中山七里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本作も面白かった。すっかり中山七里さん、そしてその登場人物のファンになってしまった。
御子柴礼司シリーズは、悪徳弁護士としきりに書かれつつ、その実、依頼人の人生をしっかり助けている様子や、本人の葛藤を描き出しているところが魅力だと思う。
本作では、これまで端役的な登場の仕方だった弁護士事務所事務員の日下部洋子にスポットライトが当たった。これまでの作品からは全く読み取れなかった過去が明らかになり、驚いた。犯行に関する種明かしはあっさりしていた感があるが、そこに至るまでに主人公の過去と対峙しなければならないところがスリリングだった。
本作の解説も、前作に続き作品の魅力をよく言い表していると思った。 -
Posted by ブクログ
第1作を読み終えた足で書店で購入しました。
「替え玉」として総理大臣を演じることになった売れない舞台俳優だった主人公が、次第に総理大臣としての風格を持つようになる様子に胸が熱くなります。
停滞する経済、新型コロナウイルスの感染拡大、パンデミックの中での東京オリパラ、そして中国と台湾の衝突。
主人公のとる政策は、政治経済の知識も柵もないからこそ思いつくどんでん返しのようなものばかりですが、その根底には利権や権力欲ではなく「国民のため」「平和のため」という青臭い理想がしっかりと残っています。実際の政治にうんざりしている人が多いからこそ、国民に寄り添ってくれる総理大臣の真摯な姿と痛快な逆転劇が魅 -
Posted by ブクログ
売れない舞台俳優が「似ているから」という理由で総理大臣の替え玉に据えられ、ほんの一瞬のはずが政局を乗り越え、さらには自衛隊の海外派遣の是非を判断することに…という荒唐無稽な展開ですが、与野党間の(国会討論などをみても感情的な言い合いにしか見えない)対立や、与党内の派閥同士の権力争いなど、現代政治のリアルな側面が分かりやすく描かれていると感じました。
何より、主人公が「政治の素人」なので、総理大臣としての判断をするにあたっては官房長官や友人の経済学者からの丁寧なレクチャーがあり、それが読者にも優しい配慮になっています。
総理大臣に上り詰める過程で多くの政治家が初当選のころの「青臭い理想」を忘れ -
Posted by ブクログ
御子柴礼司シリーズ。本作も面白かった。
他作でさんざん悪徳弁護士と書かれているけれど、きちんと人間的心を持っていて、なんだったら普通の大衆以上に真摯な心の持ち主として描かれているように思う。
本作の魅力は、解説に端的に示されている。解説より2か所抜粋。
「中山作品の読み心地は、囲碁の対戦を見ているときのそれに近い。囲碁の布石というものは門外漢には理解不能なもので、序盤の展開が後でどのように効いてくるかはまったくわからない。黒白交互に石が置かれていくのを見るのはそれだけで気持ちいいが、ぼうっと見とれていると、あるとき突然決着が訪れるのである。」
「フェアプレイの精神が良きミステリーの必要条件であ