【感想・ネタバレ】世界史の極意のレビュー

あらすじ

歴史はひとつではない!著者初の世界史入門

ウクライナ危機、イスラム国、スコットランド問題……世界はどこに向かうのか。戦争の時代は繰り返されるのか。「資本主義」「ナショナリズム」「宗教」の3つの視点から、現在の世界を読み解くうえで必須の歴史的事象を厳選、明快に解説! 激動の2015年を見通すための世界史のレッスン。

[内容]
序章 歴史は悲劇を繰り返すのか──世界史をアナロジカルに読み解く
第一章 多極化する世界を読み解く極意
1 帝国主義はいかにして生まれるのか
2 資本主義の本質を歴史に探る
3 イギリスの歴史教科書に帝国主義を学ぶ
第二章 民族問題を読み解く極意
1 民族問題はいかにして生じたのか
2 ナショナリズム論の三銃士──アンダーソン、ゲルナー、スミス
3 ハプスブルク帝国と中央アジアの民族問題
4 ウクライナ危機からスコットランド独立問題まで
第三章 宗教紛争を読み解く極意
1 イスラム国とバチカン市国──日本人に見えない世界戦略
2 キリスト教史のポイント
3 イスラム史から読み解く中東情勢
4 戦争を阻止できるか

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Posted by ブクログ

著名な歴史学者、民俗学者らの主張をつなぎ合わせるかたちで国際社会の紛争や経済、宗教上の問題・課題を読み解く一冊。世界史で学んだ過去やニュースで取り上げられる表層の事象が本書の解きほぐす土台、骨組みの上で起こっていると理解できる。

国際情勢の専門家として信頼する佐藤優さんが15年の出版当時、クリミア編入したロシアと、米国に現在も脈々と続く合理主義信奉のパワーバランスが第一次世界大戦直前に酷似していると本書で指摘(92%辺り)しているのが印象に残った。20年現在も米中間の対立が紛争に発展する可能性について警笛を鳴らしている。

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2020年11月18日

Posted by ブクログ

2015年に読んでいたのに、すっかり忘れて2020年に再読してしまった。当時星4つだったが、今は知識もあの頃よりつき、なるほどと思う部分が多かったので、星5つ。歴史は繰り返すということを、史実や思想を元に書いたもの。世界がどう向かっていくかを予測する上で、知っておいて損はない知識だと思った。

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2020年05月26日

Posted by ブクログ

歴史を学ぶことで今の情勢を捉えるきっかけになるということがよく分かる本だった。受験勉強でただひたすら覚えた知識が現代の情勢を分析する上で活かせるという例をここまで示されると、とても楽しくて同時に教養の重要さも再確認させられた。

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2019年12月31日

Posted by ブクログ

単なる世界の通史ではなく、佐藤優氏の独特の世界観を通じて、全く違う角度から世界史をとらえることのできる本。この本を読めば、スコットランド問題や、イスラム国の問題等、今、話題となっているコトの背景を理解することができる。キリスト教とイスラム教をざっくりと知ることのできる本ともなっており、非常に内容が濃い。

注目点
・世界史の通史を解説する本ではありません 。世界史を通して 、アナロジ ー的なものの見方を訓練する本
・アメリカで第二次世界大戦後 、本格的な恐慌が起きていないのはなぜか 。それはアメリカの公共事業に戦争が組み入れられているからです 。
・植民地の支配では 、少数派を優遇するのは常套手段です
・ジェノサイドが起きたルワンダでも 、宗主国のベルギ ーは少数派のツチ族を多数派のフツ族より優遇しました 。

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2018年11月12日

Posted by ブクログ

■アナロジー(類比)とは似ている事物を結び付けて考えること。アナロジー的思考はなぜ重要なのか。道の出来事に遭遇した時でも,この思考法が身についていれば「この状況は過去に経験したあの状況とそっくりだ」と対象を冷静に分析できるから。
■アナロジー(類比)とメタファー(隠喩)の違い。(「キリスト教神学入門」アリスター・E・マクグラス)
①神には知恵がある。
・神の本性と人間の「知恵」の概念との間に類比の関係があることが主張されている。人間の知恵は神の知恵の類比として働く。
②神は獅子である。
・ある程度の驚きを引き起こし得る。
■アナロジーもメタファーも二つの事柄の間に類似性の要素と再生の要素がある。
・メタファーの方が再生の要素が強いので表現としての異化効果,ヒトをはっと驚かせたりする効果が強まる。
■慰安婦問題について欧米の人々は「自分の娘や妹が慰安所で性的奉仕に従事させられたとしたら…」という思いでこの問題を見ている。かつてはどんな国にも公娼制度があったと主張しても,それ自体が人権を踏みにじるものだと理解される。こうした類比的な思考を一切考慮せず「私達は間違えていない」と言い張ったところで国際社会からの理解を得ることはできない。
■なぜ1870年代から帝国主義の時代に突入したのか。このことを理解するためには重商主義以降の世界経済史を押さえておくことが必要。その理解があって初めて現在の国際環境を「新・帝国主義」と規定するアナロジーが分かるようになる。
■16世紀以降,資本主義は,重商主義→自由主義→帝国主義(独占資本主義)→国家独占資本主義→新自由主義という形で変遷してきた。
・重商主義とは16世紀に形成される絶対王政が実行した経済政策であり国家が商工業を育成し貿易を振興すること
・重商主義の代表はスペイン
・17世紀になると重商主義の中心は外国貿易になる
・国家が輸出入を規制し利益を吸い上げる(貿易差額主義)
・貿易が活発になると輸出産業を保護する必要が出るため国内産業を保護する産業保護主義が中心となる
・ポイントは国家が経済に強く介入して国富を蓄積していくこと
■レーニンはマルクス主義者であるがマルクスの「資本論」とレーニンの「帝国主義」には大きな違いがある。
・「資本論」で考察されるのは国家が市場に干渉しない純粋な資本主義の世界
・「帝国主義」では市場に介入する国家の機能が重視される
■レーニンは「帝国主義」の中で帝国主義を次のように五つの段階を挙げて定義している。
①経済生活の中で決定的役割を演じている独占を創りだしたほどに高度の発展段階に達した生産と資本の集積
②銀行資本と産業資本との融合と,この「金融資本」を土台とする金融寡頭制の成立
③商品輸出と区別される資本輸出が特に重要な意義を獲得すること
④国際的な資本家の独占団体が形成されて世界を分割していること
⑤最大の資本主義的諸強国による地球の領土的分割が完了していること
■覇権国家の弱体化が帝国主義を準備する。
・自由主義の背後には常に覇権国家の存在があり覇権国家が弱体化すると帝国主義の時代が訪れる
・イギリスの弱体化→ドイツやアメリカが台頭
・アメリカの弱体化→ロシアや中国が軍事力を背景に露骨に国益を主張
■維持コストの高い植民地を持たず全面戦争も避けようとするのが「新・帝国主義」の特徴であるが,外部からの搾取と収奪により生き残りを図るという帝国主義の本質や行動様式は変わらない。
■マルクスは資本主義社会の本質を「労働力の商品化」と考えた。
■「労働力の商品化」には二重の自由がなければならない。
・第一に身分的な制約や土地への拘束から離れて自由に移動できるということ(契約を拒否できる自由を持っている)
・第二に自分の土地と生産手段を持っていないこと(生産手段からの自由)
■賃金が決まる三要素の考え方はマルクスの最大の貢献であり未だに打ち破られていない重要な基礎理論。
①労働者が次の一か月働けるだけの体力を維持するに足ること
・食料費,住居費,被服費,レジャー代
②労働者階級を再生産すること
・家族を持ち子供を育てて労働者として働けるようにする
③自分を教育すること
・進歩し続ける資本主義社会の科学技術に合わせられるようにする
■日本の教科書が価値観をほとんど出さず必要な要素を漏らさないよう記述しているのに対しロシアの教科書はロシアの立場を正当化する価値観が強く出ている。
■金融資本主義に対する三つの処方箋
①外部から収奪する帝国主義
②共産主義
③ファシズム
■「ゲシヒテGeschichite」と「ヒストリーHistorie」
・ゲシヒテ:歴史上の出来事の連鎖には必ず意味があるというスタンスで記述
・ヒストリー:年代順に出来事を客観的に記述する編年体
■ナショナリズムの問題を考えるとき「原初主義」と「道具主義」という大きく異なる二つの考え方がある。
・「原初主義」とは,日本民族は2600年続いているとか中国民族は5000年続いているといったような民族には根拠となる源が具体的にあるという実態主義的な考え方(言語,血筋,地域,経済生活,宗教,物価的共通性など)
・「道具主義」とは,民族はエリートたちによってつくられるという考え方で国家のエリートの統治目的のために道具としてナショナリズムを利用するというもの
■標準語は自然に存在するものではない。アンダーソンによれば標準語は「出版資本主義」の力でつくられるとする。出版業が多くの読者市場をターゲットにして儲けるために「出版用の言語」がつくられ,それが標準語になっていったと考えた。
■「公定ナショナリズム」とは上から「国民」を創出しようとするもの。
■社会が流動化すると見知らぬ者同士でコミュニケーションをする必要が出てくる。そうすると普遍的な読み書き能力や計算能力といったスキルを身につけることが必須となる。そういった教育を誰が与えるかといえば,それは国家しかない。
■一定の教育を広範囲に実行するためには国家が必要。国家は社会の産業化とともに教育制度を整え領域内の言語も標準化する。こうした条件があって広範囲の人々が文化的な同質性を感じることができる。
■アンダーソンは,「民族」とは「想像された政治的共同体」と考えた。それに対しスミスは近代的なネイションを形成する「何か」があると考えた。この「何か」を表す概念がギリシャ語の「エトノス」,現代フランス語の「エトニ」である。
・エトニとは,共通の祖先・歴史・文化を持ちある特定の領域との結びつきを持ち,内部での連帯感を持つ名前を持った人間集団
・エトニという観念が歴史(※)と結びつくことにより政治的な力が生まれ,この力によりエトニは「民族」に転換する(※ここでいう「歴史」は実証性が担保されている必要はなく人々の感情に訴える詩的で道徳的で共同体の統合に役立つ物語としての歴史〔ゲシヒテ〕であり,これが民族形成に不可欠)
■中央アジアでは1920~1930年代に殆ど民族意識がないところで「上から」民族がつくられた「公定ナショナリズム」の典型である。その結果,ソ連崩壊後,中央アジア諸国では部族を中心とするエリート集団が権力を握り,他方で経済的困窮からイスラム原理主義が拡大していった。
■同質性が高いほど,その「差異」を巡ってナショナリズムは暴発しやすい。
・アイルランドとウクライナは同質性が高い地域で殺し合いが起きた
■「新・帝国主義」の時代は資本主義,ナショナリズム,宗教という三点の掛け算で動いている。
■植民地支配で少数派を優遇するのは常套手段。
・フランスは第一次大戦後のシリア委任統治において国民の少数派であるアラウィー派を重用した
・多数派の民族や宗教集団を優遇すれば独立運動につながってしまうので宗主国への依存を強化するため少数派を優遇する
■「イエス・キリスト」の「イエス」は当時のパレスチナにいたごく普通の男性の名前で,「キリスト」とは「油を注がれた者」という意味。
・ユダヤでは王様が戴冠するときに油を注ぐ習慣があり王様イコール救済主というのがユダヤ教の伝統的な考え方
・「イエス・キリスト」とは「イエスという男がキリストという救い主であると信じている」という信仰告白
■コーランに書かれるイスラムの「五行」
・信仰告白(アッラーのほかに神はいないと唱える)
・礼拝(一日五回メッカに向かって祈る)
・喜捨(収入の一部を困窮者に施す)
・断食(ラマダーン月の日の出から日没までは飲食を禁じる)
・巡礼(一生に一度メッカに巡礼する)
■「イスラム」とは「絶対帰依」という意味でありイスラムではあらゆる行為がアッラーへの絶対的服従として決められている。
■「コルプス・クリスティアヌム」とは①ユダヤ・キリスト教の一神教の伝統と②ギリシャ古典哲学,③ローマ法の三つの要素から構成された文化総合体のこと
・日本語に訳せば「キリスト教共同体」
・神学者エルンスト・トレルチの考え方で今なおヨーロッパ的な価値観の根底をなす
・EUもこの三つの価値観によって結び付けられている有機体
・EUがロシアやウクライナに伸びないのはコルプス・クリスティアヌムが正教文化圏を含みにくいから
・トルコがEU入りを希望しても入れないのはコルプス・クリスティアヌムの価値観を共有していないから
・宗教的価値観を中心とした結びつきには民族やナショナリズムを越えていくベクトルがある
■イスラム国の組織形態はネットワーク型
・アルカイダのようにウサマ・ビンラディンの命令で下部が動くという組織形態ではない
・小さなユニットが無数にありそれぞれに必ずメンター(宗教指導者)がつき,世界中のユニット同士がインターネットで結びついている
■イスラムにはムスリムが支配する「イスラムの館」と異教徒が支配している「戦争の館」という概念がある。イスラム原理主義の最終目標は世界中の「戦争の館」をジハードにより「イスラムの館」に転換していくこと。
■イスラム原理主義の五つの特徴
①儒教のように哲学的支弁を駆使せず簡単で宗教と道徳が一致しているため近代化の嵐の中でも生き残ることができた
②儒教より強いのは強力な超越的観念を持つから
③超越的な神とこの世の人間が直結する。信仰の仲介者がいないので政治的,道徳的言説の内容が曖昧で幅が広くなる。それゆえに広域で影響を発揮することができる
④超越的な唯一神を極端に強調すれば知的整合性を無視することができる
⑤近代的な学問手続や論理整合性を無視して「大きな物語」をつくることができる
■イスラム原理主義の特徴を熟知してその暴走を事前に食い止めようとしたのがレーニンとスターリン。
・イスラム原理主義が尊重する信仰対象,慣習などを尊重して摩擦を起こさないようにした
・イスラム系諸民族の中にあるエトニを刺激してイスラムへの帰属意識よりも民族意識を強化した
・現実には上からの強制的な民族アイデンティティを付与したため,ソ連崩壊後にナショナリズムの暴走が始まった
■戦争や紛争を解決する方法はたった一つ。「もうこれ以上殺し合いをしたくない」と双方が思うこと。そのための方法は二つ。
①もう一度,啓蒙に回帰すること。人権,生命の尊厳,愛,信頼といった手垢のついた概念に対し,不可能だと知りながらも語っていくこと
②プレモダンの精神,換言すれば「見えない世界」へのセンスを磨くこと

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2016年10月28日

Posted by ブクログ

再読。
グローバル化の果てに覇権国家の行き詰まりが起き、各国のナショナリズムが強化され帝国主義の時代がくる。著者はこの本でそう指摘している。現在のウクライナ戦争に突き進んだロシア、覇権をめぐる中国の動き、アメリカの自国第一主義はまさにそれではないか。

世界史を表面だけなぞるのではなく、その背後にある民族、宗教、経済の動きを理解し、アナロジーとして現代を読み解く。深く広い知識がなければできないことだが、この方が仰っていることが、ようやく少しだけ理解できた気がする。

(2015/03/11)
これまで読んだ著者の本の中では最も読みやすく、勉強になりました。

なぜ著者は何でもかんでも神学の話に持っていこうとするのだろう?という素朴な疑問も持っていました。本書では、合理主義の時代が終わり、かつ新たな帝国主義の時代を迎える中で、人々がよりどころとするものの一つが宗教の世界であるという指摘が、これまでの作品よりもわかりやすく説明されています。ようやく著者の思想の一端をつかむことができた感じ。

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2022年03月09日

Posted by ブクログ

現在(出版時の10年前)の世界情勢を理解するために必要な歴史や宗教の事柄について、要点を絞って書いてある本

あまりにも世界史弱すぎて時事についていけないので読んだ
思ったよりわかりやすく書かれていたけど、世界史弱すぎるので理解度は1/3くらいかな

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2025年06月21日

Posted by ブクログ

世界史の概説本ではなく、現代の情勢を眺めるために過去の歴史を学ぶ必要性を訴えた本。筆者の主張は世界の歴史をアナロジカル(類似的)に見ることが重要ということ。それによればグローバル主義の行きついた現在は、アメリカの覇権が揺らぎ新たに台頭した国々が力をむき出しにする新帝国主義時代と言え、第一次世界大戦前夜と似たような空気感と評せるとのこと。確かにこの考察は面白いと思った。また、近代ナショナリズムは自然発生的なものではなく、上からの作用もありつつ、集団に共通する過去の物語が見いだされることで形成されるという論説の紹介や、原罪を持つキリスト教と違い、イスラム教は神を信じたとたんにすべてが正当化されるというのも興味深かった。
個々の現状評価には個人的には多少疑問を持つところもあるし、困難を回避するためにプレモダン(形而上学的価値と言っても良いか)を強調するところもどうかなと思わなくもないが、現状とこれからを考えていくのに刺激になる一冊だと思う。

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2024年09月12日

Posted by ブクログ

歴史にはヒストリエ(年代記)とゲシヒト(民族の物語)がある。日本の教科書には後者がなく有事に対応できず外交で競り負ける主因である。《知の3巨人》、ベネディクト・アンダーソンは公定ナショナリズムにより国家は形成され(ただし君主自身も批判にさらされるリスクを負う)。アーネスト・ゲルナーは「ナショナリズムの運動があって、ナ‥の思想が生じる」と説いた(弾圧があってこそ独自国家希求)それはデラシネの民の発生した産業社会以降‥。アントニーDスミスは民族とは想像された共同体で「エトニ」過去にさかのぼって見出されるとする

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2024年05月26日

Posted by ブクログ

歴史をアナロジカルに捉える、ということにどれだけ近づけたかはまだまだとおもうが、おもしろかった。
一方的な見方や一つの側面でしか、報道などでは語られていないので気をつけたい

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2024年03月07日

Posted by ブクログ

「資本主義と帝国主義」「ナショナリズム」「キリスト教とイスラム」の3つのテーマとあるように多岐にわたっていて、理解できる個所とできない箇所が混在していた。昔一度読んだときは、理解が薄かった部分が、今回再読することで、より深まった感じがした。改めて、資本主義、ナショナリズム、宗教については、引き続き研鑽し続けていきたいと思った。

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2023年12月06日

Posted by ブクログ

論理学や哲学による表現で理屈っぽくストレスを感じる箇所もあった。

ウクライナとロシアの戦争への過程はイメージしづらく、義憤に駆られ、善悪で捉えて、思考終了としまいがちな問題である。しかし「イギリスとスコットランド」「日本と沖縄」とアナロジー(類推)で説明するところは外交官出身の著者ならではだと思う

「外交」だけでなく「宗教」も強みで彼のライフワークであるキリスト教を軸とした宗教への研究に基づく、著者推奨の参考図書もありがたい。

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2023年01月10日

Posted by ブクログ

・ウクライナ危機とアイルランド人の問題はどのようなアナロジーを構成できるのか。アイルランドとウクライナも同質性が高い地域で殺し合いが起きた。ナショナリズムは同質性が高いほど、その差異をめぐって暴発しやすいのです。
・UKの国名の中に民族を示唆する言葉はどこにもない。グレートブリテン人や北アイルランド人という民族は存在しない。この国は王の名のもと、民族を超える原理で統合されてきた。アイルランド問題もスコットランド問題もこのイギリス的統合が機能不全になっていることを示唆している。
・ベネディクト16世の生前退位。イスラムに対しての戦略。キリスト教が巻き返すには、自分より若くて健康な教皇が必要。そのための生前退位。

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2021年03月23日

Posted by ブクログ

過去の歴史と現代の現象を比較し、類似性を見ること(アナロジー)の重要性を説いている。
資本主義、ナショナリズム、宗教からなる新・帝国主義をアナロジカルに洞察することで、今後の戦争を回避したいという著者の想いが通説に語られている。

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2020年06月21日

Posted by ブクログ

世界史はひとつではない。勝者から描いた歴史。敗者から描かれた歴史。そこにある事実をどのように捉えるか。相手の立場に立って考えるという想像力があれば最後の手段の戦争もなくすことが出来たのかもしれない。

宗教的な結び付きよりも民族的な繋がりが言われる時代。イギリスのブレグジットでヨーロッパが分断されていく時代。中国が経済的にも政治的にも巨大な力を得る時代。何だかんだで大変な世の中になってきたと思うけど、大きな歴史の流れで見たら決して楽な時代はないのだと思いました。

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2019年10月22日

Posted by ブクログ

中東欧史を基礎に、国民国家が成立した過程を神学哲学の基本を概説しながら、国民国家のあるべき姿を提示する良作。インテリゲンチャにしか理解出来ない物語なのは物語の限界としか言いようが無い。

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2019年06月25日

Posted by ブクログ

世界史(と、これからの世界の流れ)をアナロジーで読み解こう!という趣旨の本。この類比は実際どうなんだ?と思わないでもない箇所はあるものの読み物としてはとっても面白い。

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2017年02月19日

Posted by ブクログ

世界史、おもしろい。
ここまで世界史を把握して現在の世界情勢を見ると、いろんなことが見えて楽しい。
自分でここまでできるかどうかは別だが、改めて世界史の重要さを認識した。
歴史の多面的理解をするためには、本著だけでなく、その他の見方も述べた本を数冊読んだ方が良いかもしれない。それらの紹介もあると助かったが、それは自分の足で探すか、自分で考えることにしよう。
著者が宗教学を修めており、その面からのアプローチが多い。個人的には知識が皆無のため、ちょっと苦手な部分。

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2017年01月11日

Posted by ブクログ

私にとっての読書とは、情緒面への影響を期待して読むか、知的欲求を満たすために読むか、それらを含む娯楽として読むか、に目的が類別される。後は、それぞれの程度がどうか、という事だ。正月には、思う存分読んでやろうと思うのだが、中々そうもいかない。自分一人、異世界に没頭するのを許さぬ文化なのだ。ゆえに、ライトで斜め読みに適した本ばかり選んでしまう。だからだろう、読書の目的に対する収穫が少なく、一種の飢えを感じていた。正月の所為だけではなく、最近生活が変わった事で、気持ちを切り替えるような啓蒙本に偏った事も一因である。この飢えに対して、佐藤優が効く。手応え、重量感のある久々の読書だ。気持ちが満たされていく。

歴史から学べというような事は、よく言われるが、では、何を学び、どう活用すれば良いのか。本著は、過去に起こった出来事を如何にアナロジカルに現代に当てはめて考えられるか、それにより戦争を抑止したいという明確な立場で綴られる。だからこそ現代の民族問題を、イデオロギーの変遷から宗教史により紐解く。植民地化したはずの沖縄に対して、あまりにも日本人は無知で、自分たちに適用する同調圧力対象の同枠として認識してしまっている。そのような事を佐藤優が強い口調で指摘したのは、これが初めてではないだけに印象的だ。佐藤優の母親は沖縄人である。左翼側にも右翼側の論壇にも現れる彼の内在的論理は、単純に戦争を抑止したいというロジックだけなのだろうか。自らを排した国家権力に今、何を感じているか、改めて気になった。

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2017年01月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

歴史をアナロジカル(類比的)な視点で見るという考え方を
現代の問題を例に挙げて説明してくれています。
そういう視点を持つ事自体が極意ということなんでしょうね。

帝国主義、民族意識、ナショナリズム、宗教など多少難しい言葉も出てきますが
入門編のような感じなので分かりやすく説明してくれています。

象に残ったところ。
1918年に第一次世界大戦が終了した時点でヨーロッパでは
科学による合理主義や無神論的な思想の限界を知ったことで
神学としての新しい見地が生まれてきたとのこと。
アメリカは合理主義や物質主義で第2次世界大戦まで切り抜けてしまったがためにそういった思想の限界を意識することなくその延長線上にいる。
なるほどなぁと思いました。
日本は戦後米軍占領下でアメリカ的な思想が根付いてしまったんですかね。
色々と考えさせられました。

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2016年11月28日

Posted by ブクログ

現在起きていることを歴史のアナロジーとして捉えることができる
資本主義
ナショナリズム
宗教
3つの観点で捉える

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2016年09月23日

Posted by ブクログ

現在の世界情勢を理解するために歴史的背景を探るというスタンスで、資本主義、民族・ナショナリズム、宗教に絞って流れを概観している。

<資本主義>
マルクスは、資本主義社会の本質は労働力の商品化であると考えた。労働力の商品化には、自由に移動でき、土地や生産手段を持たず、労働力を維持するための生活費、労働者階級を再生産する養育費、時代の進歩についていくための教育費をまかなうことができる賃金を得る必要がある。

近代資本主義は、15〜16世紀のイギリスで始まった。ヨーロッパの寒冷化によって毛織物の需要が高まったため、羊を飼うための囲い込みが進み、追い出された農民は都市に流れて毛織物工場で働いた。スペインやポルトガルでは、金銀は浪費されたり、教会に寄進されたりして、資本は蓄積されなかった。オランダには羊を育てるのに適した土地がなかった。

16世紀以降、資本主義は、重商主義→自由主義→帝国主義→国家独占資本主義→新自由主義と変遷してきた。重商主義は国家がスポンサーになって国富を蓄積するもので、他国の鉱山を開発して奪う重金主義(16c)、貿易黒字を重視する貿易差額主義(17c)、国内輸出産業を保護育成する産業保護主義と移った。産業革命が起きて産業資本が強くなったイギリスで、19世紀半ばに国家の規制を廃した自由貿易が確立した。1870年代に鉄鋼や内燃機関、電気などの分野で技術革新が起こって重化学工業が進み、ドイツやアメリカが成長すると、資本が国家と結びついた帝国主義の時代になった。1920年代にムッソリーニが展開したファシズムはナチズムとはまったく異なるもので、自由主義的資本主義がもたらした失業、貧困、格差などの社会問題を、国家が雇用を確保して所得を再分配するなどの介入をして解決することを目指した。

1917年のロシア革命によって社会主義体制ができて冷戦期になると、社会主義革命を阻止するために、純粋な利益追求に歯止めをかけて福祉政策や失業対策などの政策をとる国家独占資本主義の時代になった。1991年にソ連が崩壊すると、新自由主義が主導権を握ってグローバル化が進んだ。グローバル化が進むと、国家は徴税機能が弱体化するため、機能を強化する方向に向かう。

覇権国家が存在する時代には自由主義になるが、覇権国家が弱体化すると帝国主義の時代になる。2000年代に新興国経済が発展し、2008年にはリーマンショックでアメリカの弱体化が進み、新帝国主義の時代に突入したと著者は考える。2008年のロシア・グルジア戦争は、グルジアとつながりが深かったアメリカが弱体化したことが背景にある。南スーダンを独立させたのはアメリカの工作で、石油開発によって生じた資金がイスラム過激派に流れることを阻止することも目的だったと考えられる。アメリカがミャンマーとの関係を改善したのは、中国のインド洋へのルートやイランとのパイプラインを阻止するためだった。

<民族・ナショナリズム>
ベネディクト・アンダーソンは、エリート層が国家を統治する目的でナショナリズムを利用したと考える道具主義を提示した。16世紀前半に発達した出版業によって出版用の言語がつくられ、標準語となっていった。一方、学校の授業で言語を教育することによって支配者層が「国民」を創出した公定ナショナリズムも進められた。アーネスト・ゲルナーは、産業社会が進んで人々が移動の自由を獲得し、社会が流動化するとコミュニケーションの能力が必要になるため、国家が教育制度を整えて言語が標準化され、同質性が生まれたと考えた。一方、アントニー・D.スミスは、ネイションを形成する共通する祖先・歴史・文化を持ち、連帯感をもつことのできる「エトニ」があると考えた。

16世紀のヨーロッパでルターが始めた宗教批判は、神聖ローマ帝国で1618年に始まった三十年戦争でピークに達した。1648年のウェストファリア条約によって、各国が内政権と外交権を持つ主権国家体制が確立した。

<宗教>
フランス革命から第一次世界大戦が勃発する1914年までの「長い19世紀」は啓蒙の時代で、科学技術と人間の理性によって理想的な社会をつくることができると考えられていた。一方で、これはナショナリズムの時代でもあり、その結果として起きた2つの世界大戦によって啓蒙の時代は終わりを告げた。しかし、勝利を収めたアメリカは啓蒙思想や合理的思考がもたらす負の帰結に対する洞察を得ることなく現在まで続いている。

イスラム教スンニ派は4つの法学派に分かれており、そのひとつであrハンバリー学派の中にワッハーブ派がある。ワッハーブ派は、コーランとハディースしか認めず、原始イスラム教への回帰を唱え、極端な禁欲主義を掲げる。アルカイダ、IS、タリバンなどの過激派は、すべてワッハーブ派の系統。

EUの価値観の根底には、ユダヤ・キリスト教、ギリシア古典哲学、ローマ法の3つから構成されたコルプス・クリスティアヌム(キリスト教共同体)という概念がある。20世紀初頭に神学者トレルチが提示したもので、EUは2度の世界大戦を経てナショナリズムを抑制するために生まれた。

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2018年10月31日

Posted by ブクログ

第1章の多極化する世界はなんとなく雰囲気がわかった。第2章からのナショナリズム以降、難しかった。。。池上彰のパワーアップ版か?

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2025年10月22日

Posted by ブクログ

覇権国家であるアメリカの凋落により、時代は新自由主義から新帝国主義へ突入していること等の分析がなされていて面白い。
歴史理解を深めることによって、現代のタフな世界情勢を乗り切る判断力、知性を身につけていこうということを述べる。
さらに理解を深めるため、この本で紹介されている本を数冊読み込んで行こうと思う。歴史とは何か、小説琉球処分等。

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2024年08月25日

Posted by ブクログ

元外務省でロシアを担当していたので反米的な主張はまぁ仕方ないのかなと思いますが、中国をスルーしているあたりに著者の思想的なものが入りすぎてる印象を受けました。その点がちょっと残念な本だなという感想です。

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2021年05月06日

Posted by ブクログ

世界史を学ぶことは、過去の出来事のアナロジーによって現在の国際政治の意味を読み解くための武器になるという著者の見立てに沿って、アメリカやロシア、中東の情勢について解説している本です。

著者は冷戦後の世界を、アメリカとソ連という東西の二大覇権国家が衰退することで「新・帝国主義」の時代に入ったと見ており、ヨーロッパ史やイスラム史、あるいは、アンダーソン、ゲルナー、スミスのナショナリズム論や宇野経済学などを参照しながら、著者らしい視点にもとづくクリアな世界情勢の説明がなされています。

著者のこれまで刊行してきた本と内容の重複が目立ちますが、とくに世界史を学ぶことの現代的な意義を説くという観点から議論がまとめられているところに、本書の特徴があるように思います。

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2018年10月02日

Posted by ブクログ

民族やナショナリズムの発生過程について、これまでの見方を覆す斬新な視点が提供されていて勉強になった。
民族は自然発生的に生じるものではないが、かと言って人工的に作られるものでもない。そこにはエトニが必要で、エトニの形成には共通語の存在が重要な役割を果たしている。これ以外にも3大宗教や資本主義の理について多くを学ぶことができた。
しかし本書の主題である、アナロジーによる歴史の把握はよく理解できなかった。歴史はsroryであり、『大きな物語』で捉える重要性は解る。ただ著者の主張は、2008年を境に新帝国主義の時代に入ったと言うものだが、米ソ冷戦時代を含めて大航海時代から常に帝国主義が続いているように思える。著者の定義によれば、帝国主義とは独占資本と国家が結託して経済支配力を地理的に広げていくことだが、こんなことはいつの時代もあったのでは?別に2008年になって急に再開したものじゃないと思う。
よく解らん。

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2017年06月29日

Posted by ブクログ

宗教分野以外の説明は新書だからということもあるのだろうか、浅く、ざっくりしていて、ピンと来ないところが多々。
しかし、宗教分野、歴史の授業で扱われた覚えのない東欧の歴史は勉強になったし、世界史の事件が現代にもつながっているということを学べた。また、あとがきの筆者の大学の先生がコメントした歴史の学び方、この一言は、これから歴史を学ぶ人には頭に置いておくと重要な意味を持つのではないかと感じた。
歴史は一つではない、帯に書いてあった通りである。

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2016年12月29日

Posted by ブクログ

国際的な感覚を身に着けるためには、過去に起きたことのアナロジー(類比)によって、現在の出来事を考えるセンスが必要だと説く。歴史は繰り返すともいうし、また現下の国際情勢も、歴史の積み重ねを経て成り立っているからである。この書籍では資本主義・ナショナリズム・宗教問題にフォーカスを当て、実相をどうアナロジカルに把握するか、その分析法を展開する。高校時代の世界史もこういう視点で学んでおけば、もっと面白かったかもしれない。

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2017年01月09日

Posted by ブクログ

日本も帝国。
宗教的知識に疎いので、そこと絡めて世界史のザックリとした流れを教えて頂けるのはありがたい。世界史そのものは佐藤先生もオススメする山川出版社の世界史を読みたい。

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2016年10月07日

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