じられました。
前編後編に分かれていますが起承転結を二回味わえると言ってもいいぐらい、ハッキリと別の物語でした。
いや、ちゃんと続いてるんですけどね、そういう意味ではすごいです。
登場人物の森下が映画「ウォールフラワー」のパトリックと被って仕方がなかったです。
個人的にはパトリックの方が好青年だと思いますが。
自分が正しいかどうかなんてこだわっているうちは話なんてできない。
たしかに!!気をつけよう。 -
Posted by ブクログ
【星か獣になる季節】
「17歳は、星が獣になる季節なんだって。今日、やった英文解読にね、書いてあった ー 人でなしになって、しばらく、星か獣になるんだって。」
『きみはどうしようもなく才能もなくてセンスもなくて、そしてそれに劣等感を背負いながら、そう見せかけようと努力ばかりする。好きな食べ物も好きな音楽もどれもこれも平凡で、少し他人と変わった所があると、それを誇りに思っている。その態度だ、その他者よりすこしでも上に行こうとするそのみじめな姿がぼくは好きだ。だってきみはみじめでかわいそうで、ぼくはきみのこと、軽蔑したいだけできるから。』
【正しさの季節】
『昔、読んだ英文だったか現代文だったかで、17歳は人でなしになるんだって読んだ。人でなしになって、星か獣になるんだって。今になって、2年が経って、あいつは星で、あの子は獣だって思える。自分のことだけは、今でも少しもわからない。』
『星か獣になる。17歳になると。勉強中、どこかで読んだその言葉を思い出していた。星でも獣でもなく、ここで必死で、人になろうとしている自分のことを、まるで第三者みたいに見ていた。』 -
Posted by ブクログ
主人公は地球で女子高生をやっている宇宙人。でも普通に地球人と同じ生活をし、普通の高校生となんら変わらず友人との関係や進路について悩んだりしている。奇抜な世界設定や特殊能力が幅を効かせるのでもなく、いわゆるキャラクター小説でもない。誰もが思春期に持つ現状や将来に対する漠然とした不安を描きだすことに主眼を置いた青春小説である。ただ、会話文がコミカルで量も多く、地の文も大方が主人公の心の中のツッコミといった具合。なので、ライトノベルと普通の小説の中間くらいの位置付けか。
私はとても面白く読めた。「覚悟」についての主人公の気づきは私にとっても有益な学びであった。登場人物たちの希望進路はバラバラだが、どれもそれぞれ自分固有の価値観を反映していて面白い。個人個人を尊重する空気が物語には流れていて、それが気持ちいい。あとがきには「青春とは何か」ということに対する著者の考えが書かれていて、これが実に素晴らしい。私にはキラキラした青春なんてなかったし、青春とは何なんだろう?とずっと分からないでいたが、初めて納得できそうな答えに出会った。これは衝撃だった。物語はあとがきのための前菜だったのではないかとすら思える。小説の核にある想いが著者自らによって語られていて、読後の味わいを一段と深められるようになっている。
最後に少し客観的なレビュー。著者の感性の鋭さや言葉の展開力、選択眼は唯一無二だと思っているが、詩やブログに比べると本作ではその個性が薄まっている。しかし、それは小説という形式との相性の問題だろう。彼女の表現は、自分の中に潜む感情を自分のものとして短い文章という形に放出するとき最大限いきるのだと思う。長い文章に物語を構築し、創作人物を通した形で心情を表現するのは相性がベストではないのだ。とはいえ、彼女の感性や価値観は存分に反映されているし、詩に比べて小説の方が伝えたいことが分かりやすくなっているのはメリットである。最果タヒ入門用、もしくは彼女の世界観が好きな人にお勧めする。