佐藤優のレビュー一覧
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面白い。
佐藤優氏の人生の岐路となった一冊。他の対談本などで語られているように、その後の人生を物書きとして生きる為に絶対にホームランを打たなければならなかった著者の渾身の一冊。ポイントは3点。
・ミクロとマクロの書き分けが絶妙。外交官の背景、ロシア外交の裏話などは詳細に、細かい罪状などはあっさりと読者を置いていかないようにペース配分が非常に練られており良い。
・小説的表現が秀逸。西村検事との掛け合いはドストエフスキーの罪と罰を彷彿とさせる会話劇で、非常に愉快。
・国策捜査は時代のけじめ、として本事件をまとめているが13年後の2019年を予言しているとしか思えない。この頃から新自由主義に舵を切った日本は格差拡大とナショナリズムに苦しんでいるように感じる。この時代に知識人はそこまで予見出来ていたのならば驚愕だ。しかし、本書を読み終えたときには当てずっぽうで買いているとは思えないだろう。
マイナス点としては、当時のニュースを知らない若い世代の人間が読んでもワイドショーも見ていないのでなんのことやら分からないが、本書は元々13年前の大人をターゲットにしているので仕方ないだろう。宗男ハウス、ググっちゃいましたよ、ネーミングセンスあるなぁ。 -
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ネタバレ10年前に買ったのを、今になって読む気になりました。野中さん、すごい人だった。
大物政治家がバンバン出てきて政治史を知る上でも面白いし、被差別部落史としても興味深いし、野中さんかっけー。田中角栄なんて「悪の権化」みたいな印象持たされてたけど、地元の人や民衆にとってはありがたい政策をやってきた人なんだね。金のある時代だからできた政治手腕だろうとは思うけど。
あとがきに「彼の引退は(中略)平和と繁栄を志向してきた戦後の終焉を象徴する出来事だった。新たな時代には平等と平和の四文字はない。」とあり、文庫が出て10年後の今、確かにそんな世の中になっていてゾッとする。 -
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毎日小学生新聞の連載で
佐藤優がこの「豊島君」について語っていて
読みたいなあとずっと思っていた本。
①カイロス(timing)ある出来事が起きる前と後では、事柄の質が変わるような時間。
ex:記念日
神学を勉強して有益だったのは、カイロスに敏感になったことだ。(p42)
「今、豊島君は何をしているのだろうか」このような感情は相互的なので、豊島君も私について考えたことがあると思う。
夢に出てくるとかありますが、それはそうなのかなあ。
②佐藤優の父の教え
大学教育は受けろ、適正があれば大学院まで進め、高等教育を受けると、国家が国民に嘘をついているときも、それを見抜くことができる。口に出すことができなくても、戦争に負けるということが分かっているといざというときに判断を間違えない。
佐藤優の父もまた、すごい方だったのだろう。
こういう、本質を伝えられる親になりたい。
母もまた、沖縄の防空壕で手投げ弾のピンを抜こうとして、となりにいた兵士から
「国際法で女性と子どもは守られる」
「死ぬのは捕虜になってからでもできる」
と耳打ちされ、命を取り留めた経験を持つ人だった。
③植民地経営→地政学が重要。
日本は島国→ネットワーク重視の海洋国家
半島国家→地政学的に半分海洋国家、半分は大陸国家のハイブリッド
大陸国家の基本戦略は自国の領地を増やして効率的に統治すること→マネジメント能力
人々をまとめていくにはやはりノウハウが必要なのだ。
まだまだ学ぶことは多い。
雑多になっている。
経験だけでものをいうのではなく、論理も同時に構築したい。
④逮捕されてからは、日記と手帳がとても重要になる。特捜は手帳に書いていることを物証にするので、それで実際と違う話を作られてしまう危険性がある(p151)
どこも面白いが、ここの話もかなり興味深かった。要するに、もう違う話ができないくらい細かくログをとっているのだ。佐藤優のノート、日経Womenかなにかで見たことあるが、時間と何をしたのか細かく書かれていた。
さらに唸ったのは、ATMで入金は絶対にしないという話。引き出しておいて、多かったからといってあとで入金すると、これが記録になる。どこに送金したんだ、と。そこから勝手に話がつくられていく。
結局、payだってポイントだってTカードだって同じなんだよね。管理したいという国家の戦略なのでは、と浅はかな私は思ってしまう。
⑤生きていく上で特に重要と思う事柄(8項目)
1 こんなもんだと思うこと。
仕事が厳しいのは当たり前。
2 仕事以外に自分の生きる目標を作る。
好きなこと、やりたいことを見つける。
自分だったらなんだろう。
家族、書道、お花・・お茶も興味あるなあ。
3 いい経験をしている、と思うこと。
置かれた環境を楽しむくらいの余裕。
4 人的ネットワークを作ること。
苦手分野だ、たぶん。
当面は、会ったときに笑顔で話す。
はがきを書く、を続けていこう。
5 目標となる人を作ること。
自分もそういう人になれるよう努力する。
今まで、人には恵まれてきたと思う。
特に大学、仕事を始めてから。
どんな人と一緒にいるか、の影響は極めて大きい。
学ぼう。
6 チャレンジ精神をもつこと。
できるかどうかわからないことをやってみる。
あー、これできてるかな。
毎日がどちらかというとできるかどうかわからないことばっかりなんだけどなあ。
7 自分の座標軸を見失わないこと。
これだけは譲れないもの。
その軸から今の自分が外れていないか常に意識しておく。
ここから逸脱すると、きっと精神がおかしくなるんだろう。
8 一喜一憂しないこと。
小さなことで一喜一憂しない。
人生には波がある。
うまくいく日もあればうまくいかない日も。
うまくいかない時期もある。
長いスパンでみる。
人生は短い。 -
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佐藤優さんの高校の同級生・豊島君が、すい臓ガンで余命幾ばくもないことがわかった。佐藤優さんはそのことを聞いて豊島君に「2人の自伝を書かないか?」と提案する。
すい臓ガンは怖いガンだ。気がついた時は既に遅く、ある事情で私も他人事ではないと感じている。しかも、この2人とはほとんど同世代ということがわかった。私と違い、優秀な成績で社会に出た後に98年の日債銀経営破綻で人生がガワリと変わった豊島君は、しかし同世代だけに遠い世界ではない。
「それで豊島君は何がしたい」あえてビジネスライクに佐藤優さんが聴くと
「自分がこの世に生きた証を遺したい」
で、2人の自伝を提案すると、豊島君は怯む。佐藤優さんは畳み掛ける。バブルがはじけた時代を語ることは意味があるはずだと。
「でもそれは、あの時代に特有だった特殊な事例であって、今の時代には通用しないのでは」
「そんなことはない。時代は繰り返す」
豊島君の想いは、とてもよく理解できる。佐藤優さんの判断も正確だ。とても理性的だけど、限りなく情に溢れている。これが「友情」というものなのかもしれない。
2人の高校生活を見ると、2人を合わせて1/3にしたようなのが私の大学生活だったと思う。私の3ー4歳先を既に歩いていたのである。なるほど、これが秀才の歩く道なのだ。
90年バブル破綻、97年北海道拓殖銀行破綻、豊島君は、悪循環に落ち入る日債銀の中にいて「一度マスコミに対して弱みを見せるとマスコミは一気呵成に徹底してその弱みを追求してくる」と強く感じた。「結局誰か犠牲を作らないとこの攻撃は終わらないのだ」。この構造は20年経っても1ミリも変わらない。
「外見の強そうな男がメンタルも強いとは限らない。(略)普段は温厚で柔和だが一度決めたことはブレない意志の強さ、そして地頭の良さを兼ね備えた豊島君のような人間こそが、どんな修羅場も毅然と乗り越えられるタイプであることを私は経験的に知っている」(163p)
会社が経営破綻して、外から外国人上司がやってきたときに、いち会社員としてどのように接したかということは書いてあるが、当然だがバブル崩壊そのものの全体像は描かれていない。平成会社員「史」としては興味深かった。上司との付き合い方には普遍性がある。差し障りがあるので詳しい事は書けないが、私は頗る共感した。
数年前に豊島君は両親と死別した。似たような経験を私もしている。また、最後の人生8訓も、私は頗る共感する。やはり、同世代なのだ。 -
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黒船来航から、太平洋戦争、天皇人間宣言まで6章、山内昌之氏と佐藤優氏が対談で博覧強記、分析詳細しかも的確な語りを披露している。私には、目から鱗のことが多かった。
例えば、ペリーの後にやってきたロシアのプチャーチン提督が徹底した対話による外交を展開したこと。明治政府のシステムが初めから薩長を中心とした合議制で、2年近くにも及ぶそれが旧幕府も含めた超藩的な岩倉使節を可能にしたこと。サラエボで暗殺されたオーストリア=ハンガリー帝国のフランツ・フェルナント皇太子が、スラブに対して宥和的な考えを持っていたこと。日露戦争の後、日米戦争に向かわせてしまった政治家、外交官、論客、軍人などをたくさん挙げ、詳細に分析していることなどである。最後の昭和天皇の話もうーんとうなってしまった。
1921年、昭和天皇は皇太子として、イギリス、フランス、ベルギー、オランダを外遊し、時のイギリス国王ジョージ5世と親しく語ったり、第1次世界大戦の激戦地を巡るなどする。この経験が、立憲君主主義、平和主義、親英米の国際協調主義を目指した昭和天皇の原体験になったであろうという。二・二六事件で露呈された陸軍の天皇軽視は、日米開戦の方針を決める御前会議でも顕著であった。前日、「南方作戦は、約5か月で終了の見込みである」という杉山参謀総長の言葉に昭和天皇は激しく叱責するが、御前会議の当日は平然とだんまりを決め込んでしまう。そこで昭和天皇は、明治天皇の「よもの海みなはらからと思う世になど波風のたちさわぐらむ」という歌を詠みあげ、避戦への思いを明らかにする。天皇の悲痛な思いと焦燥が感じられる。ここには、明治天皇の思いと重ねて表現する歴史的思考が現れている。終戦を決めた御前会議でも、徹底抗戦を主張する軍部に、昭和天皇は、戦争終結の決意に変わりがないこと、戦争を継続すれば国体も国家の将来もなくなること、これに反し即時停戦すれば将来の根基は残ること、武装解除・戦争犯罪人の差し出しは耐え難きも、国家と国民の幸福のためには、三国干渉時の明治天皇のご決断に倣い、決心したことを語る。ここで山内氏は、「これを天皇に言わせた軍部に対する怒りが改めてむらむらとこみあげる。自分たちの不始末で戦争を始めておきながら、その収束は天皇に任せる。卑怯である」と語る。「対米英戦を決意の場合、ドイツの単独講和を封じ、日米戦に協力せしめるよう外交交渉の必要があること、さらに戦争終結の手段を最初から十分に考究し置く必要があり、そのためにはローマ法王との使臣の交換など、親善関係を樹立する必要がある」と昭和天皇は木戸幸一内大臣に述べているが、軍人、政治家、外交官こそが知恵を振り絞るべき問題を、天皇が悩み、考え、訴えている状況は悲劇的ともいう。
ドイツのナチス政権は最後まで止まらず、イタリアはクーデターに至ったが、日本はいったん終戦と決まったら、それまでの徹底抗戦を切り替えて実に合理的に撤退を行った。その切り替えの要に天皇の聖断があった。
1946年の天皇の「人間宣言」は、5箇条の御誓文の全文引用から始まっている。日本の再建にあたって、この5箇条の御誓文の精神が基となる、そこには平和主義、教養主義の重視、民生の向上、すべてが込められているというのである。ここに表れているのは、戦後の日本で進められるはずの民主化は決して占領国アメリカに押し付けられるものでなく、日本には自前の民主主義の理念があったという天皇の自負と信念だったろうという。
この本を読んで、昭和天皇に対する認識を改めた。眞に立派な方であったと。 -
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①なぜ、いま、大世界史か
歴史は現代と関連づけて理解することで、初めて生きた知になる。読書や歴史を学ぶことで得た代理経験は、いわば世の中の理不尽さを経験すること。だからこそ社会や他人を理解し、共に生きるための感覚を養ってくれる。例えば「今は新帝国主義の時代である」というキーワードによって世界の動きがかなりはっきり見えてくる。それだけで説明できないものも残る。
②中東こそ大転換の震源地
これまでアラブ人といえばスンニ派だった。しかし、イラクの現政権を実効支配しているのは「シーア派アラブ人」であり、新しい民族が生まれつつある。こういう混乱した状況になると、最終的には思想が人を動かす。だから過去にどういう思想の鋳型があったのかを調べることが重要だ。「イスラム国」の狙いは、アッラーが唯一であることに対応して、地上においてもシャリーア(イスラム法)のみが適応される単一のカリフ帝国を建設すること。暴力やテロに訴えることを辞さない。既存の国際秩序、人権など普遍的価値を一切認めていない。
③オスマン帝国の逆襲
イランは「ペルシャ帝国」、トルコのエルドアン大統領は「オスマン帝国」よ再びという動きを見せている。かつてのオスマン帝国の境界地帯で現在さまざまな紛争が生じているが、オスマン帝国の統治下では平和的に共存していた。エルドアンは専制君主ではあるが、帝国的な寛容は望むべくもない。
④習近平の中国は明王朝
国には、膨張志向の国と収縮志向の国がある。アラブも日本もアメリカ、ロシアも収縮の国。今の中国は膨張する国。それを象徴するものは「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」と「南シナ海への海洋進出」である。明は漢民族中心の帝国主義の国で、習近平は「かつて鄭和の時代に南シナ海を開拓し、平和の海にした。それ以来、中国の領地なのだ」と言う。かつて、「海はみんなのもの」としたほうが海洋帝国であるだいえいていこくに有利であった。だから、領海の拡大は、本来、反帝国的な動きである。中国は、とにかく資源が欲しくて場当たり的に動いている。韓国の歴史教科書は「テロリスト史観」で日本にとって脅威。
⑤ドイツ帝国の復活が問題だ
ギリシャ問題に関しては、そもそもギリシャをヨーロッパと考えるのが間違い。現在のギリシャは、ロシア帝国と大英帝国のグレートゲームになかで恣意的につくられた仇花である。オスマン帝国を解体するために西側の出店としてつくった国家だから、いわばそこに存在すること自体がギリシャ人の仕事になっている。ギリシャ人の働き方は、ロシアと一緒で生産性は低い。それに対して、ドイツ人は勤勉で生産性が高く、これがドイツの強さの根源である。ドイツ人のライフスタイルは質素で内需の拡大は期待できないので、産業は輸出に頼るしかない。新たなパートナーは誰か。パートナーたちは、経済と国家の安全保障を結び付けて考える。さあ、EUの行き詰まりをどうしていけばよいのか。
⑥「アメリカvs.ロシア」の地政学
ロシアは、自国国境の周辺に自由に動ける緩衝地帯や衛星国がないと安心できない。だから、ウクライナ問題に対しては強硬姿勢である。ウクライナは、フィンランド化していくだろう。
オバマの弱いアメリカは、世界から軽んじられている。ネオコン的なヒラリーが大統領になれば、オバマ民主党路線との違いを見せた外交になって、戦争が起きやすくなるだろう。大統領選で鍵を握るのは、非白人人口の中の特にラティーノ、南部諸州、リバタリアン(自由至上主義者)たちである。
⑦「右」も「左」も沖縄を知らない
沖縄では、日本からの分離の動きの下地ができている。安保賛成というと辺野古への新基地建設を強要されるのはおかしい。自分の頭で日米同盟はどうすれば維持できるか考えなければならない。
⑧「イスラム国」が核を持つ日
冷戦下で相互抑止体制を築き、なんとか核戦争は先送りされた。それがここにきて、相当の数の国が核を保有しながら併存する時代にとつにゅうしつつある。しかし、本当に併存が可能か誰も分からない。
⑨ウェストファリア条約から始まる
宗教戦争を終結させる、宗教のために戦うのをやめるというのは、神よりも重要な価値を認めるということであり、その意味で、ウェストファリア条約とコペルニクス革命は、同じパラダイムにある。これをきっかけとして、「人権」という概念が出てきた。それに対して、「イスラム国」などのイスラム過激派は、今日においても「神の主権」を主張している。間違いを起こす人間が法律をつくるなどとんでもない。民主主義はだめだ、神なら間違えない、ということでシャリーア(イスラム法)を絶対視する。イスラムは、キリスト教と違って、現在意識にない楽観的人間観であり、神が命じれば、聖戦の名の下にいかなる暴力も許されてしまう。
⑩ビリギャルの世界史的意義
イスラム、アフリカの人口増加、これが歴史を動かしていくのかもしれない。豊かな経済基盤によって移民を呼び寄せられる国が、「帝国」になりうる。
そして、教育も重要である。しかし、日本のエリート教育は、ビリギャルが話題になるぐらいの受験刑務所で酷いものである。今こそ真の教養教育が行わなければならない。今日において教養となにか。「宗教」「宇宙」「人類の旅路」「人間と病気」「経済学」「歴史」「日本と日本人」の7つのリベラルアーツを学ぶことによって、偏見や束縛から逃れて、自由な発想や思考を展開できるのだ。実証性や客観性を軽視して自分が欲するように世界を理解する反知性主義は、極めて危険だ。
⑪最強の世界史勉強法
自分を知るために歴史を学ぶ!
1~11章まで、自分自身がひっかかった言葉を中心にまとめてみた。このまとめ方に、私自身の考えが出ている。私のような歳になっても教養を付けようとするのは、まだまだ遅くないように思う。 -
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「友情」を考える上でこれ以上の本があるだろうか。高校一年生の一年間を濃密に過ごした著者二人のそれからの人生を顧みて、勿論それぞれの人生があったわけだが、都度都度関わることがなくても、いざという時に一番親身になって精神的なヘルプをしてくれる親友という存在。
自分の身で振り返って、3年前に三途の川が朧気に見えた時期があった際に、やはり親友家族にとても言葉で表せない勇気をもらったことがあり、幸いなことにまだ生かしてもらっているが、その時の記憶を呼び覚ましながら読ませてもらいました。
お互いのことを尊敬し合える友達同士の友情は本当に素晴らしい。最後の伊豆弓ヶ浜への二人旅行の場面は涙無しに読むことができませんでした。 -
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歴史は勝者によって作られる。ただ、後世の我々は残された史料を、角度を変えて読み解くことにより、必ずしも「勝者の歴史」通りではないストーリーを発見することができる。
これは本書で語られている一節。まさにその通りで、例えば幕末史。司馬遼太郎の「竜馬がゆく」「燃えよ剣」は今や幕末の定説感さえ漂わしている。膨大な資料を渉猟し、書かれたとはいえ、あくまでも幕末を舞台にした「小説」。ゆえに、著書の主人公に対する肩入れから来る「作り事」も多く含まれている。黒船来航から明治維新までを概観する上においては格好の書ではあるけど、倒幕派=義 佐幕派=不義 という単純な見方で眺めるのはあまりにも短絡的過ぎる。「フィクション(小説)は、歴史の真実を錯覚させるという点で怖いものがある」と著者のひとりの山内氏が嘆息するのも頷ける。
【興味深かったトピック】
◉水戸学は徳川家生き残りの為の保険⁈
幕末の尊王思想の拠り所であり、理論武装の供給源であった水戸学。極端な尊王主義を打ち出すことで、何があろうとも徳川家は必ず生き残る。水戸藩自体は安政の大獄でボロボロになってしまうが、もし水戸藩がなければ徳川御三家はもっと酷い目に合う可能性はあった。王道(天皇)と覇道(徳川家)の緩衝材であり平衡装置でもあった。
◉征韓論の対立軸とは?
明治初期は税収政策が確立しておらず政府の金庫は火の車。多大な予算を必要とする西郷率いる外征派vs財政基盤の確立を目指す大久保率いる富国派。「富国強兵」と四字熟語として捉えがちだが、富国してこその強兵の大久保と同時に行えると鼻息荒い西郷のガチンコであった。
◉日本陸軍の誤謬
陸軍はドイツの参謀本部に学んだことで、ガバナンスが狂い出す。参謀本部は、そもそも企画立案をするだけのスタッフ部門。決定・命令を司る司令部ではない。ところが、昭和の日本陸軍は参謀本部が全てを決めてしまった。ゆえに、陸軍は参謀本部と戦線との乖離が生じ、暴走を始める。
◉小説「落日燃ゆ」の主人公 広田弘毅は凡愚だった
城山三郎の描いた平和協調に腐心した広田弘毅。その実はとんでもない外相であった。長引く中国との戦争の和平工作を断固反対したのが外務大臣広田弘毅だったとは…。
◉エネルギー面から見れば、戦争なんてできるはずもなく…
1940年時点で日本の石油輸入依存度は92%。その内81%はアメリカから。これだけとっても絶対にアメリカとは戦争できなかった。にもかかわらず戦争へと舵を切った。
「へぇ〜、そうなんだ」「そういう見方があるんだ」という新しい知識と見識を得た読書タイムであった。天皇・土地・宗教・軍事・地域・女性・経済。この7つのツボを押さえることで歴史を理解できると語るは、歴史学者 本郷和人氏。その説に倣えば、本書には女性こそ登場しないが、その他は確かに網羅されている。
黒船来航から戦後まで150年を「世界の中の日本の近現代史」と位置付けで知ることができた白熱の書でありました。